~二日目~
「日加那さん!起きてください!」
うるさい声と共に叩き起こされる、全くこいつは…。
「朝ですよー!起きてくださーい!」
「…お前に起こされたかと思うと本気で死にたくなってきた。」
「そこまで!?」
「と言うかよく起きれたな、一生分の運使いきったか?」
「ち、ちがいますよ…コフィンさんに叩き起こされて『せめてメイドらしいこと位はしてください。』って言われて…。」
「…終わったな、まぁメイドとして頑張れよ。」
「何で肩をポンと叩いて去ろうとしてるんですかぁー!?」
騒々しい物が後ろに張り付いて来るがあえて無視して今日のスケジュールを確認する。
「今日はーっと…スラム果実酒計画の最終確認面談、土砂崩れ整備の人員配置、クリューの特訓…後は兵士の備品補充だな。」
「魔王様!おはよう!」
通路で待ち伏せしてたであろうゼナが声をかけてきた。
「おっ、今日は私服か。」
「はい、流石にあんなヒラヒラした奴はちょっと…。」
「だよなぁ、あとこれ今日のスケジュールだから馬車の手配と書類の抜けが無いかチェックを頼む、わからない所はコフィンさんに聞いてくれ。」
「分かったわ…あと後ろのその人は?」
「あ…。」
完全にこいつをどうするか考えて無かったわ…。
「えーっと…俺の弟子みたいなものだ。」
「え、ええっと…クリューです、よろしくお願いします。」
「弟子?」
「ああ、名前が似てることから採用したんだが…。」
「名前が似てるだけで?」
「面白さから門を通されたお前が言えんがな。」
「…確かに言われてみれば私の方が不自然すぎる!」
むしろ疑問に思わなかったのか。
「んじゃあお前も自己紹介な。」
「えっと…私はリザード一族のゼナ、出稼ぎみたいなものだけど魔王様の右腕になるためにここに来た、よろしく。」
クリューをチラ見してみると…。
「はわわ…!」
顔が青ざめて人の後ろで軽く震えてる、人見知りかコイツ。
「…まぁアレだ、度胸をつける修行もやってるからな、多目に見てやってくれ。」
「えっと…うん、わかった。」
「じゃあさっき言ったこと頼んだ、あと出かける準備をしといてくれ。」
「はい!じゃあ失礼します!」
駆け足でコフィンさんの元に走っていったら袖を握って居たクリューの手が離れる。
「…大丈夫か?」
「…はい。」
一応頷くがまだ顔色が優れてない、無茶しようとしてるのが手に取るように分かった。
「はぁー…ちょっと休んどけ、夕方の特訓までもたないぞ。」
「分かってます…でも、今日も一人になるのは嫌です、日加那さんの隣は…絶対に譲りたくありません。」
「……。」
全くこいつは…無駄なところで意地っ張りなんだな。
「…わかった、でも無茶すんなよ。」
「分かりました!」
「じゃあお前にも仕事をやろう。」
「はい!」
「一旦ハウス!」
「はい…。」
とぼとぼと部屋に戻るのを確認したら移動しながら演劇衣装の仮面を被る。
「…あー…あー…ヴぅん!」
大きく咳き込み、声の総仕上げを行う。
「…下がれ、我はクリューダ・ブルフェイアルであるぞ!」
「ははっ!」
「…コフィンさんや、いつからそこに?」
「咳き込んだ辺りから。」
「うわー…、聞かれてたか…。」
「別に恥じることでは無いと思いますよ?」
「でもなぁ…と言うかどうした?ゼナがコフィンさんの所に…。」
「待ってくれぇー!」
ゼナが息を切らしながら走ってきた。
