お前はまだきあいパンチを知らない   作:C-WEED

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お久しぶりです。仕事が(ry

前回のあらすじ

カプ・コケコ「挨拶!(物理)」

オリ主「歓迎ありがとう!(物理)」

そんな感じ


25

 □月☆日 続き

 

 カプ・コケコへの挨拶(物理)の後の話をしよう。

 

 ミヅキちゃんのバトルだ。

 

 お相手は島キングのハラさんのお孫さんのハウくん。明るい笑顔が印象的な男の子だ。前にハラさんに会ったのは……こっちに来たばっかりのころだったから、大体10年前。でも覚えててくれた。人格者は一味違う。その孫なのでハウ君も一味違うことを期待したいけど、その手の期待はうんざりしてるだろうから、俺は毛ほども期待しないことにする。

 

 いや、毛ほども期待されないのも可哀想だからやっぱり期待はしておこう。

 

 まずはポケモン選びから。モクロー、ニャビー、アシマリの三体から選ぶ。俺の見識からすると、最終的にきあいパンチに一番向いてる形になりそうなのはニャビーだった。

 なんかこう、まん丸お目目じゃない感じも逆にかわいい。

 そんな理由で選んだりはしないが。

 

 じゃあ何で選ぶのか? それはもう、「きあい」ただ一つだよ。

 

 パッと見て、こいつって思ったやつ選んどけば間違いはない。

 

 もっと言えば好みで選んだっていい。

 その子が最終的にどんな成長を果たしても受け入れられるなら。

 

 まあそれはさておき、ミヅキちゃんが選んだのはモクロー。丸くてかわいい。

 

 一方ハウくんが選んだのはアシマリ。どう見てもタイプ相性は不利だ。

 きあいパンチ親父的には、相性不利をひっくり返して勝ってもらいたい。しかし言ってしまってはなんだがハウ君はあんまりきあいパンチって感じがしない。実際どうかは知らないが。

 

 バトル前、ミヅキちゃんが初めてのバトルできあいパンチできるか不安そうだったので「無理しなくていいよ。最初っからきあいパンチできるやつなんて俺くらいのもんだし」って言ったら、「できますよぉ!!」と威勢のいい返事をしてくれた。

 

 

 実際、ミヅキちゃんもモクローもよく頑張ったと思う。特にガッツが素晴らしい。俺を唸らせるんだから大したもんだよ。

 

 一応付け足しておくが、ハウくんもよくやってた。今後に期待する。

 

 あとニャビーちゃんは俺が貰った。かわいい。

 

 

 ハラさんに会って思い出したけどグズマは元気だろうか。最近連絡とってなかったのでちょっと連絡してみよう。

 

━━━━━

 

「もうリーリエと会ってたんだね、ミヅキ」

 

「はい! こんなに早くまた会えて嬉しいです!」

 

「これでほとんど揃ったわけだけど……コブシ君は?」

 

「カプ・コケコにまだきあいパンチ(あいさつ)してる……かな?」

 

「へぇ、土地の守り神にお参りなんて、殊勝な心掛けだねぇ」

 

 殊勝な心掛け、と言われ、私とコゴミさんは顔を見合わせた。

 

「殊勝……?」

 

「……まあ、挨拶は大事よね」

 

「え、それは、どういう反応なの?」

 

「そりゃあ……「おーい!」ん?」

 

 参道のある方から声がする。多分師匠だろう。

 

 そのうち人波を掻き分けて現れるだろう。

 

 

「……おいあれ」

 

「うわ、まじか」

 

「ママー、なんか飛んでるよー」

 

「あら、ツツケラさんかしら……え"っ」

 

 

 俄にさわがしくなる。皆が見ているのは、空……あっ。

 

 華麗に空を舞うスワンナのように、両手を広げる師匠の姿がそこにあった。まるでそこに居るのが当然とでも言うような表情だ。

 

 正確には、顔は隠れて見えないけれど、きっとそんな顔をしているに違いない。

 

 当然のように宙を舞っていた師匠。やがて、私達の姿を見つけたのか、大きく手を降り始めた。

 

「おーい!」

 

「師匠ー! こっちですよー」

 

「助けてー」

 

「え?」

 

 ぐんぐん近付く師匠。しかし、減速する様子はない。まさか自力で飛んでるわけじゃないの!? 

