東方与太噺   作:ノリさん

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テスト? 大爆発だー ダダダ これで結果をお察しください、どうもノリさんです。

やっと俺にも夏休みが・・・・、と思っても部活やら課題やらで私に休みが存在するのか・・・・?それでもペースを落とさずなるべく書ける時に書いて生きたいと思います。これを書くのは楽しかったりするのでね。
と言う訳で、夏休みも東方与太噺をよろしくね‼

そんな感じで本編に行きたいのですが・・・・今回は事前に知識があた方がお楽しみいただける描写があるのでちょっとキーワード?みたいなものを書いていきますね。

・天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも

・芝浜 落語

この2つの知識をいれて頂けると一発で楽しんで貰えると思います。
芝浜は最低限オチの事を調べて貰えたらお噺がわかり易いと思います。

一応後書きで解説のような物はさせて頂くつもりですが、人によってさまざまな読み方があると思いますので後書きの解説を読んだ後に「あらかじめ言っといてくれ」って人用に書いておきました。

例えば先に調べて読む良し、まず調べずに読んでから後書きの解説のような物を読んでから読み返すも良し。
今例を挙げた以外にも人によって様々な楽しみ方があると思いますのでお好きなやり方で楽しんで貰えれば幸いです。

それでは本編へどうぞ


反転芝浜 ~ 鬼と男とときどき酒と ~

つまみ用の買い出しも終わり気が付けば19時になっていたが、今から風呂入って一杯ひっかけるとなれば丁度いい時間だろう。

 

何はともあれまずは風呂に入って、とっておきのお酒をあけてちびちび飲もう‼

 

 

*****

 

いい湯だった。俺熱いのよりぬるいのに浸かってる派なんだけど世の中どっち派が多いんだろうか?

実際はどうなのかなぁ。やっぱ熱い派が多いのか?

 

熱いのが苦手俺は地底の温泉施設の風呂は基本的に入りにいかない。

あそこのお湯ってかなり熱いんだよね。

あそこに入った時は元々長湯するようなタイプじゃないけど入って30秒もたたずに上がってしまった。

なので俺は家にある風呂にしか基本的に入らない。

 

 

さて、これから飲むとなるとそのまま寝落ちしても大丈夫なように、鍵はしっかりかけてと・・・・。

なぜか鍵をかけたはずの部屋に置いてあった俺の大好きなあっちの世界のお酒があるので、それを今日のメインにして飲むとしよう。

外の世界の物を入手出来て、鍵かけた俺の家に荷物置けるなんて1人しか思いつかない。

 

確か幻想郷に来て1週間くらいの1人になった時だったかな。

 

「鬼〇ろし飲みたいなぁ」

 

と呟いた事があったが、わざわざ用意してくれたのだろうか?

暇なのかな?と思ったのは仕方のない事だと思うんだ。

って言うか覗いてたとしたら趣味悪くないか?こんな男を見て何が面白いんだか。

 

「さてとりあえずまずは一杯やりますかね」

 

散々言っといてなんだがくれるもんは貰う。

鬼〇ろしは辛口寄りの日本酒だ。あまり多く酒を飲むわけではないけど俺はこれがお気に入りだ。

軽く飲むにはちょうどいい味だし、何より安かった。

近所にあったスーパーでは鬼ころしがいいタイミングで安く売ってたりしたからよく飲むようになっていく内にお気に入りの酒となった。

俺の場合、食費とか本代で結構なお金使ったりもあったから、最初は節約のためにではあったが今では愛飲している。

 

冷やしたグラスとに氷を入れて鬼〇ろし3:水7の割合でよく飲む。

正しいのかわからないけど一番しっくりくる飲みかたがこうだった。

 

「~~~っぷはぁ、何か沁みるなぁぁぁ‼」

 

最初につまみはキュウリに一本漬けに枝豆だ。もう今晩これでいいかなぁ。

 

さて、つまみながら最近忘れがちな俺の能力についてちょっと考えよう。

遊び・童謡を力に変える程度の能力(仮名)って感じの能力なのだがいまいちしっくりといていない。

何でかって言うと、遊びや童謡と言ってもそれなら何でも発動って訳じゃないからだ。

今の所、力を発動しているのは

 

