東方与太噺   作:ノリさん

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やらなきゃいけない事が多すぎる‼課題の多さに苦しむノリさんです。

お久しぶりになりますが、ちゃんとちょくちょく書いてますよ。
前にも言いましたが失踪なんて致しませんよ。ただ本当に忙しいんですよね、この時期。
もう少ししたら落ち着けるかな~。

そんな辛かったり忙しい時には過去に送ってくれた感想などを読んで励まされたり元気を貰ったりしながら頑張っていました。感想をくれた皆様ありがとうございます‼

なんて私の事はどうでもいいですね。さっそく参りましょうか‼

それでは本編をお楽しみください‼


そーれっそれそれ

「お祭りだぁ?」

 

昨日の鬼との飲み会が終わって寝て起きたら借りていた本を返さねばいけない事を思いだし、俺は久々に鈴奈庵に居た。そこで小鈴ちゃんとそのお友達から屋台を出さないかと話をいきなり持ち掛けられた。

 

「はい、毎年来年も豊作になりますようにって感じでやってるんですよ」

「いやでも小鈴ちゃんや。俺には店もあるしさ」

「新聞の影響か貴方の事は人里の皆が知っています。話題性もあって丁度良いのでやって頂けませんか?」

「う~ん、えっと、小鈴ちゃんのお友達の・・・」

「名乗り忘れていましたね。これは失礼いたしました。稗田阿求と言います、以後お見知りおきを」

「あぁ、これはご丁寧にどうも。ご存じだとは思いますが鷹崎仁と言います。地底でしがない食事処を営んでいます」

「小鈴からは常連だと聞いていたので、ここで会えると思っていました」

「小鈴ちゃんや。俺のために待たせちゃってた感じ?」

「う~ん、そうでもないですよ。お客さんの来る時間はだいたい決まってましたから、ここ一週間その時間に合わせて来てたくらいですね」

「一週間⁉」

 

うわぁ、何でそんな事してんの?言ってくれたら来たのに・・・・ってここんとこ忙しくて人里来るの忘れてたわ。

危うく延滞料を取られるところだったからね。あぶないあぶない。

 

「何か悪い事しちゃったなぁ」

「いいえ、お気になさらず。私が好きにやっていた事ですから。それで出て頂けますか?」

「あ~、うん。面白いお誘いではあるんだけどねぇ」

「あの・・・・何か都合の悪い事でもあるんですか?」

「小鈴ちゃんの言う都合の悪い事はないけど・・・・・。店は最悪休みにすればいいしねぇ」

「では何が問題ですか?一応今回は私達からの依頼に近い形なので材料費の方は負担させて頂きますし場所もご用意しますし、決して悪い条件じゃないと思いますが・・・・」

「え?そうなの⁉」

「いや・・・・そのねぇ。えーと稗田さん?」

「阿求とお呼びください。貴方の方が年上なのですから敬語でなくていいんですよ?」

「じゃあ、阿求ちゃん。はっきり言うと俺はもうじき外の世界に帰るからね。あんまり俺の居た痕跡を残したくないのさ。面白そうではあるんだけど、渋ってしまう理由がそれ」

「え?常連さん帰られるんですか⁉」

「いやぁ、俺は元々ちょっとした旅行みたいな感じで居ただけだからね」

「それであの地底でお店を営業するのは驚きを隠せません。でも痕跡を残したくないって言うのはあまり気にしなくてもいいと思いますよ?」

「え?なんで?俺人里でなんかした覚えはないけどな」

「あぁ、常連さんもしかして今人里で人気の新聞をご存じないですか?」

「いや知らないな。この世界に来て新聞ってのは1つしか知らないからな」

「それじゃあ、良かったら先週の読んでください。確か今日の昼には新しいの持ってくるって言ってたのでそろそろ新しいのを記者の人が持って来てくれるはずですよ」

「へぇ~~~見出しは『狸に狐。挟まれるれる店主の運命は⁉』か・・・・・。ってあれ?これ一週間ちょっと前に俺のお店での出来事じゃ?」

 

