本作はフレッシュプリキュア視聴済読者向け作品ですので
ネタバレと描写不足が多々あります。ご注意ください。
「これは旨い!何と言う食べ物なんだ!?」
「たこ焼きですよ」
「これは!?」
「焼きそばっス」
俺は、中坊トリオと文化祭をうろついていた。
お化け屋敷では残念な思いを…いやいや、あれは忘れよう。
あれに固執するのはダメな気がする。
「隼人さんってずっと海外に居たんですよね。
たこ焼きも焼きそばもはじめてなんですか」
「ぬ?あ、ああそうだな」
そうだった。
イースが言うには俺は、
ずっと海外に住んでいたが最近日本にやって来た
という設定になっているんだった。
「なぁ、お前ら。
俺は、今日しか美希さんと文化祭を回るチャンスは無い。
なぜなら美希さんは、明日は来ないからだ」
沢が静かに話し出す。
四ツ葉中学の文化祭は三日行われる。
在学生だけの一日目、
学外からお客さんが入る二日目、
後夜祭がある三日目だ。
今日は二日目。
土曜日の比較的客が少ない日。
そして、ラブや大輔、沢と御子柴が唯一午後がフリーの日だった。
明日はラブが働き詰めになる為、美希と祈里は来ないだろう。
「俺は、美希さんと二人で文化祭を回りたい。」
「遊園地の時と同じ…という事ですね」
「…仕方ねぇ」
3人の利害関係は一致する。
「そこで、隼人さん!」
「ぬ?なんだ」
たこ焼きを頬張り焼そばをすするウエスターが話に入る。
「俺は、美希さんを誘い二人で文化祭を回ります」
これは、願望である。
「僕は山吹さんを」
「俺は…ラブです」
「そして隼人さんには、東を誘って貰いたいんス!」
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ウエスター達がデートの作戦会議をしているなんて露知らず、
イース達は文化祭を楽しんでいた。
「そーいえばさ、せつなってアレ見たことある?」
「アレ?」
「なんの話?」
ラブの言葉に美希も反応する。
「ほら、少し前から四つ葉町に怪物が現れる様になったじゃん?」
心臓が止まるかと思った。
ラブの口からその話が出るとは。
いえ、むしろ出ない方がおかしいのだが。
「あっわたしも見たことあるよ。男の人と女の人が一緒にいたの」
ブッキーも加わる。
「あたしもあるわ。怪物が現れて…
その場の人を脅かすだけ脅かしたら居なくなったのよ」
あわわわわ…このままだと、わたしが死ぬわ。心労で。
「でも、あの怪物であまり被害って聞かないよね」
良かった。町の人達にはその程度の認識らしい。
「商店街じゃ、あの怪物をマスコットキャラクターに
できないかって話も出てるらしいよ」
いや、それはお気楽過ぎないだろうか。
「それで、どうしてその話を?」
わたしは緊張がバレないよう気を付けながらラブに聞いた。
「あの怪物って人の多い所に現れて
怖がらせるだけ怖がらせて帰っていくでしょ?
だから、うちの文化祭にも来ないかなって思って。
良い客寄せになりそうだし!」
「ら、楽観視しすぎじゃないかしら?それなりに大きな怪物なんでしょう?」
「あれ?せつなも見たことあるの?」
「いやっ、いえ、ないのだけど!」
思った以上に恐れられていないようだが、これはこれで問題である。
わたしの町に被害を与えないという努力が実ったのか…
いや、この町の人達が剛胆すぎるのか…?
