お前はまだきあいパンチを知らない   作:C-WEED

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前回のあらすじ
オリ主「荷物とピー子ちゃん取り返してやった。でもお使いやらされることになった」
ユウキ「やあ俺はライバル」
オリ主「俺もお前も短パン小僧さ!」
ユウキ「おい、バトルしろよ」

ハギ「アッ━と言う間にムロタウンじゃ」

そんな感じ


4

(○月△日の続き)

 もうハギさんの運転する船には乗りたくないもんだ。しかし残念。ハギさんの船で来ちゃったから帰るにしてもハギさんの船に乗る他無い。何か理由つけて乗らないって手も無くは無いけど、親切でやってくれてることだからね。

 

 さて、ムロタウンにやって来て、まず石の洞窟へ向かった。ムロジム? いやいや、取り敢えず届けるもん届けるべきでしょ。カイナにはまだ行かないけどね。

 

 嘘吐いた。本当はポケモンセンターで休憩してた。ハギさん(運転)激しすぎィ! なんてね。

 

 体調戻ってから石の洞窟へ。確かにまあ、洞窟って言うからには暗かったよ。でもさ、あんなあからさまな段差登れないとか、ないじゃん。登ったよ。きあいでさ。森暮らしを舐めちゃいけないね。

 

 ハルカちゃんは普通に洞窟探検しながら大誤算探すって。大誤算は段差登った先の部屋に居るのに。

 そう思っていたんだよ。その時は。

 

 居なかった。まさに大誤算。もしかして入れ違いかと思って一回ムロタウンに戻って話を聞いて回ったけど特に戻ってきた姿は見てないらしい。ならまだ洞窟に居る筈。

 

 そんで洞窟に戻って、今度は正規のルートを行ったわけだ。そんな訳あるまいとは思いつつも一応マッハ自転車で登る系の坂登ったりもしたよ。

 

 自転車なんて無くたって問題無い。あらゆる道具ってのは人の体の延長なんだ。自転車は人の足の延長。道具を使えば楽ってだけで、道具無しにはできないってことにはならないのさ。やはり森暮らしのきあいを舐めちゃいけない。

 

 でも居なかったんだよ大誤算。ほんと、ダイゴさんだよね。あ、逆だ。

 

 悔しくて帰りがけにケーシィとココドラを捕まえた。ココドラはボックスに送られた。

 で、早速捕まえたケーシィのテレポートでムロタウンのポケモンセンターに戻ったら、居るではないか。大誤算とハルカちゃん。エントリーコール使えよって思ったけど登録してなかった。なら仕方ないね。

 

 手紙は渡したので取り敢えず目的は達成。

 

 疲れたのでジムに行くのは明日にする。

 

━━━━━

 

「お疲れ様」

 

「ダイゴさん見つけたって教えてくれたらこんなに疲れなかったんだけどな」

 

「そんなこと言われても。先行っちゃったのはレン君じゃない。しかも道なんて無いところを」

 

「道は自分で切り開くものだよ」

 

 レン君の謎のバイタリティは今日も健在だった。でもそれに従った結果疲れてるんじゃ世話無いね。

 

「ジムは明日にするの?」

 

「うん、ハルカちゃんは?」

 

「明日、かなぁ」

 

 レン君のバトルを見ていると、常識が歪んでいく気がする。だからできれば観戦したくない。……でも、確かここのジムリーダーは格闘タイプの使い手だとか。

 格闘タイプの専門家はレン君のバトルを見てどんな反応をするんだろう。ちょっと気になる私がいる。

 

「今度はレン君からね」

 

「はいはい」

 

 

 

 そして翌日。ムロジムへ向かう。今日のレン君は心なしか生き生きしてるように見える。

 

「楽しそうだね」

 

「そりゃそうさ。だって格闘タイプのジムリーダーと戦うんだからね」

 

「レン君は格闘タイプの使い手ってわけじゃないじゃん」

 

 今のところ私がみたことあるのはヤルキモノとスバメだけ。どっちもノーマルタイプだ。

 

「確かにポケモンは使ってないね。でも、きあいパンチは格闘タイプの技だ。だから俺も立派な格闘タイプ(の技)の使い手さ」

 

「ああ、うん、そうだね」

 

 ……最近、きあいパンチっていう響きが嫌になってきている。

 

 

「ようこそチャレンジャー。ボクはムロタウンジムリーダーのトウキ! この辺りの荒波に揉まれ、暗い洞窟で修行しているのさ!」

 

「はじめましてトウキさん。俺はレン。きあいパンチ使いです」

 

 短パン小僧とは名乗らないのね。いや、それよりも、専門家相手にきあいパンチ使いなんて名乗っちゃったよ。

 

「へえ! 君もきあいパンチを使うんだね! ワンリキー? いや、マクノシタかな? ……あ、ごめんよ。バトルをすればわかることだね」

 

 スバメです。願わくばスバメとヤルキモノで終わってほしい。

 

「さぁ、始めようか! 行け! ワンリキー!」

 

「スバメ! お前のきあいを見せてやれ!」

 

 出たー。最近のレン君の定番、初手スバメだー。……駄目だわ。テンション上がらない。

 ……あれ? 何でスバメは飛んでないの?

