東方与太噺   作:ノリさん

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寒い、部屋の中が寒すぎる、お久しぶりです。ノリさんです。

皆さんは如何お過ごしでしょうか。これを投稿する時の自分は、雪の積もり方が数年ぶりに厳しく、また雪のせいで部屋が冷えまくり暖房をかけてもさほど温まらないと言う地獄絵図になっております。

最近投稿ペース落ちてきちゃったな~と思いつつ、同人誌用原稿とか仕上げたり課題が多かったりしてあんまり進まないのも無理ないよな~と思いつつ、寒いと行動が鈍くなっていました。出来るなら前の半分くらいには戻せたらいいよなぁ。

さて、久々の本編で忘れられてるかもしれませんが、その時は本編の前のお噺を改めて読んで頂けると幸いです。

それでは本編へどうぞ!


たとえそれが  であったとしても

 

 

~ 水橋パルスィ宅  決行三十分前~

 

 

さて、もう時間か・・・・・。

思ってたよりも必要な物の準備が早く終わった。竹林の医者から思っていたよりすんなり頼み事の返事と薬を貰えたし、文にも頼み事は済んだし、手紙も書いて、ちょっとした検証も終わった。

 

んで時間が出来たもんだから、ふと思い出したので急遽以前萃香に約束していたもの・・・・・・・って訳じゃないけどそれに近い物をちょっとした巻物にしての渡してきた。悲しげな顔をしていたようにも見えたが、物自体は喜んでくれたみたいだ。

 

このまま寝ずに行こうかと思ったら水橋さんに怒られて無理矢理横にさせられて二時間ほど畳で寝ることになった。

まぁ、そろそろ起きるかな。

 

「起きたのね。何か飲む?」

「じゃ、水貰えるか?」

「わかったわ、今持ってくるから待ってなさい」

「ふふっ」

「何よ?そんなに何かおかしかったかしら?」

「いや、最初にこの幻想郷に来た時の事を思い出してさ。もうあれから一ヶ月経ったんだなぁって思ってさ」

「・・・・早いのね。もうそんなに経ったのかしら」

「そうだよ~。あの時はいきなり天から落ちて、落ちた先で初めて会った娘は可愛いと言っただけで顔赤くしてさぁ。気を失って、看病されて、幻想郷の事を知って。で、この家から逃げて、鬼と飲み、覚と出会い、ひょんなことからお店をやる事になって、最初のお客様には食い逃げされてたかもしれなし、いきなり取材に来るわ、いきなり決闘する事になるわ、お寺に行ったらセクシーライダーが真面目にいろいろ質問してくるわ、似合わないキューピットやる事になるわ、鬼と色々あって、人里のお祭りの屋台で稼ぎまくって、もう二度と会えないと思っていたやつらにも会えた。細かい事言えばまだまだいろいろあったんだけどな。すっげぇ楽しかったし、内容の濃い一ヶ月だったぜ」