「はぁ…はぁ…コフィンさん!何で逃げた!?」
「魔王様をからかえる気配がしたのでつい。」
「ついっておま…。」
「なぁ…遊んでる時間は無いんだが…。」
「あっ…。」
しまったと言わんばかりに驚愕の声を漏らしてしまったらしい。
「出来るメイドと言うのは違いますよ、馬車はもう城の前に止めております、書類の抜けも御座いません。」
「マジか、よしクリュー呼んで行くぞ。」
「その前にこれを。」
「これは?」
「お弁当です、三人分あるので取り合わなくても良いですよ。」
「助かる。」
弁当を受け取った瞬間に首筋にキスされた。
「ひゃぁあ!?」
「んぅ…お嬢様はもう馬車に乗せてあるのでご心配なく。」
変な声をあげてしまった…ゼナをチラッと見てみると。
「ふぅん…魔王様はこう言うのが好みなんだナー。」
ガラスの破片が如く視線が突き刺さる、そんな目で見ないでくれ。
「…ええい!急ぐぞ!」
「ふふ、行ってらっしゃいませ。」
小悪魔みたいに微笑み、片手を振って見送ってくれる。
「行って来ます。」
馬車に駆け込み、教えられた通りに出来るだけ飛ばすようにする。
「あ、安全運転でお願いしまーす!」
「うるせぇ舌噛むぞ。」
頭にげんこつを打ち込み、軽く黙らせる。
「ハーッ!」
うわ本当に早く動き出した。
「よし、これなら余裕で間に合うな。」
「はー…本当に魔王が直々に来るんですかねぇ。」
「さぁな、来なかったら来なかったで金を踏んだぐるさ。」
「そりゃい…兄貴!孟スピードでこっちに突っ込んで来る馬車が!」
「はー!?」
「おおおおお!?間に合ったか!?」
「ギリセーフだ魔王様!」
「じゃあ…止まれェェェェ!」
急なブレーキをかけたためクリューの胸がだゆんと揺れた…ってそんな事はどうでも良い。
「すまない、待たせたか?」
「あ…あんたが魔王様かい?」
「ああ、ちと時間が無かったものでな、粗暴な走りを見せてしまった。」
「いや、てっきり上品に来るのかと思いきや…はっ!随分と面白い人のようだ!野郎共!」
「む?」
ずらっと所々の廃屋から子分と思われる奴等が出てきた。
「歓迎しよう、ここに居るのはスラムの人間全員…俺の子分達だ。」
よくみると小さい子やリボンを着けた魔物も居る。
「俺はワーウルフのハート、あんたは?」
「クリューダ・ブルフェイアルだ。」
軽い握手を交わし、早速同意書と朱肉を用意する。
「ほー、随分と大きい装置やら洗浄器具が導入されるんだな。」
「型落ちした魔術式だがな、場所はこのスラムの広い空地…まぁ前魔王城跡地とでも言っておくか、ここはどうだ?。」
予算的な問題も汲んでいるのでこの話を通さない限り道はない。
「おう、俺もここが丁度良いと思ってたんだよ、で…報酬が売り上げの四割だったか?随分と羽振り良いじゃねぇか。」
「その事なんだが…まさかここまで協力者居るとはな、報酬を五割に引き伸ばしたい。」
「良いのかよ、あんたがマイナスになっちまうぜ?」
「構わん、こんな国の状況を変えるにはこれしかないからな。」
眉間にシワを寄せ、ナイフを机に突き立てられた。
「…あんた、何企んでる?」
「…我は魔王であるが故に王であることを強いられる、王であれば民を導かねばいけぬものであろう?」
「そうだけどよ…ここまでやる必要は無いんじゃないか?」
