お前はまだきあいパンチを知らない   作:C-WEED

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前回のあらすじ
ハルカ「荷物渡したしさよなら」
アクア団「ところがぎっちょん」
ユウキ「きあいパンチ!」
ハルカ「えっ」

その頃
親父「私はきあいパンチ親父」
オリ主「おい、バトルしろよ」
サワムラー「膝中心の戦闘」
ローブシン「ワシはお前を殴らなアカン」

そんな感じ


6

「ローブシン、きあいパンチだ」

 

「私がきあいパンチを知らないだと!? よくもそんなことを! サワムラー、飛び膝蹴りだ!」

 

 ローブシンに向かって飛び掛かるサワムラー。膝がローブシンに直撃する。

 だが、ローブシンは怯まない。微動だにしない。ただ、集中している。

 

「何故だ!? 何故止められない!?」

 

「きあいがあれば止められない。それだけのことでは?」

 

「いや、そんな筈はない! ブレイズキック!」

 

 サワムラーの足が炎を纏う。ジャンプし、ローブシンへ飛び蹴りを放つ。

 ……ライダーキックみたいだ。

 しかし、そんなカッコいい技を以てしても、ローブシンは動かない。

 

「やらせはせん! やらせはせんぞ!! メガトンキック!!」

 

 続いて放つのは元祖からある蹴り技。命中率は高くないもののその威力はすてみタックルと同等。

 だがしかし、尚もローブシンは動じない。

 

「おのれぇ……」

 

「ローブシン、やれ」

 

「いや、まだだ! どんな技であれ、当たらなければどうということはない! 距離をとれサワムラー! どうやら相手のポケモンは素早さは低いぞ!」

 

 指示に従い、ローブシンから離れるサワムラー。

 しかし、ローブシンはそんなことは関係ないと言わんばかりに拳を振るう。

 その動きは確かに緩慢な物だった。力が入っているようにも見えない。

 

 

 ……だが、この技はきあいパンチなのだ。

 

 

 力は要らない。当たれば倒せるのだから。故に、最強。

 

 

 早さも要らない。振れば当たるのだから。故に、最強。

 

 

 使えば勝てる。それがタイプ最強を冠する技。そうでなくて、どうして最強なんて語ることができようか。

 

 

 端から見ればコメディか何かに見えるだろう。拳の届かない位置にいた筈が、気付けば殴り飛ばされていたのだから。

 

 一瞬の攻防? 否、これは攻防などではない。

 単なる必然。リンゴが地に落ちるように、光が当たれば影ができるように、某主人公がリーグでなかなか優勝できないように、当たり前のことが起こったに過ぎない。

 

 それが、きあいパンチであるから。理由などそれ以外にありはしない。

 

 それを受けたサワムラーが戦闘を続けられないのも、確認するまでもないことだった。

 

 

 

「ハギさん」

 

「お、帰るかね? よし、船に乗ると良い」

 

「はい、取り敢えずムロタウンに戻りましょう」

 

「あいわかった。で、どうじゃったね? 何かあったか?」

 

「今日から俺、きあいパンチ親父です」

 

「ハハハハハハ、そいつはいい!」

 

 

(○月▲日の続き)

 

 きあいパンチ親父なんて居るんだな(小並感)

 つい熱くなってローブシン出しちゃった。テヘペロ。文字でやっても何の価値もないな。まして男だ。

 

 本気できあいパンチやったら、こう、熱い気持ちが伝わったのか知らんけど、きあいパンチ親父さんが泣いていた。

 

 何かいっぱい喋ってたけど、大体言いたいことは、

 自分はきあいパンチを知らなかった。あなたこそがきあいパンチ親父を名乗るに相応しい、みたいな。

 最初は親父は嫌だって断ったけど、あんまり押すもんだから引き受けちゃったよ。まあ、貰えるもんは貰っといて損は無いよね。年取れば親父だし。

 

 あとサワムラーも貰った。エビワラーと共に修行しなおすんだとか。それに当たって自分はサワムラーの可能性を信じてやれなかったからサワムラーのトレーナーとしては相応しくない、みたいな。俺が連れてって可能性を引き出してやってくれ、と。そういうのはご自身でやるもんじゃないんですかねぇ?

 

 別に良いけどさ。

 で、ムロタウンにもどってトウキさんに挨拶し、エントリーコール登録して、ハギさんの家に戻った。

 

 下手に森に入ってまた森暮らしすることになったら困るのでキンセツを目指して移動するのは明日にしよう。

 

━━━━━

 

 ユウキ君のヌマクローの唐突なきあいパンチに衝撃を受けたものの、レン君のそれほどデタラメなものじゃなかった。

 ヌマクローが使えるのはおかしいけど、普通に手を使って撃ってたし、止めようと思えば止められたし……どうやって覚えさせたのか気になる所だけど、きあいパンチのことなんて私が気にする必要なかった。

 

 そんなこんなでキンセツシティに着いたけど、なんか思っていたより疲れてたので、一通り街を見て回るだけにした。

 

 それが昨日。

 

 今日はジムに挑む。

 ……つもりでジムの前まで来たんだけど。面識ある人が何かやってたら話し掛けるべきなのかな……? スルーしちゃ……

 

「あ、ハルカさん!」

 

 ダメでした。

 

「久し振りね、ミツル君」

 

「お久し振りです! そうだ、ハルカさんからも叔父さんに言ってくださいよ! 僕とラルトスなら大丈夫だって!」

 

「えぇ……それは私もわからないから……」

 

「そんな……そうだ! だったらハルカさん、僕とバトルして下さい! ハルカさんに勝てたら叔父さんも認めてくれるよね?」

 

「そりゃあ、そこまで言ってる上で勝てるのなら少しは信憑性がでるが……だからと言って、なぁ……」

 

「お願いします! ハルカさん!」

 

 何これ……すごく断りづらい。ジム戦前なのに……。

 いや、でも、ミツル君の叔父さんも心配だよね……ここはミツル君を止めてあげるべきかな?

