東方与太噺   作:ノリさん

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本当にお久しぶりでございます。ノリさんでございます。

前回からかなり間が空いてしまいましたが、失踪した訳ではありませんのでご安心を。
いろいろ忙しかったり寒かったりでなかなか書く時間もなく、書いたと思えば納得いかず書き直しを繰り返していた他こんなに間が空いてしまいました。もし楽しみに待っていた方が居られましたらお待たせしました。冬眠から覚めたと思って頂けると幸いです。

久々に更新したと思ったらまた懲りずに思い付きのタイトルでやっております。
どの漢字があてはまるのか。どっちが誰を示しているのかなど想像しながら読んで頂けると個人的には嬉しいです。

さて、忙しくはありますが出来るだけ多く更新できたらと思いますので、今年度もよろしくお願いいたします。

と言う訳で、今回は後書きにおまけの小噺もつけておきますので最後まで読んで頂けるお幸いです。そして何より読んで楽しんで頂ければ幸いです。間が空いちゃったので曖昧な方は以前のお噺を読んでから読まれるといいと思います。

それでは久しぶりのお噺どうぞご覧ください。


あいたい/あいたい

~ 無名の丘 : 朝 ~

 

 

気が付けばここで寝てたらしい。お気に入りとはいえ無意識にここに来たとはびっくりだ。

確かにここは鈴蘭が咲いていて綺麗な場所ではあるんだけどね。

きっちり目を手ぬぐいで隠しているあたり割と変な所に気が利くみたいだ。

はぁ、紫さんに言ってた期限まであと少し日数あるのにどこでどうしたもんかなぁ。このまま野宿は御免被りたいんだよなぁ。

昨日の事は思い出しただけで、気分が重くなる。作戦自体は上手くいったと思う。あの流れから見て俺の予想から外れることはまず無いハズだ。さとりさんには悪い気がしないでもないが、彼女の心の在り方なら大丈夫だろう。

 

予想外だったのは、最後だ。あの場面で告白を受けるなんて思ってもなかった。

幻想郷に来たら美人二人から告られちゃってモテモテだなぁ。いやっほぉぅ‼ ……みたいに思えりゃまだ幸せなんだろうけど、……いやそれでクソ野郎なのか? まぁいい。

彼女の気持ちは本当に嬉しかった。でも俺はその気持ちを理解できない。だから、受け入れられない。

あの男ならそんなこと気にせずにと言うのだろうが、それは俺が認められない。

何かこう……相手に失礼だと思っちゃうんだよなぁ。

 

話変わって俺は自分の能力の本来の力に気が付いてしまった訳だが……よりによって名付けたら「奪う程度の能力」かぁ。俺にはぴったりな、俺らしい…俺の人生を現したかのような醜い能力だ。

 

この力があれば足元などにある枯れた花のように、俺はなんだって奪える。言い方を変えれば何だって手に入れられる。他人の全てを奪ってしまえば簡単だ。

俺はこんな力なんていらなかった。俺は……

 

 

「お前はこんな所で何をしている? 」

「その声は……、藍さんかな」

「手拭いをとって話せ、馬鹿者」

「いやぁ、もう一回寝るんでお気になさらず」

「……まぁ、いい。昨日は派手にやったな」

「見てたんですか。まぁ、そうですね。俺がいなくなった後はどうなったのかはわかりませんけどね」

「お前の考えた通りじゃないのか? これから地底少しずつだが、今よりまとまると思うよ。それも計算ずくだろうけどな」

「いやぁ、俺はそこまで考えてないですよ? とりあえず出来る事をやっただけだからなぁ。それに上手い事地底から去れる理由付けにもなったし、基本的に俺の思ったままにしか動いてないですよ」

「そう思いたいならそれでいい。でもお前はそれがよかったのか? 」

「良いんですよ。そう思ったからそうした。成功する見込みが高い方を選んだ。それだけですよ」

「そうか……。何だか悲しい奴だな。行動にお前の心が感じられないよ。まるで機械的な式みたいな感じだな」

「まぁ、俺は何て言われても構わないんですけどね。まぁ、とりあえず寝るんで今日はこの辺で良いですか? 」

「……わかったよ。紫様が迎えに行くまでの期間大人しくしてろよ」

「はいよ~。またな~」

 