「あたしも最初はスゴく怖いと思ってたんだけどね。
何度か会ったら、そんな悪い人達でも無いんじゃないかなって…
あの人たちにも何か事情があって、話せば友達になれるかもしれないじゃん?」
この娘は…
1度殺されかけたというのに…
「…まったく、ラブらしいって言うか…」
「けど、もしそうなったら素敵だね」
美希とブッキーが答えた。
「あはは、なんか、暗い話になっちゃった!」
「ホントよ。今は楽しい文化祭中なのに」
「ごめーん美希たん!」
「せつなちゃん、どうかした?」
「い、いえ、なんでもないわ」
ラブ、美希、ブッキーの背中を見る。
…ああ、わたしはこの娘達に、何度救われたのだろうか。
皆の為なら、わたしはいくらだって頑張れる。
そんな気になれた。
「それはそれとして、今日は楽しまなくっちゃ」
「せつなーはやくはやく!」
「置いてくわよー」
「せつなちゃーん」
「今いくわ!」
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「お、いたいた。イー…せつな!」
わたし、ラブ、美希、ブッキーの四人で文化祭を回っていた所に、
ウエスターが駆け足でやって来た。
「?どうかしたの?」
「あ、いや、その、それがだな」
「?」
やけに歯切れが悪い。
「(なぜだ!?ちょいと誘って二人きりになるだけなのに、妙に言いづらいぞ!?)」
「…どうしたの?」
「あ、いや、ちょっと待ってろ!」
そう言うとウエスターは、来た道を戻り校舎の角へ曲がって行った。
「隼人さん、どうかしたの?」
「いや…わからないわ」
「何してんスか隼人さん!」
作戦失敗したウエスターに沢が詰め寄る。
「いや、すまん。なんか言いづらくて…」
「頼みますよ!東と桃園は比較的呼び出すのは簡単なんですから!」
「なに!?全然簡単じゃなかったぞ」
「隼人さんと大輔なら簡単にいきますって!」
「ちょっと待て、俺とラブは…」
「ほらほら。じゃあ次は大輔君が桃園さんを離脱させて来てください!」
そう言って御子柴は大輔を校舎の角から押し出した。
「あれ?大輔」
「あ、お、よう、ラブ」
ウエスターの次は今度は大輔がやって来た。
「あれ?一人でなにしてんの?」
「あ、いや、これは…そう!ラブ!実行委員の事で話があるんだよ!」
「え?なになに?」
「あ、いや、ちょっとここでは…い、一旦教室に戻るぞ!」
そう言って大輔はラブの手を掴んで教室へ戻って行った。
「ちょっと~っ」
……残されるわたし達。
「なに、今の?」
「ラブちゃん連れてかれちゃった」
「なんでよ」
「大輔の奴!中々のやるじゃねぇか!」
「大胆な行動に出ましたね!」
「やるな少年!俺も負けてられん!」
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「せつな!」
三人になったわたし達のところに、またウエスターがやって来た。
今度は何やら気合が入っている。
「今度はなに?」
「俺と二人で回るぞ!一緒に来い!」
そう言ってウエスターはわたしの手を掴むと、強引に連れ出してしまった。
「ちょ、ちょ、なにするのよ!」
慌てて止めようとするも、ウエスターは人込みをぬって歩いていく。
むしろ顔が熱くて早く人込みの中から抜け出したくなったわたしは、
率先して彼の後に続いた。
「きゃ~っブッキー、今の見た!?」
「隼人さん、大胆ねぇ」
少し赤くなる二人。
しかし、ラブに続いてせつなまで連れていかれてしまった。
「美希ちゃん、わたし達どうしよっか」
「あ、調度今から…」
「美希さん!」
「や、山吹さん!」
二人の前に、見計らった様に沢裕喜と御子柴健人が現れる。
「あら、裕喜くん?」
「健人くん?」
「あ、あの、今からぼ、僕達と一緒に回りませんか?」
「え?あ、その…」
祈里は助けを求めるように美希を見る。
「あら、良いんじゃないブッキー?」
「美希ちゃん!?」
「調度、他のメンバーも来たしね」
「へ?」
「ほ、他のメンバー?」
沢と御子柴が間抜けな声を出す。
「人込みの中で大丈夫だった?」
「大丈夫だよ、姉さん」
「いやーめんごめんご!おじさん人気すぎて人が集まっちゃって。
ま、今日はドーナツ無いから皆すぐに帰っちゃったけどね!ぐはっ!」
そこにいたのは美希の弟の和希と、大きなバックを肩に下げたカオルちゃん。
以前ドーナツカフェに集まった時に、ラブが誘っていたのだ。
「さ、皆集まった事だし、ラブ達が戻ってくるまで皆で回りましょ!」
そう言って美希は和希の腕に抱きついた。
「そ…」
「そんな…」
こうして、沢と御子柴の『Wデート後別々に回ろう大作戦』
は失敗に終わったのだった。
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「ちょっと!どこまで行くのよウエスター!」
ウエスターに強引に連れ出されて、
わたしは人の少ない校舎裏まで連れられてしまった。
ウエスターは、何も言わない。
ただ前を歩いている。
どんどん人の数が減っていく。
心臓の鼓動が早くなってきた。
背中に冷や汗をかく。
握られた手が、――いつの間にか手を繋いでいた――握られた手が、汗ばんで…熱い。
これは、恐怖?