「いや、前任者の尻拭いをせぬ限り我は魔王として名を語れん、であれば良き王になるしかあるまいよ。」
「王、か…名前ばっかりだと思っていたがあんたは違うようだ、おい、お前らは一足先に広場に戻ってろ。」
「兄貴、良いんですか?」
殺気を放ち、ナイフを地面に投げ刺した。
「うるせぇ、話をしてぇんだ。」
「っ、分かりやした…行くぞ!」
子分と思われる小僧が全員を引き連れて目的地であろう場所に向かっていくと、ハートが口を開いた。
「なぁ…あんた、人間だろ。」
「…いつから気づいてた?」
「はっ、最初からだよ。」
「そうか…すまない、騙すような事をしてしまって。」
「いや、むしろ好都合だ。」
「どういうことだ?」
机の上に小さい小箱をトンと置いた。
「これは?」
「知らないのか?さては外界の人間だな。」
「ああ、説明して貰えると助かる。」
「コイツはアーク、禁忌の箱だ。」
「禁忌の箱?」
「おう、トンでもねぇ力を秘めているクソッタレだ。」
「どのような力が?」
「そーだなぁ…ポイント増加を防ぎ、願いを叶えれると言えば簡単か?」
「どうしてそのようなものを持っている。」
「前魔王から盗み取った、奴の力の源といっても過言では無かったからな、まぁおかげで片目が見えなくなっちまったがな。」
閉じた片目を擦り、遠い目をしていた。
「…どうしてそれを我の前に出す、まさか返すとは言わないよな?」
「そのまさかだよ、あんたは人間だから使えて二回程度…だったら返納しておこうと思ってな。」
チョンチョンと脇を突きクリューが不安そうな目でこっちを見てくる。
「…結構だ、お前が持っていてくれ。」
「そうか?まぁ必要になったら言ってくれ。」
「では我は一度帰る、これからよろしく頼むぞ。」
「ああ、その前に1つ教えてくれ。」
「何だ?」
「アンタ自身の名前を教えてくれ。」
「…日加那、日加那享だ。」
「ヒカナ…分かった、ありがとよ。」
「では去らばだ。」
今度はゼナに運転をさせ、ゆっくり馬車の中で弁当を食べながら備品の発注書を届け、魔王城でクリューの特訓をし、明日に備えて早目に眠りについた。
~三日目~
「今日は…書類の判子押しだけか。」
「じゃあ私買い物に行ってきても良いかな?」
「おう、行ってきな。」
「じゃあ行って来ます!」
忙しく駆け出し、乱暴にドアを閉めていった。
「…コフィンさん、ちょいと。」
「はい、何でしょうか?」
「アークについて説明して貰えるか?」
「アークですか…分かりました、軽くですが説明させて頂きます。」
どっから出したか分からない三角メガネと教鞭を装着し、スーツ姿に変わった。
「本来アークと言うのは神からダビデ王に授かりし「死」そのものを呼び出す宝具、ですがその力を操る力を持っていればただの願いを叶える道具に成り代わりると言う代物です。」
「…それって不味くない?」
「ええ、ですが前魔王はそれを躊躇いもなく使っていました、お陰で天災や不幸な知らせがバンバン届くように…。」
「最悪やん!」
「まぁ元騎士団長の方が奪い去り、守るものも無くなったと言う訳です。」
あいつ騎士団長だったのか…。
「それにしても何故アークを?」
「あー、実はかくかくしかじかで。」
「成る程分かりました。」
「分かるの!?」
「ええ、首筋にキスをしたでしょう?アレ実は盗聴用魔術だったんですよ。」
「魔術だったんかワレ。」
「ふふ、まぁ護身用に張らせていただいた程度ですけどね。」
