ネタバレと描写不足が多々あります。ご注意ください。
「ナーーケワメーーケーーー!!ケシケシ!」
あたしと大輔、それとサウラーと名のった男性…
その三人しかいなかった筈の教室に、突然黒板の化け物が現れた。
「な、なにこれ!?」
「逃げるぞ!ラブ!」
大輔に手を引かれ、あたしは教室を出る。
「「へ?」」
出たそこは、来客で賑わう普通の文化祭中の学校。
「…あれ?」
「な、なんだったんだ、今の…」
二人で同じ夢でも見てたのかな?
顔を見合わせたあたし達は、今出たばかりの教室に振り替えって――
破壊音と共に教室の扉が弾き飛ぶ。
さきほど現れた怪物が廊下に飛び出して来たのだ。
慣れていないのか、怪物は飛び出した勢いを殺せず向かいの廊下の壁まで突っ込んだ。
あたし達もその余波で吹き飛ばされる。
「ラブ!」
大輔があたしを庇ってくれた。
「だ、大丈夫か!?」
「う、うん、でも――」
「キャーーーーーッ!!」
誰の悲鳴だろうか。
学内は、恐怖と混乱に包まれていた。
「な、なんだ!?」「撮影かなんかか?」「それにしては…」
「うわぁ!!」「先生を呼べ!」「逃げろ!!」
至るところで叫び声があがる。
「ナーーーケワメーーーケーーー!ケシケシ!!」
あたし達の向かいに倒れていた怪物が、ガラガラと瓦礫を押しのけて立ち上がった。
「ラブ!俺達も逃げるぞ!」
「で、でも…」
あの怪物は、あたし達を狙っている。
校内を破壊しながら、こちらへ向かってくるのが見える。
「知るかそんなの!」
大輔が、あたしの手を引っ張って逃げ出した。
多くの人が逃げた方向とは、別の道へ走る。
「やれやれ。面倒な事は嫌いなんだけどね」
少年と少女を追って、サウラーは呟いた。
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祈里は、美希とその弟の和希、
大きなバックを肩に下げたカオルちゃんと共に文化祭を回っていた。
「ちょっと姉さん…恥ずかしいよ」
「いいじゃない。減るもんでも無いんだし」
美希は和希の腕に抱き付いており、端から見ればまるで恋人の様だった。
その光景に耐えられず、沢と御子柴の姿は既にない。
「カオルちゃん、その荷物はなぁに?」
祈里は気になっていた事を口に出す。
「あぁ、これ?」
そう言ってカオルちゃんは肩に下げたバッグのチャックを開く。
「…ワイや!」
その中から、ひょっこりとタルトが顔を出した。
「た、たた、タルト、さん!?」
苦手なフェレットが突然目の前に現れて、腰を抜かす祈里。
「あらら。ブッキーを怖がらせるにはやっぱりフェレットが一番ね」
「み、美希ちゃん!」
「誰がフェレットや!ワイはカワイイカワイイ妖精…もが!!」
美希がタルトの口を抑える。
「ちょっと!大きな声出さないでよ!」
「す、すんまへん」
こんな人の多い所で、喋るフェレットが見つかっていいはずがない。
フェレットとじゃれ合う姉を不思議そうに見つめる和希。
「姉さん?どうかしたの?」
「な、なんでもないのよー」
「シフォンちゃんは一緒じゃないの?」
祈里が和希にばれないよう、声を落としてタルトに語り掛ける。
今から数週間前、美希と祈里はラブの紹介のもと
カオルちゃんのドーナツカフェでタルトと出会っており、
その時タルトは皆にシフォンを紹介していたのだ。
「そういえば、あの時はせつなは居なかったわね」
「そういやそうでんな。なんやシフォンとせつなはんはタイミングがあいませんなぁ」
「それでそのシフォンは?」
「バッグの中で眠っとりますわ」
カオルちゃんのバックの中でスースーと寝息を立てているシフォン。
「まぁシフォンにはとりあえず眠ってて貰いますわ。
前みたいに騒動起こされても困るからなぁ…」
「あれは…」
「大変だったわね…」
遠くを見つめるタルトと女子二人。
あの時はカオルちゃんのおかげでなんとかなったが…
こんなところでシフォンのイタズラが起こったら一大事である。
いやぁあの時は本当に大変だったなぁ!