 

 ど、どうしよう。流石に師匠でもこの勢いで激突するのはヤバいんじゃ……。

 

 地面に激突すると思ったその瞬間。私は見てしまった。師匠の帽子が一気に開き、何本かのヒラヒラが衝撃から守るように師匠を包み込んだのを。そして、余った数本は地面に突き刺さり、地面にぶつかるのを食い止め、見事に落下と地面への直撃を防いだのを。

 

 恐ろしく早い緊急展開。私程のファンじゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

 あれなら師匠は無事……。いやまあ、止まった瞬間に首とかガクンってなってそうだけど……。

 

「いやあ、帽子がなければ即死だったね」

 

「大丈夫なんですか?」

 

「うん、いつもこの帽子には助けられてるよ」

 

「帽子が、助けてくれるんですか? 帽子なのに?」

 

「……あー。いや、うん、まあ、そういう機能があるんだよ。エアバッグ的なね」

 

 エアバッグどころではないと思うんだけど。触れない方がいい感じだろうか。だとしたらやめるのも吝かではない。私は空気の読める美少女だから。

 

「師匠の帽子は一味違うんですね」

 

 という感じでまとめておけば間違いはない、はず。

 

「じぇるるっぷ」

 

 おい誰だ今帽子鳴らしたやつ。

 

 

 

「おまたせしました」

 

「お参りは済んだのかい?」

 

 

 周囲の人が唖然とする中、ククイ博士は特に普段と変わらない。何故なら、彼は既にきあいパンチ慣れしていたのだ。コブシの論文を読破していた彼にとっては、人が空を飛ぶなど、「まあそんなこともあるかな」程度の事態にすぎない。

 

 

「お参り……? ああ、はい。バッチリかましてきましたよ」

 

「かますって何を?」

 

「そりゃきあいパンチ(あいさつ)ですよ?」

 

「……? うん、まあいいや。……ああ、丁度いらっしゃったみたいだね。ハラさーん!」

 

「おお、ククイ博士。そちらのお嬢さんが今回の? それに……」

 

「覚えてますか? ハラさん」

 

「ええ、覚えていますとも。レン、コゴミ。二人とも立派になったようで何よりですな」

 

 え、師匠達、知り合いなの……? 

 

「あの時の台風のような少年が、天変地異のようなポケモン博士になったのですから、月日の流れを感じるものですな」

 

「いやいや、俺なんてまだまだです」

 

 誉められてるの……? 

 

「それ、誉めてるんですか?」

 

 あ、ククイ博士が聞いてくれた。

 

「ビッグになったのは確かですな。ハッハッハ」

 

 ハラさんは、意味深なコメントをして豪快に笑った。師匠も笑っている。それでいいのか師匠。

 

 いやでもまあ、そんなもんなのか。

 

「と、旧交を温めるのもよいですが、本題はこれではありませんでしたな。ハウ! こっちにおいで」

 

「はいはーい。おー、知らない人がいっぱいだぁ」

 

 ハラさんに呼ばれて男の子が一人歩いてくる。のんびりした口調だけど、なんというか、強そう。

 

 こういう雰囲気ゆるそうな人はなんだかんだ強キャラだったりするのだ。そして実は敵のスパイだったりするのだ。彼もその手のタイプに違いない。

 

 ……という妄想。

 

 普通にいい人そうで安心している。よかったよかった。ちゃんと友達になれそう。

 

 しっかり私の踏み台になってもらおう。……なんちゃってね。

 

「はじめまして! 私、ミヅキ! 今日、あなたとバトルするのは私なの! よろしくね!」

 

「俺はハウだよー。よろしくね」

 

「ふむ、では早速ですが、バトルの準備といきましょうかな」

 

 そう言ってハラさんが取り出したのは3つのモンスターボール。まとめて投げると、中から三匹のポケモンが飛び出した。

 

「えっ、かわいい……」

 

 そう声を漏らしたのは師匠だった。

 

 でもかわいいのは否定しない。

 

「この三匹は右から順にニャビー、モクロー、アシマリって言うんだ。かわいいよね」

 

「この中から一ぴきずつ、ハウとミヅキにさしあげますぞ」

 

「おお~」

 

 どの子もかわいいな。どうしようかな。

 

「ミヅキ、先に選んでいいよ~」

 

「え、いいの? ありがとう!」

 

 と、お礼を言ったものの、こうして先に私に選ばせるというのは、後で自分が有利なポケモンを選ぶためなのではないかと邪推してしまう私がいる。

 

「うーん……」

 

「俺はニャビーちゃんがいいです」

 

「もし余ってしまったら引き取りますかな?」

 

「え、いいんですか?」

 

「かまいませんぞ。ポケモン博士になったお祝いにいいでしょう。成長した君がどんなポケモンを育てるのか、楽しみですな」

 