偶然俺の店に来た二人が鉢合わせし、ちょくちょくバチバチしながら飲み食いしていた時の話だろう。

 

「そうみたいですね。なんだか最近、新聞の発刊ペースが上がってるんですよね~」

「稗田家としては最初はどうかと思っていましたが、里の人たちは娯楽物代わりに読んでいたりするのでその程度なら良いかと思い見逃していました。最近は貴方の記事が目立ちますね。なので里の人間にはよく知られてますから今更痕跡の事は気にしないでいいとおもい・・・・・ってなんで頭を抱えているんですか⁉」

 

あの天狗~~~~~‼取材許可出してないのに勝手に記事にしたな‼

俺は注目されるのが好きじゃないというのに‼会ったらどうしてくれようか。

 

「毎度どうも!清く正しい射命丸です‼新刊を持ってきましたよ‼」

「あ、文さん。いつも新聞ありがとうございます」

「小鈴さん、いつも置かせてもらってありがとうございます」

「いえいえ、文さんの新聞は好評で張り紙を出したらいつもすぐなくなっちゃうんですよ~」

「あやややや、それは嬉しいですねぇ。ところでここでうずくまっている人がいますけど大丈夫ですか?」

「やぁ、いつぞやぶりですね新聞記者さん。なんてお名前でしたっけ?社説欄文さんでしたっけ?」

「いくら新聞作ってるからってそれだとしゃしか合ってないじゃないですか‼射命丸です‼ってあ、あなたは・・・・⁉」

「よくも無許可で新聞の記事にしてくれましたね」

「いやぁ、その・・・ほら・・・・・」

「それに前の時に俺は言ってたはずですよね」

「いや・・・、まぁ・・・はい、すいませんでした」

 

 

俺がマスコミ嫌いな訳を前の取材の時に言っていたはずだ。

 

 

「あの・・・・・常連さん?どうしたんですか?

「いや、こっちの話だから気にしないで。っと、でお祭りはいつどれだけやるんだ?」

「明日と明後日の二日間です」

「明日と明後日の二日間⁉」

「常連さん一週間来れられてなかったですからね~」

「明日となると・・・・出来るものにも限りがあるな・・・・。屋台で何やるかのリス・・・・え~となんか誰が何をやるかとかまとめた表みたいなものはある?」

「今この場にはないですね。ですが大丈夫です。全部覚えているので」

「へぇ~記憶力良いんだなぁ。俺なんか人の名前とかなかなか覚えられないから羨ましいなぁ」

「さっき私の名前も間違えてましたもんね」

「あれはわざとだ」

「ひどい‼」

 

いや射命丸さんよ。俺からしたらお前さんがしたことの方がひどいぞ。

 

「で、飲食店系はどれだけで何をやる?」

「えっとですね・・・・」

 

聞いた感じそこそこ数はあるようだけど、メニューは基本的にしょっぱいもの系が多いようだ。甘い物はかなり少ないみたいだ。甘い物でいい感じの物だと・・・・・・・アレかなぁ。

 

「なるほどね。まぁ、幸いほかの屋台と被らずにやれそうなのはまぁ・・・・」

「ではやって頂けますか?」

「いやぁ、でも材料を用意出来るかはわからないし、流石に作りながら接客までは人が多くなったら出来ないからなぁ。それが解決できるならやっても良いけど・・・・・。接客やって貰うんだったら看板娘になるような人だと良いね」