……いなくなったな。気配が無くなった。頭のいい人と話すのは好きだがこういう時は困る。なんか見透かされてる気がしてなぁ。

 

さて、俺の行動にお前の心が感じられないかぁ……。俺だって知りたいよ。心ってどんなものなのかさ。今まで覚えてる生きてきた中でも、一向に見つからないんだよ。悲しいはずなのに泣けない、好きの違いが分からない、わからない。ただ、今の俺の考えが、行動が、心の赴くままにしているって思い続けて生きてきただけだ。俺にはきっと何もない。

 

 

はぁ~、雨にうたれて。偶には気持ちがいいなぁ。このまま余計な思いも流してくれりゃいいのになぁ。

 

 

 

「風邪ひくよ、仁。そんなところで寝っ転がってたらさ」

「………諏訪子か。何でここに居るんだ? 」

「まぁ、適当にうろついてたら見つけただけだよ。そんなに怖い顔しないの」

「そんな事はないと思うんだけどなぁ。で、なんか用か? 」

「用って程じゃないけどさ。天狗から聞いたよ。中々派手にやったみたいだねぇ」

「まぁ、そうだな。上手くいったみたいだし良いんじゃないのか。それをわざわざ話に来たのか? 」

「それにここに来てから二人の美人さんに告白されちゃってぇ。やっぱモテるねぇ、仁は」

「その美人二人を振った俺に対しての嫌味かよ」

「いーや、仁は昔から変わってないなぁって思ってさ」

「何が? 」

「昔、会った時からずっと、変わらず人の気持に鈍い所とかさ」

「そりゃ悪かったな。俺はそう言うの苦手なんだよ。思ったまましゃべっちゃうし、思ったままに生きてるんでな」

「知ってるよ。でもびっくりしたでしょ? 天狗と橋姫から告白された時は」

「そりゃ、もちろん。だってさぁ、あんな可愛くて器量の良い娘達がこんな男に惚れるとか物好きにも程があるからねぇ」

「そんな事言わないの。彼女たちは間違いなく貴方に惚れたんだからさ」

「まぁ、正直な感想を求められてたみたいなんでな」

「ほんと正直者だね。って言うかほんとに二人の気持は気が付いてなかったの? 」 

「知らないなぁ。だって人の気持の事まで見きれる程、余裕のある出来た人間じゃねーしさ。それに俺はそう言った関連は元々疎いし得意じゃないのは知ってるだろ」

「でも、気が付けたんじゃないの? 」

「何が言いたい? 全く気が付かなかったぞ」

「そうだよね。でも気が付けたはずだよ? 」

「俺はそんなに敏くないぞ。だから困惑したわけだし。嘘ついちゃいないさ」

 

何だ?さっきから似たような事ばかり聞いてくるな。

 

「そこは本当だろうね。でも、気が付こうと思ったら気が付けたはずでしょ。そこまで彼女達の事見てた訳じゃないから気が付かなかっただけでしょ? 仁は人を見る目はあるからね。見ようとしなかったからわからなかっただけでしょ? 」

「まぁ、多少見る目はあるかもしれないよ? 頼れる相手とか見たりするのは多少自信あるし。でもそこまで言うのは言い過ぎだよ」

「まぁ、そうだね。私達の気持もわかってなかったりしたしね」

「近くてもわからないものだってあるからな。そりゃしょうがねぇな」

「そうそう。気持ちって難解だよねぇ。わかってるつもりでもわからなかったり、自分でもわかんないのに相手にはわかったり」

「………そうだな。じゃ、俺の今の気持ちを言ってやるよ。誰とも話したくないんだ。虫の居所が悪いんでな。一人にしてくれ」

「そんな動けないってくらい気落ちしている大切な人を置いて行けるほど私は良い性格してないよ」

「はぁ、大切な人…………ね。お前らにとって大切な人は何も言わずにさよならできる程度なんだろ」

「……何言ってんの? 」

「ははっ、だってそうだろう。お前たちは何も言わずに去っていったじゃないか。俺がその件でどれだけ苦しんだかわかるか?わからないよな。所詮人間と神だからな。相容れるはずねぇんだよ。たまたま俺が救いが必要な時に救われて、俺もあんたらみたいな立派な……堂々とした人間になれるなれるんじゃないかと勘違いして………元から最低な男にそんな資格も資質もねぇのに。馬鹿みたいだよ。単純に夢見ちゃって、勘違いして。最後は事実に気が付いて苦しみ続けるだけなのにさ」

