ソードアート・オンライン−−ギルド名『草生えるw』   作:tfride

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Ⅲ 第12話『いざ尋常に』

「…なんだよ、ネカマ」

 

星空の元、リクは気だるげに傍に立つ男にそう言い放つ。そこには遠慮の欠片など微塵もない。

むしろ親しさの表れからそう発したのだろう、その顔には薄く笑みが浮かんでいる。

 

「ネカマとはなんだ!! これは偶然だ、偶然!!」

 

「嘘つけ確信犯、女だと騙して片っ端からナンパしてたくせに。」

 

「やめろ、誤解受ける事言うな!!」

 

平然と人をおちょくる様に笑みを浮かべて話を続けるリクとキリト、間もなく体力ゲージは火傷の状態異常でゼロになる。

本来の目的なら決着を着ける為にキリトとシノン、そしてペイルライダーとも決着を着けなければいけないのだが。

 

「ハハッ、アレ、見てみろよ。」

 

如何せん、今のリクにはそんな事どうでもよさそうだった。優勝を出来なくとも満足のいく戦いが出来た、何時ものフォローが無かった中で、実力者とここまで張り合ったとう事実だけで満足していた。

少なくともあの三人、実質二人の小言の相手をしなければいけないのが心残りではあるがそれも致し方ないだろうと。だから今回は次に回そうかと、今回の功労者に譲るくらい構わないだろうと考えた。

 

すっきりとした表情で辺りに浮かぶ中継アイコンに指を差してキリトに意味を伝えて盛大に笑う。

もうそこには感情に囚われていた少年は居なかった。

 

慌てふためくキリトを視界に捉えながらも、また聞こえてきた足音に気が付いて彼は上半身を上げて顔をそちらへ向ける。

 

「勝ったのね…」

 

「あぁ、お陰様でな。助かったぜ、最後の予測線。」

 

こちらに向けて歩く冥界の女神を見据えて彼はニヒルに笑う、一仕事終えたような素振りで穏やかにそう告げる。

本心からの感謝か、その瞳は何もかも振り切ったようにまっすぐだった。

 

「差し詰め、幻影の一弾(ファントムバレット)ってか? どの道、あの牽制が無けりゃ終わらなかった。ありがとうよ、シノン。」

 

「…上手く行ってこっちも安心したわ、それに見てるだけじゃ前に進めないしね。所で―――」

 

アイツ、何を慌ててるの? とシノンが指さすのはアタフタと中継アイコンに向かって喚いているキリトだった。

自分が蒔いた種とはいえ流石に少し罪悪感が湧いて生きたリクは楽しそうに、吹き出して言葉を探した。

 

「あー、そうだな。アイツも今、俺の幻影に踊らされてるんだよ。」

 

「ん? 何を吹き込んだのよ。」

 

いずれわかるさ、そう呟き返してALOでポカンとBOBを見ているであろう面子を思い出して苦笑する。

まったく、もっと大きな声で話さなければあんな会話聞こえやしないだろうに、経験者だからこそ他人事のように考えて悪い笑みを浮かべる。

 

身から出た錆である、自らを恨めスケコマシ。

いくらSAOサバイバーでも戦友のよしみでもリア充には容赦しないのが陸人クオリティ、そこ、大人げないとか言わない。

 

気っだるそうに起き上がった彼はキリトの頭を軽く小突き、現実に引き戻して締めようとした。

 

「おっまえなぁ!! 言って良い事と悪い事があるだろ!?」

 

「喧しい、ハーレム製造機にそんな文句言われる筋合いなんぞねぇ。」

 

「ハー…レム? …ははぁ…。」

 

断固抗議の姿勢を露わにしたキリトを斬って捨てたリク、彼の言葉に何となく何が理由で慌てていたか察したシノンの瞳は冷たかった。

弁解を垂れる色男を横目に、リクは話を切ると本題を話し出した。

 

「取り合えず、死銃は倒した、SAOの頃のネームも思い出したんだろ。キリト。」

 

「あぁ、お前も覚えてるだろうけど『赤目のザザ』だ。これから俺は政府の役人に連絡して奴らを止める、シノンももう協力者が撤退しただろうから、ログアウトも出来るだろうけど。」

 

「そうね、殺すならもうやっているだろうし。どうする、一応本名と住所だけでも教えといた方が良い?」

 

警察を呼ぼうにも説明できない手前、キリトに頼んで役人を寄越すのが妥当であろう、しかし何故であろうか。

リクは何処か言い知れぬ不安がよぎった。

 