「まんまとやられた…。」
「さ、まだまだ書類はあるので頑張って下さいね。」
「わかってるって。」
ある程度片付いたらクリューを誘って休憩でもするか。
この日、ゼナは帰ってこなかった。
~四日目~
「ゼナが帰ってこない?」
「ええ、クリューお嬢様に街の中を探知してもらったのですが反応は無かったとのことです。」
「…嫌な予感がする、ちょっと町で聞き込みに行ってくる!」
「聞き込みですか、私も同行します。」
「クリュー院。」
「私は霊体化し、空を見回りながら警護しますので安心して聞き込みに集中してください。」
「よし、じゃあ行くぞ!」
街に出てから色々な魔物や人間に話しかけたがこれといった情報は得られなかった、ただアクセサリー店で見かけたとの情報が手にはいったので一先ず向かって見ることにした。
「魔王様、いかがなされましたか?」
「我の側近補佐のゼナを探しておる、見かけなかったか?」
「あー…昨日買い物に来たあの子ですね、買い物し終わってから黄色いターバンをした奴等を尾行するように追っていきましたけど…。」
「黄色いターバン…フー盗賊団か!あの大馬鹿者…!礼を言う!これはチップだ。」
「あっ、魔王様!?」
適当に金貨を渡し、全力で魔王城に戻る。
「コフィン!」
「いかがなされましたか?魔王様。」
「あの馬鹿フー盗賊団を追いかけて行きやがった!」
「…それは事実なのですか?」
「間違いないと思います、心の目を使用しても嘘をついたようでは無かったです。」
「クリュー、ゼナの反応を探れるか?」
「…無理です、どうにも妨害されてて分からないです…すみません。」
「いや、こっちこそ無理言ってすまない…取り敢えず王政よりもあいつを探すのが先決だ、魔術隊を呼び出してくれ。」
「畏まりました、お嬢様も手伝って頂けますか?」
「はい!」
「では我はスラムの奴等にも聞き込みしてくる、何かあったらカメイアをこちらに寄越してくれ。」
「はい、分かりました。」
城の前に停められていた馬に跨がり、手綱を打ち付ける。
「ハーッ!」
どうか無事で居ろよ、ゼナ…!
~五日目~
しくじってしまった、まさか後ろから新手が来ていようとは…。
「…ここは…鉱山?」
どうやら奴隷馬車に乗せられていて手枷と足枷をされているらしい。
「気がついた様だね。」
「誰!?」
「おっと、僕も奴隷さ、この手枷と足枷が見えないのかい?」
「…ここは?」
「位置と経過日数から見て…辺境の山の裏って所かな?」
「…どうしよう、魔王様に認めて貰えなくなる…。」
「魔王?どこの魔王だい?」
「えっと…ブルフェイアル一族が治めている場所。」
「あー、最近魔王が変わって良い方向に向かっているあの国か。」
「…ダメかな、やっぱり。」
「おや、弱気とは随分な反応じゃないか。」
「だって…リザード一族の女は人間みたいな体だし、そこまで強くないし、鱗なんて…柔らかいし…。」
「…まだ目的地まで相当遠い、少し眠ると良い。」
「そうさせて貰うよ…。」
「…さぁ、これからどうする気だい?…異世界の役者さん。」
~六日目~
1日馬車を走らせたどり着いたのは薄暗い洞窟に作られた監獄だった。
「…ここは。」
「入れ。」
「きゃっ…!」
「直ぐにボスを読んでくる、そこで待っておけ。」
「…。」
どうしよう…このままじゃ好き勝手犯されて殺される…逃げないと…。
