PSO2×SAO VR世界に入り込んだ守護輝士   作:のーん

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第13話 【巨躯】の復活

ウォルガーダの張り手を躱し、ガラ空きの背中を見せた所にノエルが突っ込む。

 

「ヤァッ!」

 

その勢いのまま槍を突き立てた直後、俺とエリスの剣が追撃する。

基本的にヘイトは攻撃回数やウォークライのようなアピールで上昇するが、一番手っ取り早いのは最初に攻撃することだ。

 

「振り向き際は腕で薙ぎ払ってくる時もあるから気をつけろ! 腕を振り上げたら懐に潜り込むか腕の範囲外に出ろ!」

「っ!」

「おっと!」

 

言った直後に右腕での薙ぎ払いが俺たちを襲う。

俺とエリスは巨体の股を潜り抜けるように、ノエルはバックステップで回避すると視界に唯一存在するプレイヤーであるノエル目掛けてウォルガーダが駆け寄る。

 

「思った以上に速い!?」

「ノエル! 無理にガードしたり隙を誘わないで回避に専念してくださいね!」

「動き自体は素直だ、逃げ切れないときは懐に飛び込んだ方がいいぞ」

 

コイツの巨体とスピードは武器だが、先程の俺とエリスのように回避に専念された場合は股をくぐられたり上空を飛び越してしまったりと穴が多い。戦闘不能要因も複数現れて回避が間に合わない場合や連続張り手で2ヒット+起き攻めという場合がほとんどだ。

なので、一対多の場合はダメージの即時回復を鉄則として攻撃~振り返りの裏拳までの間にありったけの火力を撃ち込むか、遠距離職が怯ませ続けるかのどちらかで即討伐されている。

今回は遠距離攻撃ができないので、ヒット&エスケープで削ることになる。

 

 

 

「よっと」

 

ディアさんの言う通り、ウォルガーダというエネミーの攻撃は素直だ。

一度攻撃姿勢に入ったらほぼ中断することなく攻撃を仕掛けてくるし、その軌道も直線か緩い追尾にとどまる。だからこそ、変に距離を取ると逃げられなくなる可能性があるけれど、その点については半端な距離なら飛び込むというディアさんの考えが生きてくる。

 

「っと、上を飛び越えられるのは中々怖いねぇ……」

 

冷や汗を流しながらノエルが言うけれど、傍から見る分には大分上の方を通過している。

当たれば一撃で半分以上のHPを削られる攻撃ですが、逆にいえば連続で攻撃を受けない限りは死ぬことはありません。受けたダメージの大きさに慌てず、誰かがヘイトを取ったり回復までの間は回避に専念すれば十分に戦えます。

 

「これで、半分!」

 

回復のために逃げていた時間もありましたが、開始から5分程度で2本あるゲージのうち1本を削り切る。

 

「発狂かな?」

「皆さん、下がってください!」

「ディア、タゲ取りお願い!」

「任せろ」

 

ボスの例にもれず、HPが半分を割ったことで俗に発狂と呼ばれるパターン変化を起こしましたね。

その場で何度も足を打ち付け、その度に衝撃波が周囲に生じるけれど、すでに範囲外にいる私たちには当たらない。

その隙を狙ってタゲ取りを交代するため、ディアさんが短剣2本を眼球目掛けて投擲する。

 

「ギュワッ!」

「タゲは取れたが、っと!」

「ディアさん!?」

 

さすがに眼球は防御が薄いらしく、通常ならほんの僅かしか通らないはずのダメージは残りゲージの1割ほどを一気に削る。けれども、それだけの攻撃を受ければ当然タゲはディアさんに移り、発狂直後の強力な攻撃の対象になる。

 

「普段よりは遅いが、それでも速いな」

 

身体を沈めてのタックルを連続で放ってくるが、アークスであるディアさんにとっては慣れた攻撃らしくヒラリヒラリと躱していく。一見簡単そうだが、ギリギリのところで躱してすれ違いざまに撫でるように曲刀で斬るのは、こうして剣士となった今だからその難しさが分かる。

 

「経験の差は、中々埋まりそうにありませんね」

「でも、私たちもこの世界なら出来るよ。身体の条件は同じで、違うのは経験だけだもん。今のディアができることならレベルを上げてスキルやステータスで補えば私たちにもできるし、ディアにできないこともできるんだから」

「そうですね、貴方が出来るといっていることを、ナビゲーターの私ができないと言えるわけがありません!」

 

そうです、私だってこの世界では同じなんです。

現実では人間とアークスでも、ココでは同じプレイヤー。だったら、出来ない道理はありません!

