PSO2×SAO VR世界に入り込んだ守護輝士   作:のーん

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第16話 アインクラッド・ニューイヤー

昨年末に行われたボス戦から早くも4日、雪と氷に覆われた第6層の攻略はその気候もあり過去の階層よりもペースが鈍い。しかし攻略組内でも無理に攻略を進める動きは無く、天候に恵まれた合間に幾つかの村や町を拠点として着実に攻略範囲を広げていた。

またアルゴから少なくとも1月前半、アインクラッドでいう元の月前半は荒天が続くという情報がもたらされたこともあり、新年は普段と異なりどこかのんびりと迎えることができた。

 

 

「新年、あけましておめでとうございます」

 

「新年おめでとう、今年もよろしく頼む」

 

「あけましておめでとうございます」

 

アークスと地球、多少の違いはあれど新たな年を祝うという事に変わりはないのでディア、ノエル、エリスの3人も新年の挨拶から元日は始まった。

 

「さて、何をしようか?」

 

「一応新年セールみたいなお店のイベントはやってるけど、買うものもないからね」

 

「そういうと思って、実はこんなクエストの情報が」

 

流石ナビゲーターといったところで、自信ありげなエリスが持ってきたのは《祥牛の落とし物》というクエスト、見たところアイテム収集系のイベントだな。

 

「ふむ、《ラッキー・カウカウ》というモンスターの落とすアイテムを集めればいいのか」

 

ついでのように《ラッキー・カウカウ》の情報も出てきたが典型的なイベントモンスター、硬い・速い・タフと三拍子そろった上に出現率も微妙に低い。

 

「あっ、エリスが狙ってるのはこっちの方?」

 

モンスターの情報と出現パターンから、効率のよさげな狩場を考えているとクエスト情報を眺めていたノエルがある項目を指さした。

どうも、メインとは別にサブのターゲットと報酬が書かれていたらしい。

 

「よく気が付きましたね、ノエル。こっちの《ニュイヤ・カウカウ》を倒したときにドロップするアイテムを、あるNPCに渡すと武器やアイテムと交換してくれるんですよ。しかも経験値も高くてそこそこ良い素材を落とすとかで、新年の運試しにはもってこいじゃないですか?」

 

「面白そう! ディアもやるでしょ?」

 

クエスト自体も報酬はまずくなさそうだし、ついでの運試しにも興味はある。

それにしても、季節限定で現れてそこそこの素材を落とすとは、まるでラッピーやニャウのようなモンスターだな。

……ラッピーはともかく、ニャウは出てきそうで怖い。何故だろうか?

 

「そうだな、たまにはこういう運任せなものもいいだろう。せっかくの期間限定クエストだ、回せるだけは回してみよう」

 

交換アイテムなら多いに越したことはない、アークスバッチやその他のアイテムのようにクエストの受注期間を過ぎても交換できる公算も大きいしな。

 

 

 

 

新年クエストを受注し、ディアたち3人は6層主街にほど近いフィールドでカウカウを探していた。

幸いというべきか晴れ間は無いものの天候は落ち着いており、時たま雪がちらつく程度だった。

 

「あっ、二人共こっちに来て」

 

小声でそう言いながら手招きするノエルの元に向かうと、茂みの向こうにカウカウがいた。

 

「ディアさん、まずは短剣の投擲で動きを止めてください。ノエルと私がその間に仕留めます」

 

「分かった」

 

投擲スキルが高く、普段でも弓の代用として使っているため慣れているディアにとってその程度なら容易い。

投擲のソードスキル《シングルショット》を命中させ、先制攻撃ボーナスで怯んだところをノエルとエリスが袋叩きにする。マスコットのような牛に翼が生えたファンシーな外見なので若干遠慮気味ではあるが、怯み続けている間にHPがゼロになる。

 

「これでアイテムゲットですね」

 

「ちょっと可哀そうだけど、仕方ない…って? あれ?」

 

HPがゼロになるとこの世界のモノはすべて青いポリゴン片となって霧散する。

ダーカー系を除いてアイテムであっても耐久値が0になれば消滅するし、武具も残り耐久値を大幅に上回るダメージを受ければ同様、のはずなのだが目の前では違った現象が起きていた。

 

「落とし物がフィールドドロップで、カウカウが残ってる」

 

「さすがにマスコット的なモンスターですから、ポリゴンになると罪悪感があるだろうという運営の配慮でしょう」

 