「こっちの気も知らないでよくそんな事言えるね」

「俺は最低な男だからな。でもまぁ、しょうがないんじゃないの、人の気持なんてわからないんだから。もうわからないんだよ。…いや、最初から何もわかっていなかったかな。でもそれでいいのさ。それが俺と言う人間だからな。でも、お前らが何も言わずに去ってくれたおかげで分かった事があるよ。神様は個人を救えないし救わない。神様に救えるのは人間と言う群を救うだけだってな。結局、俺は独りで生きるしかないってな」

「喧嘩売ってるなら買うぞ、人間」

「は、やってみろよ神様。確かにたまたま一度は救われた。その神様にだって俺は拳を振り上げるぜ」

 

………わかっている。わかってはいたけど本当に最低な男だ、俺は。

 

 

 

 

***********

 

 

 

 

血まみれで、地面を這い蹲って倒れるしかなくて、泥まみれになって。やっとこさ膝を立てて立つ…いや、片膝ついて立とうとするくらいしかできない。

あぁ、やっぱりタダの人では神様には敵わないんだなぁ。

 

なんでさ。何であんな事言っちゃったんだろうな。

 

「いい加減な事言わないで。私だけじゃなくて、神奈子だって、早苗だってどんな思いでいたと思ってるの。みんな悩んで悩んで、その上で決断したんだからそんな事本当に思ってるんだったら許さない」

「・・・・・・あれも俺だよ。お前らに見せないようにしてきたんだ。俺はお前たちが思っているようないい奴じゃない」

「そんなはずないでしょ。そうならそんなに辛そうな顔はしない」

「いや、そんな顔してないんだけどなぁ。お前にやられた傷が痛むだけでしょ」

「ほらそうやって軽口叩いて人を自分自身に近付けさせようとしない」

「なーに言ってんの。俺ほど来るもの拒まずな男はいないよ? 」

「去る者は追うんだ」

「はぁ……面倒だなぁ。そりゃ俺だって人間だからね。多少の執着はしますよ」

「でも、自分には近付けさせないように、見たらやばそうなものは見ないでいるんだ」

「そりゃ、やばいもんは見たくないでしょ」

「質問変えようか。仁って他の人と仲良くなりたいの? 」

「そりゃな。そっちの方が面白いだろ」

「ふーん。でもその割には他の人の事見なくなったよね。前までそんな事なかったのにさ」

「前っていつだよ。それに前からこんなもんだろ。さっきから言ってるだっろ苦手なんだよそう言うの」

「ここまで言ってもわからないんだね。仁は何でそんなに臆病になったの」

 

わからない。

 

「…俺は最初から臆病だからな」

「人から目を背ける事はしなかったよ」

「んな事はねーよ。怖くて怖くて仕方がなくて見てなかったよ」

「違うよ。前の仁は人と人の過去とも向き合う強さがあった。でも今は? 逃げてるだけじゃない。情けない姿でただ立ち尽くしてるだけ」

「そっちこそ過去の俺と比較して勝手に失望してるだけじゃないか。今の俺を受け入れろよ。情けなくてもみじめでもそれが俺なんだよ。お前がいなくなってからいろいろあったんだよ」

「失望なんてしてないよ。何があったのか知りたいだけ」

「そんなこと知ってどうなる。俺とお前達は違う。それに話したって無駄だよ。どうせ…もう…どう言ったってどうしようにもないからな」

「わかんないじゃん。言ってくれないとわからないよ」

 

俺の肩に優しく置かれた手。山が笑うかのような温かいあの時と同じ手。

だからこそわからない。お前達の事も、幻想郷での出会った者達の事も、俺自身の事も。

 

気ついたら、手を払い。俺の目の前に諏訪子。その諏訪子は地を背にしていた。

 

 