〈童謡・わらべ歌〉

 

かごめかごめ → 対象の後ろ(死角)に立つ

とおりゃんせ → 対象AとBを選択し、Aは俺よりBに近づけなくなる。もし近づいた場合は強制的に俺より離れた位置に移動する

はないちもんめ → 対象の能力等、何か1つだけ使用権を俺に移す

ほたるこい → 対象(複数選択可)の注意を全て俺自身に向けさせる

 

〈遊び〉

 

鬼ごっこ → 俺が鬼役となり対象(複数選択可)を設定し、どこに隠れたり逃げたりしても場所が分かり追跡可能になる

目隠しだ~れだ → 対象の目を手で塞ぐことで何も見えなくなる。副次的効果な使い方としてサードアイのような目に能力がある場合はそれも封じる事が出来る

落とし穴 → 場所と規模と深さを設定したらすぐに落とし穴が出来る。大きめの鬼が入るような穴なら同時に5つまで作成可能。大きい物を作るほど同時に作れる落とし穴の数は減る。ふんだら落ちるそれだけ。解除したら何事もなかったかのように穴は元通りになる

だるまさんが転んだ → 選んだ対象(複数選択可)に俺が背中を向けていると対象は動けなくなる。副次的効果として発動タイプの能力の使用を封じる事も可能。

 

〈行使後) 

解除と思う、または言えば解除すると決めた物はすべて解除され元通りになる。

 

 

 

・・・こんな所か・・・・・。う~ん、紙に書いて整理してみたけど、なんか決して弱いわけじゃないけど強いと言っても良い物か・・・・。

俺の能力の発動できる対象にもちょっとした条件のような物がある。

 

まず、俺よりも高い身体能力及びそれに準ずる力をを持っている対象には能力の行使が出来ない。ただ萃香さんとの手合わせ以降、かなり俺自体の身体能力が上がって身体能力だけなら萃香さんより少し上くらいになったので、それ以上の人には行使できないという事になる。

 

そして、歌の方はキーとなる部分の歌詞を口ずさめば能力は発動するが、省略した場合解除後に時間経過伴って疲れが襲う。感覚的には15分能力行使を続けて3キロ走を全力で走ったくらいなので、単体で行使するだけなら意外と余裕はある。

 

あと童謡とかと遊びは同時に1つずつ掛け合わせて使う事は出来る。相性の良し悪しはあるけどね。

例えば かごめかごめ と だ~れだ は非常に相性がいい。反対に はないちもんめ と だるまさんが転んだ は正直使い道がなかなかなさそうな組み合わせだ。正直だるまさん転んだで動きと能力を封じているのでわざわざ能力を奪わなくても、この身体能力を使って打撃を加えた方が楽だし早く決着を付けられそうだからだ。

 

 

「しっかし、こうなると身体能力の急成長の事はますます謎だな・・・」

「まぁそう難しく考えるなよ‼ほらっ、これを飲め‼私はお前が飲んだっぽいそっちをもらうぞ‼」

「はぁ、いただきます。そしてどうぞ・・・・っふぅ美味いな。って、伊吹さん⁉鍵ちゃんと締めたのに何でここに⁉」

「お前、私の能力忘れたのか?」

「え~~~~と、え~~~~と~~~~~」

「手合わせの時に言ったよな⁉」

「あぁ‼密と疎を操る程度の能力でしたっけ?」

「そうだ‼その能力を持った私にこんな部屋は入れない道理はない‼そしてお酒を飲んでいるところに私がいない訳がないだろう‼」

 

そんなにぺったんこな胸張られても、ちびっ子が自慢しているようにしか見えないぞ?

はい訂正。鍵かけてても荷物置ける点においては2人だったわ。

つーか威張って言ってるけど、完全不法侵入だよね。紫さんと言いこの人と言い人の家って概念があるのか?