そんな会話をしながら落とし物を回収しているノエルとエリスの横をツカツカとディアが歩いていき、カウカウの前で何かを待つようにじっと佇む。

 

「?」

 

「?」

 

何をする気なのかと二人が見守る中、回復したのかフワリと飛び上がったカウカウ目掛けて……。

 

「てい」

 

問答無用で、落とし物をしたから見逃してくれると安心しきった顔面に青く光る正拳、体術ソードスキル《閃打》を打ち込む。

その光景を横から見ていた二人は一瞬何事かと思うが、猛烈なスピードで上空に飛び去っていくカウカウを見て安心し、地面を見ているディアに詰め寄る。

 

「ちょ、ディアさん!? 何するんですか! 追剥とかいくらモンスター相手でも酷過ぎます!」

 

「そうだよ! あんなに可愛いんだから、そこまでしなくてもいいでしょ!」

 

約150センチの少女2名に180近い男が凄まじい速度で揺すられる。

現実なら不可能だが、ステータスがすべてのこの世界では多少のレベル差があれどこの程度なら問題ない。

 

「ヤメロ、さすがに少し気持ち悪い。というか、ハラスメント警告出るぞ」

 

一応、パーティメンバーは互いに接触する可能性が高いので故意に触ってもハラスメント警告は猶予されるが、あまり長時間触ると不快な痺れに似た感触が送られてくる。

 

「っと、それはさすがによろしくないですね」

 

「あれ、前に一回ディアに触ったときに来たけど、正座とかで痺れるのを大分強烈にした感じだよ」

 

あぁ、パーティ解散した状態でイタズラされたときのアレか。

人混みに紛れていたから気付かなかったうえに、急にハラスメント警句は出るわ、ノエルが変な声出すわでこっちも驚いた。

 

「ノエル? いたずらは程々にいつも言っているでしょう?」

 

「アッ、ハイ」

 

「ディアさんも、偶には叱ってください。私が言っても上の空というか、こんな感じなので」

 

「アッ、ハイ」

 

横道にそれたが、話が本題に戻る。

カウカウにいきなりソードスキルを当てたディアの真意だ。

 

「いや、消滅しなかったものだから殴るのが当然だと思ったのだが、ダメか?」

 

何故非難されているのか全く分からないといったふうでディアが答える。

そこにはカウカウが可愛いとかそういう事情は全くなく、当然のことをしたのに何故、という疑問があった。

 

「普通は殴らないと思うよ」

 

「一度倒した相手を攻撃するのは死体殴りと言って、嫌う人もいるんですよ。このゲームだと死体は大抵ポリゴン片になりますが、今回みたいに残る場合はそれ自体がアイテムやイベントの進行に関わる場合もあるので猶更ですね」

 

ふむふむと、初めて知ったと言わんばかりにディアが頷く。

そうして、カウカウを殴った理由を話す。

 

「ラッピーはさすがに分かるな?」

 

二人が頷く。

ラッピーとはたまにどこからとも無く現れる原生でないエネミー、俗にいう超時空エネミーの一種で黄色い雛鳥のような外観をしている。モフモフとした抱き心地でアークスの中には愛好家も存在するが、大抵のアークスは見つけ次第、そこらのエネミーよりも優先して撃破にかかる。

 

「あいつらはフォトンの影響を受けやすくてな、季節ごとのイベント時なんかにはアークス全体の雰囲気で見た目が変わる。その時に特有の特殊能力が付いた装備を落とすんだが、その確率が低い。それを少しでもカバーするために起き上がり際に攻撃して再度ドロップさせる」

 

ここまでの話で、何となく二人にも分かった。

 

「つまり、普段の癖みたいなものなんだ」

 

「アークスの殺伐とした事情が……」

 

二人から呆れた目線を向けられる。

とはいえ、当たり判定が残っていたのは事実なので念のためログをスクロールしてみると《???》という何か分からないアイテムがドロップしていた。

やはり、何事もやってみるものだな。

 

「何が出るかな?」

 

一応、空きスキル枠に《鑑定》を入れているので落とし物程度の鑑定なら出来る。

空きに詰めておくなら実用主義という事でエリスに勧められたものだが、武具も大まかな能力値と種類くらいならば分かるので余計な鑑定をせずに済むのでそこそこ使っている。

 

「《カウカウのベル》か。種類は鉱石扱い、後で鍛冶屋で精錬してもらうか」

 

「一応、納品の時に確認してみましょうか。それもカウカウのドロップアイテムには違いありませんし、何かもらえるかもしれません」

 