「何個か知らない話もあって、随分他の所でもお楽しみだったみたいね。妬ましい」

「ほんとに何でも妬ましいんだなぁ」

「何よ見境なしって言いたいのかしら?」

「いや、嫉妬のお姫様ならそんなもんなんじゃない?」

「そう。・・・・・妬ましいわね‼」

「本当に見境ないね‼あっはははははは」

「悪かったわね‼」

「ふぅ・・・・・・・。さて懐かしむのもこの辺にしてそろそろ行きますかね」

「・・・・・本当にやるの」

「まぁ、そりゃな。多分これが最適解だよ」

「やっぱりやめましょう。こんなやり方間違っているわ」

「かもね。でも今更止まれる訳ないだろ。他の人達だって決行に同意してくれてるんだ」

「それは本心で納得してると思うの‼」

「違うだろうねぇ。あの作戦を話した時の皆の顔を見ればさ」

「だったら!」

「それでも結局それが一番色んな意味で都合がいい結果を得られる可能性が高いからね」

「だからってみんなの気持ちを無視しても良いと思っているのかしら?」

「でも、あいつらはそれで良いと言った。だから無視なんてしてないよ。彼女らだって大人だろうし、上手い事折り合い付けてやってくれるだろ」

「じゃあ、貴方の気持ちはどうなのよ。そんな事したいなんて思ってないんじゃないの⁉」

「そりゃ、これより良い形で終われるなら、そっちのほうが良いさ。正直俺からしてもあまり気持ちのいい作戦じゃない」

「それならもっと考えましょう。きっといい案が出てくるから」

「それはダメだ。時間がない」

「だって・・・・」

「良いんだよ。それをした結果俺がどう言われようとさ。作戦言った時には『さとりさんがこの地底を自由に歩けるようになるかもしれに方法だから』って言ったけど、一番の理由はそれじゃないんだよ」

「どういう事?」

「一番の理由はさ。この状況を利用して俺が自然に、この地底から去っていく事が出来るからさ」

「え・・?」

「別にさとりさんが地底を自由に歩けるようにするって為なら、人気的なのを高めればいいんだよ。でもさ、今回の作戦の方が自然と地底から去れるだろ?どうせ俺はいなくなるんだから何言われようが関係ないしな」

「確かにそうかもしれない。でも間違ってるわよ」

「それでもやるさ。それが俺自身が出した答えだからな。じゃ、そろそろ行くわ」

「待ちなさい!」

「止めてくれるなよ。これが俺なりにできる地底への恩返しなんだからさ」

「っ‼」

「それに大切なラストを任せてるんだ。信頼してるぜパルスィ。じゃ行ってくるわ」

 

 

さぁ、目薬点眼して行こうか。気分がよくない分しっかりと、成功させないとな。

 

 

「そんな顔してそんな事言われたら・・・・止められるわけないじゃないっ」

 

 

小声でなんか聞えたような気がするけどそれは聞こえないフリして、行きましょうか。

 

 

 

**********

 

 

 

「はっははは、俺たちがこの地底で最強じゃい」

「おう、まさかあの古明地さとりがなんも出来ずに逃げ出すようなことになるなんて思ってもなかったわ」

「あのあんちゃんいいもんくれたなぁ。おかげで酒が上手い」

「やぁ、鬼のお兄さんたち随分景気がよさそうじゃないか。俺の店に被害を出したのはお前らで間違いなさそうだな」

「なんだてめぇ。お前みたいな人間がえらそうな口を利いてんじゃね~ぞ」

「今の俺らは最強だからなぁ、謝るなら今の内だぜ」

「あのねぇ、俺が謝る訳ないでしょ。今日はお前らを俺の前で泣いて謝らせに来たんだよ」

「あ?」

「ははははっ、面白い事を言うな、人間風情が」

「ふっ」

 

いきなり殴ってくるなんて随分野蛮だな。

まっすぐ俺を貫くいいパンチだ。

 

パンッ

 

「外に出ようか。店に迷惑かけんじゃねぇよ」

「止めやがった・・・・⁉」

 

でも外に出た段階で臨戦態勢の俺に当たる訳ない。

 

 

とりあえず、外に出た。

俺と鬼が対峙する。あくまで俺は日本人の中で身長がかなり高いほうってだけで、男性型の鬼と向かい合えば俺が小さく感じるかもしれない。って言うか小さく見えるね。

 

「さ、なめた口利いた罰は受けてもらうぜぇ」

「いやいや、留守の間に勝手に家壊されたら誰でもキレるでしょ」

「はははは、それで俺らに謝れってか?ほ~らごめんごめん」

 

ゴッ

 

「まず一人。鬼でもこめかみにもろに入ったら気絶はするみたいだなぁ」

「一撃・・・・・・」

「こいつ、ただの人間じゃないなぁ。なんか変なもん使ってきやがる」

「単純に殴っただけなんだよなぁ」

 

まぁ、こんなのはどうでもいい。

 