「じゃあ、お望み通り言ってやるよ。なんで何も言わずにいなくなったんだよ‼ 俺は…本気で救われて、本気で感謝して、本当に大切な場所だったんだ‼ 何も言わず‼ 誰にも伝わらず‼ たった一人で抱えて苦しみ続けた俺の気持はどうなるんだよ‼ 居場所も全部失って、世界でたった一人だけ取り残された俺がどれだけ苦しんだと思ってるんだ‼ 今更どうにかできると思ってんのかよ‼ ふっざけんな‼ お前が、お前達がどんな奇跡を起こそうが俺はもう救われないんだよ‼ もう……救いようがねぇんだよ。…はっ、それこそ俺が救われるとしたら………死んで、その後生き続けた事に罰を与えられた時だ。………もうどうだっていいんだよ。誰が側に居ようがいなくなれば意味がない。どうせ俺には奪うしかできない」

 

言ってることむちゃくちゃでどうしようもないクソみたいなことしか言えなかった。八つ当たりだってわかってるんだ。彼女達には彼女達なりの理由があって…。たまたまかみ合わせが悪かっただけの事。

なのにどうしてお前はそんなにも……

 

「…なんで言葉では怒ってるのに顔は泣いているの? 貴方の心はどうしたいの? いいよ。仁になら何してあげてもいいし、何をされても構わない。それで貴方の心が少しでも安らいでくれるなら…」

「やめろ……」

「辛かったんだよね。苦しかったんだよね。ごめんね。気が付いてあげられなくて。でもまた会ってくれてありがとう。私はそれだけで嬉しかった。だから今度は私が仁を…」

「やめろ‼ くそっ‼ 」

 

俺は何も出来ず何も言えず、走る事しか出来なかった。

 

 

 

***********

 

 

 

ここはどこだろう。ただ辺りは暗く鈴虫が鳴いている事だけはわかる。

あぁ、もう取り返しがつかない。覆水盆に返らず。枯れた花を咲かせる事は叶わず。

 

体に力が入らない。傷は癒えた。体は機能するけど、気と言えばいいのかわからないけど、力が入らない。

どうしてこうなったのだろう。どこで狂ったのだろう。

 

 

「そんなところで木に座り込んでどうしたの? 仁お兄ちゃん」

「お~こんな所にまで現れるのか。おに―さん疲れてるんだ。だから話しかけないほうが良いよ」

「そっかー。地底であんな事やそんな事があった後に神様と戦ってたんだもんね。疲れるよね」

「なんだ全部見てたのか。じゃあ、休ませてくれ。もう疲れたんだよ」

「じゃあ一緒にいてあげるよ‼ 」

「いや、いい。君は家に帰りなさい。お姉ちゃんが待ってるでしょ」

「…そうやって傷つけた人のアフターケアもしちゃうんだね」

「そんなんじゃない。俺は独りになりたいだけ」

「嘘つき。本当にそうなら力尽くでもそうしてるでしょ? それなのにしてないって事はそうじゃないんでしょ? 」

「さっきも言ったけど俺は疲れてるの。だからそんな事わざわざしないの」

「そっか。そうやって人も自分も見えないようにしてきたんだね。…どうして正直になれないの? どうしてもっと我儘になれないの? お兄ちゃんが望めばどんなことだって出来るのに。…復讐も出来るよ? 」

「違う…俺はそんな事を望んじゃいない。俺は…」

「自分の心が知りたい。自分の納得のいく答えが欲しい。でしょ? ふふっ、でも仁お兄ちゃん気が付いてるんでしょ? 」

「もう何も喋るな。いや喋らないでくれ。俺がいったい何をしたって言うんだよ…もういいだろ…」

 

それを言葉にしたら、きっと俺と言う人間の根幹から崩れてしまうから。

 

「本当にただの人間なら、幻想郷に来たからと言っても仁お兄ちゃんみたいな能力もそんなに人間離れした体もしてないよ。そ・れ・に、そんな事でそこまで苦しまないよ? ふふっ、最初から分かってて、それでもなお未練がましくしがみついて、足掻き、答えを求め続けてる仁おにーちゃん」

「………はぁ、本当に最悪な日だなぁ」

「自覚があるから驚きもしないね。それは置いといて、じゃあ私と一緒に最善にしようよ」

「断る。最悪のどん底に落としてくれた本人が何を言ってるんだ」

「あら~失敗しちゃったかぁ。まぁ、いいや。今回はこの辺でお望み通り一人にしてあげる」

「はいはい、じゃ、またな。っても、もう会う事もないだろうけど」

「また会えるよ、絶対に。それまでに答えが見つかってるといいね、仁お兄ちゃん。こいしくなったら呼んでね~。私は無意識にどこにでもいるからさ~。それじゃばいば~い」

 