って言うかそんな人らがあっさり入ってくるなら鍵意味ないじゃん。セキュリティの意味ないんだな‼

 

「悪くないない酒だが、私の酒の方が美味いな‼」

「そりゃあねぇ。この酒って俺があっちの世界にいた時の安くて多く飲める中でいい味してるって感じで選んでたお酒でしたからね。伊吹さんのお酒って星熊さんの程じゃないですけど美味しいお酒じゃないですか」

「思い出の酒か・・・。ちなみになんてお酒だ?」

「鬼〇ろしですねぇ~」

「え?」

「だから、鬼〇ろしですって」

「何て名前のお酒だ‼縁起でもないな‼」

「この程度じゃ死なないでしょうに」

「そういう問題じゃないだろ!」

「まぁ、飲めりゃいいんじゃないですか?」

「・・・まぁ、そうだな‼とりあえずつまみはないのか?」

 

う~ん、まぁこのチョ・・・・表情の豊かさはもう突っ込まないほうが良いだろうね

 

「えぇ、いきなり来てつまみを要求しますか・・・・」

「ないならないで酒飲み散らかすけど良いのか~~~」

「わかりましたよ。丁度作ろうと思ってたところですから伊吹さんの分もまとめて作りますよ」

「よく言った‼私は肉が良いな‼」

 

えぇ、酒の肴ねだった側がまさかのリクエストかよ。

何つーかある意味気持ちの良い性格してんなぁ。

今日肉の肴の予定だったからいいけどさ。多く買ってきておいてよかった。

 

「何作るんだ?」

「味噌肉野菜炒めですよ。あと唐揚げも足しますかね。俺はもっぱらこれで飲んでましたから」

「そうか‼それなら期待大だな‼とりあえず飲んで私は待つぞ」

「ご自由にどうぞ」

「って何だこれ?」

「ん?あぁ、それ今まで発動した能力を紙に書いてまとめてみたんですよ」

「あぁ、手合わせしてくれって頼まれた時はびっくりしたよ」

「いやぁ、あの時は上がった身体能力に驚いて検証しないとって思ったので、その時近くにいた伊吹さんに頼んだんですよね」

「勢いにしたって普通鬼の私に頼まないと思うけど?」

「いや・・・・、だってここらじゃ人間で強い人なんていないじゃないですか・・・・・」

「まぁ、確かにここら辺には基本人間なんていないよな」

「だから強くて知り合いの人ってなった時に萃香さんが突撃してきたんで・・・」

「あ~?そうだったっけ?」

「そうですよ。開店準備で働きすぎってさとりさんに怒られて、1日休みになってる時に飲むぞって来たのそっちじゃないですか」

「おぉそう言えばそうだったな‼すっかり忘れてだぞ」

「でしょうねぇ。あの日手合わせした後に朝まで飲んだじゃないですか。伊吹さん、俺起こされた頃にはいなかったから驚くし、起こされたパルスィさんは怒ってるしでえらい怖い目に合ったんですよ」

「そうだったのか‼隠れて見ていても良かったなぁ。でもなんでパルスィが怒ってたんだ?」

「それは・・・、店の暖簾とかそういった物を調達するのに女性の意見を聞いたほうが良いと思って誘ってみたらオーケーしてくれたんで頼んだんですけど・・・・・飲み過ぎで寝過ごしたみたいで・・・」

「あぁ、それは怒るわ。お前、女との約束の遅刻はいけないよなぁ」

「その遅刻の原因の片棒担いでるのに・・・・。まぁいいや。まぁその後ごはんご馳走したら許してくれたんでいいですけどね」

「・・・・そっか。ところでまだできないのかぁ」

「もう少し待ってくださいよ。揚げもんって意外と手間かかるんですよね」

「そっかぁ、料理しないからわからないんだよなぁ」

「何かしら作れるようになったほうが良いんじゃないですか?意中の人が出来た時になってから焦っても遅いですし」

「ぶっ‼なんでいきなりそうなるんだ⁉」

「なんとなく。女性は胃袋で男をつかめって言葉もあったくらいですし割とそうなのかなーと思ったから。伊吹さんちっさいけど美人ですしモテそうだからつい・・・」

 

正直色ボケしてる大学生にはこういった返ししとけば大丈夫っだったから、そのノリでつい言ってしまった。

つーか、俺にわざわざ関わってくるのはあの色ボケ男一人しかいない。

 