「聞きたい事がある。あんたらのその首から下げてる変な物は誰からどうやって手に入れた」

「あぁ、飲んでたら気の良い兄ちゃんがくれたんだよ。これで心が読まれないってな」

「おかげであの覚妖怪に勝てた。この地底でなぁ、覚妖怪に勝てたら、一番つえーんだよ」

「そうかそのお粗末な頭で考えた結果がそれか」

 

さとりさんってやっぱすごいんだなぁ。あんな小さな体にそれだけの責務とかいろいろあったんだと思うと、やっぱ余計にこいつらを許せないんだよなぁ。

 

「まぁ、いいや。まとめてかかってこい。話はそれからだ。とりあえず十秒待ってやる。それまでに俺を殺さないとゲームオーバーだ」

「満足したか。それじゃあ、死ねやぁ!」

 

これまたいいパンチ。そして連携の質もかなり高い。多分昔組んで戦かなんかしてたのかなぁ。

地霊殿のペット二人と戦った時も、なかなかの連携だったけど、あれはあくまで撃退するための戦い方だった。

でもそれとは違って、今のは正真正銘殺してきている戦い方だ。

 

避けて避けて避けて避けて避けて避けて。

でも今の俺は当たらない。ここに来てからずっと身体能力は成長しっぱなしだったんだ。この程度なら余裕で見える。

 

あぁ、楽しいなぁ。それでも強い人間と手合わせするのは何て楽しいんだ‼

 

「『それでもまぁ、この程度か』」

 

「なんだこいつ。まったく攻撃が当たらねぇ」

「もっと本気で殺すぞ‼」

「もう十秒待ったぞ。お前らの負けだ」

「は?」

 

ヒュッ、バタリ

 

「なっ!?」

「次はお前だ?」

「ま、待てよ。話し合おうぜ?」

 

都合が悪くなればすぐに手の平を返す。

人間も鬼も変わらんと言う事か。

 

「駄目だね」

 

ヒュッ、バタッ

 

これで心が読めなかったと言われる三人は抑えた。これから原因を取り除かないとね。

胸のお守りを引きちぎってみると、なるほど心の読めない仕組みが何となくわかった。

 

このお守りには、俗に言う邪念のような物が込められている。

この強すぎる邪念によって心の表面が隠れた事によって、さとりさんは心が読めなかった。

なるほど、おまけに邪念だから凶暴性なども増してもおかしくなさそうだ。

 

原因はわかった。後は体に残ってる邪念を取り除くだけだ。

今こそ俺の能力の本当の力を使う時だな。本当の力って言っても本質は変わってなくて、俺が勘違いしてただけってオチなんだけどね。

 

今まで俺は遊び・童謡を力に変える程度の能力だと思っていた。

でも違う。俺の能力は「奪い・とる程度の能力」と言った感じだ。

簡単にまとめると

  

〈童謡・わらべ歌〉

 

かごめかごめ → 対象の後ろ(死角)に立つ → 『対象の後ろ(死角)をとる』

とおりゃんせ → 対象AとBを選択し、Aは俺よりBに近づけなくなる。もし近づいた場合は強制的に俺より離れた位置に移動する → 『接近の自由を奪う』

はないちもんめ → 対象の能力等、何か1つだけ使用権を俺に移す → 『対象の能力等、何か一つだけ奪う』

ほたるこい → 対象(複数選択可)の注意を全て俺自身に向けさせる → 『視線を奪う』

 

〈遊び〉

 

鬼ごっこ → 俺が鬼役となり対象(複数選択可)を設定し、どこに隠れたり逃げたりしても場所が分かり追跡可能になる → 『逃げ場を奪う』

目隠しだ~れだ → 対象の目を手で塞ぐことで何も見えなくなる。副次的効果な使い方としてサードアイのような目に能力がある場合はそれも封じる事が出来る → 『視力を奪う』

落とし穴 → 場所と規模と深さを設定したらすぐに落とし穴が出来る。大きめの鬼が入るような穴なら同時に5つまで作成可能。大きい物を作るほど同時に作れる落とし穴の数は減る。ふんだら落ちるそれだけ。解除したら何事もなかったかのように穴は元通りになる → 『足場を奪う』