 

「スバメか……相性はそっちが有利だね。でも……ワンリキー、地球投げだ!」

 

 地球投げ……確か、使うポケモンが育ってれば育ってるほど威力が上がる技。相性は関係なくダメージを与えてくる……ってパパが前に言っていた。

 

 レン君は指示を出さない。一体どうするつもりなの? いつもならきあいパンチって指示を出してる筈なのに。

 

 スバメがワンリキーに掴まれた。

 

「今だ!」

 

「なに!?」

 

 スバメが翼を一気に広げた。ワンリキーの拘束が外れ、ボディががら空きになる。

 

「叩き込め! きあいパンチ!」

 

 スバメはそのまま翼を振りかぶり、ワンリキーを打ち据えた。……また、拳が見えた。なんなのこの現象。

 

 ワンリキーはそのまま戦闘不能。

 

「いいね! 凄いよレン君! 作戦もそうだが、今のきあいパンチ!! 拳圧だけでビリビリ来たぜ!」

 

「恐縮です」

 

 けんあつ? 拳圧って言ったの? 風圧の間違いなんじゃ……。

 

「これは期待以上のビッグウェーブだ! 楽しくなってきた! こっちもやるぞ! アサナン、きあいパンチだ!」

 

 トウキさんの投げたボールから飛び出したアサナンは、拳を光らせながらスバメに向かって走っていく。

 

「迎え撃つぞ! きあいパンチ!」

 

 スバメも翼を広げてアサナンに向かって突っ込んでいく。いつものきあいパンチだ。

 ……待ちなさいハルカ。いつものきあいパンチって何?スバメがいつもきあいパンチを撃つなんてそもそもおかしいでしょう? 惑わされちゃいけないわ。

 

 二つの拳(?)はぶつかり合い、爆発した。

 

 パンチがぶつかり合って爆発するって何なの?

 

「ハハ、引き分けみたいだね」

 

「ですね」

 

 アサナンもスバメも目を回して倒れていた。

 

「ボクはこいつがラストだ。頼むぞ! マクノシタ!」

 

「……ケーシィ!」

 

 ケーシィかぁ。レン君捕まえてたんだ。でも……どうせきあいパンチなんでしょ?

 

「さぁ行くぞケーシィ、きあいパンチ!」

 

 知ってた。

 

━━━━━

 

 ケーシィは考える。今のこの状況を。

 これはトレーナー同士の対戦。そしてこの場にポケモンは向かいにいる太いのと自分のみ。つまり、自分が戦わなければならないのだ。

 

 現状、自分が扱える技はテレポートのみ。野生であった頃はそれで逃げれば済んだ。……逃げられなかったから今に至っている訳だが。

 恐らく、使える技がテレポートだけだからと言ってテレポートで逃げる訳にはいかない。自分のトレーナーとなったこの人物は許さないだろう。再び場に出されるのがオチだ。

 

「さぁ行くぞケーシィ、きあいパンチ!」

 

 再びケーシィは考える。今自らに下された指示について。

 パンチは知っている。自身の拳を武器として、相手を殴打することだ。

 

 だが、きあいとは……?

 

 ……わからない。

 筋肉柱(ローブシン)のきあいパンチを見た。やる気猿(ヤルキモノ)のきあいパンチを見た。(キノココ)のきあいパンチを見た。(スバメ)のきあいパンチを見た。

 しかし、それでも尚わからない。

 

 わからない以上、下手に動くことはできない。故に、ケーシィは動かない。

 

「……? マクノシタ、つっぱりだ!」

 

 太いの(マクノシタ)が此方に走ってくる。つっぱり……手のひらを使って相手を突く行為だ。特別な技術は不要。故に恐らく連続で浴びせられることになるだろう。

 このまま何もしなければ。

 

 ケーシィは逃げを選択した。ボールへ戻るのではない。バトルフィールド内で転移することでつっぱりを回避した。

 

 だが、逃げるだけでは駄目だ。攻撃をしなくては。

 

「きあいパンチだ」

 

 また、この指示だ。一体どうしろと言うのか。

 ケーシィは自分の手を見る。細い腕だ。パンチを撃つにはあまりにも細い。こんな腕で放つ拳など、目の前の太いのには効く筈がない。寧ろ、パンチを撃つことで逆に自分がダメージを負いかねない。

 

「マクノシタ、ビルドアップ!」

 

 太いの(マクノシタ)は大きく息を吸い込んで全身に力を込める。先程より、さらに力強くなった。奴の体は風船か何かか?