 

「わかった。バトルしよう」

 

「やった! それじゃあ早速……行け! ラルトス!」

 

 行動早いなぁ……。元々病弱だったのがこうなったらそりゃあ……不安だわ。

 

 

 

 まぁ……ラルトス一体に負けるわけ無いよね。

 

「…………僕の、負け、ですね」

 

 さっきまでの勢いが嘘みたい。ちょっと罪悪感。

 

「叔父さん、僕、シダケに戻ります。ハルカさん、ありがとうございました。……やっぱり、トレーナーって凄いんですね。ただポケモンを持っていて、戦わせてるだけじゃ、ダメなんだ……」

 

「ミツル君、そんなにしょげることはないよ。これからもっともっと強くなっていけばいいじゃないか! さ、うちに帰ろう。みんな待ってるよ」

 

「はい……」

 

 ミツル君はトボトボと歩いていった。大丈夫かな?

 

「ハルカちゃん、だったね。これからジム戦だったんだろう? そんな時にすまなかった。もしよかったらシダケタウンに遊びにおいで。大したもてなしはできないだろうが、きっとミツル君、喜ぶだろう」

 

「はい、いずれ伺います」

 

 で、ミツル君の叔父さんは帰っていったんだけど、入れ替わりでエニシダさんが来た。

 

「今の勝負、見てたよ! 君はあの少年と友達なんだよね? それでも手加減せず戦い、打ち負かした……」

 

 何なんだろうこの人。お説教でもするのかな?

 

「トレーナーってのはそうでなくちゃね! 私はそんなトレーナーを見てるのが大好きなんだ! これからも応援してるよ」

 

「はあ、ありがとうございます」

 

 誉められた? そんなに嬉しくないけど。何だろう……そうだ、レン君みたいな雰囲気があるからだ! エニシダさんもレン君も変人だから……。

 

 ……

 

 さて、気を取り直してジム戦行こう。

 

━━━━━

 

 ○月▼日 曇り

 

 さて、ハギさんの家を出発して、森を抜け、カナズミを通り抜け、カナシダトンネルへ。

 さて、カナシダトンネルの中間辺りでは道が岩で塞がれている。で、その岩を壊すべく殴り続けるお兄さんが一人。聞けば向こう側に彼女さん? まぁ知らんけど、取り敢えず会いたい人が居るそうな。

 

 感動的だな。

 

 だが(そのまま殴り続けるのは)無意味だ。

 

 頑張ってる人を応援しないのは良くないよね。まして今の俺はきあいパンチ親父だからね。

 啓蒙しなくてはなるまいて。

 きあいパンチで岩を砕いて差し上げましたとも。……岩砕き親父? 岩砕き? ……知りませんな。

 

 お礼がしたいということなので向こう側にいた女の人(ミチルさん)とお兄さんに着いていった。

 

 そしたらミツル君に会った。

 おそらくハルカちゃんに負けた後なんだろう。凹んでいた。元気づける意味も込めてきあいパンチを教えてあげた。

 

 びっくりしたのは、(きあいとは何かを求め続ける)覚悟があるかって聞いたら、勿論って答えたこと。

 そんなに敗北が堪えてたんだね。

 

 きっとこれから彼は良いトレーナーになるだろう。(廃人のように)道を踏み外すことない真っ当なトレーナーにね。ORASじゃないから大丈夫だよたぶん。

 

 その後、キンセツシティへ。ジムの前を通り掛かったら丁度ハルカちゃんが出てきた。

 

 別に急いでないし俺はジム戦は明日にしよう。

 

━━━━━

 

 従姉妹のミチル姉さんとその恋人のミチオさんが連れてきたその人は、ハルカさんに負けて落ち込んでいる僕に質問を投げ掛けてきた。

 

「どうして落ち込んでいるんだい?」

 

「……僕、トレーナーのことをよくわかっていなかったんです。ただポケモンを捕まえて、戦わせるだけだと思っていた……だから、僕とラルトスならできるって……」

 

「それで?」

 

「それで、キンセツシティまで行ってジムに挑もうとして……その前に負けました。お陰で目が覚めたんですけど……」

 

「そうか」

 

 その人は、少し考える素振りを見せてから、また質問をしてきた。

 

「強くなりたいかい?」

 

「……はい。ラルトスを強くしたいし、何より、僕自身も、強く、なりたいです」

 

 そう、ラルトスだけでも、僕だけでもダメなんだ。僕達は、トレーナーとポケモンは、一緒に強くなっていかなきゃならない。

 

「君は……覚悟はあるかい?」

 

「はい、勿論です」

 

 僕達は強くなる。そのためなら、辛いことだって乗り越えて見せる。

 

「なら、良いだろう。とっておきの技を教えてあげようじゃないか」

 

「どんな技なんですか?」

 

「きあいパンチさ」

 




読んで頂きありがとうございました。

そういやランキングに載ってましたね。読んで下さってる皆さんのお陰です。今後ともよろしくお願いします。

次回 お前だパンチ 第7話
再会する二人。そして新たな謎の集団。砂漠を抜けるレンと安全策を取るハルカとの間に広がる溝。
カチヌキファミリーの長男の行方や如何に。

明日の自分に、きあいパンチ!

今回の予告は本気でイカれてると思った。夜中だからね。仕方ないね。

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