そして始まった情報交換、桐ケ谷和人に関してはもう知っている故にどうでも良かった、しかし何故こちらにも聞こえる様に話すのだろう。

情報管理はしっかりした方が身の為だと、人知れずリクが溜息を吐いているとジト目が彼を睨んでいた。

 

「…何だ?」

 

「キリトも名乗って私も名乗ったのに、アンタは何もないの?」

 

どうやら彼にも名乗れとのお達しらしい、内心めんどくさいのと、シノンと同じようにゲーム内と現実の自分は切り離した別人だと、認識してる節がある彼は少し戸惑った。

だが目の前の女神は折れそうにない。仕方なし、諦めた彼は本名を口にする。

 

「…雨川 陸人。」

 

「桐ケ谷和人でキリト、陸人だからリク、成る程、二人とも安直ね。」

 

『人の事言えないから』

 

シノンの言葉に二人してツッコミが入り、三人して笑う。そして自然と見上げた夜空に目を奪われながらもリクはある事に気が付いた。

 

――――あぁ、そうだ、まだ終わっていなかった

 

 

 

徐に回復アイテムを取り出しなけなしのHPをある程度まで回復させた彼は、スミス&ウェットソンのシリンダーから弾を一発だけ残し一回転させる。

怪訝な顔をした二人に、最後の一仕事とわらって答えた。その言葉に二人は顔を合わせ、そして気が付いた。

 

リクの背後、数メートル離れた所で佇み、こちらを見据えている死神に。

 

「…生きていたな。」

 

「あぁ、もし俺が死ぬのならちゃんと死神に刈り取ってもらわないとな。」

 

最後の戦い、待ち望んでいたとペイルライダーはその手にショットガンを構える。対してリクは軽口を叩くと銀色に煌めく銃口を彼に向けた。

 

「お互い、満身創痍、一発で決着を着けようぜ? まさか、その鎌は鈍らになっていないよな?」

 

「望む所だ……!!」

 

二人が離れて彼らを見据える中、砂塵の風が吹き荒び、彼らの間をすり抜ける。

リクが取り出したのは先ほどステルベンが落としたエストック、それを片手に、もう片方の手に握られた50口径の撃鉄を上げると同時に、エストックを大きく振りかぶり宙に大きく投げ捨てる。

 

対面する彼らの距離は大よそ10メートル、互いに秀でたステータスはAGI、速度勝負になる事に違いない。

勝負は一瞬、彼が撃つか、ペイルライダーが穿つか二つに一つ。

 

エストックが風を斬り、ヒュンヒュンと回転し音を立て砂漠に突き刺さる、刹那―――

 

 

――――轟

 

 

 

重なった銃声、瞬く間に顔が触れ合うまでに接近した両者、銀色の雷鳴が響き、鈍色の銃口がリクを穿つ。

仰け反ったリクは後方に倒れ、ペイルライダーはその場に立ち尽くすとやがて、満足したようにショットガンを手放し倒れこんだ。

 

[DEAD]

 

ペイルライダーの上にそう表記され、リクは汗をかきながら微笑むと言葉を漏らす。

 

「最後まで、俺の勝ち…だ」

 

満足そうに、次第に微笑みは満面の笑みに変わり己のHPバーの残量が残り少ない事を確認して、最後まで付き合ってくれた仲間達()に感謝する。

今度こそやり切った。もう思い残す事は無い。あと僅か数分で火傷の状態異常で終わると悟りながら彼は瞳を閉じた。

 

「私との勝負はどうするのよ」

 

しかしその余韻を邪魔する者が現れる、ゆっくりと瞼を開けたリクが捉えるのはこちらを見据える狙撃手と黒の剣士。

彼女の言葉にニヒルに笑ったリクは口を開く。

 

「次に、取っとくよ。今回はお前らに譲るさ。」

 

やがて終わるこのゲーム、今回は苦しかったが得る物も多く楽しいゲームであった。

もう満腹である、だから譲ると最初に決めているのだから。

 

「じゃあな。」

 

状態異常によるHP減少により、全損した彼はこの場で敗退する。最早言葉さえ話せなくなりモニターで画面を見る様に、キリトとシノンを見据えた彼は何となくこれから起きる事を察した。

 

(お土産グレネードはもうくらいたくねぇなぁ………)

 

自らが体験した事が目の前で起き始めようとしている事に苦笑いし、頬を掻く。

その視線の先では手を繋いだ二人がグレネードで吹き飛び優勝を飾る姿だった。

 




書き溜めたものが尽きたのでこれ以降は通常投稿です。

頑張ります。
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