その後もカウカウを探しながら、ついでに消耗アイテムの調合素材なども採集しつつ主街区の周りを歩きまわる。出現確率は何処でも同じなので、天候悪化に備えて多少ポップが悪くてもあまり街から離れない方がいい。

 

 

 

「ていっ」

 

ぺちん

 

「モウゥ・・・・・・」

 

落とし物目当てとはいえ、死体殴りに近いことをするのは気が引けますね。

扱いとしては気絶から覚めたところを驚かせているのでしょうけど、一度倒したモンスター、しかもマスコットのような可愛い子を攻撃するのは少し後ろめたい。

 

「ニュイヤ・カウカウは全体の3割程度か、もう少し多いと思っていたんだがな」

 

対するディアさんは容赦なく攻撃してHPを削り切り、起き上がる瞬間に攻撃をして落とし物を集めていた。

 

「ディアの眼が心なしか死んでる」

 

「仕方あるまい、数を集めるタイプのクエストだと同じような場所で同じエネミーを何度も倒さねばならん。そんなにもなる」

 

「ノエルも似たような感じですし、私も飽きてきたので休憩にしましょうか」

 

流石に2時間近くも同じ相手ばかりだと飽きてきますし、このまま続けるよりは仕切りなおした方がいいですね。とりあえず街まで戻り、適当なベンチにでも座って休憩しましょうか。

 

3人で周囲の警戒をしつつ、街の入り口まで戻っててベンチに座ると、ディアがカップを、ノエルとエリスが菓子を取り出す。

コーヒーだけでは味気ないとディアに菓子を差し入れていたのが始まりだが、いつしか小休憩の時にはディアが飲み物を、ノエルとエリスが菓子類を用意するのが定番になっていた。

 

「今日は新年なので紅白の餅、ならぬパンです。中にクリームが入っているので食べるときは気をつけてください」

 

「紅茶だが、少し渋みが強い。ミルクはあるから好きに使ってくれ」

 

少ししたところで、エリスがディアに質問を投げかける。

 

「ディアさん、アークスの新年ってどんな感じなんですか? 私がPSO2をやっていた時はニューイヤーカーニバルとかのイベントで盛り上がってるって感じましたけど」

 

地球の新年とアークスの新年でどんな違いがあるのか、この際なので訊いてみる。

異世界というだけでも十分興味は湧くし、何よりも今まで仮想の世界だと思っていた場所が実在して、そこの人と話せる機会なんてそうそうない。

 

「んー、大体はショップエリアで新年を迎えるアークスが多いな。知っているとは思うがショップエリア中央にいきなり神社が現れるから、それと同時に新年の挨拶を周りにいるアークスやチームのメンバーと交わしておみくじを引くな」

 

ふむふむ、意外と普通ですね。

てっきり変わった風習やイベントでもあるのかと思っていましたが、そこは地球と変わりないようです。

 

「で、大体新年の運試しで緊急クエストに行って一暴れする。なにもレアなものは出ないが、おみくじの結果を貶したり喜んだり不幸を早々に使い切るなど、一種の厄落としだ。その後は大体寝るな」

 

ノエルともども、その発言に思わず唖然としてしまう。

 

「ね、寝正月ですか」

 

「アークスのお正月、意外と平和だね」

 

「それもあるが年末はやたらと緊急クエストやイベントが多いし、特に31日は朝から晩まで緊急クエストのオンパレード、おのずと年明け初日は緊急クエストの頻度が下がるから一息つきやすい。そのおかげで1月1日の午前中は何処も暇なアークスで溢れてる」

 

もっとも、午後になると起きてきたアークスや年末年始を一般居住区で過ごしたアークスがいつもの習慣でクエストに行くので普段とそうは変わらないらしい。

それにニューイヤーカーニバルも年明けすぐに始まるので、ディアさんを含めて装備や特殊能力を考えて必要な素材を集めだすアークスも多いとのこと。

 

「結局、一年中忙しい感じなんだね」

 

「それでも一応は新年らしいことはするんですね」

 

「季節イベント初日の午前中くらい、それなりにそのイベントそのものを楽しむさ」

 

そのあと地球、特に日本でのお正月の過ごし方について教えると、おせち料理や門松などPSO2内でもルームグッズとして実装されているものに強い関心を持ったらしく、熱心にその意味や作り方を二人に尋ねていた。

 

 