「では女性の人手が要るという事ですか?」

「阿求ちゃんが人手を用意する必要はないよ」

「と言うと?」

「いやだってここに人手があるじゃん」

「ほうほう、それは興味ありますねぇ。やはり小鈴さんでしょうかそれとも阿求さん?どちらにしてもいい記事になりそうです‼」

「いや違うよ。二人はむしろ祭りを楽しむ年齢だよ?何子供をお祭りの日までで働かせようとしているのさ。確かに見た目は満点だけどさ」

「ははぁ、やはりなかなかやりますねぇ」

「常連さん、その・・・・少し恥ずかしいです」

「何が?」

「なるほど。その・・・・・新聞に書いてあった通りですね」

「え?俺新聞になんて書いてあるの?二人とも何顔赤くしてるの?」

「それは少し考えたらわかりますよ。で、誰にするんですか?」

「射命丸さん、そっくりそのまま言葉を返してあげるよ。少し考えたらわかりますよ」

「でもここに居るのは仁さんと小鈴さんと阿求さん・・・・って私ですか⁉」

「他に誰がいるんだ」

「確かに文さんとてもお綺麗ですしね」

「小鈴さん?」

「えぇ、彼の希望に沿って尚且つ今頼めそうなのは貴女しかいませんしお願いします」

「阿求さんまで⁉」

「で、やってくれますか?」

「私は明日は取材があるので無理ですよ~。ちゃんとお祭りの事を取材しなければいけませんからね‼」

「そうか・・・・・。それなら仕方がないな・・・・」

「わかって貰えたようで何よりです」

「それなら無許可で記事にされた事を地底に持ち帰りながら帰る事にするよ。まぁ、地底にいる誰かに喋っても仕方がないね」

「ふふん、さとりさん達に言って何かするおつもりなんでしょうけど、その程度ではこの射命丸、揺らぎはしませんよ!」

「いや萃香とか勇儀とかだけど?」

「そんな‼それは困ります‼」

 

えらい態度の変わりようだな。昔は妖怪の山も鬼が支配していたって言うのはあったらしいけどそんなに怖いだろうか?

 

「でもなぁ。俺が困ってるのに助けてもらえないんじゃあもう地底に帰って酒飲みながら愚痴るしかないよねぇ」

「地底に帰られたらお祭りは?」

「阿求さんには申し訳ないけど俺はやっぱり参加できないかな~」

「射命丸さん、ここはお願いできませんか?」

「阿求さん、流石にそれは・・・」

「私からもお願いします‼常連さんのお料理が食べてみたいって里の皆も言ってるんです‼」

「小鈴さんまで・・・・」

「いや二人とも、無理強いは良くないからね。俺はこれにて地底に帰って酒でも飲む事にするよ。お邪魔したね」

 

俺は射命丸に背を向けて二人と顔を合わせて去ろうとした。

 

「・・・ますよ」

「ん?」

「やりますよ‼やればいいんでしょう!私もさすがに命は惜しいですからやります‼」

 

・・・・・計画通り。

きっとこの時俺は邪悪な笑みを浮かべていた事だろう。だって目の前にいた小鈴ちゃんとかビビってたし。

 

「よし、それじゃあさっそく準備に取り掛かろう。小鈴ちゃん悪いけど筆と墨と紙とメジャーを用意してもらえるかな。・・・・・・・・・・ありがとう。紙と墨と筆は阿求ちゃんに用意してほしい食材の表を作るからちょっと待っててくれ。・・・・・・・・・・・・・・・ほい、至急って書いてある奴は優先的に用意してください。あと必要なものを地底に取ってくるからそれまでの間に調理場の用意とかお願いします。あと小鈴ちゃんは射命丸のスリーサイズ測って記録しておいてくれ。じゃ各自行動開始‼」

 

 

さぁ、やると決めたら俺は行動は早いぞ‼

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

地底から必要な調味料やらちょっとしたものから色々取ってきて、臨時休業の張り紙を張って戸締りをしてきたから大丈夫だろう。

まだ食材に調達は住んでないみたいだから先に衣装の手直しを終わらせてしまおう。

 