「あ、いっけね。おじさん、学校の人に用があるから皆で先に回っておいて。
ま、先に帰っても良いんだけどね。ぐはっ!」
そう言ってカオルちゃんは、祈里にバッグを押し付けてどこかへ行ってしまった。
「なっ…急にどないしたんや、兄弟?」
「さ、さぁ…」
「み、美希ちゃ~ん…」
祈里が、苦手なフェレットそっくりなタルトと近づきすぎて、
涙目で美希に助けを求める。
「はいはい、しょうがないわねぇ」
美希が代わりにタルトとシフォンの入ったバッグを肩に下げる。
「な、なんやそこまでされるとえらい傷つくわ…」
「ご、ごめんなさい…」
その時
「キャーーーーーッ!!」
大きな破壊音と共に、学内に叫び声が広がった。
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「な、なんや!?」
「わからないわ!」
「ね、姉さん!?」
「和希!一旦学校から出るわよ!ブッキー!」
文化祭が、パニックに包まる。
逃げ惑う人々。
その中でも美希は冷静さを失わず、和希とブッキーを避難させる。
校舎を抜け運動場へと出たところで、美希は弟の和希に駆け寄った。
「走っちゃったけど、大丈夫?」
和希は、生まれながらに体が弱い。
普通の人なら多少の無理でも、和希にとっては多大な無理だ。
「だ、大丈夫だよ、姉さん。」
息は荒いが、顔色は悪くない。
その事で胸を撫で下ろす美希。
「それにしても、一体何が起こったの?」
祈里は校舎を見ながら言う。
「わ、わからへん…でも、なんやごっつ嫌な感じがするわ…」
その言葉にタルトが答える。
「ラブ…」
「せつなちゃん…」
「きゅあああああああああああ!!」
「ど、どないしたんやシフォン!」
突然シフォンが泣き出した。
いや、この状況では無理もないだろうが。
祈里が慌ててシフォンを抱きあげあやしはじめる。
「…ブッキー、あなたはここでシフォンと和希をお願い」
「美希ちゃん!?」
「…どうするつもりだい?姉さん」
美希は二人に微笑みかける。
「…ラブは、まだ学校に残ってるだろうから。
ラブの事だから逃げ遅れた人を非難させてるかもだし…」
美希は、あの何が起こっているかわからない校舎に向かうと言っているのだ。
それを聞いて黙っていられるはずもない。
「ダメよ美希ちゃん!だったらわたしも…!」
声を荒げる祈里の手を取り、美希は祈里の目を見つめる。
「ブッキー。あなたには、和希を見ていて欲しいの。
こんな時、こんなことを頼めるのはブッキーだけだから」
「……ズルいよ美希ちゃん」
和希は知っていた。自分の姉はやると決めた事はやる。そんな人だ。
「姉さん…無理はしないでね」
「大丈夫よ。ラブを見付けたら引きずってでもここまで逃げてくるから」
そう言って、美希は校舎に向かって走り出す。
「行くわよタルト!」
「わ、ワイも!?いや、せやな!ほなブッキーはん!シフォンの事頼みまっせ!」
タルトも慌てて美希を追い掛ける。
「美希ちゃん…タルトさん…」
「……」
それを見送るしかない、祈里と和希。
祈里は泣き止まないシフォンを抱き締めた。
「あの…祈里さん…その…今フェレットが喋ってたような…それにその人形?は…」
「あ…」
「…いや…き、気にしない事にします」
「あ、ありがとう和希くん…」
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「なぁ、イース。あれって―――」
人気の少ない校舎裏の壁際――そこでわたしは、ウエスターの声で我にかえる。
「え!?え、な、なに!?」
「あっそんな大声出すな!」
慌ててウエスターがわたしを止めるも、既に遅かった。
「あら、イースちゃんにウエスターくんじゃない」
女性が一人、わたしとウエスターの方に向かって歩いてくる。
わたしはその顔に見覚えがる。ウエスターもだろう。
でも、そんな、バカな。ありえない。
どうして。
どうして。
どうして。
「…どうして、…あなたがここに居るの…ノーザ!!」
管理国家ラビリンスの最高幹部、ノーザ。
クラインがメビウス様の右腕なら、彼女は左腕…
その正体は、メビウス様が自身の護衛用に作り出した人工生命体。
サウラーの作戦内容や行動を悪賢いと言うなら、
彼女は狡猾…いえ、そんなものじゃない。
外道とすら言ってもいいのかもしれない。
それほどまでに恐ろしい相手…
その彼女が、四つ葉中学の文化祭に来ている。
それは、本来ならあり得ない事だ。
わたしの以前の…過去の記憶では、彼女が四ツ葉町にやって来たのは
もっと先…わたしが、キュアパッションになったよりもっと後の事だ。
それなのに、そのはずなのに、彼女は今ここにいる。
「どうしたの?イースちゃん。そんなに驚いて」
ノーザがわたしの頬を撫でる。
全身から、嫌な汗が吹き出す。
「なぜ、ノーザがここに?」
ウエスターが、呟くように問いを漏らした。
「ノーザ『さん』よ。ウエスターくん」
「…ッ、ノーザ、さん。ノーザさんが、どうしてここに?」
「フフッ…なにか、可笑しな事がある?
私もあなた達と同じく、インフィニティを手に入れる為にここに来た。それだけよ」
ノーザは、クスクスと笑いながら、ウエスターに答える。
「…メビウス様は、俺達だけでは不幸のゲージ集めは頼りない…
…そう、結論されたのか」
ウエスターが悔しそうに呟く。
「不幸の、ゲージ集め?」
それをノーザは、とても面白い事を聞いたかのように笑い出した。
「ウエスターくんったら…そんなもの、もう要らないのよ」
ウエスターが素っ頓狂な声をあげた。
わたしは動かない。いえ、動けないでいる。
ゾワゾワと、身体中に鳥肌が立っていく。
「な!?なぜだ!?インフィニティは、不幸のゲージが不幸で一杯になった時、
その姿を現す――まだその姿を誰も知らないはずだ!」
そうだ。
ウエスターの言うとおり、まだ誰もメビウス様が全平行世界の支配の為に求める
無限のメモリー『インフィニティ』の正体…
スィーツ王国の妖精『シフォン』の正体を知らないはずだ。
過去の記憶…いえ、この場合は未来の記憶をもつ、わたし以外は…
ウエスターが掴みかからんばかりにノーザに詰め寄るが、
ノーザは涙を堪えて笑っている。
「不幸のゲージを集めなくていいのよ?ウエスターくん。
その理由なんて簡単でしょう?今あなたが言ったじゃない」
「なに!?ど、どういうことだ?」
たっぷり間をおいて、ノーザが答えた。
「だってメビウス様は、インフィニティの正体を知っていらっしゃるんですもの。
インフィニティはこの世界で、『シフォン』と呼ばれているわ」
いよいよ物語の核心に迫ってきました。
ここからは作者の独自解釈によって物語は進んでいきます。(今更)
ご注意ください。
正直プロットとか何もないんで作者自身今後の展開がわかりません。
プリキュアは出てくるんですかねぇ。