ネタバレと描写不足が多々あります。ご注意ください。
遊園地に行ってから少したった頃。
今日は…いえ、今日もわたしは
四つ葉町を宛もなくさまよっている。
わたしは今だ、アカルンどころか
タルトやシフォンさえ見付けられていない。
どうしてアカルンはわたしの声に答えてくれないのか。
他のプリキュアが目覚めていないから?
まだ眠っているから?
……
わたしが…まだ、イースだから?
「あっ」
風が、わたしの白い帽子を吹き飛ばしてしまった。
慌てて追いかける。
調度、帽子は通行人の手の中にふわりと収まった。
その人にお礼を言おうとして…
「ひさしぶり」
「あたしのこと…覚えてる?」
それは、本当に偶々だった。
今日は商店街に家のリビングに飾る
花を買いに来ていたのだ。
それもまた真の目的の為の布石なのだが…
ともかく商店街に来ていたあたしは、
風で飛ばされた白い帽子が
自分の手の中に落ちてきたのを受け止めた。
そして持ち主を探して…
あの占い館で出会った女の子と再会したのだ。
「…桃園…ラブさん…だったわね」
「うわはぁーーっ!!」
ラブがわたしに抱きついてきた。
「覚えててくれたんだね!」
忘れる筈がない。忘れられる筈がない。
「あの時の占い師さん!あたしね!
あなたにお礼言いたかっんだ」
「お礼…?」
「あの時言ってくれたでしょ?」
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「…あなたにはこれから色んな困難が
待ち受けている…でも負けないで…
その先に…
あなたには素晴らしい幸せが
訪れるわ」
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「あたしね!あの後ホントに色々あってね!
でも…さいごは幸せゲットできたよ!」
彼女の抱きしめる力が、グッと強まる。
「それもこれもあなたが励ましてくれたおかげ!
ホントにありがとう!!」
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「改めて自己紹介!
あたし、桃園ラブ!ラブって呼んで!あなたは?」
「…東せつなよ。せつなでいいわ。よろしくねラブ」
「よろしく!せつな!」
偶然ラブと遭遇して…
わたしは、ラブに四つ葉町を案内して貰っている。
彼女を巻き込みたくないのなら、
本当は直ぐにでも彼女から離れ占い館に戻るべきだ。
けれど、わたしの頭は
彼女と一緒にいる理由を次々と唱え出す。
もしかしたら
彼女といればアカルンが見つかるかもしれない。
もしかしたら
彼女といればシフォンやタルトに会えるかもしれない。
もしかしたら
彼女から離れたらウエスターが
やって来て町を襲うかもしれない。
もしかしたら
彼女をサウラーが狙っているかもしれない。
もしかしたら
もしかしたら
もしかしたら
もしかしたら
彼女にも未来の記憶が…
「せつな、どうしたの?」
ラブのキラキラした瞳がわたしの目の前に現れる。
「え、ええ。大丈夫よ。ちょっと疲れちゃったみたい」
「それじゃぁ休憩しよっか!近くに良い所があるんだよ!」
わたしが案内されたのは、
やはりというかなんというか
カオルちゃんのドーナツカフェだった。
「カオルちゃーん!…あれ?いないのかな?
けどドーナツカフェのワゴン車は残ってるし…」
ラブがワゴン車の中を覗く。
「なんやすんまへんなぁ兄弟は今買い出し中なんやぁ」
ワゴン車の運転席から
ひょいとタルトが顔を出した。
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「うわぁぁぁぁぁ!?
喋るフェレットぉぉぉぉ!!?」
「誰がフェレットや!
ワイはカワイイカワイイ妖精さんやで!」
「せつな!見た!?見た!?聞いた!?
フェレットが妖精で喋ってるよ!しかも関西弁だよぉぉぉ!」
「ラブ、落ち着いて」
「これは由緒正しいスウィーツ王国語や!ってヤバっ」
タルトは今更事態に気がついたらしい。
どうしてスウィーツ王国の長老はタルトに
プリキュアを探させようとしたのかしら?
「それにしても…まさかホントに見つかっちゃうなんてね…」
「…それで、スィーツ王国の妖精?
がどうしてカオルちゃんのドーナツカフェにいるの?」
「それはなぁ…聞くも涙語るも涙の深ぁ~い訳があるんや…」
…不味いことになった。
このままでは、ラブがプリキュアの事を知ってしまう。
ラブの事だ。きっとタルトに協力して
プリキュア探しを手伝うだろう。
そうなったらラブがプリキュアになるのも時間の問題だ。
「…こうして路頭に迷ったワイとシフォンの前にな、
兄弟が現れてワイらを救ってくれたんや」
まだ続くのかしら…?
「そんでなぁ、そもそもなんでワイらが
この世界に来たかって言うとな、伝説の…」
「えーとタルトさん?」
「お、なんや?えと…」
「せつなよ」
「せや、せつなはん?」
「あなたの話って…わたし達普通の人に
話しても大丈夫なものなの?」
これでタルトが自粛してくれれば…
「…せやな、その通りや。ありがとうせつなはん。
お二人をワイの事情に巻き込んでまうところやった」
不味い。今の言い方は不味いわ。
「何も知らない一般人を、
ワイらの過酷な運命に引きずり込むなんて
そんな事はできへん。すんまへん。
今までの話は聞かなかった事にしてくれへんか」
なんなんだコイツは。
わざとやっているのか。
まさかタルトにここまで怒りが沸くことになるとは。
そして…黙ってしまったラブを見るのがこわい。
「ーーーっ!!」
「安心してタルト!大丈夫だよ!