 

 こうなると、今の自分では一度攻撃を受けるだけでも危険。どうすれば……。

 

「ケーシィ、難しく考えなくていい。強みを活かせ」

 

 強み……? ケーシィは考える。自らの強みとは何か。

 肉体的なものに強みは存在しない。それは確信できる。

 

「きあいパンチは、突き詰めれば、気持ちの問題だ。恐れるな、考えるな、ただ、感じろ。お前の中のきあいに身を任せるんだ」

 

 ケーシィは改めて考える。自分の中のきあいとは?

 きあいに心当たりは無いが、念力なら、サイコパワーになら覚えがある。

 

 ケーシィという種は肉体が貧弱だ。故にそれを補うため、サイコパワーに特化している。

 

 もしかするとサイコパワーを使えと言うのだろうか。確かに自分の強みとはサイコパワーであろう。

 

「マクノシタ、つっぱり!」

 

 ならば、サイコパワーを使い、自らの腕力を強化して殴るか。

 いや、そんなことに意味はない。筋肉ダルマに肉弾戦を挑むなど、何の益があろうか。

 

 そうこうしている内に太いの(マクノシタ)は迫ってくる。

 

 近づかれたら、負ける。ここで、ケーシィの思考はある一点に絞られる。

 

 此方に来るな。

 

 拒絶する意思を示すように咄嗟に付き出す両手。次の瞬間、太いの(マクノシタ)が飛んでいった。

 何だ、今のは?

 

「いいぞ、ケーシィ。ナイスパンチ。今度はちゃんと溜めてからやってみろ」

 

 起き上がり、再び此方へ向かってくる太いの(マクノシタ)

 

 成る程、今のがきあいパンチか……。感覚はわかった。あとは、繰り返すだけだ。

 先程よりも強く、先程よりもはっきりと、狙いを込めて放つ。

 

 

 

 それは、新たなきあいパンチの誕生。触れない拳。肉弾戦を捨てた、きあいパンチの新たな可能性。それが生まれた瞬間であった。

 

━━━━━

 

「ボク達の負けだね。でも、凄く楽しかったよ!」

 

「こちらこそ、ありがとうございました」

 

「いいパンチだった。スバメも、ケーシィもね。またいつかバトルしよう!」

 

「はい!」

 

 二人とも、凄くいい笑顔。想像できてたけど、でも、こうなって欲しく無かった。誰か、レン君の道を正してくれる人はいないの?

 

「レン君は普段どんなトレーニングしてるんだい?」

 

「普段は、基本的に正拳突きですね。ポケモン達にもそれぞれのきあいパンチを素振りさせてます」

 

「成る程……ボクらは足腰を鍛える為にサーフィンをやってるんだ。よかったら一緒にどうだい?」

 

「いいんですか? 俺初心者ですけど」

 

「大丈夫! 勿論教えてあげるよ!」

 

「ありがとうございます! お返しと言っては何ですけど、トウキさんさえ良かったら、トウキさんのポケモンにきあいパンチお教えしますよ」

 

「本当かい!?」

 

 まあ、意気投合するのは良いことだよね。

 でも……盛り上がってる所悪いんだけど、私のジム戦は?

 

━━━━━

 

 ○月▽日 曇り

 

 ムロジム戦。とても楽しかった。

 格闘タイプのポケモンとの戦いは何て言うか、同じ土俵で戦ってる感じ、というか……とにかく楽しかった!

 

 トウキさんも凄くいい人だった。明日トレーニングをご一緒することになった。言ってみるならそう、

 

 森暮らし、海へ

 

 はい。

 まぁ、何にせよとても良い出会いだった。

 あとはカイナでクスノキさんに荷物渡したらやることは終わりだね。

 

 ハルカちゃんは微妙な顔してたけど、トレーニングを一緒にやるらしい。一体何を考えているんだ……なんちゃって。ハルカちゃんは真面目だから荷物届けるのが遅れるのが嫌なのかも。

 

 明日から別行動にするのを提案してもいいかもしれないね。

 

 そう言えば、ハルカちゃんも無事ジム戦は勝ちました。




読んで頂きありがとうございました。
エメラルドをプレイしたのは何年も前になりますが、思い出しつつ書くのは楽しいですね。

人間性の違いにより別々の道を歩み出す二人。
そんな二人に新たな試練が訪れる!
次回 お前だパンチ 第5話
ヌマクローが倒せない
ご期待ください。
明日の自分に、きあいパンチ!!

何となく想像してみたけど……なんだこの予告。

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