「うーんっ、そろそろ休憩も終わりにしましょうか。アークスを見習うわけではありませんが、クエストを進めてしまいましょう」

 

ディアとノエルがそれに頷き、食器類をストレージに戻していると息せき切って見慣れた少女が駆けてきた。

 

「はぁっ、はぁっ、ディアさん、姉さんたちが、エリスさんとノエルも」

 

「わわっ、とりあえず落ち着いて」

 

「落ち着けルチア。なんでメッセじゃなく直接呼びに来た、お前の姉に何があった?」

 

何で来たかを全部説明させるのは無理そうなので、最低限必要な2つを訊く。

 

「メッセ打つ余裕もなくて、姉さんたちがモンスターに襲われてて、私が助けを呼びに来て……」

 

その間にノエルとエリスの方を見ると二人ともフル装備状態で頷く、この世界でこんなに焦って他人を呼ぶとすれば、考えられるのは1つ。

 

「大丈夫ですよルチアさん、一人でも逃げられるなら6人がかりで倒せないモンスターではありません。最悪の場合は私たち3人で足止めしつつ逃げますから」

 

ルチアの先導で街を出てフィールドを駆けると、その中で風切り音に交じってルチアの声が聞こえてくる。

 

「あの茂みの向こうです!」

 

ノエルと顔を見合わせてお互いに頷き、AGI全開で加速する。

 

「イイィッヤァッーー!」

 

走ってきた勢いを上乗せして軌跡を描く飛び蹴り、体術ソードスキル《ストライク・シュート》を巨大な獣人モンスターにブチかます。助走が必要で始動モーションが長いのがこのスキルの欠点だが、今回のように助勢として駆け付けた際の初撃としては威力・ノックバック値共に申し分ない

 

「これでも、喰らえっ!」

 

そこにノエルの追撃が加わり、大きくのけぞる。

 

「お二人とも、ヒール!」

 

その隙に、エリスが最大HPの25%を即座に回復させる《治癒結晶》を使ってエリスの姉ともう一人のプレイヤーを回復させる。《結晶アイテム》は《ポーション》と異なりその大半が即座に効果を発揮するが、その代わりに高価なアイテムで常用するには負担が大きい。

とはいえ、そんなことを言ってられる状況ではない。

 

「た、助かったー」

 

「ごめんなさい、私のせいで貴方たちまで」

 

「困ったときは助け合いですよ、お気になさらないでください」

 

二人に追加のポーションを渡したエリスと、その様子を見て落ち着きを取り戻したルチアを交えた四人で改めて獣人モンスターと対峙する。

見た目はキングイエーデに近いが、ところどころに氷のような甲殻がある様はロックベアにも見える。とはいえ、それ以外の獣人型エネミーを知らないんで例えようもない。壊世種? あれは論外だ。

 

「気を付けてください、あの体格ですが結構素早いです。それに、って避けてください!」

 

ダウンから復帰して早々、足元をすくいあげるようにいくつもの雪塊をこちらに放り投げてくるが誘導でもついているのか微妙に追いかけてくる。しかも、タイミング悪く4人で密集していたためピンポイントで降ってくる。

 

「ぬぅ!?」

 

ギリギリまで引き付けて曲刀で弾こうとしたのだが雪の塊ゆえなのか当たった瞬間に砕けず、崩れて自分の周りに降り注ぐ。行動不能になるようなほどではないが、視界は奪われ寒いのであまりよろしくない。

雪にまみれたまま戦闘を続行しようとするとルチアが声をかけてきた。

 

「その雪、直撃すると《雪だるま》状態になりますから、ガードしても短時間に連続で当たるとアウトなので可能な限り避けてください」

 

「面倒な……」

 

《雪だるま》状態は文字通り身体が雪にまとわりつくことで雪だるまのようになる状態異常だが、6層に入って発見された当初は恐れられていた。見た目の通り手も足も出ないので回復アイテムも使えず、動作も鈍くなる。そこに攻撃を喰らって死亡、という流れが危惧されたのだが実際はそうならなかった。

理由は単純、ほんの僅かでも外部から衝撃を与えれば解除されるからだ。

 

「あー、さっきのアレで複数人やられると中々きついねー」

 

「すみません、私たち三人だと順番で解除してるうちに攻撃できなくなって」

 

「確かに、片手剣・長槍・短剣のパーティだと投擲持ちが居ない場合は辛いですね。それで逃げられず、かといって倒せるわけでも無く、仕方なく応援を呼びにと」

 