「さて、スリーサイズを見ますかね。ってこれならちょっと手直しするだけで大丈夫そうだな」

「うぅ、乙女の秘密が・・・・・・」

「俺に見られたところでどうという事はないだろう。そう言うのは好きな男でも出来たらしておけ」

「何だかあまりにも扱いが雑過ぎませんかぁ」

「それはないと思うけどな。むしろさっきの事を実力行使で解決しなかっただけ優しいと思うぞ」

「そんな事言っても怖くはないですよ。何せ私は幻想郷最速を自負していますからね。いくら人間が能力に目覚めた所でどうともなりませんよ」

「勇儀とか萃香には勝てるか?」

「何ですか急に?」

「いいから。勝てるのか?」

「いや・・・・・、あの人たちはいろんな意味で勝てませんよ・・・・・」

「俺、今、萃香さんなら単純な身体能力でなら何とか勝てるぞ」

「え〝っ⁉」

「さて、手直しも終わったし、食材もまだ来ないみたいだし、そんなに言うなら一勝負と行こうじゃないか」

「いや~~~、流石に勘弁願いたいというか・・・・・・」

「人間が能力に目覚めた所でどうともならんのだろう?」

「いやぁ・・・・・あはははははははは」

 

「お待たせしました‼食材と調理場の準備が整いました・・・・・っておふたりとも何してるんですか?」

「阿求ちゃん、気にしないでくれ。さ、俺は仕込みに入りますかね。射命丸はそこの手直しした衣装着てみてきつかったり大きかったりしたら、そこのスリーサイズのメモ紙にでも書いておいてくれ。後でまたいじっとくから」

「はぁ、お気をつけて・・・・ってこれ私が着る服だったんですかぁ⁉」

「そうじゃなきゃ取りに行ってないよ。じゃよろしく」

 

 

明日の準備を始めて、射命丸にはバリバリ働いてもらう事にしよう。

何か後ろから悲鳴みたいなものが聞こえた気がするけど、気のせいだろう。

 

 

 

*********

 

~お祭り一日目~

 

昼間は準備で夕方からお祭りは始まる。

仕込みに時間がかかってちゃんと寝てないが、大丈夫だろう。

さてそろそろ射命丸が来るはずだけど来ないな・・・・・・・・・。

 

「遅いな。まさか逃げたんじゃ・・・・」

「逃げてませんよぅ・・・。ただこの衣装は恥ずかしくて・・・・」

「なんだ後ろにいたのか・・・・・っておぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

もし女性定員を雇った時の制服として作っておいたフリル付きの和服メイド服的な物。

ちょっとハイカラさんっぽい。それにエプロン装備で、袖口にフリルが付いてる感じだ。

 

何やかんや言いながら着てくる辺り良い奴だなぁ。

 

昨日引っ張り出して来たこれを店で使わなかった理由は二つある。

一つ目は結局定員を雇う事なく終わったから。

二つ目は・・・・・・・・

 

「やっぱちょっとスカートが色っぽすぎたかなぁ」

「自覚あったんですか⁉」

「いや、まぁ、うん」

 

スカートの長さは膝上のちょっと上ぐらいだ。正直射命丸の私服のミニスカートより長いとは思う。

ただ・・・・・・問題はスリットを深く入れ過ぎた。

一応スリットの間には紐が通してあってオーバーにヒラつく事は無いようにしたのだが、結構ギリギリなとこまで入れちゃってるんだよなぁ。

 

「こんな格好で大衆の目に晒されるなんて・・・・・。もうお嫁にいけません」

「そんな事はないだろ。むしろこんなかわいい娘を嫁にっしたいって人が多いだろうから貰い手には困らないぞ。よかったな」

「・・・・・・そこは『俺が責任取るよ』とかカッコいい台詞の一つや二つ言ってくださいよ‼」

「そんな無責任な言葉、俺はとてもじゃないけど言えないね。さ、諦めてしてほしい事の説明するからこっち来てくれ」

「とほほほほほほ。無断掲載のお代が高くついちゃいました・・・・・」

 

そんな暗い顔すんなって、祭りが終わった後でなんか出来たらするからさ。

さぁ、お祭りが始まるぞ‼

 

 

 

 

**********

 

 

 

~午後10時 お祭り一日目 終了~

 

 

「だぁぁぁぁぁ‼つっかれた~~~~~‼」

「まさかこんなに来るなんて思ってませんでした・・・・・・」

「だよなぁ・・・・・・。ほれ、さっき阿求ちゃんが持って来てくれた冷えたお茶」

「ありがとうございますぅ」

 

