ソードアート・オンライン−−ギルド名『草生えるw』   作:tfride

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気をしっかり持って。


毒されてはいけません。


第10話『子供相手にも容赦がねぇw』

ある日。

 

キリトとアスナは子供を拾った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今のだけで色々察したあなた。

 

この作品に染め上げられている証拠です。

 

 

 

 

 

 

 

 

キリト達が引っ越してから既に三日。

その間、彼らの気が休まることはなかった。

なぜか。

 

 

 

 

 

 

一日目

 

早朝

 

 

キリトはゆっくりと目が覚めていく。

まだ見慣れない天井を一旦凝視しながら、そういえば引っ越したばかりだと自分を納得させ体を起こした。

そして隣を見れば、先日一緒に新居の家具を選びに行って疲れたのか、自分の結婚相手であるアスナの寝顔を少しばかり堪能。

こればかりは夫の役得だとそのままベッドから降りると、アスナを起こさないように静かにリビングへと足を向ける。

そしてまだ慣れない部屋割りや家具の配置を何とか思い出してキッチンへと向かう。

そして壁に突き刺さった足を一旦どかしてコーヒーメーカーを起動させ、再びリビングのソファに座った。

 

しばらくすると、目をこすりながらアスナが寝室から出てきた。

 

「キリト君…おはよう…」

 

「あぁ、おはよう…おいおいアスナ、寝癖酷いぞ」

 

「もう、キリト君だって…」

 

そう他愛もない話をした後にアスナも目を覚ますためにキッチンに向かい、突き刺さった足を慣れた手つきでどかした後、コーヒー片手にリビングへと戻ってくる。

 

 

 

 

 

『………ん?』

 

 

その後、ログハウスに悲鳴が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すんませーん、回収業者でーす」

 

その言葉にドアを開けると、いつもの三人がそろっていた。

釣り竿をもって。

 

「こっちです」

 

そう冷静に対応するキリト。

四人が現場に向かうと、キッチンの入り口のすぐ目の前の壁に、それ(ウサギ)があった。

その足を上下左右に動かしながらローキがうーんと言葉を漏らす。

そしてリクが堪らず足をゴリゴリと捻じると、何とも痛ましい悲鳴が聞こえた。

 

「これは無理ですね。あきらめてください」

 

「ざっけんな」

 

ローキの死んだ魚の目で告げられた事実に思わず頭をはたいた。

すると玄関の入り口からアスナがどこからか帰ってきた。

 

「ニンジャさん。いわれたもの買ってきましたよ」

 

そう言ってアスナがオブジェクト化させたのは、バールであった。

 

「お、ありがとう」

 

「そんなもの何に使うんだよ」

 

その言葉にニンジャが、壁に刺さったウサギの足と、壁のオブジェクトの隙間にバールを突き刺し。捻じる。

すると、ダメージエフェクトと共にウサギの足に確かに突き刺さる音がする。

ぐろい。

 

そしてリクが思いっきりバールを引きずりだすと、ウサギも出産の如く壁からズルズルと生まれてきた。

 

「わるいな、これバールの代金」

 

ニンジャが買ってきて貰ったバールの代金を丁寧に渡してきた。

 

そうしてリクがウサギを引き摺りながら四人は外に出ていく。

 

 

「…なんだろう…また呼ぶ気がする」

 

「そうね」

 

 

 

その予感は当たっていた。

 

 

 

 

 

二日目

 

 

 

 

のんびりと情報誌を眺めているキリトと、昼食を済ませているアスナ。

その時入り口のドアがノックされる。

 

「どなたですか?」

 

そうしてドアを開けると、そこにいたのはニンジャとローキ。

ニンジャは隠居者のように緑一色の甚平、そしてローキはいつもの戦闘服。曰く着替えるのがめんどくさいとのこと。

 

「いやー昨日は申し訳なかったね。これ引っ越し祝いも兼ねたお詫びってことで」

 

そう言いながら近所でとれた魚などの食料品。

ゲームなのでアメニティ系を渡されてもどうしろとってところなのだろう。

 

「こ、こんなに…ありがとうございます。逆に申し訳ないですね」

 

そんなアスナの対応に対してニンジャは。

 

「いや、多分今後もお世話になるから…さ」

 

その言葉と共に天井に凄まじい衝撃音。

その音に反応してビックリしたキリトはコーヒーを吹きこぼし、椅子から転げ落ちた。

 

「な、ななななな」

 

そんな動転したキリトをよそに、ローキはメッセージでどこかに連絡をはじめ、ニンジャに至っては両手で顔を伏せていた。

 

「ふ、ふふふ…完成したぞ…死んだふりキャンセルループ…名付けて縦コプ――」

 

「よいしょ」

 

まさに集中線にドドンといった効果音が付きそうな表情をしていた…首から上だけを天井から生やしていた…ウサギの首をつかんで引っこ抜く。

あふん…と変な声を上げながら天井から引きずりぬかれ床に激突。

そんな情景に先ほどのニンジャと同じく両手で顔を伏せ始めるキリトとアスナ。

そしてローキからのメッセージを受けたのか、リクが縄を片手に玄関のドアをこじ開ける。

 