 

本当に神出鬼没だねぇ。おまけに耳に痛い事言うだけ言って去って行くし。

わかっていたんだ。でも見ないようにしていたんだ。訳が分からなくて、解らなくて本当の事を知るのが怖くて。一人で居続けたほうが良いってわかってたんだ。こうなる事は目に見えてたから。だからもう独りで居よう。

でも、世界はそれすら許さない。生きてる限り、俺は苦しんで苦しんで、死んだ後も苦しんで苦しんで。きっと俺は永遠に許されない。だって―――

 

あぁ、空を見上げれば曇りなき月夜。空はあんなにも澄んで美しいのに、どうして俺はこんなにも濁りきっているのか。

時期的には十五夜の月には少々早い気もするんだけどね。それでも眩しくて…美しい。

 

「こんなにも月が綺麗なら、いっそ魅入られて狂ったほうが…狂えた方が楽だったのかなぁ」

「それはどうかしらね。貴方の運命はそこまで単純じゃないみたいよ? 」

「っ⁉ 誰だ? 」

「そう身構えないの。折角の良い男が台無しよ…って言っても今の貴方にそんなことを要求するのも酷な話かしら? 」

「誰だっけ? 独り言に反応してくる辺りロクな奴じゃなさそうだけど」

「そうねぇ。初対面でそこまで言われるとなかなか癪なのだけれど、今回は見逃してあげるわ」

「そりゃどうも。別に殺されるわけじゃないだろうからどうでもいいけどさ」

「貴方死にたいの? 」

「まさか、死ぬのが怖くて生きて来た人間だよ。今更死にたいなんて思わないさ」

「そう。それなら発言には気をつける事ね。死ぬわよ」

「はいはい。ま、今の俺は並大抵の事じゃ死なないから何でもいいんだよ」

「そうか。それなら格の違いを見せた方が早いわね」

「…は?がふっ⁉ 」

「あら、やっぱり人間の体だけあって脆いのねすぐに穴が開いたじゃない」

「いきなり人の腹に穴製造するとかふっざけんなよ‼ 俺じゃなかったらとっくに死んでるわ! 」

「あら? 聞いてはいたけれど案外すぐ治るのね。ま、でもこれで私の力はわかって貰えたかしら? 」

「あぁ、わかったよ。やっぱロクな奴じゃねぇな」

「自棄になって暴れだしそうな手負いの獣には言われたくないわね」

「あぁ、俺は獣かよ。そう言うアンタは化物か」

「そうね。まぁ、そんなところよ。さて、無駄話してると従者に見つかって面倒だから本題を済ませないとね。優秀過ぎるメイドがいるとそれはそれで大変よね」

「一般的な人間にメイドが居た経験がないからわからん」

「貴方まだ人間のつもり? 」

「誰が何と言おうと俺は人間だ。それは誰にも否定させはしない」

「……そう。まぁ、いいわ。それよりも貴方行く当てはあるのかしら? 」

「ねーからここで寝るつもりだったんだよ」

「あら最近の人間にしてはたくましいのね」

「おかげさまで鍛えてるんでな。そんじょそこらの奴らになら負けねぇよ」  

「ふぅん。ま、何でもいいわ。月が綺麗だったから散歩してただけだけど気が変わった。貴方帰るまで館に来なさいな。歓迎するわよ」

「断る。知らない怪しい人にはついていくなって親に言われてるんでな」

「まだ精神的に余裕はあるみたいね。こんなに素直に誘っているのに何が怪しいのかしら? 」

「少なくともそんな見た目幼女の奴に屋敷来いって言われたら怪しすぎるだろ」

「…ふぅん。へぇ。案外弱ってるかと思ったら元気そうじゃない。気遣いは無用と言う訳ね。咲夜」

「はい、何でしょうお嬢様」

「この客人を貴方の能力で無理矢理屋敷に連れていきなさい」

「かしこまりました」

「おいおい、行くなんて一言も言ってないぞ」

「あら、こうなるのは決まりきってる運命よ。諦めなさいな」

「は? 運命? 」

 