 

「よし、行きますよ、ノエル!」

「ディアばっかりに良い恰好はさせられないね!」

 

連続タックル最後の一発、地面に滑り込むようにして止まるウォルガータに向かってノエルと共に走る。

 

「はぁっ!」

「やぁっ!」

 

片手剣4連続水平斬りホライゾンタル・スクエア、片手槍3連続重撃クロス・ブラスト。

私の片手剣が4連続回転斬り、ノエルの片手槍が袈裟・逆袈裟、その交点への踏み込み突きを撃ち込み一気に残りHPを2/3以下まで削る。

 

「まだまだ!」

 

そこにディアさんが曲刀4連撃レイジング・チョッパーを撃ち込む。

 

「グウォッ!?」

「チャンスです! このまま一気に決めますよ!」

「オッケー!」

「よし!」

 

タックルの速度が上乗せされた連続斬り、3発のソードスキル、この二つによって短時間に残HPの半分以上を失ったウォルガータはその場で転倒して無防備な身体をさらす。

そこに全員が連続で強攻撃を撃ち込み、起き上がるそぶりを見せたところでもう一度ソードスキルを撃ち込む。

残りのHPが一気に削られ、ほんの僅かとなったところにノエルが突っ込む。

 

「私たちの、勝ち!」

「グギッ・・・・・・!?」

 

振り返ったウォルガータの眉間に単発重攻撃ブラストが叩き込まれ、残りのHPが0になる。

それと同時、ガラスが砕けるような音と共にポリゴン片へと還元されたウォルガータが消滅する。

 

《LAST ATACK !! Noel !》

 

「やったーーー!!」

「よくやったな」

「まったく、無茶をしますね」

「ふふふ、私だって何も考えずに突っ込んだわけじゃないよ。残りのHPなら一撃で吹っ飛ばせると確信したうえで行ったもん」

 

ピースサイン、この場合はブイサインの方がふさわしい、を突き出してノエルがニカッと笑う。

この子の無邪気なところは、頭で考え気味な私にとっては少し眩しいですね。

そう考えた瞬間、再び凍えるような怖気が私たちを包んだ。

 

 

 

 

冷気とダークファルス独特の雰囲気に呼び戻され、ウォルガータを倒した喜びもほどほどにして再び【巨躯】と向き合う。

 

「面白いぞ、剣士よ。我が眷属を打ち倒すとはな」

「次はお前か」

「ククク、滾る闘争を期待するぞ」

 

さてさて、どこまでやれるかは分からんが二人は逃がしておこうか。

 

「ディア君!?」

「?」

 

振り向いてみるとそこにいたのはディアベルとキバオウを含めた8人程度の小隊。

ちょうどいいか。

 

「ノエル、エリス。お前たちはディアベルたちと合流、さっさと逃げろ」

「嫌」

「付き合いますよ」

 

即答か。

 

「ダメだ、それにここから先は勝手の違う戦いだ」

「ハハハッ、闘争を始めようぞ!」

 

いきなり放ってきた【巨躯】の右ストレートをギリギリで回避、風圧だけでHPが数ドット減少する状態を見て二人もようやく察したらしい。

 

「フンッ!」

「当たらん!」

 

今度は地面への打ち付け、それを受け流してカウンター気味に脇腹を切り裂く。

するとHPバーが表示されるが、5段の内1段のみが明るく表示され、それも通常のエネミーとは異なるブロック分けされた表示になっている。

 

「なるほどな」

 

