東方与太噺   作:ノリさん

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久しぶりでございます、床が冷え込み過ぎるせいで足から感覚がなくなるノリさんです。

さて、私事ではありますが、おかげさまでUA2000達成する事が出来ました‼
当初考えていました半分以下のお噺で達成する事が出来ました‼

この様な初めて書いていて、しかも好き放題やっているお噺を読んで頂きましてありがとうございます。これからも精進して参りますので楽しんで頂ければありがたいです。

今回は後書きにおまけの小噺もありますので最後まで読んで頂けると幸いです。

それでは本編へどうぞ‼




I am

おぼろげな感覚の中にいる。体が動くわけでもないし、そもそも体と言う物が存在しているのかも怪しい。

 

目に映っているのは控えめに言って地獄絵図。

 

天は陰り、地は焦土と化し、水は濁り果てている。

人も妖怪も関係なくそこには死体やかつてそれらであった物のカスがあるだけ。

 

後は俺の視点であるところを憎らし気に見つめる数人の人影。

顔は鉛筆で塗りつぶされてしまったみたいな感じで見えない。

それでも向けられた感情はなんとなくだけど分かる。

 

これは誰の何だ?わからない。けれどわかる事が一つだけある。

 

 

 

 

―――――――――――これはきっと昔のお噺

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

 

あ~寝覚めわりぃ。はっきり覚えてないけどなんか気持ちのいい夢じゃなかったな。

ってここは水橋さんの家か。何かここに落ちて最初の事を思い出すなぁ。

・・・・・じゃないんだよなぁ。

もうね、色々ツッコミどころがある訳ですよ。

 

 

「おはよう。よく眠れたみたいね。さすがにあれから一日経っても起きないのには焦ったわ」

「え?俺一日以上寝てたの?」

「ええそうよ。薬を作った本人からはあらかじめ効能の強さは聞いていたか度ここまでとは思ってなかった。何ともなくて良かったわ」

「まぁ、それよりもね。気になり事があるんですが」

「何かしら?お腹減ったのなら何か作るけど?」

「確かに腹が減ってるのは否定しませんけどね」

「なら何よ?」

「これ何なんですか?」

 

ジャラッ

 

「見てわからないの?手錠と鎖よ」

「そんなさも当然のように言われてもなぁ」

「何が聞きたいのよ」

「そりゃ何でこんな事するのかだよ」

「・・・・・・なんとなくよ」

「・・・・なんとなくで拘束するなよ‼」

「とにかく‼大人しくしていなさい!外に帰る時はちゃんと返してあげるから‼」

 

あぁ、聞く耳も持たずに行っちゃったよ。

しかしこんなぶっとい鎖と、足にかなりの重さの鉄球って漫画の監獄でしか見た事ないぞ。

さっきから外してみようとしてるんだけどバレないようにしてるからかキツイ。

思いっきりやったら鎖ぐらいは引きちぎれそうだが今は情報を集めたほうが良いな。

俺の知ってる限りでは水橋さんは理由もなくこんな事はしないはずだからね。

 

何があった?薬を盛られる前の会話で違和感があったのは地底の事を聞いた時。

あの時は少し違和感を感じた。何だか触れられたくない話題に触れられた時の反応だった。

でも、地底で何かあったとして俺をここまでして引き留めるって何がある?

正直俺の知ってる地底と言う場所は、外敵が現れてもそうそう自分たちで処理してしまえるはずだ。

元々鬼とか妖怪の中でも嫌われ者や荒くれ者が集まる場所ではあるし、戦闘になればそもそも負ける事の方が少ないだろう。

最悪の場合でもさとりさん達が何とかしてるだろうし。

 

う~~~ん、わからん。

 

もう水橋さんが妬ましさを暴走させてヤンデレキャラにシフトチェンジした。

偶々その対象が俺に発動してしまって今に至るとかも・・・・・・ないな。

いや?あり得るのか?だとしたらそれはそれで困るな。

 

 

「何馬鹿な事を考えているのかしら?」

「なんでこんなことになってるのかをいたって真面目に考えていただけですよ」

「で、わかったかしら」

「今の所は水橋さんが妬ましさを暴走させてヤンデレキャラにシフトチェンジしたくらいしか思い浮かば⁉ってぇ・・・・・・」

「やっぱり馬鹿な事考えていたんじゃない。冷めないうちにご飯食べて」

「いただきます」

 