「逃げようったって無駄さ。」
「…あんたは?」
「…長いことこの牢獄に住んでるおばさんさ。」
「…ここから逃げる方法とか分かる?」
「はっ、そんなものあったらとっくに使ってるよ。」
「…はぁ、そうよね…。」
「…アンタ、名前は?」
「…ゼナ。」
「ゼナ…!?」
「?、私を知ってるの?」
「……いや、人違いさ、気にしないでおくれ。」
タバコを吹かし、こちらを見ようとしない。
「アンタ、母親は居るのかい?」
「ううん、小さい頃に少し顔を見たっきり…元気かな…。」
「…女ってのはしぶといもんさ、どっかで生きてるだろうよ。」
「…かもね。」
ガシャガシャと鎧が揺れる音が響いて聞こえる。
「…誰か来る。」
「よぉ、てめぇがツケてた魔王の手先か。」
「…アンタがフー盗賊団の親玉って訳ね。」
「ああ、もう一人居るがな。」
「…どう言うこと?」
「何だ?知らねぇのか?」
「止めな!そいつはその子に話して良い事じゃないよ!」
「ちっ…てめぇの部屋だったのかよ…まぁ良い、そいつを取り押さえてろ。」
「なっ…何をするんだい!止めな!」
巨大な男二人が二人係で腕を拘束する。
「なぁ嬢ちゃん…てめぇが知らねぇ事を教えてやるよ。」
「…何を?」
「何故リザードマン一族の女は人間タイプなのか、もう一人のボスは誰か…。」
「!!?」
「それはな…てめぇの一族の男衆が、俺達の拐ってきた人間の女をここで好き勝手犯して産まれたガキを里に持ち帰ってるからだよ、そしてその首謀者は…リザードマン一族の長であるてめぇの親父だよ。」
「え…。」
信じられなかった、だってお父さんは…。
「そりゃあ楽しそうだったぜ?無責任に種ツケりゃ誰でもよかったんだからなぁ。」
「う…うぁぁぁぁぁ!」
殴りかかる…が、丸三日なにも食べてないので力が入らない。
「おっと、何だそのヘニャパンチは…オラッ!」
「がはっ…!」
お腹に強力なパンチを突き刺さるように捻り込んできた、胃液が逆流し、その場に立てない位のダメージを受けてしまった。
「なんだよ、1発で終わりか…やっぱりハーフじゃ出来損ないなんだな…適当に犯して捨てるか。」
「く、くるな…。」
「へっ、お楽しみさせて…。」
「離せっ!」
さっきの人が押さえていた男二人を振りほどき、消えかけていたタバコを掴みとってフー盗賊団のボスの額に押し付けた。
「…死ね。」
腰に下げていた剣を振り抜き、胴体に突き刺した。
「お母さん!」
えっ、今お母さんって…。
「…無事かい?」
「ぁ…あぁ…思い出した…。」
遠い記憶にあった、何処か懐かしい記憶…それが今鮮明に写し出される。
「全くバカ娘が…。」
微笑しながら、ゆっくりと目を閉じた。
「はーっはっは!コイツは泣けるぜ!まさか守ったのがかつての母親だとはなぁ!」
「殺してやる…絶対に…アンタだけは…!」
「おっと、どうする気だい?まさかまた殴りかかってくるのか?」
「…我が一族に伝わりし豪槍よ…!」
魔力を削り、召喚魔法を唱える、もっと…もっと!力を!
そして現れたのは古ぼけた槍、からっきしの魔力で呼び出せただけまだまともだ。
「はぁ…はぁ…これで戦える!」
「ほぉ、じゃあ遊んでやるよ。」
「やぁぁぁ!」
渾身の一突きをお見舞いするがひらりと回避する。
「遅い!」
「ぐぅっ…!」
やっぱり届かないの…?私じゃ…駄目なの…?
