ソードアート・オンライン−−ギルド名『草生えるw』 作:tfride
現在廃車を遮蔽物に隠れている噂のプレイヤー…ハンドガンキラーを前にして、スコープ越しに狙いを定める。
噂に気を引き締めるも、しかしながら実際にはこのありさまだ。
しかしながら現状こんなものは関係ない。自分の目的はこのGGOにて優勝を勝ち取る事。同時に目の前に現れた
ハンドガンだけで相手を倒す、それが真実ならば確かに賞賛に値するプレイスキルである、が。
この場はGGO最強を決めるBOB決勝戦、予選にて奴の速射の腕は確認した、確かに脅威だ。噂通りの強さとも核心は持てる。
しかし今は切磋琢磨した己の強さを誇示する者等が集う決戦の場、
そんな甘い考えだけで勝ち取れるほどBOBは甘くないのだ。
過去一度だけ、拳銃とナイフのみで勝利を勝ち取った猛者が居たという。しかしそれはまだアメリカサーバーがこちらに入ってこれた時期。
恐らく本当の戦場を知るプレイヤーが乱入し優勝を勝ち取ったのだろう。そうそう容易く出来る事ではない。
証拠としてスコープの先で未だ瓦礫の影に隠れる奴は動けずに居る。距離にして400、この距離は簡単に縮められない。
さぁどうする。既に二発お前には与えた、ハンドガンで狙えるものなら狙って見せろ。この通りにはまだ何人かのプレイヤーがお前を狙っている。
どう転んでもお前に勝機などな―――
――――ドォォォォォォォン
「ッ…なんだ?」
思わず視線を逸らしてしまうほどの爆音が届き自分はスコープから視線を外し左方を見やる。
幸いこの場は小さな建物の屋上、視界は開いている、見えたのは隣の大通りから立ち上る砂ぼこりと黒い煙。
視界の端でバギーが消えていくのが見えた、他プレイヤーの弾丸が自動車のガソリンにでも引火したのだろう。
こちらに影響はない。再びスコープを覗くために視線を戻した瞬間に聞こえてきたのは発砲音。
それも複数、しかしこちらを狙ったモノではない。ならば自然と答えは見えてくる慌てて通りに視野を向けるといつの間にかバギーに乗り込んだハンドガンキラーが直進している。
恐れ知らずに、第三者からの狙撃を物ともせず俄然揺るぎ無く、しかしまだこちらの距離。
いくら飛ばした所で距離を詰めるまでにあと10秒はかかる。この時間で捉えれば良いだけの事。
こちらの位置は先ほどの狙撃後に変えてある、まだ見つかってはいない。これで弾丸予測線は見えない、さぁ沈むが良い。
自然と吊り上った頬が引き金を引き絞ると同時にスコープで捉えていたハンドガンキラーの顔が『こちらを見た』
「!?」
いいや、いいやまだだ。ゴーグルのせいで視線の有無は確認できていないがこちらを見つけている可能性は限りなく低い。
今が引き金を引く時だ
「消えろッ!!」
やや動揺が混じった声音が吐き出された瞬間に一発の弾丸が撃ちだされる。悪くない、まもなくソレは奴に着弾する。
そう思った瞬間だった
――バウンッ
言葉にするのならそんな音、突然視界から消えたバギーとハンドガンキラーは弾丸が届くより先に空を飛んでいた。
距離として100m未満、驚くよりも先に見えてしまったのはその手に持つ銀色の40口径。
隠し玉だったのか、装備がSAAだけとのたまっていた情報屋に殺意が湧く。
両手で構えられたソレが火を噴く、弾丸予測線もなく、股関節が吹き飛ばされ姿勢を崩した瞬間に垣間見えたのはバギーから飛び退く奴の姿。
そして飛び込んでくるバギー本体だった。
「―――だったらアンタはこの手を握れるの!? 人殺しのこの手を!!」
バギーを乗り捨て、混戦の中を駆けていた。
立ち上る黒煙を目印にその先に進んだプレイヤーを狙う事にした。理由は特にない。言い得てしまえば殆どのプレイヤーが集まっていた廃墟街を捨て砂漠地帯に態々足を運んだプレイヤーに興味を持った。
加えて、先ほど黒コート、恐らく死銃を見つけた。ならばこの先に奴の標的が居る可能性もある。
ならば先に自分が押さえて牙にかかる前に退場させるか、待ち受けてしまおうか。そんな考えがあったからだった。
バギーのタイヤ跡を頼りに全力疾走、タイヤ跡が先に見えた洞窟に消えた事を確認して足音に気づかれるのを懸念。
サボテンを足場に先に進み砂から顔を出した岩に足を降ろし静かにその先に近づいた時、そんな悲痛な言葉が聞こえてきた。
洞窟の中で声を上げているのはシノンだろうか、嗚咽交じりのその言葉は重く、そして何より自らに突き刺さってしまった。
「人殺し…か…。」
「―――ッ!? 誰!!」
口から零れた言葉、自然に吐き出した自分に驚くと同時にその手に構えていたSAAを砂の上に落とす。
「リク」
「―――ッ…!! 何よ、武器を捨てて…盗み聞き…。悪趣味ね…!!」