 

本当に人が多く来たから用意していた食材が無くなった。

要は売り切れたわけだが、多く用意していたものが売り切れたとなると正直しんどかった。

 

こんなにも人が来た理由はまず射命丸のおかげで出来てしまった俺の話題性と味も好評だったからかな。

 

俺の屋台は最近の外のお祭りじゃ定番になったクレープだ。

林檎のシナモン煮と生クリームを包んだ林檎クレープ、サツマイモをふかして裏ごししたものと生クリームかあんこを選べるサツマイモクレープ、そして牛筋を醤油などででトロトロに煮込み生のタマネギと一緒に包んだ肉レープ。

全部売り切れた・・・・・。明日も夕方から屋台は再開するけど急いで仕込みに入らないとな・・・・。

 

そして何より射命丸の売り子のおかげだろう。

元々記者をやっているからか人里でも顔が知られている(社会派ルポライターとしてだが)。

その時は割と地味な格好だからか、今回のような色物系の服が話題となり人が集まったのもある。

 

「射命丸、お疲れ。また明日も頼みたい」

「明日もですかぁ⁉」

「正直今日でこれだけ来たから、明日もってことはないのかもしれないけど、どうなるかわからないから正直来てくれると助かる」

「頼んではいますけど、それって強制ですよね~~~~」

「いや、別に強制じゃないぞ?明日は取材したいならしてくればいい」

「本当ですか⁉」

「ほんとだよ。そこで嘘はつかないさ」

「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらって取材にします‼」

「じゃ、お疲れ。今日は射命丸がいてくれて助かった。無理矢理で悪かったがありがとうな」

「い、いえ・・・、何だかそう真正面からお礼お言われると照れますねぇ」

「まぁ、こうなった原因はお前にあったって事で許してくれ。じゃ、悪いが俺は急いで調理場戻るわ」

「え⁉まだ何かするんですか⁉」

「今日の内に仕込んどかないと間に合わないものがあるからね。とりあえずお疲れ。その衣装はあげるよ。いらないんだったら切って別のモンにしたり捨てるなりしてくれて構わないから。じゃな、明日の祭り楽しめよ」

「あっ‼はい‼頑張ってくださいね!」

 

 

やっぱ射命丸っていい奴だよなぁ。

 

 

 

 

******

 

 

~お祭り 二日目~

 

 

やべぇ、阿求ちゃんが人手を貸してくれたとはいえ一晩で仕込むのは今までで一番キツかったかも知れない。

結局今日もあんまり寝られなったな。まぁ、あんまり疲れは残ってないから大丈夫なんだけどさ。

 

足りなかった人手は小鈴ちゃんが手伝ってくれるそうでなんともまぁ申し訳ない。

ちゃんと最初は事はていたんだけど、何と言えばいいのか・・・・・簡単に言うと押し負けた。

何でこう女って時々怖いというか押しが強いというか、そんな時あるよなぁ。

何か地元だろうと大学だろうと地続きの異世界みたいな所だろうと、どこに行ってもアイツみたいな女はいるって事だな。

 

小鈴ちゃんがいられるのは七時までだ。まぁ、自分の子供を見ず知らずのとこで働かせるのは親としてはあんまりいい顔はしないのは当然だよなぁ。

まぁ、少しの間だけでもいてくれるのは大変ありがたい。

 

「じゃあ、悪いけど小鈴ちゃんさっき言った仕事お願いね。ちょっと熱かったりするから気をつけてやるように」

「わかりました‼大丈夫ですよ、さっき練習させてもらえましたしね」

「まぁ、さっきの感じなら大丈夫かな。でも昨日とまではいかないかもしれないけど今日もお客さんが多く来るかもしれないから慌てないようにね」

「はい!昨日は行列が出来てましたもんね」

「ありがたい事にね。小鈴ちゃんも阿求ちゃんと来てくれたもんな」

「はい、サツマイモクレープがとても美味しかったです‼」

「それは良かったよ。ってもうちらほらお客さんが来るようだし頑張ろうな」

「はい!もうバリバリお手伝いしますよ‼」

 