ここは大人しくしておこう。

意外と鎖に長さがあるから全く食べられないという事もないけど食いにくい。

結構ジャラジャラしてうっとおしいんだよなぁ。

 

「美味しいんだけどさ。何かこうずっと見られてると食いづらいんだけど」

「怪しい事してないように見ておかないとね」

「だったらさっきのうちにやってると思うけどなぁ」

「それもそうね。でも一応見ておくわ」

「・・・・まぁ、それはいいや。でもなんでここまでするんだい」

「何となくって言ったでしょ」

「何となくでするなら、水橋んさんが俺の事本気で嫌いなんだなぁって思うけど?」

「それはないわね。だとしたらわざわざ食事の用意もしないもの」

「それもそうだから違和感があるんだよ」

「でしょうね」

「教えてくれないかい?」

「無理ね」

「そっか」

 

水橋さんの意思がここまで硬いなら仕方がない。

短い付き合いでもこうなったら喋ってくれないのは分かっている。

でも、俺は何があったのか知りたい。

とりあえず目の前のご飯と、味噌汁と里芋と豚肉?の煮物を美味しく食べ終えよう。

 

 

「ごちそうさま。俺の知ってる可愛い女の子の中でも水橋さんはトップレベルの腕前だね」

「そんなに女の子の手料理を食べた事あるのかしら?」

「多くはないけど、少しはね」

「妬ましい」

「男としては女性の方から作ってくれたらいいんだけど、俺の場合は教えを請われることの方が多いからその仕上がりを見るために何回かね」

「どんな事であっても妬ましいわ」

「そうかねぇ・・・っとそろそろ行かないとね」

「どこによ」

「どこにってそりゃ自分のお店だよ」

「その拘束された状態で帰れるとでも?」

「あぁ、多分ね」

「例え移動出来たとしても、スペカを使ってでも行かせないわよ」

「ずいぶん穏やかじゃないな。何があった」

「貴方はもうじき外の世界に帰るのだから知らなくてもいい事よ」

「そうか・・・・・・」

「だから帰る日が来るまで二人でここでお話ししてましょう」

「大変魅力的な提案だね」

「諦めてくれるかしら?」

「無理だね。俺いろいろしたい事もあるし、あっちに置いてきた物もあるし」

「そうそれなら仕方がないわね。貴方の身体能力も上がったのも、能力も前に聞いたから知っているわ。でも拘束された状態で私に勝てるなんて思わない事ね」

「そうだなぁ。まぁ、手錠と足枷は鍵がないから完全にはとれないけど鉄球とか手錠をつないでくれてる鎖はこう・・・・・・ふんっ‼・・・とまぁ、引きちぎれるから問題ないとして」

「嘘でしょ⁉」

「ほんとなんだぁ」

 

自分でもどうかしていると思うけどね。

まさかここまで自分の体が人間やめてる成長をしているなんて思ってなかったよ。

 

「でも俺スペカでは戦えないからね~。悪いけどそうなったら困る」

「えっ、あぁ、そうね。そう簡単じゃないわよ」

「だからそうなる前に終わらせてしまえばいい」

「貴方何を言って・・・・・はっ」

「今一瞬意識を失いかけたな。って事は次で上手くいくかな」

「何をしたの?」

「俺の能力だよ」

「そんな能力はなかったはずよ‼」

「前まではね。いや元々そうだったけど俺が勘違いしていただけだったと言うべきかな」

 

ドサッ

 

水橋さんが床に倒れた。

 

「よし上手くいった。で、布団に寝かせて・・・・。置き手紙でも書いていくか。『手荒な真似して済まなかった。今度なんか考えとくから許して欲しい。あとごちそうさま。めっちゃうまかった。 P.S. あと小さじ一杯の砂糖と少し生姜汁をいれると煮物はもう少し丸くなって美味しくなると思うよ‼』・・・こんなもんで良いかな。さて、行きますか」

 

 

水橋さんが何を俺に見せたくなくてここまでしたのか確認しないとね。

ちょっと・・・・いや、かなり不安な気はするけどな。

 

 

 

**********

 

 

 

「なんじゃこりゃあ」

 

ほんとにそんな感じ。

数日前まで元気に営業してた店がなんか物理的につぶれてるし、ところどころ黒煙が上がってるし何があった⁉

おいおいおい、鬼の皆さんはどうしたんだ?酔ってても並大抵の妖怪じゃ勝てないようなのが割とぞろぞろ居るような場所だよ?