「…」
ゴーグルを外し両手を上げたリクはこちらに視線を向けたキリト、そして涙を浮かべたシノンを視野に収める。
何時もよりも不機嫌そうに顔を歪めた彼はゆっくり言葉を口にせず足を進める。突きつけられたグロックの銃口はカタカタと音が聞こえる位にぶれている。
「…一度貼られたレッテルは二度と剥がれない、痛い程知っている。」
「来ないで!! そんな見え透いた同情なんていらない、何も知らないのに知った口きかないでよ!!」
癇癪を上げる子供の様に泣きながら声を荒げた彼女は、引き金を引いてしまう。瞬間、リクの視界内には無数の射撃予測線が行き交い弾丸が身体の各所を撃ち抜いていく。
「リクッ!!」
思わず声を上げたキリトに一度だけ視線を向けた彼は足を止めずに弾丸を受け止め、彼女の目の前に立ち、グロッグのスライドを無理矢理掴み取り弾丸を止める。
涙交じりの鋭い視線と憂いを帯びた彼の視線がぶつかり、リクは無理矢理グロッグを降ろさせた。
「アンタみたいに強ければ悩みなんてないんでしょうね!! 大嫌いよアンタなんか!!」
今にも人を射殺さんばかりに鋭く、怒りと悲しみの感情を滲ませた瞳を彼に向けるシノン。
彼はこれを知っている。感情の行き場がない、自らで自らを縛り上げている。罪悪感と後悔の念で頭がおかしくなりそうなそんな苦痛を彼は嫌と言うほど知っている。
過去の自分はその解決方法が見つからなかった、だから他人が嫌いになり、遠ざけた。
次第に自分自身が嫌いになる、そしてそのレッテルが自分を更に壊し始めるのだ。
だから彼はゲームへと逃げた、自分ではない自分になる為に、そして、いつか誰かが助けてくれることを願っていたのだ。
目の前の少女はそんな自分に良く似ている気がした。あくまで気がしただけだ、それでも放っては置けない。
本来の自分がお節介を焼かずにはいられなかった。
「…誰も知らない癖に、知ろうともしないくせに、いつだって第三者の他人共は平気で言葉を吐き捨てていく。見た目が怖い、前から何かやりそうだった、実は怖かった。キレたら手に負えない、近寄らないで欲しい。人の良い所は見ないくせにそうやって他人様は人を貶して遠ざけていく。そして次第に出てくるんだ。」
『お前のやった事は唯の暴力だ!!』
言葉を切っ掛けに彼の脳裏に不意に浮かんだのは忌々しい記憶、それが更に彼の顔を知らず知らずに歪めていく。
「その場にも居なかったくせに、見ても居ないのに正義ぶって自分が正しいと人前で堂々と鬼の首を取ったように吐き捨ててくる偽善者が。」
知り得もしない、隣のクラスの誰か、知った事じゃない、お前にそんな事言われる筋合いなんかないのに勝手な事をしゃしゃるな。
正義感が強くて有名な生徒だった? 嘘を吐け、他人に焚き付けられ真実を見抜けぬまま嘘を信じた愚か者が。
「鎖の様にいつまでもジャラジャラと自分を縛り付けてくる後悔と罪悪感。それがその内に自分をおかしくしてくる、他人に興味がなくなって近づいてくる他者が嫌いで仕方なくなる。」
嫌いだ、他人なんて嫌いだ、だから俺はゲームに逃げていた。
「次第に日々を受け流していくようになって、関わりを捨てる。どんどんどんどん、自分が自分でなくなる。」
色の無い景色、生きている実感何てその時には何処にもなかった。
何もしていないのに気持ちが逆立つ、気持ち悪くて気持ち悪くて、何かに当たらないと自分が抑えきれなくなる。
「そして我慢できなくなると逃げるんだ、何処でもない何処かへ」
「リク…」
「アンタ…」
飛び出してくるリクの言葉は重く、その瞳は更に憂いを帯びていく、その独白は彼の経験である。
逃げ場のない少年が経験した、簡単に口にできる話ではなかった。
「…まぁ、落ち着けよ。俺の話は忘れて、少し休憩した方が良い。」
「…最初は人を見た目だけで判断して近づいてきたプレイヤーだと思ってた。」
「ハハッ、冗談。SAOでそれ言われたら何も言えないが、完全ランダムなこの世界でそんな事気にするかよ。そもそも、見た目は良くても怒ると速攻で攻撃してくる何処かの嫁がいるし。」
「お、おいリク!!」
「鍛冶もできてアイテム調達も上手な娘もいたけど、メイスもたせりゃ一騎当千」
「愛想がよくて、ムードメイカーないい子もいるがブラコンだし」
「ろくに話した事ないのに、何か俺の事一方的に怖がってくるちびっ子も居る。」
「ホント、見た目と中身なんて一致しないから俺は気にしないね。」
――――ALO
「………ふ、ふふふふふ」
「あー、そういえばリクさんの装備預かってたなぁ、これどうしようかなぁ」
「ぶ、ブラコッ…!? 」
「だ、だって怖いんですもん……嫌い!!」
死亡フラグ乱立中である。合掌。
ところでハッシュタグってなんだ