「そうか・・・・。やっぱりお前も料理できる女のほうが良いのか?」

「出来るならできるでいいと思いますしできないならできないで良いんじゃないですか?出来なくても覚えたいって言うなら俺が教えればいいだけですし」

「そうか・・・」

「伊吹さんもしかして・・・」

「な!なんだよ」

「意中の人でも居るんですか・・・?」

「ち、違うわ、アホ‼自分で酒の肴を作れればいいかな~なんて思っただけだ‼」

「そうですか。それなら今度いくつかレシピお教えしましょうか?」

「お?いいのか?」

「簡単なの幾つかありますから大丈夫ですよ」

「そうか。ぞれじゃあ今度頼むぞ」

「はい。っとできましたよ」

「なぁせっかく休日に2人で飲むんだ。カウンターじゃなくて、個室の方で飲もうぜ。もしくはお前の部屋でもいいけど」

「俺の部屋は勘弁してください。個室なら掃除してあるんでいいですけど。じゃ、いくつか酒とかまとめて持ってくんで先に個室入ってていいんですよ」

「は~い、早く来いよ」

 

 

******

 

結構用意するものが多いからちょっと時間がかかったがまぁいいだろう。

 

酒を注いで向かい合ってそれから飲むときの始めの合図。

「「乾杯‼・・・・・・っぷはぁぁぁ、美味い‼」」

「さっそく食べるぞ~」

「そんな慌てなくても大丈夫ですよ。ってもう食ってる⁉」

「うん‼安定してお前の料理は美味いな。なんでこんなに上手くなったんだ?」

「せっかく食べるなら美味しいほうが良いじゃないですか。それに食は偉大な事にどんなにつらい事とかあったりしてもうまい飯食えたら少しは気分が立ち直るじゃないですか。だから凝ってるうちに今みたいになったといった感じですかね」

「そうだったのか。お前より料理上手い奴なんて見た事ないから教えてもらえるのは嬉しいな」

「俺よりいい料理作る人なんていくらでもいますよ」

「そうなのか?私は見た事ないけどな?」

「気が付いてないだけじゃないですかね。どっちかって言ったら俺よりいい料理を作れる人の傾向と言ったほうが良いかもしれないですけど」

「じゃあ、それってどんな奴だ?」

「そりゃあ、誰かのために料理を作っている人ですよ」

「なんでだ?」

「まぁ、俺が料理に凝る理由って嫌な事とか辛い事から気をそらすことだったり、そんな気持ちを紛らわすためですからね。そんな後ろ向きな物より誰かのために作るって料理の方がよっぽどいい物ですよ」

「ふぅん。ま、私は美味しければ何でもいいけどな‼」

「・・・そうですね」

「なんで苦笑いなんだよ~」

「いやぁ、伊吹さんの豪快さに脱帽しただけですよ」

 

こうして俺たちは酒と肴を共に、言葉と盃を重ねていった。

くだらない事から、幻想郷のどこかであった事。かつてあった異変の事。

本当に伊吹さんは楽しそうに話してくれる。俺もつられて笑顔になれる。

 

気が付けば鬼〇ろしも1.5ℓ飲み干してしまい、仕方がないので3ℓを開ける事にする。

ただ、つまみは伊吹さんと飲む段階で2つじゃなたりないのはわかっていたので多めに用意していた枝豆とか鶏チャーシューがあるからいいけどまさかこんなに飲むとはなぁ。

 

「さぁ、これからが本番だ‼とりあえず私の酒を飲め‼」

「その鬼用の酒をなみなみ俺のグラスに注いで何言ってるんですか⁉」

「なんだよ。お前いけるんだからいいだろ。人間で私の酒飲めるのなんてお前が初めてだからな~。そしてお前のその酒は私が貰う‼」

「え?ちょ・・・・て、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉何やってるんですか⁉」

 

開けたばかりの俺の鬼〇ろしがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼

 

「っぷはぁ、やっぱり弱いなぁ。さ、私の酒を飲め‼」

「嘘だろ・・・・。3リットル1本一気飲みだと・・・・」

 