 

って俺の店は⁉まさかとは思うけど潰れてませんよね?

とりあえず急いで見に行かなきゃとは思ってるんだけど、これかなぁ・・・・。

 

これは潰れてますね。物理的にね。

はぁ、荷物は無事かなぁ・・・・・・瓦礫がどかさないと・・・・・って結構バラバラになってるなぁ。

 

おかげで探す手間は省けたような気はするけどさ。

あぁ~、あったけど木くずがすげぇなぁ。

 

中身は・・・・・・たぶん大丈夫だろう。

まぁ、大丈夫だろう、多分。

 

でも店が潰れるのはなんか悲しいなぁ。

いや、ほんとにこうなった事が残念でならないんだよなぁ。

ここに来てかあら俺の拠点だったわけだし、いろいろ思い出もあった訳だしさ。

 

 

さて・・・・・・・・何があったか誰かに聞きたいなぁ。

 

 

「あ、仁じゃないか?無事だったのか‼」

「おぉ、お燐さんじゃないか?そっちこそ無事だったのか」

「私達はね。でもさとり様は・・・・・・・・」

「俺の居ない間に何があった?」

「それは・・・・・・歩きながら話すよ。とりあえずさとり様が心配してたから会いに行ってほしい」

「わかったよ」

 

 

さて何があったのか聞くとしましょうか。もう相当に悪い事ってのは分かってるんだけどな。

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

「簡単に言うとなんか急に暴れる鬼が出て来た。あまりにもひどいからさとりさんが出たけど、心が読めずに撤退する事しか出来なかったって感じでいいのか?」

「大まかに言えばそんな感じさ」

「しかしさとりさんの能力は基本的に思考を行う生物であれ極稀な例外を除けばほぼ無敵なんじゃ?」

「それはそうなんだけど・・・・・なぜか今回は読めなかったのさ。それに鬼達が言ってたことがさとり様に刺さって今は地霊殿から出なくなったのさ。仁君に会う前みたいにね」

「何を言われたんだ?」

「それは・・・・・いや隠してもしょうがないね。鬼が言うには『ここんとこお前が出で来るせいで安心して酒すら飲めないんだよ‼みんなそう思って迷惑してるんだよ‼だからお前に対抗する力を手に入れた!お前はこの場所を治めている立場でももう俺らには勝てねぇんだよ‼お前はあの屋敷から出てくんじゃねぇ‼』ってね」

「それは何つーか、ひでぇな」

「今までこの場所を保つためにさとり様がどれだけの事をしてきたかわかってないのさ」

「まぁ、そんな事があってもおかしくはないけどさぁ。でもなんか話聞く感じだと、いつもの鬼とは違うよな」

「なんでかいつもより強かったと思う。少し戦ったけど、鬼が強いとはいえいつもの鬼とは違う気がしたよ。割とギリギリでさとり様を守りながら撤退できた感じだよ。仁君は強いからさ、悪いんだけど解決に力を貸してもらえないかい?」

「そうだなぁ。さとりさんには悪いけどその事聞かせて貰わないと俺からは何とも言えないな。確認を取りたい事もあるし」

「そんなぁ」

「いやいや、そんな心配な顔しなくても・・・・・。協力しないって言ってる訳じゃないんだし」

「そうは言っても怪しい言い方するからさ」

「ごめんごめん。で、さとりさんは?」

「いつもの部屋の中さ。二人きりで話したほうが良いだろうから一人でいって。・・・さとり様のこと頼んだよ」

「まぁ、やれるだけやるけどさ。なるようになるしかないから期待すんなよ」

 

 

ガチャ

 

 

そこには俺に顔を見せまいとしてい居るのか、椅子の背もたれ事俺にに背を向けていたさとりさんがいた。

 