…それにしては、どこか、暖かい。
「ウエ…スター……?」
突然、ウエスターが立ち止まった。
ここからでは、彼の顔は見えない。
「イース…」
彼に名前を呼ばれた。
ただそれだけなのに、体が緊張する。
顔が、いや、全身が熱い。
彼の手が肩に置かれ、校舎の壁際にまで追い詰められる。
「ちょ、ウエ、スター。その、あの、これは…」
顔が熱い。目が回る。口が回らない。
顔が、近い、気が、する。
「なぁ、イース。あれって―――」
イースを連れ出して、俺は人の数が少ない所を目指した。
中坊トリオの話ではバラバラになった後は会わない方が良いらしいからな。
「ちょっと!どこまで行くのよウエスター!」
イースに話しかけられる。
だが、なぜだろう。イースの顔が見れん。
とてもじゃないが見てられん。
顔が熱い。なんだこれは。
俺はイースの声を無視し、最早自分でもよくわからないがとりあえず歩き続けた。
そこで―――人を見つけた。
遠目に見えるがあの人は……
「イース…」
イースに声をかける。
今、あの人に見つかるのは不味い…そんな気がした。
イースの肩を掴み、壁際にまで後退し隠れる。
あれ?なんか顔が赤いが大丈夫か、イース?
「なぁ、イース。あれって―――」
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「大輔?教室についたよ?」
「へっ!?」
せっかくあたしが美希たんとブッキー、せつな達と一緒に
文化祭を回っていたのに、大輔に呼び出されてしまった。
まぁ、実行委員の話なら仕方ないけど。
そう思い、実行委員が会議に使う教室まで戻って来たのだ。
生徒は誰も居ないみたい。
だが、大輔は、なぜか視線をうろうろさせて黙ってしまった。
「どうしたの?」
「あ、いや、その、だな」
まったく、早く皆の所に戻りたいのに。
「ちょっと大輔!用がないならあたし、美希たん達の所に戻るよ!」
「は!?ちょ、ちょっと待てよ!ラブ!」
「だったら、はやく話してよ!急いでるんだから!」
「おま、その言い方はねーんじゃねーの!?」
「大輔がもたもたしてるからでしょ!」
売り言葉に買い言葉。
いつものような言葉の応酬。
「君達。お取り込み中のところ、悪いんだけどね。」
もう!大輔のせいで、怒られちゃったじゃん!
あたし達に声をかけたのは、鋭い目をした長髪の男性。
そこで、おかしな事に気づく。
あたしと大輔と、その人以外、周囲から音が…人の気配が消えていた。
「え…」
「な、なんだこれ!?」
隣で大輔が声をあげる。
「君達に恨みは無いんだがね…これも仕事なんだ。」
そう言って、男の人が両手を擦り合わせる。
「スイッチ・オーバー」
「我が名はサウラー。
ラビリンス総統、メビウス様が下部。
ナケワメーケ、我に使えよ」