PSO2×SAO VR世界に入り込んだ守護輝士   作:のーん

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PSO2とSAOのクロス、第一話は導入部なので作者の文体を見たいなら見る程度でも構いません。


第1話 アークス

第1話 アークス

 

AP241/AC2028

地球の月軌道近傍に光学・電波・物理的な隠蔽を施された巨大な三又の宇宙船が一隻停泊していた。外宇宙調査船団オラクルを構成するアークスシップの一隻、7番艦ギョーフがここに停泊しているのは地球からの来訪者に端を発する一連の事件によるものだった。

 

 

【アークスシップ7番艦ギョーフ艦橋、指令室】

 

「エンガ兄さんは生きてるし、いつの間にかアースガイドなんて組織に入ってるし、使徒はいっぱい出てきたし、どういう事なのよ」

 

苛立ちと疲労が混じった声を上げたのはその来訪者である少女、八坂ヒツギはこの一月余りの間に起きた膨大な出来事にパンク寸前で、普段は花のように開いて見える赤髪のポニーテイルもその感情に連動したかのように萎んでいた。もっとも、感情に感応して微細な事象を起こすフォトンが多量にあるアークスシップ内ではさして珍しい現象ではないが。

 

「良かったじゃないですか。お兄さんは生きていて、マザークラスタと対抗する組織が出てきたのはこちらにとってもプラスです。少なくとも、地球で動きやすくなったのは確かです」

「ヒツギ、あまり気になるようなら直接会ってきたらどうだ? ここにいるよりはマシだろう」

そんなヒツギに声をかけたのはセミロングの金髪をツインテールにした女性と、全身を蒼い装甲に包んだロボットであった。

「ディアリーンの言うことも尤もだけど、さっきので話さなかった分、余計に話しにくいというかなんというか」

蒼いロボット、オラクルではキャストと呼ばれるサイボーグである男性のディアリーンはやれやれとでも言いたげな口調で続ける

「話すなら早い方がいいぞ、ここで考えていても仕方があるまい」

「・・・はい、あきらめて行ってきます」

立ち上がり、深呼吸をしたヒツギが弟分でもある連れ、アルに出かけることを告げようと艦橋から外に通じるエレベータの前に立った時、唐突にその扉が開いた。

「うわっ!?」

「おっとゴメンよ、驚かせちゃったみたいだね」

「いえ、こちらこそ済みません」

出てきたのはヒツギの肩ほどの身長しかない少年、青い髪と服が特徴的だが、それ以上に外見年齢不相応な話し方の方よっぽど特徴的である。

 

「シャオか、直接会うのは目覚めて以来だと初めてか」

「お久しぶりです、シャオ。ここに直接来るなんて、珍しいですね」

「シエラ、相変わらず元気そうでよかったよ。ディアリーンとは二年ぶりかな?」

金髪の女性はシエラと呼ばれて嬉しそうにする一方、ディアリーンは変えられない表情そのままに、皮肉げな声で返答した。

「一晩寝て起きたのと感覚は変わらんが、お前からすればそうなるな。さっそく、また騒動に巻き込まれているよ」

「君なら、一晩寝れば十分だろう。一日のうちにダークファルスと何戦したか忘れたわけじゃないだろ?」

「アドバンスクエストで出てきたのも合わせれば10程はあるな」

「だったら、何の問題もないじゃないか」

「今と変わらず底なしの強さですねー」

ハハハハ

 

自身を除く全員が談笑している中、ヒツギはポツーンとエレベータの前に立ちつくしていた。

「な、なんなのよー!?」

いきなり出てきた少年にからかわれるような謝罪をされたかと思えば、自分を除いて雑談を始めたら、さすがに気になるのが人情である。

「あぁ、君が八坂ヒツギか、直接会うのは初めてだったね。僕はシャオ、オラクルの管理人といったところかな」

「ついでに言うならば私を作り上げた張本人で、親のような存在ですね」

誇らしげに胸を張って、シエラが補足する。

「こんな小さい男の子がオラクルの管理人って、冗談・・・」

「残念ながら真実だ、もともとはシオンの海に生まれた知性体で、現在のマザーシップそのものがコイツといえる。この見た目も、自分の意識している年齢の人間としての姿だ」

その言葉にシャオが首肯し、ますますヒツギの困惑は深まるばかりであった。

 

 

ヒツギに事情、主にシャオが現在マザーシップに籠っている理由やマザーシップの管理を任されている理由、シエラの親的存在の意味などを説明して落ち着くまで、優に30分が経過していた。

「事情は呑み込めたか?」

「ど、どうにか呑み込めました」

「ならいい。分からないことがあったらその都度俺かシエラに訊け、教えられる範囲で事実を教える」

地球に戻る前にいったん頭の整理をしてくるということでヒツギは自室へと戻り、艦橋へはディアリーン・シエラ・シャオの三人が残った。

 

 