だるまさんが転んだ → 選んだ対象(複数選択可)に俺が背中を向けていると対象は動けなくなる。副次的効果として発動タイプの能力の使用を封じる事も可能。→ 『行動の自由を奪う』

 

 

まぁ、たまたま童謡とかがキーになってただけで、今の俺は 奪う とか とる とか思えば何でも奪えるようになってしまっている。・・・・・俺と言う人間の醜さの体現みたいな能力だ。性能的には何ともチートみたいなものである。まぁ、俺の聞く限り大体みんなチート能力みたいなもんだけどさ。

 

つー訳で体に残ってる邪念を取り払う。まぁ、本当にこのお守りから感じる邪念と同じものをとるだけでいいんだけどさ。

 

・・・・・・・・・はい、三人分とれた。奪い・とる能力なので奪ったりしたものは俺に来るが、俺にこの程度の邪念なんてどうと言う事はないらしい。何か変化が起こったりはしないようだ。

 

さて・・・、そろそろ気絶してる状態から起きる頃合いかな。

正直ここまでやればいいんだけど・・・・、まぁ、余計な事かもしれないけど俺のやれる事をやろう。

 

 

「うぅん、ここは?」

「お目覚めのようだね。覚えているかい?君たちが行った愚行を。そのせいで建物が壊れるわ、怪我人は出てくるわ。おまけに一番傷つけちゃいけない人間を傷つけた」

「・・・・・・あぁ悪かったよ。酒の勢いとはいえ酷い事しちまったからな」

「都合よくお守りなんて物手に入ったから調子乗っちゃったみたいだ。まぁ、あのお守りくれた兄ちゃんに上手い事乗せられたのかなぁ」

「そんな事はどうでもいいんだ。俺はな、筋の通らない事をされるのは嫌いなんだ。今までお前らが好き勝手やってきたこの場所を守ってきたのはどこの誰だ?お前らが何の仕事もせずに勝手に怨霊共が大人しくしてくれているとでも思っているのか?」

「そりゃ、確かに地霊殿の奴らのおかげだが・・・・・・。だけどな、やっぱ覚が外を出歩くなんて怖いし気を遣っちまうんだよ」

「そうだこの数日どんだけ気を遣って酒を飲まないといけなかったか」

「地底の皆だってそう思ってたからこそ止めなかったんだろ!」

「そうか・・・・・。まぁ、これは俺が許せないからやるだけだから関係ないけどさ。お前ら、鬼のくせして言う事は小さいのな」

 

「は?っいてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

いきなり腕と足の関節をつぶした。ぐしゃりと、拳で。

 

「いいか。散々して貰っておいていい思いして、自分は嫌な思いするのが嫌だから我慢しないために傷つけるのは許されるとでも?そんな訳ないだろ?そんなのが通じるなら地獄も何もいらねぇんだよ。ほら、残りの二人も覚悟しろよ」

 

「アンタいい加減にしな。ちょっとやり過ぎなんじゃないのかい?」

「まぁ、流石に同族が一方的になぶり殺されるのはいい気はしないしさ。これ以上やるなら私も止めさせてもらうよ」

「萃香に勇儀か・・・・。邪魔すんなよ。そいつらはその程度じゃ許されない事をした」

「アンタの言う通りこいつらは許されないことしたし、この期に及んで何と思まぁ情けない事言ってるよ。でもね、これ以上アンタのやり方には賛同できないよ」

「そうそう。いくらなんでもいきなり関節潰すなんてさ。いたぶって殺す以外考えらんないじゃん。さすがにそれは放っておけないな」

「勇儀姐さん・・・・」

「お前達を助けた訳じゃない。アイツの言う通りアンタらは許されない事をした事に変わりないからね」

「そうか・・・・・・。ならまずはお前たちをどかして、その鬼達を処分する」

「いいよ。仁がどんなに強いかはしてるけど私達も相当強いからね」

「今まで誰のおかげでこの肉体が成長したと思う?それは萃香と勇儀、君たちが手合わせしてくれたからだろう?」 

「残念ながらアタシは・・・いや、アタシらはかな」

「そう私と勇儀は仁に対して本気を見せた事はないからね」

「そうか・・・・。まぁ、いいや。かかってこい」

「じゃあお言葉に甘えて‼」

「がぁっ⁉」

 