あたし達、もうタルトの友達だもん!
カオルちゃんだって協力してるんだし!
あたし達もなんだって協力するよ!」
「ラ…ラブはん…ワイ…ワイ…
こんな優しい言葉をかけられたのは…
兄弟に続いて2回目やーーーっ!!」
「タルトーーーーっ!!」
ラブとタルトは泣きながら暑い抱擁を交わすのであった。
「なんでよ」
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だが結論から言って、タルトは
ラブにプリキュアの話はしなかった。
ただ、ピックルンという小さな妖精を探していると語っただけ。
見直したわタルト。
やはりスウィーツ王国の人選は間違っていなかった。
ラブとわたしは、結局いつ帰るかわからない
カオルちゃんを待たず、ドーナツカフェを後にした。
そういえば、シフォンの姿がなかったけれど
ワゴンの中で寝ていたのかしら。
「おーい!美希たーん!ブッキー!」
「あら、ラブ!」
「あれ?誰だろう?」
「そちらは?」
「はじめまして。東せつなです」
過去に戻ってきてからはじめて、
わたしは美希とブッキーに接触した。
目の前にいる彼女達は、
わたしの記憶の中の彼女たちとそう変わらない。
違うところと言えば、プリキュアであるか。
そうでないか。
「ほら、占い館ってあるでしょ?
せつなはそこで占い師をやってるんだよ」
「へぇ~占い師さん」
「すごいのねぇ。同い年くらいなのに」
ラブが、わたしの事を
美希とブッキーに話しているその間、
わたしは懐かしさを感じていた。
そう、覚えている。
このあとわたしは、ラブに質問されたのだ。
「せつなのおかげで、あたしは幸せゲットできたんだよ」
「ラブちゃんの幸せ?」
「そう、あたしの幸せは、熱中できるダンスに出会えた事。
それを、友達と一緒にできる事!」
「確かにそうね」
「そーゆーのって、幸せかも」
笑い会う3人。そして。
「ねぇ、せつなは幸せ?」
ラブがわたしに笑いかける。
「せつなの幸せは、なぁに?」
当時…メビウス様の為に、メビウス様のお役にたつ。
それだけを目的として生きていたわたしは、
自分の幸せなんて考えることすらなかった。
でも、今のわたしは違う。
わたしには目指すべき目標がある。
成すべき使命がある。
掴み取りたい未来がある。
だから、今ならハッキリと言える。
「わたしの幸せはね、ラブ。
泣く人のいない、誰もが笑っていられる…
そんな未来を作ることよ」
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「せつなって…すごい」
思わぬラブの反応に、わたしは戸惑った。
何か不味い事を言ったのだろうか。
「うん。わたし、感動しちゃった」
ブッキーは何を言ってるの。
「まさかあんなにハッキリと
『泣く人のいない、誰もが笑っていられる…
そんな未来を作ること』
なんて言う人がいるなんてね」
美希が答えを教えてくれた。
ああ、あああ、あああああ。
やめて。やめて皆。
すごく恥ずかしくなってきた。
顔が、すごく熱い。
ああ、わたしはなんて恥ずかしい事を
言ったのだろう。
何も知らない、子供みたいな願い。
だけど、だって、わたしは。
本気で逃げ出そうかと思ったその時、ラブが呟いた。
「せつなって…ヒーローみたい」
わたしにとって、ラブは、キュアピーチは、
紛れもなくヒーローだった。
キュアベリーも、キュアパインも。
わたしはヒーローに憧れたのだ。
ヒーローの、幸せに向かって進むその姿に。
だから、わたしも…。
「あたし、蒼乃美希」
突然、美希が握手を求めてきた。
「え?」
「ラブの…友達の友達じゃない。
あたしはあなたと友達になりたいと思ったのよ」
「! ええ…!東せつなよ」
わたしも手を握りかえす。
「よろしく、美希!」
「よろしくねせつな!ちなみにあたしの幸せは
ママと弟の和希が幸せになることよ!」
「…お父さんはいいの?」
「わたしも…せつなさん」
「ええ!」
ブッキーとも握手を交わす。
「山吹祈里です。よろしくね!」
「東せつなよ。よろしく!」
「あ、わたしの事はブッキーって呼んでね。」
「わかったわ。ブッキー!」
「うん!せつなちゃん!」
二人で笑い会う。
「それで、ブッキーの幸せは?」
「わたしの幸せはね、人と動物さん達が
もっと仲良くできるようになったら良いなって」
「なんか美希たんもブッキーも二人ともずるーい!」
ラブが不貞腐れたように言う。
「あたしが最初にせつなと友達になったのにー」
「ラブはいいのよ」
「そうね、ラブちゃんだもん」
「その通りね」
「なによそれーーっ」
ああ、なんてあたたかな時間。
わたしは最初の目的なんてすっかり忘れて、
この幸せな時を過ごしたのだった。