10に分けられたバーの内1つは既に消えている。

という事は死ぬ前に10発当てればいいというわけか。

 

「フンッ」

「セイッ!」

 

今度は連続のジャブだが武器防御の上からでもHPが削られる上に、体術ソードスキルで相殺してもノックバックを受ける。

やはり、普段とはステータスの差があるか。

 

「これで、どうだ!」

「ヌンッ!?」

 

コア目掛けて突きを一発、さらに頭部目掛けて空中回転斬りを決める。

武器耐久値を確認するとすでに半分、これで3発当てたが残り7発いけるか怪しいラインになってきた。

 

 

 

逃げる必要はなくなったけど、逃げろといった意味は良く分かった。

 

「……」

「速過ぎる」

「ディア君もあのボスも、間に割って入ることもできないな」

「なんやあの動き、あの速度に反応するどころか先読みまでしとるで」

 

拳の嵐や急に距離を開いての跳び蹴り、重たいストレートを最低限に防いで避けて、その隙間に攻撃をしていく。

多分、ココにいるディア以外のプレイヤーが相手をしたら数分と持たない。

 

「これで、終いだ!」

「ヌウンッ……」

 

身体を掠める右ストレートに合わせるように放った斬撃がボスの右腕を深々と切り裂き、HPバーの一段を消滅させる。

 

「良いぞ、良いぞ、ここまで滾る闘争があるとは、グゥツ!?」

「っ!?」

 

ボスが喋り始めた直後、そこから黒い煙があふれて、ディアの元に向かって行く。

 

「もらえるだけはもらっておこうか」

 

そう言って懐からオブジェクト化して出したのは白く輝く杖のようなもの、クラリッサの欠片だった。

 

「我が力、喰らうつもりか!」

「喰えるだけだがな」

 

そう言うとさっさと仕舞い、こっちの方に駆けてきた。

 

「面白い、面白いぞ剣士よ、我が力を喰らうとは。だが、封じていた楔は今、ようやく砕かれた。この身、解き放たん!!」

「逃げるぞ」

「うん」

「はい」

「お前たちも逃げるぞ!」

 

そう言ってディベルさんの首根っこをつかむと、何かが崩落するような音がしてきて、その場にいた全員で一気にダンジョンの外まで出る。

崩落で構造が変化したおかげか、殆ど一本道の坂を上るだけであっという間に外に出られた。

 

「ハハハハハハッ! 良き滾る闘争であった、また会おうぞ!」

 

その声に振り向くと、巨大な黒い三角形にいくつもの腕が生えたようなモノがこのフロアの外に飛び出し、上へと昇っていくのが見えた。

 

「あれが、【巨躯】本来の姿だ」

「へ?」

 

小声で言ったディアは普段と変わらない様子で、それがそのことをより本当のことだと実感させていた。

 

「か、勝てるの?」

「一人では無理だが、仲間がいればどうにかなるだろう」

 

そう言うと、いきなり頭に手を置いてきた。

 

「へ!?」

「お前もその一人だ、今日だって立派だったんだから自信を持て」

 

ぽんぽんと、いつものからかいの混じった感じでは無く、私のことを安心させるような撫で方は普段よりも温かく、何かが沁みてくるような嬉しさがあった。

 

「うん」

「ククク」

 

いつもと同じような笑い声だけど、何だか嬉しげだなー。

 

 

 

 

【巨躯】が上層へと飛び去ったのを見届けたのち、情報を整理するために一度ディアベルたちも交えて街に戻り、適当な店で食事することになった。

 

「それにしても、あのタイミングでお前たちと出くわすとは思ってもみなかったぞ」

「僕たちもそれは同じだよ。道中のエネミーや宝箱の数から先行しているパーティがいるとは思ったけど、君たちとは思ってもみなかった。てっきり、キリト君たちの一緒に例の場所でレベリングをしているものかと」

「そっちは修正が入りそうだし、競争率が高いからな。今回はダンジョン探索しながらのレベリングだ」

 

適当な話もほどほどに本題に入る。

 