こいつ・・・・人間じゃぁねぇ・・・・。あ、もともと人間じゃなかったわ。

 

「わかりましたよ。飲みますよ」

「よし、それじゃあ私が紫に教えてもらった合いの手を入れてやろう」

「嫌な予感しかしない・・・」

「良いから飲め‼・・・よし飲み始めたな。特別に手拍子も入れていくぞ~。仁君のちょっといいとこ見てみたい~♪のー「ゴホッ、ゲホッ」おい、吹き出すなよ‼これから良いところだったのに‼」

 

無茶言うな。色々ツッコミ所在り過ぎて思わず吹いたわ。

 

まず見た目幼女にやらせるものにやらせる物じゃないし、何でそんなにノリノリなの?

そしてチョイスが古い。合コンとか行った事ない俺でもわかるくらいに古い。紫さんなんて物仕込んでんだ。

 

でもなんだかこれを見れたことにお得感を感じた俺は間違っていないはずだ。

もう少し見てみたかったような気がする。が、あまりの衝撃にこらえられなかった。

 

「いやぁ、すいません。ちょっと思わず・・・」

「何か変だったのか?教えてもらった通りにやってみたんだけど?」

「いやぁ、何と言えばいいか・・・・。それ俺の世界の合いの手ですけど古いんで思わず懐かしい物出したなって感じですね」

「古いのか⁉紫は新しくて若い男女が飲むときにやっているって言ってたんだけどな~」

「新しいは別として、若い男女が飲むときにやるのは間違ってませんけどね」

「あ~あ、酒で少し服濡れちゃったな~」

「あぁ、そうですね。この手拭き新しいんで使ってください」

「・・・ありがとう。っととりあえず残ってるのは飲み切ってくれよ」

「わかりましたよ。・・・・・・・・・っぷはぁ、めちゃくちゃクるなぁ」

「さて次いってみよ~。で、ちょっと気になってた事1個あるんだけど聞いても良いか?」

 

サラッと俺がいけるからって鬼用の酒をいれるのはいかがなものか?

まぁ、飲むからいいけどさ。

 

「何ですか?珍しく真剣な感じですね」

「まぁ、酒の席にこんなのがあってもいいだろう?」

「良いですけど・・・・満足のいく答えが得られるかは別としてですけどね」

「いいんだよ。じゃ、聞くぞ。お前は・・・外の世界に帰りたいと思わないのか?」

 

外の世界ねぇ。俺が生まれて俺が生き続けた世界。

帰りたくないかと聞かれればどうなんだろう?

別に帰りたくない訳ではないけど、わざわざ今焦って帰りたいと思う事は全くない。

 

う~ん、正直難しい。かなり考えないとその答えは出ないだろう。

けれど今言えるとしたらこれしかないと思う

 

「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」

「⁇⁇」

「・・・とはならないような男ですからねぇ。俺って男は」

「どういう事だ?」

「故郷に恋しさを感じるような、そんな男じゃないって事ですよ」

 

実際そうなんだよなぁ。とりあえず大学あるし生きていかなきゃならないから生活していただけで特別思い入れのある場所があるわけではないと思う。実家も売り払ったしね。

あ~、美味しいお酒だけどやっぱアルコール強いなぁ。

 

「ふるさとが恋しくないのか?」

「そもそも俺に帰るようなふるさとはもうないですし、もう帰るべき場所もないですよ。だから伊吹さんの質問の答えはどっちかって言ったら考えた事もないし考えた所で帰りたいと思う理由も特にないって所ですかね」

「なんでそんなに帰りたいってならないんだ?今まで見て来た人間はみんな帰りたがって、すぐ帰っていったぞ」

「そうなんですか?それは妖怪とかに怖い目に合わされたからじゃないですか?俺は幸いにもそんな事なかったですからねぇ」

 

伊吹さんは何が聞きたいのだろう?俺に元の世界に帰って欲しいのだろうか?