「さて、そろそろ僕の本題に入ろうか」

「お前がここに来たということは、どうせロクでもないが重大な案件ということだろう」

ディアリーンが青色のフォトンソファーを取り出して腰かけ、シエラがその横に椅子を持ってきて座る。

「艦橋内の監視機能をすべて停止、盗撮・盗聴は無し。これで今からここでする話は記録には残らず、無かったことになります」

「ありがとう、シエラ。今回は久しぶりに事象改変を試みようと思ってね」

事象改変、平たく言えば過去の書き換えである。全知であるシオンやその劣化コピーであるシャオが記録・演算した過去に対象者の情報を挟み込むことで時間移動を行い、そこで起きたこと起きなかったことを改変する。シオンが健在の頃には複数の出来事に同時に介入するため、もしくは起きた不都合を消すために何度も行い、シャオに代わってからも過去の真実を確かめるため数度行った。

「それで、今度はどこに? 予想は12年前のエーテルインフラ普及か、2年前のコッチへのアクセス急増だが」

「残念、その二つは地球との接点を無くしてしまう可能性が高いから改変する気はないよ。なにより、マザーの介入というリスクが大きすぎる」

現在の課題であるマザークラスタと関わりのある2事象が違うと言われ、ディアリーンはわずかに落胆する。

「外したか、たまには当てたいのだがな」

「今回は仕方がないよ、僕自身のちょっとした思い付きのようなものだからね」

そう言ってシャオが空間上に投影したのはいくつかの風景、剣を背負った黒い剣士や背中に虫のような羽を生やした女性などが戦っている光景、他のも同様だがその服装や背景・持っている武器やエネミーは時代も種族もバラバラである。

「VRゲーム、地球で流行っているゲームでね、意識だけを仮想現実に飛ばして体感するゲームみたいだ。一応、PSO2もこの分野に入っている」

VRと聞いてアークスなら誰もが思い浮かべるものがあり、ディアリーンはそれを挙げた。

「エクストリームの劣化版、といったところか」

「そのとおり、アレはフォトンや立体投影で現実世界に仮想物を作り出しているけど、こっちは仮想世界に現実の意識情報だけを飛ばしているんだ。もちろん、エクストリームみたいにデータを物質化することはできないし、そこで得た強さが本物になる訳ではない。でも、体験していることはプレイヤーにとって本物であることも事実だ」

 

とりあえず、シャオがやろうとしていることは分かったがその理由が不明である。どうして、VRゲームか時間遡行に絡んでくるのか、シエラとディアリーンの二人がほぼ同時に疑問を投げかけた。

「PSO2のプレイヤーを上手くこちら側に引き込むために、別のVRゲーム内で人脈を作ろうと思ってね。マザーが僕たちにしているのと、同じことをそっくりそのままやり返してやろうというわけさ。特に、SAOというゲームならこっちに引き込める可能性が高そうだからね」

そう言ってシャオが映し出したのはSAOの詳細だった。主目的はメインダンジョンの攻略、それ以外はけた違いの自由度を誇るVRゲーム初期の話題作ということだった。

「細かいことはプレイヤー達と把握している情報に齟齬が出るから言えないけど、内部で起きたある事件以降このゲームのプレイヤーたちはVR適性が非常に高くなったらしくてね、物は試しというわけさ」

 

 

SAOの詳細、主にβテスト時の攻略情報などを見てディアリーンはすでに乗り気だった。もとより探求心が強く、趣味人の気がある彼には魅力的に見えたのだろう。

「了解したが、ソフトはどうする? 住居やハードはどうにかできるだろうが、ソフトは1万しかないらしいじゃないか」

「その点は少々強引だけど、この子から強奪しようと思ってる。精巧な偽物とすり替えて本物は君が、彼には偽物をというわけだ」

「あのー、シャオ? それ、犯罪では・・・?」

「まぁ、内部の事件でこの子は真っ先に致命的なアクシデントに遭遇していたからね。それを回避したと思えば、マシだと僕は思うけどね」

どうやら、シャオの中では既定路線らしい。

「盗むのはどうする?」

「それについてはコッチとの交信の中継にも使える透刃マイを使おうと思ってる」

ということは、その本来の持ち主とも話がついているのだろう。なんとなくとしか言いようがない感覚に従い後ろを振り向くと、すでに本人がいた。

「というわけで、こちらをお貸しします。大食いですから、気を付けてくださいね」

黄色のボディスーツを纏い、脚と腕に黒色の防具を纏った少女、六芒均衡の零にして始末屋のクーナがそこにいた。

「せいぜい、気を付けるとしよう」

1mを超える二振の刃、アークスでは双小剣(ダガー)と呼ばれるタイプの創世器、透刃マイをクーナから受け取ると同時、彼女の服装はどこにでもいそうな薄黄のジャケットとスカート、帽子という風貌に変わった。

「これで、私もしばらくは始末屋休業でアイドルに専念できるねー、パートナーカード渡しているあなたも過去に行くみたいだし」

話し方もどこにでもいる少女と同じ明るいものに変わり、からかうような口調で話している。

「もっとも、私からしたらほんの短い間かも知れないけどね」

「そうなるよう祈ってくれるならばありがたい」

 

 

その後、簡単な当時の世相や基礎知識の説明を受け、機械然とした今のボディからハイキャストと同様の有機体で構築されたボディに乗り換えて、過去へとディアリーンは出立した。

 

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