実に頼もしい限りである。ただ稀にドジるのが怖いが。

 

「ほれ来てやったぞお前さんや。おや?お前さんは貸本屋の・・・。店は良いのかの?」

「あ、常連さんじゃないですか。仁さんとお知り合いなんですね。お店はお父さんに許可をもらったので大丈夫です・・・・・。途中までですけどね」

「マミゾウさんいらっしゃい。何か久しぶりですね。とりあえず何にしますか?」

「それじゃ、このさつまいもくれぇぷのあんこをお願いするぞい」

「サツマイモクレープのあんこ一つお願いします」

「はいよ‼少々お待ちを!」

「うん、実に美味しそうじゃのう。してあんこはこしあんかつぶあんか?」

「こしあんですね。つぶあんも好きですけど俺はこしあん派なので」

「うむ、わかっておる。流石狐とは大違いじゃの」

「へぇ、藍さんはつぶあん派なんですね」

「なんじゃ?お前さんあの狐が気になるのか?」

「とても気になりますね。ぜひ今度いろいろお話したいくらいですよ」

 

単純に九尾の妖狐ってものがどんなものかいろいろ聞いてみたいものだ。

無理に誘って拳が来るのは御免だけど。

 

「そうかそうか、そんな奴より儂とお茶せんか?」

「えぇ、時間があれ是非。はい、お待ち。熱いんで気をつけてくださいね」

「ふふん、今の言葉しかと聞き届けたからな。それじゃあほかの客も来そうじゃし、またの」

「ありがとうございました~」

「ありがとうございました~~~。って仁さんはおの常連さんとお知り合いなんですか?」

「そうだね。何度か店に来てくれたりもするし何より一番最初の通常営業のお客さんだからね」

「最初のお客さんだったんですか。私も一番最初のお客さんはよく覚えてますよ」

「さ、お客さんも来たし注文と会計よろしくね」

「はいお任せですよ‼」

 

 

さぁ、昨日よりは来んだろ・・・・・・・・・。

気合入れて頑張りますかね!

 

 

 

 

 

~ 午後七時 ~

 

 

そろそろ花火が討ちあがるからか一時の落ち着きを見せた頃。

 

「あ、そろそろ帰らないと・・・・・」

「もうそんな時間か。今日はありがとう。はい少ないけど今日のお礼」

「いえ、そんな、途中までしかお手伝いしか出来てないのに・・・・」

「いや、かなり助かったよ。俺の感謝の気持ちだからお祭りに使うなりなんなり使ってくれ」

「ありがとうございます‼」

「じゃ、送れなくて悪いけどお疲れ様」

「お疲れさまでした!・・・・・・っとよいしょ」

「何してるの?」

「家お客さんとして注文しようと思いまして。サツマイモクレープあんこと生クリームどっちもください」

「ありがとうございます。って二つも食べるのか?」

「お腹もすいてますし、甘い物は大好きなので余裕で食べられますよ‼」

「わかったよ。それじゃあ、ちょっと待っててね」

 

 

 

***********

 

 

小鈴ちゃんにクレープを渡した後すぐに思った事、真面目に困った。

今は打ち上げ花火の最中だから基本的に客は来ないが、これが終わればまた人が来る。

店と違って用意してからの会計等の仕事が一瞬で全部来るから流石に回せない。

回転率が大幅に下がるな。まぁ、屋台を一人でやるのは普通だし、仕方がないか・・・・。

 

「すいませーん」

「はい、少年。どれが良いのかな?」

「このお肉のがいい‼」

「わかったよ。少し待っててくれるな?」

「うん‼偉いから待てるよ」

「そうか確かに偉いな。そんなえらい子にはおにーさんサービスしてあげよう」

「やった!昨日いたおねーさんはいないの?」

 

手を動かしながら調理は簡単なんだけど、なかなかの痛い所だったので少し驚いた。

 