 

「それにしたって今まで帰っていったよ。私が飲もうって誘っても鬼だってわかると恐れた目で見てきた。例え助けたとしても逃げ出したり、敵を見るような目で見てきたりもした。ここまで妖怪とかに関わって偶々来たこの世界に居続けたのはお前が初めてだ」

「そうですか。でも俺お休み期間だし特にあっちでする事もないですからねぇ。今まで飲みに誘っても怖がられてできなかったと?」

「そうだ。私の角を見た途端に警戒むき出しになって・・・・、私はただ外から来た人間と飲みたいだけで何もしてないのに避けられてきたから・・・・・」

 

帰って欲しいのかと思ってたが違った。

伊吹さんは今まで外の人間とも楽しく飲みたかっただけなのに誘っても怯え竦まれ恐れられ。

何もしていないのに自分の存在が自分のしたい事をさせてくれなかった。

 

そんな中で俺という鬼とも対等に楽しく飲めるような例外が出て来た。

今まで俺は伊吹さんと飲んでいる時は楽しく飲んでいるだけかと思ったのだが、もしかしたら彼女なりに戸惑いや葛藤があったのかもしれない。

あぁ、だとしたら俺なりに精一杯の答えで応えなければいけない。

 

「まぁ、俺、別に今までお世話になった妖怪とか鬼の皆さんとか怖いって思った事ないですから。むしろ面白かったり美人だったり勉強になったりして好きですよ。だったらこの世界で楽しんだ方が得でしょ」

「・・・・さっきパルスィの事怖いって言ってたくせに」

「あ~、まぁ、あれはパルスィさんが怖いと言うよりは怒られるのが怖いだけですよ。だって長いですもん。おまけに美人から毒混ざっての説教とか堪えますもん」

「なんだよ、それ。まったく・・・、子供っぽいじゃないか」

「そうですよ。子供っぽいですよ。だから怖い事とか辛い事があれば逃げたりもするし、たまに無茶なことやるし。でもそんな感じで良いんじゃないですか?自分のしたいように、やりたいようにやってダメでも後悔がないならそれで。出来なくなってからじゃもったいないじゃないですか。今この場で俺が伊吹さんと飲んでるのだって、俺が一緒に飲みたいって思ってるからしているだけですから。そんなに難しく考えなくても良いんじゃないですか?きっと人間ってそんな物なんだろうと。都合のいい例外があったらいいなぁくらいに考えてたら気も楽でしょ。現にこうして俺みたいな例外がいたわけだし」

「まったく・・・。お前、私よりもかなりの若造のくせしてなんで年上の私に講釈垂れてんだよ・・・・」

「すみません。こんな言い方しかできないもんで。あ~あれですよ。味は良いけど人間には強過ぎる酒を誰かに飲まされたおかげで酔ってるんですよ。だから酔っ払いの戯言だと思って気にしないでください」

「はは・・・、そりゃ親切な奴がいたもんだな・・・」

「えぇ、こんな世界に入ってばかりで右も左もわからない様な男に気軽に話しかけて飲みに誘ってくれた・・・とっても親切な人ですよ」

「そうか・・・。お前、酔ってるのか?」

「えぇ、かなり飲んじゃいましたからね。今までにないくらい酔ってますよ」

 

これはマジ。俺何杯鬼の酒飲んだ?よく死んでないものだ。

でも美味しいし仕方がないね。どこかの国では酒が飲めるのは生きてるうちだからいっぱい飲もうみたいな歌があったはずだし。違ったかな?

 

「そうか・・・、それなら今夜あった事は覚えてないよな」

「そうですねぇ。俺は頭も悪いし、酔ってたらなおさら忘れてるかもしれませんね。いっそのこと今までの不満ぶちまけます?」

「それなら・・・」

 

伊吹さんが俺の側って言うか前に立ってきたんですがこれは?なに?どういうこと?