 

見えなかった。俺の目ですら追えなかった。これが鬼の本気か‼でも多分これは鍛え得てきた勘なのかわからんが無意識的に体をずらして致命傷は避けたらしい。

くっそ、壁に叩きつけられた。痛いし、なんか体の中ぐちゃぐちゃになった感じするし、血反吐いてるし、散々だけどすぐに体が治そうとしてるのもわかる。

まだまだやれる。

 

「さすが鬼の中でも最強と謳われる星熊勇儀だなぁ。かなり痛かったぞ」

「へぇ、まだ立てるんだ。次は外さないよ」

「ははは、もう一発入れさせると思ってるのか?」

「相手は勇儀だけじゃないよ‼」

「萃香⁉」

 

いつの間に後ろに⁉

 

「いよいっしょ~!」

 

これは‼萃香の能力で空気を集めて打ち出している‼

また大ダメージって所か?

俺の体の治癒の速さも考えてまだやれる。まだやれるだろう。

 

 

「まだだ。まだこんなもんじゃ俺を倒せねぇぞ‼」

「人間にしてはしぶといなぁ」

「まぁ、アタシ達が少し鍛えたとはいえ流石だね」

 

「何をしているのですか‼」

「さとりさんか・・・・・・・」

 

お燐さんはホントいい仕事する。さとりさんが優秀って言うだけな事はあるよ。

予定通りさとりさんとお空さんを連れて来てくれたみたいだね。

 

「やぁ、さとりさんご機嫌いかが?ちょっと邪魔しないで貰える?」

「なんでそんなボロボロなんですか!」

「さとり、近付いたらダメだ。今のアイツは鬼を殺そうとしてる」

「え・・・?何かの間違いですよね?」

「間違いじゃないよ。ほら、そこで悶絶してるやつの傷はアイツがやったものだからな」

「ねぇ、仁さん。何かの間違いですよね?あんなに地底の皆さんと仲良くしてたじゃないですか」

「うん、まぁ、そうだね。でも俺がそこの鬼に怪我を負わせたのは事実なんだよねぇ」

「そんな・・・・・・」

「いやぁ、俺ってさ、俺から見て筋が通らない事は嫌いなんだ。だから、店を壊してくれたことも、今まで地底の為に働いてくれてるのに、嫌われている事を知って引き籠り、それでもなお地底の為に居ようとするさとりさんを否定する奴らは筋が通ってなくてイラつくんだ。だから、全員処理する。俺にはそれを実行するだけの力と覚悟ってものがあるんでね」

「さとり様⁉」

 

う~ん、ショックが大きくて倒れかけたか。

ただここで倒れられると話が進まないから・・・・・・・。

 

 

「このスキ頂いたぞ‼」

「あっ⁉」

「しまった⁉」

 

勇儀に萃香も俺がこんなスピード出すなんて予想して無かったろうな。

傍からみりゃ満身創痍なのに変わりはないし、人間が出せる程度のスピードはとうに超えたからな。

 

 

ゴキッ!

 

 

「いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇよぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「二つ!・・・・・って流石に三つめはとらせてくれないか」

「当たり前だろ!お前にこれ以上やらせるわけにはいかないよ‼」

「それなら萃香‼お前は俺をどうするんだ?」

「殺してでも止めるよ。それが鬼のやり方だ」

「アタシも一緒だよ萃香。本当にこれ以上はやらせるわけにはいかないからね」

「お燐、お空・・・・・・・・貴女達も勇儀たちと協力して仁さんを殺してでも止めなさい」

「さとり様・・・・・」

「本当に良いんですか?」

「・・・・・構いません。もしこの地底を脅かすのであれば仁さんであっても容赦はしません」

「おや?さらに二人戦闘に参加かい?おいおい、俺のする事はさとりさんにとっても悪い話じゃないんだけどねぇ」

「確かにそうです。私の苦労や気持ちを知らずに、好き勝手に暴れて、この地底の秩序を乱すのであればそれを排除するって選択もありますね」

「だろう?」

「けれどそれは私が選んだ選択の積み重ねが招いた結果です。その責任は私自身でしっかりとります。それに私の理想はこの地底を自由でありながら調和のとれた素敵な場所にすることです‼地底の平穏をを乱すのであれば仁さんでも容赦しません」