「あ~あのおねーさんはだな・・・」

「いますよ‼もう少しだけ待ってくださいね~」

「射命丸⁉」

「はい!清く正しい射命丸があややややっと参上しましたよ‼」

「お、おう・・・・・・」

「おや?驚きを隠せませんか⁉」

「・・・・・まぁな。はいお待ちどうさま。サービスでお肉の量少し多くしてあげたから皆には内緒だぞ」

「わかった‼じゃあね~、おにーさんおねーさん」

「はい、落としちゃだめですよ~」

「じゃあな~・・・・・・・・ってなんでお前がここに居るんだ?しかも衣装までしっかりと着てきて」

「それは・・・・・、なんとなくですよ。なんとなく楽しそうにやってるのを見て思わず困っているであろう時に来ただけですからね、他意はないですから」

「そうか。何にせよ助かったぜ。多分この花火が終わったらまた人が多く来るところだったからな」

「そこな本当に気にしないんですね・・・「なんか言ったか?」いえ、何でもないですよ‼いや~~~花火も綺麗ですねぇ」

「そうだな。こんなに派手にやるなんて思ってもなかったよ」

「ここの人はお祭りとか宴会とか好きですからねぇ。そこに手加減はしませんよ」

「それは愉快でいい世界だな。・・・・この光景は忘れないようにしないとな」

「仁さん?」

「射命丸のスカートのスリットから見えるおみ足とかな」

「ちょっと、仁さん⁉」

「おっとすまない。とりあえず花火も終わったみたいだし準備始めるぞ」

「いえ・・・・・・まだですよ。最後に大きいのが来るはずですから。・・・・・仁さん・・」

「マジで⁉それは見逃せないな‼」

 

 

ドカン‼ドンドンドンドンドンドカン‼ドカン‼

「                 」

 

最後の乱れ撃ちに紛れて射命丸がなんか言ってるが何言ってるかわからない。

 

「すまん聞えなかった。なんて言ったんだ?」

「何でもないですよ。さぁ、お客さんが来ますよ‼」

「あぁ、じゃ、よろしく頼む」

 

 

何を言ったんだか。恨み言じゃないといいんだけどなぁ。

 

 

 

*********

 

 

~ 祭り終了 三十分前 ~

 

「やっと落ち着いたな・・・・・」

「まさかここまでまた来るとは・・・・。ってなんか作業効率上がってません?」

「それが一応店やってる人間の意地さ。昨日より良い状態に出来なきゃお客さんに悪いからね。って言ってもさすがに疲れたけど」

「それでした一旦裏で息抜きをしてきたらいいんじゃないですか?ほら、私はここに居るのでお客さんが来たら呼びますから」

「いやでも後少しだし・・・・・」

「でもこの後後片付けやらあるんでしょう?いいですから裏で休んでくださいよ」

「わかったよ。じゃあ、客が来たら呼んでくれよ」

「もちろんですよ。この射命丸にお任せを‼」

 

 

 

 

「ふぅ、流石に疲れたなぁ」

 

こんなにせわしなく動いたのは久々かもしれない。違ったかな?

まぁ、なんにせよ全くと言っていいほど勝手の違う環境で動くって言うのはなかなかに疲れる。

 

持ってきたお茶を飲みながら、疲れてるからかいろいろ考える。

あっという間に時間ってのは過ぎていくもんだ。楽しければ楽しいほど。

そのくせ後々色あせないから困ったものだ。いや、いい事でもあるんだけどね。

でも、色褪せな思い出って言うのは時に辛さを感じさせることもある。

今回のここでの思い出がそうならないために俺は何が出来るんだろうなぁ。

 

 

『あ、  さんじゃないですか。お祭りに来て信仰集めですか?』

 

おや?知り合いでも来たのか。

裏に俺がいるってこと忘れずに話してくれよ。そして、お客が来たら言えよ。

 

『いえ、今回はただ遊びに来ただけですよ~。私だってたまには純粋にお祭りを楽しみたいですからね‼』

 

何か聞いた事あるような声だなぁ。

まぁ、声なんて歩いてるだけでいろんなの聞いてるからそう感じるのかもしれないけどね。

でもなんかこの感じ本当に懐かしいような・・・・・。

 