「さて、問題はあの超大型ボスエネミーだな」

「あぁ、だけどもあの姿は間違い無く別のゲームに出てきたモンスターものだ」

 

ふむ、コイツは知っていたか。

アークスなら【巨躯】そのもののデータはいつでもアクセスできるし、割と頻繁に攻めてきた時期もあったから当然か。

 

「ダークファルス【巨躯】、凍結の力を持ちその名の通りの巨体を持つダークファルスの一体。このゲームじゃなくて、PSO2という別のゲームのレイドボスだ」

「PSO2はエスカOSのプリインストールされたゲームだからな、コラボか何かをしてもおかしくはあるまい。それにしても厄介なボスが出てきたものだ」

 

もっとも、連日の如く襲来する時期を過ごしたアークスとしてはファルス・アーム(経験値の塊)と連戦してレベリングする期待もあるのだが、プレイヤー諸氏はそうもいかないようだ。

 

「このフロアのボスではなさそうだが、強敵なのは間違い無い。……ところでディア君」

「?」

 

「君がさっき使ったアイテムだけど、アレは何だい?」

 

あまり人目につけたいものではないし、ノエルとエリスが怖がるので出したく無いが、仕方ないか。

 

「一層で受けたクエストのイベントアイテムの一つだ。コレが【巨躯】に直接関わるアイテムかは別にしても、PSO2とのコラボクエストのようでな。受注できる人数が限られているのか俺以外は同じアイテムを受け取った人間はいないらしい」

 

俺がクラリッサの欠片を【仮面】から受け取って以降、あの部屋では仮面を付けたNPCから複数のフロアに跨るクエストを受注できるが創世器絡みのものはなく、赤武器SAO版の欠片集めになっていた。

 

「コレがさっきのアイテムか。彫り込まれた紋様も細かいし、とても貴重なアイテムのようだね」

「さっきのボス、ファルス・ヒューナルやったか? ソレの力を吸い取ってるみたいやったし、ゴッツいアイテムかと思ったら意外とキレイやな」

「?」

 

隣にいるノエルとエリスに比べ、ディアベルたちのパーティは反応が普通というか大人しいというか、特に何も感じていないように見える。

ホンの欠片程度とはいえ変わらずに創世器としての凄味を放っているソレ目前にしてこの反応、もしやと思ってノエルとエリスに意見を求める。

 

「やっぱり怖いけど、前みたいに寒気がする感じは減ったかも」

「前よりはマシになりましたが、威圧感というか圧迫感というか、平気になった分だけ別の怖さが出てきますね」

 

その二人を見てディアベルたちは首をかしげる。

 

「どうしたんだい二人とも、どんなにすごいアイテムだとしても所詮はアイテムだよ。そんなに身構えることはないだろうに」

「せやで。ごっついアイテムやとしても、そんなに怖がることあらへん」

 

二人と他のプレイヤーを見ると、どうもクラリッサの欠片に対する反応が違うように見える。

もっとも、俺がそういう扱いをしていることやこの二人が俺の近くにいて近くにいることで感覚の信号に干渉している可能性もある。エーテル≒フォトンであり、それを媒体にした通信で感覚の全てを受け取っている以上、アークスである俺が二人の感覚に影響を与えていないと考える方が不自然か。

 

「まぁ、こちらでも【巨躯】関係の情報が集まれば攻略本に載せるよう努める。エリスが情報を出すのは勝手にさせてるし、ここら辺は信用してもらっていい」

「もちろんだとも。キリト君からも君がPSO2を大分やり込んでいるとは聞いているし、コラボクエスト関係の情報は役立っているからね。特に、赤武器のクエストの情報は途中で手に入る武器もそこそこ優秀だし、助かってるよ」

「まぁ、期待せずに待っててくれ」

 

深い詮索は無しというこの世界の不文律のおかげか、特に何事もなく会席は終了。

ディアベルたちのパーティは別の町に行くとのことで分かれる。

 

 

 

そのまま夕食を終え、宿屋に入ったところで今日一日の収穫を確認する。

 