 

「頼むから、頼むからそれを何とかしてくれ」

 

「善処する」

 

なんとも不安になる回答に再び顔を両手で伏せる二人。

 

 

 

 

「天井を…天井を強化するんだ…」

 

「鉄板張り付けましょう」

 

 

 

 

 

 

 

翌日早朝

 

 

 

床から足が――。

 

 

「なんでだああぁあああああああああああ!!」

 

 

前日のうちに天井を全力で補強したキリト達の努力は露と消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな三日間であったため、英気を養うためにキリト達は森へと散歩に出かけたという。

 

ところ変わり、キリト達宅から少し離れた川沿いの小屋。

近くに小さな滝が流れ水しぶきが水蒸気となり少しばかりの霧を散布しており、苔の生えた大木が小屋のそばに生えており、その小屋から大木の枝へ何本か洗濯の紐のように結わえられている。

そこから何かしらの種やら革やらが干されており、完全に倉庫の代わりを務めていた。

川沿いの壁は完全に倒壊しており、そこから床自体が引き延ばされ、さらにはテントの要領で小屋の屋根から布が張られ、床面積の拡張を行っている。

そしてその床の終わり…一歩踏み出せば川に真っ逆さまのギリギリの部分に丸太が一本たてられており、そこにウサギが縛り付けられていた。

 

「タスケテ…タスケテ…」

 

「自業自得だ馬鹿野郎」

 

そう言いながら川を見渡せる位置にある場所に置かれた切り株に腰掛けながら、ニンジャが石ころをウサギに投げつける。

その衝撃で丸太がバランスを崩し、ゆらゆらと川と床を行きかう。

 

「ひぃいいいいい」

 

 

なんでだろう。この情景を描いていてとってもすっきりしてきた。

 

 

当のニンジャは片手にタバコ、片手に情報誌を見ながらのんびり寛いでいた。

情報誌に目を走らせてみると、やはりトップに躍り出ているのが、アスナの前線離脱であろうか。

記者の心遣いなのか、はたまたヒースクリフの手が回ったのか、まだソフトに事のいきさつが書かれていたが、やはりといったところか、クラディールの話が一切上がっていなかった。

ここから先血盟騎士団と、それに同盟に近い形を取り始めたアインクラッド解放軍の二勢力が攻略を進めていくのだろう。

人数や平均レベルの点からみれば以前と変わりない戦力にはなるのであろう。

しかし、中心人物の欠落とは戦闘に限らず多大な影響を及ぼすのが常である。

以前に比べて攻略スピードが落ちているのが現実。

更には次の攻略はクォーターボス。

以前よりも苦戦を強いてくるであろう…。

 

ニンジャが思考を巡らせていると、小屋の裏から人影が現れる。

慣れた手つきでそこらの置き椅子を引っ張ってきたのは、リクとローキであった。

 

「あー疲れた」

 

そう言いながらしれっとリクが桟橋の先へ足を延ばし丸太を川へ向けて思いっきり押し倒す。

 

「ひょぉおおおおおおお!?」

 

そしてそのまま哀れウサギは川の中へ。

 

「あれ流石に死ぬんじゃない?」

 

「前に自分で落とした短剣を沼の底から1時間かけて取ってきたから平気だろ」

 

「兵器かよ」

 

「上手い」

 

なんて無駄話を繰り広げているうちにローキがストレージから包みを取り出した。

 

「とりあえず菓子折り的なの買っておいたから」

 

「毎度すまんな。今回ばかりは流石にウサギの悪ふざけが過ぎる」

 

「そうだな。ウサギも死んだしその報告に」

 

「おい、故人の話はもうやめろって不謹慎だろう」

 

「お前らが不謹慎だぁああああああああああ!!」

 

と叫びながら藻を頭に絡めつかせながらウサギが川の底から這い出てきた。

 

「お前一体どうやってあの状況から脱出した」

 

「首から上だけでバグらせる」

 

「化け物め」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノックしてもしもーし」

 

そんなふざけた来訪挨拶をしながらドアを叩くニンジャ。

ウサギに白喪服を着させて短刀を握らせながら頭部に『ごめんなさい』と書かれた紙を張り付けた状態で連れてきたのだ。

もちろん謝らせるため。

 

「にしても本当にこれで許してくれなかったらどうしよっか」

 

「え、そんな未来ありですか」

 

「ありです」

 

「そうなったらホントに腹切らせよっか」

 

「あっはっは。そんな冗談を――」

 

『…………』

 

「え、マジ?」

 

「てか出てこないな」

 

ウサギの腹切りはさておき、ノックしてから既に2分は経過しているにもかかわらず何の反応もないため、少し怪しく思う四人。

ここで常人ならばこんなことを考えるであろう。

 

「出かけているんじゃないだろうか」

 