 

『そうなんですか。でも時間的にもう終わりますよ?』

『そうなんですけどここのクレープが気になって・・・」

「そう言えば  えさんは    から来たんですもんね。少し懐かしいんじゃないですか?』

『そうなんですよ‼私大好きだったんですけどここじゃ無かったですからね。昨日も来たんですけど売り切れちゃって食べられなかったのでこの時間ならもしかしたら・・・・って来たんですよ。しかも季節に合わせたネタが良いんですよ‼そしてこの肉レープの名前の付け方‼この店主のセンスは素晴らしいと思います‼』

 

おいおいそんなに褒めるなよ。照れちゃうだろ。射命丸達には微妙な顔されたがわかる人にはわかるみたいだな。

嬉しくなって思わずサービスしちゃうじゃないか。

 

『お、それでは読みが当たりましたね。残りわずかですがありますよ‼』

『全部を三つずつください‼』

『全部三つですか⁉』

『はい‼   様も   様も懐かしくて喜んでくれますから‼』

『はぁ・・・とりあえず店主を呼ぶのでお待ちくださいね』

 

って客が来たら呼ぶって言ってたじゃないか・・・・。

 

「仁さん、お客さんが来ましたよ~」

「大まかに聞こえてたよ。知り合いが来たみたいだな。それに最後に大きい注文じゃないか、多分丁度売り切れるぞ」

「じゃあこれで終わりですか‼」

「そうなるな。さ、戻って最後にひと仕事しますか‼」

 

 

 

俺は分かっていた。多分伊吹さん達と初めて飲んだあの日からあの2人の反応を見て。

でも近づこうとは思わなかった。そのまま何もせず去ろうと思っていた。

多分会ってしまったら本当にどんな顔をすれば、どんな言葉を掛けたらいいのか本当にわからなかったし予想も出来なかったし自分で自分をコントロールできるかわからなかったから。

 

 

 

「お待たせしました~。ありがとうございます、すぐに作りますのでしばらくお待ちを・・・・・」

「っ⁉」

「あれ?二人ともどうしたんですか?」

 

 

 

この場に射命丸が居てくれた事に感謝しながらも、すぐには受け入れられなかった人物の名を口にする。

 

 

 

「早苗・・・・か?」

「仁さんっ・・・・」

 

 

 

―――――――――――――――それでも運命のいたずらか出会ってしまった。

 

 

 

                       ~鷹崎仁 幻想郷滞在期間 残り 9 日~

 

 

 




いつもの事ではありますが、最後まで読んで頂きありがとうございます。
おかげさまで投稿現在(2017年10月5日)UAが1500を超えるくらい読んで頂けている事に感謝しています。

・・・・・まぁ、俺のお噺が面白いというよりは完全に原作パワーなような気がしないでもないですが(笑)。
いつか俺のお噺が面白いと多くの方から言って貰えるようになれるよう頑張っていきたいと思いますので応援よろしくお願いします。

と言いつつ残りの仁君の期間はそう多くはないんですけどね~。

今回の射命丸は個人的にはグッとくる見せ場を作ったつもりではいます。
彼女は彼に何を言ったのでしょうね?想像して楽しんでもらえたら嬉しいです。
個人的にグッとくる感じ伝わるといいなぁ。
そして売り子姿の恥ずかしがっている絵を描いてくれる勇者はいないだろうか・・・・・・・。


はい、話を戻します。

そして今回のお噺でとうとう七夕の閑話以来、そして本編初となる東風谷早苗さんの登場回でした。
まぁ、そうなると次回は・・・・想像ついちゃうかもしれませんね。
お噺の初期から存在を匂わせてはいましたが、いつ出てくるのか不安だった皆さん。
安心してください、ちゃんと出ましたよ。そして出ますよ。
という訳で彼らがどうなるか、いやどうなってしまうのかお楽しみに‼

と言う訳で今回はここまでで筆を置きたいと思います。
俺では皆さん次回でまたお会いしましょう。さようならさようなら


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