「そっか・・・・・・。それなら俺はこの場から逃げさせてもらうとしよう。さすがに鬼二人とさとりさんのペット二人をまとめて相手したら俺もただじゃすまないしな」

「どうやって逃げるつもりだい?」

「そりゃあ、もう。ここら一帯の明かりを奪わせてもらう(・・・・・・・)

 

世界が暗転する。俺がこの一帯の明かりを全部奪ったから。

皆は戸惑っているみたいだが、俺は竹林の薬屋で貰った『暗闇でも目が見える目薬』を点眼しておいたからな。

 

マッハで逃げるよ。あんまり長くはこの広範囲の明かりを奪っておくのはしんどいからね。

この能力、まだ返せるだけマシな能力なのかもな。

 

********

 

 

ここまで来たら、後はパルスィから鞄を貰うだけだな。

 

「はっ、っはぁ、はぁっ」

「仁、鞄よ」

「サンキュー。じゃあ、さよならだ」

「ちょっと待ちなさい」

「袖引っ張って、なんだよ。悪いけどなかなか余裕はないんだ」

「いいから。そのね・・・・・私、アンタの事好きよ」

「俺もだよ。じゃなきゃこんな事頼めてないよ」

「違うわ。その好きじゃなくてアンタの事、男として好きなのよ」

「・・・・・悪いけどその気持ちには答えられない。決してパルスィさんが魅力的じゃないって訳じゃないし、むしろ嬉しいんだけど、俺がその気持ちを理解出来ていないからさ。ごめんな。ほら、それに俺もう帰っちゃうしさ」

「帰るのくらいわかってるわよ。ただちょっと・・・・・・・・貴方を困らせたかっただけだから気にせずに行きなさい」

「そっか。じゃあ行くわ」

「忘れないで。この地底が貴方の居場所じゃなくても私は貴方の味方だから‼」

「ありがとな‼また機会があったら会おうぜ‼」

 

 

俺の採った手段はある意味では信頼してたから出来た事だ。

 正解 だったのか、それとも 誤り だったのか。それは俺にはわからないし、誰にもわからない。

でも少なくとも彼女に少しでも恩返しができたならそれでいい。

彼女に送ったものは無事届いているだろうし、きっと俺の気持ちは伝わってくれるだろう。

自己満足であってもそれでいい。俺は人の気持ちを察せるような器用なタイプじゃないからな。

 

 

 

 

・・・・・・・さようなら、地底。俺の、幻想郷における家だった場所。

 

 

 

 

***************

 

 

 

~ 地霊殿 さとりの部屋 ~

 

 

 

明かりが元に戻ってから、大変でした。

幸い近隣の建物には被害はなく、仁さんが叩きつけられた時にできた壁の穴くらいでした。

なんだか気が付いたら、永遠亭からの医者の弟子?が来て素早く処置していった。

その場を去ろうとした私にそれある店の店主が「良かったら今度お食事に来てください」と言ってくれたのは、進歩だったのでしょうか。そう言えば今まで関わる事を断ってきただけで、自分の言葉を皆の前で言ったのは初めてだったかもしれない。きっとこれを機に何かが変わるきっかけになるかもしれない。

 

 

それでも・・・・・

 

コンコン

 

「はい、何ですか?」

「さとり様・・・・大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。でも今日はもう休みます。貴女達も休みなさい」

「わかりました。その前にどうしても渡して欲しいと言われたものがあります」

「何ですか・・・・って手紙ですか」

「はい、必ず一人の時に読んでくれとの事です。それでは渡しましたので、失礼しました」

「お疲れ様。・・・・・・・読みましょうか」

 