「さっすがハラさん! 太っ腹ですね! ありがとうございます!」

 

 まだ私選んでないんですけど。

 

 そんな気持ちが視線に現れていたのだろう。

 

 目が合った師匠は申し訳なさそうに一言。

 

「ごめん、ニャビーちゃんは俺が貰うね」

 

 ってそうじゃないでしょうよ。

 そこは、「ごめん、ミヅキちゃんが選んでる途中だったね。俺のことは気にしなくていいから、君の思うように選んだらいいよ」とか言うところでしょうよ。

 

 という内心はおくびにも出さず、

 

「大丈夫ですよ。私はこの子に決めてましたから」

 

 と、目の前のモクローを抱き上げた。

 

 私ってなんてできる女。

 

「なら俺はアシマリにするね~。よろしくな~アシマリ~」

 

 と、ハウ君もハウ君で余裕の対応。なかなかできる。いや、できるどころか寧ろぐう聖なのでは……? 

 邪推してごめんなさい。

 

「ふむ、では約束通り、この子は君が貰うといいでしょう」

 

「やったぜ。よろしくニャビーちゃ~ん」

 

 この師匠ルンルンである。主役は私達なんだけどなぁ。

 

 

 

「さて、時間も頃合い、ポケモンも決まった。強いて言えば少しくらい練習する時間を与えたいところではありますが、これも経験。早速バトルに進みましょうぞ」

 

 ついにこの時が来た。胸に抱えるモクローと目が合う。

 

 かわいい。

 

 しかし、こんなかわいいモクローをバトルで戦わせなければならない。可哀想な気もする。でも、それが私が憧れたポケモントレーナーの世界。

 

 師匠がいる世界。

 

 ならば、私も行くしかない。

 

「モクロー」

 

「?」

 

「頑張ろうね!!」

 

「モク!」

 

 とは言え、やっぱり初めては不安だ。でもこんな時こそ師匠の出番だろう。

 

 そのための師匠。そのためのきあいパンチ。

 

 早速私は助言を求めた。

 

「師匠!」

 

「ほーら高い高~い」

 

「にゃ~ん」

 

「グルグルしちゃうぞ~」

 

「にゃ~」

 

「師匠!!」

 

「おっ、ごめんねミヅキちゃん。あんまりニャビーちゃんがかわいいものだから」

 

「かわいい弟子が初バトルですよ! 何かアドバイスは無いんですか?」

 

 これでも緊張してるのだ。緊張ほぐしたりとかしてほしい。

 

「そうだなぁ……まあ、無理にきあいパンチしようとしないことだよね。肩の力抜いていきなよ。最初っからきあいパンチできるのなんて俺くらいのもんだし」

 

 肩の力を抜いていけと、そのアドバイスは理解できる。しかし、その後が解らなかった。何と、言われた? 最初っからきあいパンチなんてできない? 

 

 理解した時、思わず反論していた。

 

「できますよぉ!」

 

「え、なんだって?」

 

「きあいパンチを使って勝ってやるって言ってるんですよぉ!!」

 

「ほぉ」

 

「あら……」

 

「えぇ……」

 

「それならそれでいいんじゃないかな、うん」

 

 上から順に師匠、コゴミお姉さん、リーリエ、ククイ博士の反応だ。

 

「なら、見せて貰おうじゃないか。きあいパンチ一発で勝つところを」

 

「えっ……きあいパンチ一発で?」

 

「きあいパンチ、できるって言ったよね?」

 

「言いました……」

 

「きあいパンチってのはね……派手でも地味でもどっちでもいいし、なんならパンチかどうかなんて大した問題じゃないんだ」

 

「なら……」

 

「でも、それでも、きあいパンチでなくてはならない」

 

「……っ! 成程……」

 

 なんて奥深い世界だろう。つまり、きあいパンチしろってことだ。それなら師匠が一発で決めろって言ってるのも頷ける。きあいパンチはきあいパンチだから、きあいパンチでなければならない。つまりそういうことだ。

 

 

 

「……ねぇ、じいちゃん? オレ、ミヅキ達が言ってること全然わからないんだけど」

 

「安心しなさいハウ。私にもわからないし、わからなくて困るものではないよ」

 

 

 

「……いってきます!!」

 

「うん、いい表情だ。大丈夫。きっとうまくいくよ」

 

 

 

「信じるんだ。自分を、モクローを、そして……きあいパンチを」

 

 

 まだ、不安が消えたわけじゃないけれど、なんとかなりそうな気がする。

 

 

 

「勝者、ミヅキ!!」

 

 

 

 なんとかなったわ。

 

 

 

────

 

 

 ここは、アーカラ島、シェードジャングル。木々が鬱蒼と生い茂り、沢山の木の実とそれを食べるポケモン達で賑わう島巡りの試練の場にもなっている場所だ。

 

 そんなシェードジャングルだが、ある一画に、不気味なほど静まり返った空間がある。

 

 他の場所では、木々のざわめきや、ポケモン達の鳴き声でうるさいくらいなのだが、そこだけは、木々すらも息を潜めているかのように、音がない。

 

 

 ぬしポケモンの住処? 