「取り押さえろ。」
「離してっ!」
必死に振りほどこうとするがダメ、もう力が出せない…。
「さぁ…楽しませてくれよ…?」
「魔王様っ!」
ああ、もっと魔王様の為に…役にたちたかったな…。
「ヴァイオレンス…サンダァァァァ!」
「っ!?」
赤紫の雷が迸り、私を取り押さえていた男二人の上半身を焼き消した。
「何だてめぇ!」
「ゼナ、無事か。」
「は、はい…ううっ…。」
「よく、持ちこたえたな…少し、眠っておけ。」
睡眠魔法を唱え、強制的に眠らせる。
「…貴様は我の逆鱗に触れた…覚悟しろ。」
「ハッ!ここは俺様の根城だぜ?直ぐに増援が…。」
「ああ、それなら私が大体心臓をえぐり抜いたので死んだと思いますよ?」
「苦労…コフィン、奴に『最上級の絶望』を味会わせてやれ。」
「畏まりました…では魔王様はゼナさんを連れて外に。」
「分かった。」
転送魔法を唱え、洞窟入り口まで飛ぶ。
「はっ、最上級の絶望だ?やれるもんならやってみろよ。」
「そうですねぇ…確かあなたは人間界に家族が居ましたよね?」
「!?」
驚いたように目を見開き、絶句する。
「家族構成は父、母、後は奥さんと娘が二人…でしたっけ?」
「テメェ!家族に手ぇ…。」
「アイアンフック、ヴォルカ。」
手枷を飛ばした一瞬の隙に炎魔法を放ち、焼けつく手枷が装置された。
「ア"ア"ア"ア"ア"ァ"!」
「熱いですか?苦しいですか?ですがご安心してください…これより、貴方が今まで大切にしてきた物を全て目の前で失わさせて頂きますので。」
「ヤメ…ロ…!」
「貴方だって今までやって来たでしょう?まさか…自分だけダメとか言いませんよね?」
「ふざ…けんじゃ…ねぇぞ…!」
「ふふ、ではこれよりショーを開始致しましょう!」
指をパチンと鳴らし、コフィンがライトアップされていく。
「まずはプロローグとして父親の火炙り、母親の水没劇、メインとしてオークの集団で貴方の奥さんを犯し、エピローグとして娘二人をスライムと!触手で!犯した後の溶解ショーをお送りいたします!」
どんどん青ざめて行くフーの顔、最早コフィンを止めるものは誰も居ない。
「た、頼む…俺ならどうなっても良い、だから家族だけは…。」
「どうなっても…?とおっしゃりましたね?」
「あ、ああ…だから…。」
「では絶望を与えさせて頂きましょう。」
「!?」
「さぁ…死にたくなっても死ねない絶望を…ごゆるりとお楽しみください♪」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!」
悲痛な叫びは誰にも届くこともなく、無惨に響くだけだった…。
~7日目~
「…うぅ。」
「目が覚めたか?」
「ここは…?」
「魔王城だ、あれから丸一日寝るとは思わなかったぞ。」
「そう…ですか…あの…私…。」
「ああ、側近の件か?勿論不採用…。」
「っ…!」
「と言いたいところだがお前が自ら囮になったと説明してしまったからな、採用せざるを得なかった。」
「それって…!」
「採用だ、これからよろしく頼むぞ?ゼナ。」
「はっ、はい!」
漸く一区切りついた所で脱力してしまう。
「……はぁー!疲れた!ほとんど演劇モード切ってなかったから疲れた!寝る!」
「魔王様、その前に説明を。」
「あ、コフィンさん。」
「全く…今日はお休みでも構いませんがせめてアレ位言わないと…。」
「すまん…ゼナ、よく聞いてくれ、俺は本物の魔王じゃない、本物の魔王は…。」
「お粥持ってきました~…あれ?」
「…認めたくないだろうがこれだ。」
「あっはい。」
………軽くね!?
「いやまぁ…薄々気づいてたんですよ?だからある程度予測できたと言うか…でも、私は貴方の右腕ですから!それくらい受け入れないと!」
「…強いな、お前。」
「えへへ…あ、そうだ、あの部屋に居たおかあ…女性の死体って…。」
「死体とは失礼だねえ、まぁ死んでるけどさ。」
「えー!?」
何故こっちの方に驚くんだコイツ。
「お、お母さん…何で…。」
「アンデッド化魔術を受けたんだよ、お陰でもうちょい生きれるようになったと言う訳ね。」
「…バカ、お母さんの…バカァー!」
「うおっと…いきなり飛び付くんじゃ無いよ。」
「うるさい!臭い!おふろ入ってよ…!」
「…ああ、言われなくてもそうするさ。」
拝啓、お母さん
俺は久しぶりに親子愛を目の前で見ました、もし…戻れたら、また色々と口喧嘩しながら喋りたいと思います。
次回 「毒沼の魔王、ルレンティア」