「よう、久しぶり。なんか色々あったみたいだな」

「・・・・・・・・来ないでください」

「そうは言われてもねぇ。まぁ、概ねの事はお燐さんから聞いたけど、本人に直接聞こうと思ってきたんだ。それに俺の店もなくなって困ったからね。んで、体調はどうだ?」

「・・・・・体調は悪くないですよ。でも・・・・・」

「何か心が読めなかったんだって?原因が分かっているのか?」

「一応・・・・・・・。でもそれを仁さんに言う必要はないですよね」

「何か機嫌悪い?まぁ、いい気持ちは絶対してないだろうけどさ」

「なら来ないでください。今の私は何を言うかわかりませんよ」

「これはお気遣いどーも。でも、俺の事心配してくれるんだ」

「それは・・・・・・・仁さんが私を怖がらないで話してくれる大切な人だから・・・・・」

「ありがとう。でもさ、さとりさんそう思ってるように、さとりさんの事大切に思ってるのは俺も同じだし、俺以外にもいるよ」

「わかってます‼わかってますけど‼」

「怖いのか?」

「・・・・・・・えぇ、そうですよ‼怖いんです‼今までこの地底の為に働いてきましたよ‼私が最も嫌われるのが分かってたから、それでもここが守れるならいいって・・・・・・地霊殿に籠ってずっと・・・・・。色々ありましたけど、落ち着いて来た時に貴方が来て。心を読めなくしてくれる貴方のおかげで色々な物が見れました。心が読めずに戸惑いながらもいろんな人と話す楽しさ。外で遊ぶ楽しさ。外で食べるご飯のおいしさ。何より・・・・地底の人々の暮らしを直接じっくり見られて、楽しそうにしていて良かったなぁって。本当は私が出ている事で嫌がっている者がいる事もわかっていました。でも知れば知るほど、あと一回あと一回と、引き伸ばしてしまって」

「本当に楽しんでいたんだろう?それが悪い訳じゃないさ」

「でも!私が私の心に惑わされてしまったせいで私自身で壊してしまった‼」

「いや、今まで周りがさとりさんに甘えすぎてたって言うか・・・・・そんな感じするけどなぁ」

「でも結果は違います。鬼の皆さんにお前のせいだと言われ、周りの誰も否定しなかった・・・・・・。私はやっぱり・・・・ここから出るべきじゃなかった‼」

「・・・・・・・・・」

「もうどうしようにもないんですよ‼もう戻れない‼もう・・・・仁さんだっていなくなっちゃう・・・・・・もう二度とこんな馬鹿な事はしません。どうせいなくなるなら、もう放っておいてくださいよ‼」

「そうか・・・・・・」

 

 

俺にさとりさんの気持ちは分からない。

怒っているのかもしれないし、悲しんでいるのかもしれない、絶望してるのかもしれないし、失望してるのかもしれない。それでもまださとりさんは地底という場所を諦めきれていない。

自分の居場所が何にも残さずに消えてしまった俺とは違って、まだ諦めきれない場所が目の前にある。

だったら、もしさとりさんが何とかしてほしいと思うなら俺は何とかして見せよう。

きっと何とか出来てしまうから。いつもそうだったように。

だからこそきつい聞き方をしても確認しなくちゃいけない。

 

「ならその言葉を俺の顔を、目を見てもう一度言ってくださいますか」

「⁉」

 

きっと普段と違う言い方をしてるから驚いたのかもしれない。

まだそれを感じれるだけの心の余裕はあるみたいだな。

 

ギッ

 

椅子がこっちを向いた。声の調子から察してはいたけどなんだかやつれて見えた。十分に寝られてなかったのだろうか?

ってか酷く何か怖い物を見るような目で見ているのは気になるがそんなに怖かっただろうか?