手にグラス持ってるから何かするなら置かせてほしいなぁ。

 

「お前は・・・本当に面白い奴だな・・・・」

 

と言っていきなり胸に抱き付いてきた。うわっ、普段から小さいとは思ってたけどこんなに小さいんだな。

なんだかちょっと胸のあたりが濡れて来た気がするけど、そこは突っ込まないのが男ってもんだろう。

グラスに残った酒を飲み干し、グラスを机の上に置く。

 

「伊吹さんは酔ってますか?」

「・・・っ・・よっちゃったなぁっ」

 

俺はその言葉を聞いた後に、伊吹さんの頭を撫で、小さな体に手を回し抱きしめ背をやさしく叩く事にした。

まぁ、普段ならこんな事絶対しないんだけど、今日は酔った男の戯れって事で許してもらおう。

 

「‼⁉‼‼⁉」

「大丈夫ですよ。伊吹さんが俺の事嫌いになった時は無理になるかもしれませんけど、俺から嫌ったり逃げたりする事はないですから。都合が付けば俺で良ければいつでも飲みの相手になりますよ。俺、伊吹さんと飲むのは楽しくて好きですから」

「・・・・っ‼そんなこと言ってくる奴のことぉ・・・・嫌いになれる訳ないだろぉ・・・」

「そりゃ良かった。美人に嫌われたら悲しいですからねぇ」

「ばかっ・・・‼すぐ・・・・そういう事・・言う・・・」

「思った事はすぐ口に出るタイプなんですよ、俺。いやぁ正直者は辛いですねぇ」

「っそう言うのは・・・・・正直って・・・言わないんだよっ」

「まぁ、細かい事は良いじゃないですか。今、伊吹さんがどんな顔してるかはわかりませんけど・・・・俺は大丈夫ですから・・・。今夜は好きなように感情を出したらいいと思いますよ」

「・・・っ・・・・・っぅ・・・・・」

 

俺が何かにおいて腕利きな訳ではないし、生きてるだけでツケが溜まっていく一方だけど。

俺は胸に伊吹さんを抱いたまま自分のグラスに鬼の酒を注ぎしばらく眺めた後に一気に(あお)る。

 

「大いに飲もう。今宵の事は夢になってしまってもいいだろう」

 

きっと、これが俺が彼女のために出来る事。それが例え解決にならない対応であってもそれで少しでも気が楽になるのなら。

今までこの小さな体の中に(つら)さを押し殺してきたのだろうから。

 

 




いつもながら最後まで読んで頂きありがとうございます。
今回はこの後に解説のような物がありますので後書きは短めに参りますよ。

今回のお噺はいかがだったでしょうか?
こんなの俺の嫁(萃香さん)じゃねぇ‼と言う萃香さんファンの方もおられるかもしれません。それは本当にごめんなさい。
ただ、伊吹萃香と言うキャラクターを調べている内にこう言った面もありそうだなと思ったので書きました。
私のお噺の伊吹萃香と言う登場人物はこういった面もある。という事でご容赦ください。

今回のお噺はまた今までと違う感じにしたつもりなのですが如何だったでしょうか?
好きだとか面白いとか思っていただければ嬉しいです。

最後に、アンケートもやっておりますので自分の活動報告に気が向いたら書き込みしていってください。もしかした参考にさせて頂くかもしれません。

そしてTwitterもやっておりますので良かったらそちらも。進捗状況とかくだらない事、そしてお噺に関連した事とかも今後呟いたりアンケートしたりしたいと思っていますので
もしこのお噺が面白いとか思っていただけたならアンケート共々よろしくお願いします。

あともし面白いと思って貰えたり、また読みたいと思ったらお気に入り登録とかもお願いしますね~

あとがきはここまでにしたいと思います。この後は解説のような物のコーナーに参ります。
ここまでしか読まんよ とか まだ解説は読まずに読み返すという方はここでいったんお別れです。それでは次話でお会いしましょう。さようならさようなら。










ここからは解説のような物のコーナーだ。いいね?