 

ガチャ、パタン

 

 

 

私は今日で多くのものを得たのかもしれない

 

それでも、失ったたった一つのものが、今では前より心から愛おしくて仕方がない

 

「どうしてっ、どうしてこんな事になってしまったのっ。ぅっっっっっっっぅぅぅ」

 

私の好きなもう手の届かない人、絶対に許してあげません、ありがとう、さようなら

 

 

 

 

**************

 

 

 

 

『さとり様

 

きっとこの手紙が届いているという事は俺の考えた三文芝居が上手くいったという事だろうと思う。

三文芝居の事については時間のある時にでもお燐さんとか勇儀とかにでも聞いてくれ。

 

残念ながら俺の今回の行動は君自身に負担を強いる結果になるかもしれない。それでも俺にはこうするしか君に恩返しができないと思ったからね。それに俺はもう帰るから悪評が付こうが何だろうがあまり関係ないし、都合よく俺が地底を去れる理由にもなるし、あらゆることを考えた結果これが最善だと考えた。ちょっと地底の人らに嫌われてサヨナラってのも寂しい気はするけどね。

周りの皆からは最初はとても反対されたけどね。まぁ、そこは俺がごり押しした。だから協力してくれた人たちは責めないで欲しい。

もしこの事で俺の事を最低だと思ったのならそれでも構わない。俺にはそれしか最善策が浮かばなかったのは事実で、それで起こるリスクとかもある程度わかっていた上で実行したのも事実だからね。

 

さて、何やかんやと語ってしまったが、これまで地底にはお世話になりっぱなしだったし、迷惑かかってたかもしれないから、少しでも君の理想のお手伝いが出来たら幸いだ。もし上手くいっていたのなら地底の住人との橋渡しのちょっとしたお手伝いにはなるだろう。君が俺に語ってくれた地底への想いがあるなら今回の事は君なら上手く生かしてやってくれると思っている。

 

ちゃんと直接お別れを言えなくて、こんな事でしか恩返しができないを許して欲しい。このままこの場所にいるときっと君が怪しまれるので、俺は、旅に出るけれども、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。俺はどこまでも君の友達です。

                               しがない食事処の店主より』

 

 

                       ~ 鷹崎仁 幻想郷滞在期間 残り5日  ~

 

 




毎度ながら最後までお読みいただきありがとうございました。

これにて地底からお別れって感じのお噺でした。
仁君自身が言っていましたが、この選択が 正解 なのか 誤り なのかはわかりません。人生における選択なんてそんなものだとは思いますけどね。
さぁ、地底から去る事になった仁君は残りの日数はどこに行くのか?どうなるのか?次のお噺を楽しみにして頂けると幸いです。


こんな弱小作家もどきな私ですか何となくでツイキャスなる物をやっていたりしてるんですけど、わざわざ参加してくれている俺の読者の人は仁×パルスィの組み合わせが好きみたいですね。これにはホントに驚き桃の木山椒の木。
で、その2人の辛みがもっと見たいって事だったんですけど、たまたま今回は多めになりましたね。
当初から地底を去る時は最後はやっぱり水橋さんと二人でだよなぁって思ってたんですよね。俺の思ういい女の理想像の一つをそれっぽく書いてますが皆さんどうでしょうか?僕はこんな感じのパルスィさんも大好きですね。


さて、もうじき私はイベントの準備の締めの段階にあるはずなんですが・・・・・・まだまだ不安でしょうがない。原稿は見る度に修正入りますしね。まぁ、テストも近づいていてきて今結構てんやわんやして来ております。ですのでもしかした今まで以上に更新が遅れるかもしれませんが、ご容赦頂ければと思います。それまで気長に、今までのお噺を振り返りつつ待って頂けると、とても嬉しいです。もちろん、なるべく早く投稿できるようには頑張りますけどね。

寒さに気をつけて、自分のお噺を楽しんで頂けると幸いです。
それではまた次のお噺でお会いしましょう。さようなら、さようなら



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