ちょっとショックなような・・・・・いや、ここはしっかりしないと。

 

 

「そんな事を言った鬼が憎いですか?」

「・・・・・・」

「そんな事を言った鬼達を止める事もせず、否定もせずただ眺めるだけの住人達が恨めしいですか?」

「そんな事は・・・・」

「でも怖かったでしょう?恐ろしかったでしょう?皆さんあんなものですよ。それでも殺したいと思いませんか?壊したいと思いませんか?」

「何を言って・・・」

「そんなに怖いなら殺すなり壊すなりすればいいじゃないですか。少なくとも俺やこいしちゃんは除いて貴女はそれを行えるだけの力がある」

「でも‼」

「でもではなく‼貴女はそれだけ辛い思いをしていながらなぜそこで我慢するのです‼貴女は今までどれだけこの地底の為に働いてきたのですか?彼らはただその苦労も知らずのうのうと好きなように生活しているだけですよ?それなのに貴女を傷つける‼貴女が力を示せば誰も文句を言わずに暮らし、この地底で貴女は傷つかずに済んだではないか」

「・・・・・・」

「それに心が読めなくても貴女のペット達がかかれば倒せたのではないですか?まぁ多少の犠牲は出たかもしれませんがね」

「やめて・・・・」

「さぁ、そう考えれば解決するじゃないですか?そうしてしまいなさい。貴方が頑張って作り上げた世界に住み着きながらも、貴方を傷つける者は排除すればいい」

「やめてください‼」

「?」

「私は・・・・私は自由でありながら調和のとれた素敵な場所にしたかっただけですし、これからもそうなるように生きたいだけです‼私を傷つけるからと言って排除なんてしようとは思いません‼だから、貴方の言うようなことは絶対にしません‼この地底を治める地霊殿の主として‼」

「本気ですか?また同じ苦しみを、もしくはこれ以上の苦しみを味わうとしても同じことを言い続けられるのですか?」

「本気です。何度傷つくことになっても、私は・・・・・私の意志は変わりません‼」

 

 

・・・・・・息を飲む事すら忘れてしまうくらいに美しいなぁ。

この小さな体で今までどれだけの苦労などをを背負ってきたのだろうか?

きっと押しつぶされたりしても何度でも立ち上がってきたのだろう。

それだけの強さがこの体の中にある。その在り方がただひたすら美しいと感じてしまった。

っていかんいかん。本題に戻さないと。

 

 

「・・・・・・そっか。よし、やっと少しは立ち直ったみたいだね」

「仁さん?」

「そんなに怖がらないでくれよ。さとりさんには悪いけどショック療法みたいなものだよ。おかげで自分の意思を自分の言葉で言えるくらいには持ち直せたみたいだし、上手くいって良かった~」

「ほんとにいつもの仁さんですか?」

「そうだよ?そんなにさっきの怖かった?」

「・・・・はい。なんだかとても怖かったです」

「顔が無駄に強張ってたかなぁ。いかんな、もう少し柔らかくしとかないと」

「ぷっ、違いますよ。顔もありましたけど雰囲気とか全て合わせて怖かったんです。でも今はいつもの仁さんって分かったから大丈夫です」

「そうかよかったよ。ほらこっちおいで」

「なんですか?」

「良いからこっちおいで」

 

 

何も疑ずにこっちに来たな。よしよし。

こういう時にやる事は1つ。

 

 

「ななな、なにを?」

「今ここに居るのは俺とさとりさんだけだ。それに俺にはさとりさんの顔は見えないから大丈夫だよ」

「・・・・何をですか?」

「辛かったよな、怖かったよな。だけどずっと何とか納得しようと無理してたんだよな。だけどもう無理しなくていい。泣いていいんだよ。泣いて全部吐き出しちゃいな」

「っ⁉・・・・・仁さぁん、私・・・・・」

「よしよし、何も言わなくていいから・・・」

 

 

さぁ、さとりさんの意思は聞けたし。上手くいくかわからないけど俺の考え得る最善案に則って行動を開始しよう。

 

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

ガチャ

 

 

「さとり様は?」

「おぉ、お燐さん。ずっと待ってたのか?」

「まさか。たまたま確認しに来ただけさ」

「そっか。さとりさんはいっまはぐっすり寝てるよ。相当疲弊してたから無理もないけど」

「最近お休みになられてないみたいだったから安心したよ。で、協力してくれるのかい?」

「もちろん。条件付きでだけどね」

「条件って?」

「俺にはこの状況を何とかする最善案がある。それを忠実に実行してほしい」

「そんな事かい?それは構わないけど・・・・」

「もし出来ないなら俺は協力できないし、もし本番でズレるようなことがあったら俺はその時は何するかわからないから覚悟しておいてね」

「っ⁉わ、わかったよ」

「よし。じゃ、さとりさんから心が読めなかった原因みたいなことは聞けたし、作戦会議と行こう。お燐さんと・・・あとは萃香と勇儀に・・・・・水橋さんにも協力を頼まないとなぁ」