~ 解説のような物のコーナー ~

さてここでは前書きに書いたキーワードに解説のような物を入れていきたいと思います。

まず最初は
・天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも

についての解説にいきます。これは百人一首にありますしもしかしたら日本史を取っていた人なら馴染みがあったかもしれません。これは阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)という遣唐使の人が詠んだものです。この仲麻呂は優秀であったためになかなか日本に帰らせてもらえず、念願かなって日本への帰国を許された時に送別の宴で読まれたと言う話があります。
この和歌の意味は

天を仰いではるか遠くを眺めれば、月が昇っている。あの月は奈良の春日にある、三笠山に昇っていたのと同じ月なのだなぁ

と言った感じになります。懐かしき故郷を思ってもしくは故郷に戻れる思いが出ているとても素敵な和歌だと自分は思っています。これは作者個人的には一番と言っていいくらい好きな和歌ではあります。がそれだけで使った訳ではありません。

この歌をを言った後の萃香さんの問いに「そもそも俺に帰るようなふるさとはもうないですし、もう帰るべき場所もないですよ」と言っています。
ここであれ?と思った方がいたかもしれません。その感覚は間違っていませんよ。
遠い故郷を思っての和歌なのにその対象となる故郷はないのに例として使うなんておかしくないか?と思っていただけたら嬉しいです。

仁君は意識して言った訳ではありませんが、ここに彼の無意識的な物があります。
さて・・・彼は本当に元の世界に戻りたくはないのでしょうか?そもそも彼が戻りたいと思うのは故郷と言う場所だけなのでしょうか?人が戻りたいと言う表現を使うのは場所だけではなかったような・・・。と言った所でもうわかっていただけた方も多いと思いますがこれ以上語っても面白くないでしょう。これからのお噺の続きで答え合わせをする日を楽しみにお待ちください。

そして次は
・芝浜 落語 でございます。

これは落語の人情噺の1つなのですが人間の本質の一面を表す大変に面白いお噺だと思います。
ざっくり言うと腕利きだが酒好きが欠点の魚屋の旦那に寄り添い、夫のために優しい嘘をついた女房の話です。ざっくりしすぎな気がしますが、まぁ大まかに言うとこんな感じでしょうね。

今回タイトルの反転と言う通り色んな所が元々の「芝浜」とはひっくり返っております。簡単な所で言えば嘘をつく方の性別がひっくり返っていたり、酒を飲むのを勧めていたりとまぁところどころひっくり返っております。間違い探しのようにすべて探してみるのも面白いかもしれませんね。ものすごく大変な事になりそうな気がしますけどね。

そしてこのお噺のオチとなる言葉の「大いに飲もう。今宵の事は夢になってしまってもいいだろう」は私なりに芝浜のオチの言葉をあの場に合わせてひっくり返したものになります。様々な表現があったのですがこれが一番いい落ち着き所だろうなといった感じがしましたのでこんな感じのひっくり返し方になりました。個人的には本当に一番まとまっているひっくり返した表現だと思います。

芝浜は何の言葉がオチかって?それは落語の「芝浜」を一度聞いてみる事をお勧めします。

もし間違え探しの様な事をする方がいましたら一度は「芝浜」を聞いてみてくださいね。様々な人が様々な芝浜をやていますので大変かもしれませんがそれぞれが面白いので聞いてみてもいいと思います。芝浜って結構長い物が多い気がしますけど是非これを機会に聞いてみてくださいね。

そして、ここまで読んでくれた方に特別サービス‼となるかはわかりませんがちょっとした裏情報を。

今回のこのお噺、ここまで解説挟むような仕様になってしまっているのに、裏テーマとなる児童文学作品がございます。
・・・・今回ちょっとどころの騒ぎじゃないレベルで盛り過ぎたかなぁ。
書きたいように書ているとこういう事もあるんでございますね。許して。

今回の裏テーマは今回のお噺のみで完結した訳ではございませんが、しっかり完結させるつもりまのでそれまで何の児童文学作品なのか考えてみるのも面白いかもしれませんよ。たぶん中学生以上なら誰でも作品名だったら誰でも知ってそうなくらいの作品です。


あとがき全部読んだらちょっとしたネット小説だったら1話分くらいの文量になってしまいましたが、解説のコーナーもこの辺りにしておきたいと思います。

さきほども言いましたが、アンケート及びTwitterの方も是非。
Twitterでは今後こう言った解説がいるようなお噺ではキーワードを事前公開しても良いかなと思ってたりとかしてるのでフォロー等よろしくお願いします。

いい感じの感想とか応援メッセージを書いてくれてもいいよ‼

といったふざけた事を言って今回はここまでにしたいと思います。
それでは次のお噺でお会いしましょう。さようならさようなら

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