しかしこいつらはキ〇ガイ。

彼らの頭の中は共通してこんな状態。

 

 

『まさか昼間から【R18指定】!?』

 

 

何とも腐った頭をしている。

すぐさま飛び出したのはウサギ本人。

近場の抱えるサイズの石を持ち出し、それを持ったままドアの前に立つとそのまま屈んで石を置き、ドアの中にスッと消えた。

 

「毎回思うけどカヤヒコ仕事しろよ」

 

ニンジャの冷静な突っ込みの後、中から鍵が開けられる。

不法侵入とか、そんなもんガン無視した対応であるが、若者の不純行為を見捨てておくわけにはいかない。

なんてのは建前で行為を黙視したら暫らくネタにしてやろうとか――

――そんなことは一切思っていない。

 

入って早々リビングには人っ子一人いなかった。

故にこれはもう四人の妄想が現実になりつつある感じ…。

 

「いないな」

 

「なぁ、これ後でキレられるよな」

 

「入り始めたのはウサギ、鍵を開けたのもウサギ」

 

「俺たちはウサギを止めるために中に入った。おk?」

 

「おk」

 

「ん?何の話?」

 

『何でもない、早く寝室開けろ』

 

「おk」

 

がっつり責任を擦り付ける算段を立てているほか三人ではあるが、ずいずいっと寝室に足を運んでいくあたりもう駄目だと思う。

先行したウサギが寝室のドアを開ければ…そこにはハッスルしている二人が――。

 

と、そこには最近板についてきた普段着姿のキリトとアスナ。

この時点で四人の予想は外れているのだが、問題はそこではない。

問題はその二人の視線の先にある小学生くらいの長髪の女の子の方で…。

 

「お、おいお前ら。なんで勝手に入って――」

 

「キリト…」

 

キリトの抗議をニンジャの威圧的な雰囲気が押しとどめる。

いや、ニンジャだけではない。

ニンジャの後ろに控える形になったほか三人も何かしら思うところがあるのか、ニンジャと同じように黒いオーラを滲み出していた。

 

「な、なんだよ」

 

その雰囲気に押し黙らされる形になったキリトは、無意識のうちにアスナと子供を背に立つ――。

――と、そのキリトの肩をがっとニンジャがつかみ。

 

「お前ついに犯罪に走りやがったな!! 同意は!? 同意の上か!? いやそれ以前にどう見てもお前ら高校生未満だろ!? 児童ポ〇ノは犯罪だぞ!!」

 

「ちがぁあああああああああああああああう!!」

 

そんなグレーゾーンを行くこの二次創作の事など無視してローキがアスナに詰め寄り。

 

「大丈夫?ランボーされてない?」

 

「ら、ランボー? 少なくともランボー(?)はされていません」

 

「ねぇリク、110番ってどうやって電話するの?」

 

「呼べるんなら呼んでるだろ。ゲーム開始時に」

 

 

 

「お前らとりあえず家からでてけぇえええええええええええ!!」

 

 

キリトの心からの叫びであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして冷静になったアスナの平手打ちを食らった四人は、リビングに正座させられながら状況を詳しく聞いた。

 

「なるほど、つまり纏めると。

1、森を歩いていたら幼女をテイムした」

 

「テイムとか言うな」

 

「2、その子はなぜ自分が此処にいるのかも分からないし、親もわからない。一種の記憶喪失の可能性もある」

 

「そうですね…私たちも詳しく聞くのにためらいがあるのも事実なので、本当かどうかは分かりませんが」

 

「3、キリトはアスナに何にも手出ししてない」

 

「当たり前だろ」

 

「根性ねぇな」

 

「ニンジャあんたは…手を出しやがっただの、根性無いだの…俺はどうすればいいんだよ」

 

「とりあえず話のネタになってくれれば」

 

「死んでくれ」

 

とりあえずキリト達の気が済んだので正座をやめさせ、椅子を進めて紅茶を入れ始めるアスナ。

ご馳走になる四人ではあるが、代表としてローキが口を開いた。

 

「まぁ前線から抜けて生活環境も変わって大変かもしれないけど、ご近所さんってことで何かできることがあれば言ってよ」

 

「今度はローキさんだけに頼みます」

 

今度こそ結婚式みたいな状況になってたまるかと、心に誓ったキリト。

すると隣からリクが一言。

 

「しっかり面倒見るんだぞ、どう成長するかは今のところお前らにかかっている」

 

「そんなことわかって――」

 

キリトの抗議を手で制して、そっと指をさすリク。

その先には…。

 

 

「ふははは、これぞ新デバック奥義『昇天』だ!」

 

「すごい…ゆっくり上にあがってく…」

 

ゆっくりと上空に向かって昇天していくウサギの姿が…。

 

「まずあれを何とかしないとな」

 

「あーあ…引っ越そうかな…」

 

 

 

 

キリト家の受難は続く。

 

 

 




ウサギのせいで他三人のキャラが薄くなっていく。




いや、三人が薄いんじゃない。
ウサギが濃いんだ。

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