「じゃあ、橋姫は任せようか?あたいは鬼の2人を探してくるから」

「いや・・・、あの、この錠とか水橋さんに付けられたんだよね・・・・」

「あぁ、それならアタイは橋姫の方に行ってるよ。何なら鍵もとっておくさ」

「無理しないでくれよ。じゃ、俺飲み屋街行ってくるわ」

「どこで会議するんだい?」

「まぁ、そんなに時間はかからないと思うからどこでも。さとりさんには聞かれないようにしないといけないから・・・・いや、鬼の二人を連れて水橋さんの家に行こう」

「わかった」

 

さぁ、また忙しく動くことになるぞぉ。

 

 

 

************

 

 

 

~ 水橋さんの家 ~

 

 

真剣に頼み込んだ結果なんとか家に入れて貰え、錠も外して貰えた。

いやぁ、萃香達に見つけた時に笑われるは、お揃いだなんてからかってくるからちょっと困ったアクセサリーも消えて一安心。

 

んで、さとりさんお空さんを除いて作戦会議。

お空さんを呼ばなかったのは多分言っても難しいだろうし、言わないほうが良い動きをしてくれそうだから。

さとりさんを呼ばなかったのは彼女自身が自分の意志で決断してもらった方がリアリティが出ていいと思ったから。

 

俺のプランを聞いた皆はだんだんと顔が曇っていく。

まぁ、気持ちのいい作戦ではないからなぁ。

でも、いろんな意味でこれは最善策だと思う。

地底も今までと似たような形に出来るだろうし、さとりさんの在り方を地底に住む妖達に示し、かつ俺に都合のいいように事を運べる策というか案かな。

 

 

「なぁ、仁さ。ホントにこれをやるのか?」

「もちろんだよ萃香。そのためにみんなを集めて話してる訳だからね」

「アタシは反対だよ。もっといい案があるはずだ」

「でも・・・・他に方法があるかと言われたら・・・・・悔しいけどメリットが多くあるのはこの案よね」

「おい、パルスィ‼」

「考えてもみなさいよ。それとも他にいい案があるのかしら?」

「でもっ‼」

「勇儀が反対なら別に参加はしなくてもいい。但しこの事は他言無用だ。それくらいは協力してくれよ」

「でも、お前さん自体はそれでいいのかよ‼」

「良いんだよ。俺が自分の意思で選んだものだからな」

「後悔しても知らないからな‼」

 

 

ビシャ‼

 

 

「あ~あ、怒って行っちゃったな。まぁ、しょうがないからここに居る場にいる人たちは実行してくれる人達ってとこで良いんだね?」

 

「・・・・・そうね」と、水橋さんが言い。

「それがさとり様の為になるなら・・・」と、お燐さんが頷き。

「仁の頼みならしょうがないな」と、萃香が目を伏せる。

 

 

「じゃ、伝えたとおりに頼む。決行は明日の夜21時で。俺はこれから準備があるから、時間までは休むなり好きなようにしてくれ」

 

 

さて、こんな時間だけど竹林の方に駆け出しますかぁ。

 

 

                       ~ 鷹崎仁 幻想郷滞在期間 残り6日  ~

 