 

 

 いや、違う。

 

 

 だが、よく見ると、とあるポケモンの姿が目に入る。

 

 カリキリである。

 

 

 木の実のなっている木の前で、カマを振り上げ、草のように擬態しているのだ。

 

 だが、獲物は取れない。カリキリの擬態が下手くそだとか、そういう話ではない。いや、ある意味では、そうなのだが。

 

 そのカリキリはあまりにも、強すぎた。自我が、意思が、肉体があまりにも同種のそれとはかけ離れていた。

 獲物が取れないなら木の実を食べればいい。その通り。だが、このカリキリはそれをしない。彼の肉体は獲物を捕まえるだけの力があると、理解していたから。その力を思う存分振るいたいと思っていたから。

 

 故に、擬態し、待つ。

 

 だが、そう、先に述べたように、この一画はカリキリ以外にポケモンはいない。なぜか? 

 

 それは、カリキリから滲み出る圧が、他のポケモンを寄せ付けないからだ。

 

 

 何がいるかはわからないが、近付いたらヤバい。

 

 

 そう思わせるだけの圧が、滲み出ている。さながらそれは、道に唐突に現れて圧倒的な存在感を放つテラキオンのように。

 

 

 野生のポケモンは彼我の実力差を感じ取る力が優れている。明らかにヤバそうなものには近付かないのが吉。それが本能レベルで染み付いている。そうでなければ生きていけない。それが野生の世界。

 

 今日も彼は獲物にありつくことができず、大人しく木の実をかっ食らう。もはや、彼が潜むこの一画に近づく者はほとんどいないし、今後現れることもないだろう。

 

 

 ある者たちを除いては……。

 

 

 出会いの日は近い。

 

 

────

 

「もしもし? あん? おう、グズマさんだぜぇ?」

 

 

「えっ、コブシ? コブシ・レン? まじかよ久し振りじゃねぇか」

 

 

「おう、俺はまあ、元気にやってるぜ。お前は?」

 

 

「そりゃよかった。で、お前は、あー、そういやポケモン博士だったっけか。出世してんな。おめっとさん」

 

 

「あん? 俺? あー、まあ、あれだよ。エーテル財団って知ってるか? おう、そうそう」

 

 

「そこのまあ、下請けって言うかな、下部組織? みてえなの。うん、で、それのこう、リーダーっつうか? 代表っつうか? まあ、そんな感じだよ、うん」

 

 

「いやいや、そんな大したもんじゃねぇって。んで、なんで電話なんか……ああ? アローラに? マジかよお前」

 

 

「明日? あー、うん、あいてるぜ。ホントは忙しいんだけどな。たまたまな」

 

 

「えっ、うち来るって? いや、今俺実家に居ねえし。あ? ウラウラ島だけどよ。え、来る? いやいや待て待て! ……切りやがった」

 

 

 

「何の電話だったんスカ? グズマさん」

 

「何ってそりゃあ……きあいパンチだ。……あー、しかしどうすっかな……」

 

「プルメリさん呼んできましょうか?」

 

「……ああ、頼む」

 

 




読んでいただきありがとうございました。楽しんでいただけたなら幸いです。

前回から約一年半ですね。これは一旦エピローグ投稿して締めといた方が良いのだろうか?


次回予告

アローラ。コブシです。皆さんはポケモンの技食らったことありますか? うん、あんまりないですよね。普通はそうです。でもククイ博士はね、研究のためとは言え、日常的に食らってるみたいですよ。あれはもう、ね。完全にあれですよね。あれって何って思ったみんな、パパやママに聞くのはやめようね。冗談だからね。
まあそれはそれとして。

次回 お前だパンチ 第26話
どけ!俺はきあいパンチだぞ!

明日の自分に、きあいパンチ!! 何、きあいが足りない? 逆に考えるんだ自分がきあいパンチなら何も問題ないだろう?



ところで最近「悪堕ちきあいパンチ」ってワードがアタマを離れないんです……。
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