ルチアたちのパーティとレイド組んだことになり他の二人の名前とHPも表示される。

そこから結晶での回復分を差し引いてみると、ディアア達3人がついた時点でのHPはオレンジをやや下回った程度だったことが分かる。

 

「まぁ、4人でボコってしまうか」

 

攻撃を避けつつ左右から連続攻撃、特にノエルとルチアの長槍コンビが抜群のコンビネーションを攻撃を繰り出して俺とエリスの大技を当てる隙を作る。

途中で俺とルチアが雪だるまになったが、ヘイトが0に近いルチアたちのパーティ二人が戦闘に復帰しながら割ってくれたおかげで事なきを得る。

 

「助かった」

 

「ありがとね、シャサ」

 

「いえ、こちらこそありがとう」

 

「いいってことよ、サクッと片付けちまおうぜ」

 

そのまま戦闘を続けること数分、無事に獣人モンスターを倒して一息つく。

 

「いやー、新年早々大暴れだねー」

 

「やれやれ、多少はゆっくりと過ごせると思っていたんだがな」

 

苦笑いするノエルをからかうようにディアが軽口をたたく。

切羽詰まった様子のルチアを見たときは多少焦ったが、思っていたより深刻な状況ではなかったことで肩の荷が下りたこともあるのだろう。一方、ルチアたち3人のパーティはようやく危機的状況から脱したことでその場に座り込んでいた。

 

「お正月に死ぬなんて、危うく不幸の中の不幸を貴方たちに振りまくところだったわね」

 

「アネットさーん、冗談で済んでよかったじゃん」

 

「姉さんもシャサも、生きててよかった……」

 

そんな中、エリス一人だけは何か考え事をしているようだった。

納得がいかないような、そんな表情だ。

 

「どうかしたか?」

 

それに気付いたディアが声をかける。

 

「いえ、さっきのモンスターのことについて少し気になることがありまして」

 

「気になること?」

 

戦っていて、特に違和感を覚えなかったディアが訊き返す。

思い返してみても、特に変わった様子は見受けられなかったはずだ。

 

「あのモンスター、普通のフィールドモンスターではないような気がするんですよ。攻略組でもトップクラスの火力を持つディアさんとそれに劣るとはいえ同じく攻略組のノエル、二人のソードスキルを喰らって短時間のノックバック程度で済み、適性レベル以上のプレイヤー6人がかりですぐに仕留められないモンスター。もしかして、イベントモンスターやフィールドボスだったではないとかと思いまして」

 

「ふむ、言われてみればそうかもしれないな」

 

攻撃も人数が居れば容易に対処できるものだが最低でも4人(フル)パーティ、出来れば今回のように6人程度いるのが好ましい難易度だ。

基本的にこの世界は理不尽なほど強い敵はおらず、居たとしてもボスモンスターのように意図的な穴や弱体化の方法を持っている。今回であれば人数を増やすことがそのまま対策になった。

 

「あまり考えたくはありませんが、MPKの可能性もありますね。念のため、今度の攻略本に要注意モンスターとして載せておきます」

 

「MPKとなると仕掛けてきたのはそれなりにレベルが高い奴だな、一定のヘイトを取りつつモンスターを誘導して他人に押し付けるには攻撃にある程度耐えられるスキルと装備がいる。ここ最近はレッドプレイヤーも現れたというし面倒なことだ」

 

レッドプレイヤー、つまりは殺人者。

先程のMPKのように偶然を装った形ではなく、故意に他のプレイヤーを殺害したプレイヤーが存在している。全体がアインクラッドの攻略に専念しているわけではないとはいえ、得になるわけでも無い殺人行為を犯すプレイヤーがいるのも、異世界と化したSAOならではというべきか。

 

「嫌ですね、意味のないPK。しかも、本当に人が死ぬのに」

 

「連中にはその自覚が無いのだろう。ここはゲームで外に出るまで本当のことは分からない、だから好きにすればいい、そう思っているのだろう」

 

片や陰鬱に、片や呆れたとした調子で話す。

攻略以外にもこの世界から抜け出るためにはやらねばならないことが多すぎるな。

 

 

 




ドーモ、作者です

平常運転な久方ぶりの更新です。
誰も感想書いてくれないのでちょっと寂しかったりします。

亀か? 亀更新だからか?


そんなことより皆様は最近どうお過ごしでしょうか、作者はいい加減に全種に交換以外の方法で手に入る14武器実装しろと憤っております。

それではみなさん、さようなら、さようなら
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