「さてと、お楽しみのドロップ品整理の時間ですよ」

「防具、防具、良いのが来てて」

「まぁ、落ちるときは期待しないで、落ちたら喜ぶのが一番だがな」

「夢が無いなー」

「ドロップ品に夢なんか見てないからな」

 

なぜか新レアリティが出るたびに手元にはウォンドばかりが転がってくるので自分が使う武器はほとんど買うか交換した品ばかり。この世界ではエネミーの種類ごとにドロップする武器系統が縛られているためそのような事態はあまり起きていないが、期待しないで喜ぶのが精神的には宜しい。

 

「と、とりあえず個別に確認してみましょう」

 

アイテムストレージを開いて全カテゴリを入手順にソート、武具を片っ端から移動させて装備品の確認をする。

武器はほとんどがメイスなどの打撃武器、インゴットに変換するか売るか、知り合いに交換を持ちかけるか、いずれにせよ自分で使う気になるものはない。防具の方は数自体が少ないうえに、殆どが今の下位品か。

 

「ん、これは」

 

1つだけ気になったものがあったので詳細を見ようとしたとき。

 

「ひゃっほー!」

「何ですか!?」

「何だ!?」

 

いきなりノエルが歓声を上げた、というかエリスもいつの間にか上着を新しいのに変え、先程まで着ていた錆色のシンプルなものから、襟に黄色の縁取りがされた朱色のモノになっていた。

 

「ちょっと待ってて」

 

そう言ってウィンドウを操作すると臍あたりが開いた、ペールピンクの縁取りが施された藤色のワンピースを身に纏って見せた。

 

「《ウィステリア・ワンピース》っていうだ、似合うでしょ? さっきのLAボーナスはコレだったんだー!」

 

快活な彼女と落ち着いた色ながら身軽な印象のワンピースは確かによく似合っていた。

 

「なら、コレも使うといい」

 

先程気になったアイテムをオブジェクト化して放り投げる。

 

「おぉ、これまた良いものを。ありがとうね!」

「今回は経験値でいい思いをさせて貰ったからな、アイテムくらいは譲ろう」

 

ファルス・ヒューナルの力を喰らったときは気付いていなかったが、どうも経験値を喰らうという扱いなのか【仮面】のクエストを一部クリアしたからなのか、レベルが3ほど上がっている。

コレでレベルは35、エリスが28でノエルが27、キリト達攻略組トップが20台後半~30というのを考えると頭一つほど抜け出ている。スキルも充実しているし、使う気のない装備品なら身近な仲間に渡した方がいい。

 

「指ぬきの手袋、うん、薄手でさっきまでの革のグローブよりいいかも」

「これで全員が一通りの装備更新が終わりましたね。やはり、プレイヤー間でアイテムのやり取りができるもMMORPGならではの醍醐味ですよ」

「そうだな、アイテムのやり取りを気軽にできるのはいいことだ」

 

アークス内ではマイショップか月々の手数料がかかる宅配サービスを使わなければアイテムのやり取りができないので、こういったことの手軽さはこの世界の方が格段に上だ。

 

「ふふー、ディアのおかげで手に入った装備とディアからもらった装備で強くなった私の力、試してみよ・・・う・・・?」

「っと」

「大丈夫ですか?」

「あれ、なんか、力が入らない?」

 

立ち上がったノエルが椅子に座り込み、机に頭を突っ伏しそうになる。

それを受け止めると、顔色は変わらないが脱力した感じがある。

 

「気分はどうだ?」

「んー、特に何もないけど、なんか身体動かすのが億劫な、うまく身体を動かせない感じ?」

「身体を動かす神経が一時的に働いていないみたいですね。今日は結構連戦しましたし、脳がまいってしまったのかもしれません」

「おー、初体験、というか眠くなってきたかも・・・・・」

「やれやれ、ベッドまで運んでやるから今日はもう休め」

 

ノエルを俗にいうお姫様抱っこで部屋まで運ぶ。

気恥ずかしそうだが、抵抗できないので顔を赤くしたままベッドに運び、布団をかけておく。

 