 

俺からしたらほんの一瞬で世界が切り替わる。

 

 

「は? 何だこの赤くてでかい屋敷」

「紅魔館へようこそ、外来人。私は当主のレミリア・スカーレット。そしてこのメイドが十六夜咲夜。まぁ他にもいるけど会ったら名前を聞いてちょうだい。貴方には不本意かもしれないけど歓迎するわ。帰るまでの間ゆっくりしていきなさい」

「いや、遠慮しとく。タダより高い物はないって言うし」

「タダで泊まるのが嫌なら軽く仕事をあげても良いわよ。ま、何にせよあそこで野垂死にするよりはいい運命に出巡り合えるわよ」

「さっきから運命、運命とうるさいなぁ」

 

 

「信じないのなら構わないけれど…。選ぶのは貴方だからお好きにしなさいな。せいぜい目覚めの悪いバットエンドへ向かわないようにね」

 

最悪だろ。何でここで俺は新たな出会いを得なくちゃならんのだ。やっぱり俺は独りではいられないらしい。

疲れたし休めれば何でもいいや。疲れたから風呂に入ったら今日は早々に寝よう。そう思ってこの紅魔館に滞在した事が、どんなエンドに繋がってるかなんてこの時の俺にわかる訳なかった。

 

                       ~ 鷹崎仁 幻想郷滞在期間 残り4日  ~

                                   

 




〈無名の丘にて〉

仁が本当に怒っていた。
今までで見た事ないくらい感情が爆発していた。

私も正直何言ってたか覚えてないくらいの勢いで話してたからかなり無茶苦茶だった気もする。おまけに最後の方はかなり恥ずかしい事を言ったような気がする。

どうしよう。彼が感情を露わにしてくれたことは嬉しかったけど、その眼に映した哀しみは深く深く彼を傷つけていて。

原因の一つは自分たちの行いから来たもの。もちろん悩んだ末の行動だから決して間違ってるって言うつもりはない。けれど彼のあの顔を、言葉を聞くと後悔の念が押し寄せる。

もう戻れないのだろうか。そんなのは嫌だ。けれどどうしたらいいのだろう。
少なくともわかったとしたら、またあの時のように笑って話すには時間がかかると言う事しかわからなかった。

そして、雨にもかかわらず丘には立ち尽くす少女の姿がしばらくあったそうな。




〈マヨヒガにて〉

「以上になります、紫様」
「はい、お疲れ様。引き続き結界の監視と鷹崎仁の監視をよろしくね」
「ところで紫様。彼は…」
「あら駄目よ。詮索しちゃ。話すにしても話すべき時がある。今はまだその時ではないし、何より私の杞憂かもしれない」
「ですが彼になぜそこまで」
「そうねぇ。何か因縁めいたものを感じているからかしらね」
「因縁ですか…」
「まぁ、本当にそうなのかはまだ分からないけどね」
「………」
「そんな不安そうな顔しないの」
「はい」
「もし何かありそうなら貴方を頼らせてもらうかもしれないからそれだけ胸の片隅に置いておきなさい」
「承りました」
「じゃあ、下がっていわよ」
「では失礼します」



「行ったかしらね。……鷹崎仁。最初は殺す気であんな落とし方したけど、死ななかったしもしやと思って放置したら、幻想郷に変化をもたらしたのは良い事ね。でも事と次第によっては…やっぱり私が直接殺すしかないわね。せいぜいそうならないように頑張りなさいな。って言っても聞こえていないのだけれどね、ふふふっ」

賢者は唯々妖しく一人で笑っていた。








〈ここから後書き‼〉

毎度の事ではありますが最後まで読んで頂きありがとうございます。楽しんで頂ければ幸いです。

このお話も同人誌にし、イベントの方で販売したりも致しました。買ってくださった方ありがとうございます。もしまだお手元にない方はご縁がありましたら手に取って頂けると幸いです。またいつになるかはわかりませんが、二冊目の書き下ろしのためのアンケートをTwitterの方で採ろうと思ってもいますので良ければ気軽に参加してくさい。

忙しい上半期ではありますがなるべく更新していきたいと思いますので皆様応援等よろしくお願いいたします。それでは次のお噺でお会い致しましょう。さようならさようなら。
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