〈おまけ なぜ彼が繋がれたのか?〉

~ 水橋さんの家 ~

鍵を外してもらっている時にちょっとした話になった。
勇儀さんから始まったのだ。

「なぁパルスィ、どこでこんなゴツイの手に入れられたんだい?」
「何か怪しい商売人みたいのが押し売りに来たんだけど新素材使ってて丈夫だけど、お試し価格で売ってあげるよって言って本当に安かったからつい・・・・・」
「物騒すぎるだろ。ってかどんだけ切羽詰まってたんだ・・・・」
「そ、それは・・・」
「しっかしさぁ。薬を盛って、拘束って穏やかじゃないよねぇ」
「萃香の言う通り穏やかじゃないと思ったし、ものすごく焦ったよ」
「ごめんなさい」
「いやいいよ。もう終わった事だからね」
「とは言っても何でそんな穏やかじゃない事を?事によってはさとり様に報告しないといけないけど?」
「それは・・・・」
「きっと、あの店の状態とかを見せたくなかったんじゃないかな?多分俺にショックな所を見せたくなかったんだと思うよ。ね?」
「・・・えぇ、そうね」(・・・・言えない。見せたくなかったのは合ってる。・・・・けど私だけ名前で読んでもらえないのが不満だったから、これを機に最後くらい名前で呼んで欲しくて一緒に居たかったからなんて言える訳がない・・・・)
「ん?どうしたの水橋さん?」
「・・・・・なるほどな」
「何がかしら?」
「良いか水橋パルスィ。良い事教えてやるよ。仁を留まらせるならな拘束するなんて真似しなくても良いんだぞ?」
「萃香何言ってんの?」
「じゃあ、仁さ。・・・今夜は貴方とと一緒に居たいの・・・・・って言われたらどうする?」
「良いのか?それみたいな男が泊まっていっても?って言うかな。それでおけーなら泊まってくかな。今の台詞破壊力やべぇな。演技ってわかっててもドキッとしたぜ」
「な‼わかったか?」
「・・・・妬ましい」
「は?」
「目の前でいちゃついて妬ましいのよ‼」
「え?は?うん?ちょっと何言ってるのかわからないですよ、水橋さん」
「もう一度鎖で繋いでやろうかしら・・・」
「そんな怖い事サラッと言わないでくれませんかね‼良いから作戦会議始めるよ‼」
「妬ましい妬ましい」

何で謎の妬ましいを連発するんだこの人は‼

「はい!錠も外れた所で作戦会議始めるぞ‼」
                    
                〈おまけ なぜ彼が繋がれたのか?〉 -終-

                                          
〈ここからが後書き〉

毎度最後までお読みいただきありがとうございます‼

今回のお噺は初めて英語単体でのタイトルとなりました。
さてどういう意味で、誰を表しているタイトルだと思いますか?
今までも偶にそういったタイトルを付けているような気がするので、そう言った点にも注目して読んだり、読み返して頂けると各々の物語像が見えて来て楽しいかもしれません。

前書きにも書きましたがUA2000越え達成しました。とてもありがたいですね。
元々は初めての二次創作作品ですので、不安などの方が圧倒的に多い中で続けているお噺です。しかし、「50話くらい書いたらやっとUA2000とか行くのかなぁ」なんて当初考えていましたので本当に半分以下で達成してしまい驚きました。
お気に入りしてくださっている方も徐々に増えていきまして、大変励みになっています。

さて、次のお噺はUA2000達成記念といたしまして、Twitterで閑話が良いか丸々おふざけの特別編のどっちが良いかをアンケートを採りました。

結果、閑話を書く事になりました。
仁君の大学生活で起こった事のお噺となります。
以前からその存在を匂わせていた?東方において大学に縁のある人物と言ったら・・・。恐らくお分かりいただけたでしょう。

閑話の方は少し自分の中でまとめるのが難しいお噺なのですが、なるべく早く投稿したいとは思います。
が、遅くなってしまうことを覚悟して頂ければありがたいです。
その間は、また最初から読み返して待っててくださいね‼(唐突なダイレクトマーケティング感)

もしお噺が面白いと思ってくださったら、感想など頂けると嬉しいです。
また、Twitterの方ではくだらない事からアンケートまでいろいろ呟いております。気分でツイキャスなんて物もやっていますので、もしお噺が面白いと思って頂けたりしたらフォローをよろしくお願いします。

さて、長くなってしまいましたが、今回はここで筆を置きたいと思います。
UA2000という自分の中で大きい数字を達成できたのも、読者の皆様のおかげであります。
今後とも楽しんで頂けたり、応援などして頂ければ幸いです。

それでは次はUA2000達成記念の閑話でお会いしましょう。さようならさようなら。

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