「…ありがとね」

「ゆっくり休むといい、明日も大事を取って休むとしよう」

「でも」

 

言いかけたノエルを遮るようにしてもう一度言う

 

「明日は休みだ。クラリッサの欠片を探すのは10層に到達するまでいいし、まだこのフロアのボス部屋も見つかっていない。焦る必要もない」

「……分かった」

「ん」

 

多少強引にだが納得させたところで部屋を出る。

このまま寝るにはまだ早く、ノエルの好物のサンドイッチでも何種類か買って来ようと街に出る。

 

 

 

「すまないがフルーツサンドとハムサンドを3つずつ包んでくれるか」

「かしこまりました、少々お待ちくださいね」

 

適当な喫茶店に入り、エリスと俺の分も含めて3つずつ買っておく。

ついでにコーヒーを買おうかと思ったが、メニューには紅茶しかないようだ。

 

「1800コルになります」

「ありがとう」

「またの御来店をお待ちして居ります」

 

せっかく商店の多い通りに来たことだし、ついでに消費アイテムも補充しておくか。

そう考えてアイテムショップに行こうとしたところ、ズボンの裾が何かに引っ掛かった。

 

「なんだ?」

「リリッ!」

 

ずんぐりとした体形に二本の耳をピンと立てた2足歩行の獣人、早い話がリリーパ族がそこにいた。

 

「どうした?」

「リーリー、、リッ!」

 

こいつらの喋っている言葉にはほとんど意味がない。アークスの言葉は理解しているようなんだが、コミュニケーションのほとんどがジェスチャーで行われ、言葉はそのテンポを取るためであったり何かの合図程度である。

 

「ついて来い、という事か」

「リリッ!」

 

頷いて手招きするような仕草をしたそいつに付いて行くと、路地から路地へと人気の無い場所へ進んでいく。

 

「下に向かっているのか?」

 

先程までと比べて明らかに屋根が高い場所に見えている。

その後も下へ下へと緩やかに下っていき、10分ほど歩いたところでようやく行き止まりに辿り着いた。周囲をぐるりと見渡すと【巨躯】と戦った場所に似ているが、あそこよりも幾分か綺麗ではある。

リリ―パ族の方を見ると、いくつかの瓦礫を指して、別の方を向けるというジェスチャーを繰り返していた。

 

「リーリ」

「この瓦礫をどかせばいいのか?」

「リリッ」

 

数も大きさも一人でどかすのが苦になるわけでもなく、殆ど時間もかからず終わる。

瓦礫の下からは小さな祠のようなものがあり、ここまで案内してきたリリーパ族がその中に入ると白銀の欠片を取り出して来た。

 

「リリー」

「【巨躯】が復活したから、封印に使っていたこれが要らなくなったというわけか」

 

とりあえず、クラリッサの欠片はこれで二つ。今回は柄の部分だ。

残るは先端の球状部品だが、どこにあるのやら。一個目は【仮面】から受け取り、二個目はリリーパ族から。

昔の記憶を辿ってみると最後はロ・カミツから受け取ったはずなので龍が関係するフィールドにありそうだ。

 

「リーリー?」

 

考え事をしていたのが不思議なのか、リリーパ族がこちらを見ている。

ついでに周りを見渡してみると、どことなく遺跡エリアにあった花畑に似ている。

 

「明日、ここまで来てピクニックもいいかもしれないな、休息にはもってこいだろう」

 

時刻を見るとすでに9時近いので、そそくさと宿に戻る。

エリスに心配をかけたが、クラリッサの欠片で進展があったと伝えると納得してくれた。

今日はいろいろあったが、一段落ついたし、俺も明日は休むか。

 




お待たせしました、PSO2×SAO第13話、お楽しみいただけましたか?

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、少し文体が変わっています。
改行入れて読み易くしたつもりなのですが、どうでしょうか?

感想のところで読み易かったか教えていただけると嬉しいなー、ついでに感想増えるといいなー。

ゲームの方はSAOFB発売されたので、MHWorldと並行で進めています。



…………PSO2は……あんまり、やれてない。
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