PSO2×SAO VR世界に入り込んだ守護輝士   作:のーん

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とりあえず、地球来訪からデスゲームスタートまで。
ここからが本番かなー?


第2話 リンクスタート

AP238/AC2025

3年前、地球の暦で言うところの西暦2025年の日本に降り立ったディアリーンが手始めに行ったのは役所の戸籍システムの改竄だった。これをしておかないとマザーにバレる可能性が高いということで透刃マイのテストも兼ねてサイタマという自治体のサーバールームに潜り込み、一人ごちていた。

 

「透明化は良いとしても、予想以上にフォトンを持っていかれるな」

 

所有者のフォトンを喰らい続け存在感すら希薄とする代償に姿を変えるという隠密性に特化した固有能力を持つ創世器:透刃マイ。

これのおかげでクーナは暗殺者としての生業と、アイドルとしての活動を両立できていた。現在のディアリーンもその能力で姿を消し、ディアリーン・アークという偽名で数年前に日本に帰化した他国人という身分を偽造していた。当然、そこまで高度な技能は彼には無いのでシエラが遠隔ハッキングをしている。

「しかし、こちらとそちらで時間の進行感覚は同じでも時間軸がずれているのは妙な感覚だ」

〈そうですね、今回はいいですけど次回以降の通信の際にはこちらの経過時間、お伝えしますね〉

「任せるぞ」

そうして5分後、痕跡を残さずに戸籍を改竄し終えたディアリーンは、しばらく暮らす住居へと向かった。

 

 

当面の住居であるマンションには事前に送り届けていたマイルームの家具が一部、パートナーコンソールやベッド、最低限の調理器具が一揃い設置されていた。

「あ、ディアリーンお疲れさま。こっちも大体終わったよ」

「助かる、フィア」

先に室内にいたのはサポートパートナーのフィア、今回は長期滞在ということで一人では手の届かない部分や不審に思われる部分をカバーするために妹として来ている。こちらの住居の家具の設置は彼女が受け取りから一通り済ませていた。

「えへへ、褒められたー」

ディアリーンが設定しているフィアの性格は無邪気、憮然として取っ付きにくいと思われがちな自分が他のアークスと話すときのクッション役や、シップ内にエネミーが侵入した際、子供の避難時などに泣かせた経験からそう設定している。時々、彼女がこのままの性格でいいか尋ねてくるが、今までの彼女を否定する気がして変えていない。

「幸い、ハードの方は大きな電器店で買えたし、あとは発売当日に彼からソフトの方をいただくだけか」

手に持つ写真に写されたのはどこにでもいるような男子学生の写真、軽くこの世界の情報端末で検索したところヒットは無し、なぜシャオはこの少年を選んだのか。

「あいつの考えることを考えるだけ無駄か、とりあえず夕食にするとしよう」

「用意するから、待っててね」

 

今のディアリーンは普段のキャスト態ではなく、ほぼ有機体で構成されたハイキャスト態である。一応、キャスト態の中にも人と同様の飲食が可能な物もあるのだが、より人に近い方がいいという理由で新造されたハイキャスト態を使っている。

料理ができるまでの間、彼が手元で弄んでいるのはSAOのダミー。明日のすり替え用に適当なVRゲームに細工を施したもので、ログインサーバーに入る直前に別のプログラムが起動して24時間のネットワーク遮断、表裏のデータ書き換えで元のゲームソフトに化ける。ケースにも同様の細工が施されており、筋書き上では別のゲームソフトと店員が取り違えたということになる。

「ここまで手の込んだ悪戯をするとはな、こいつもとんだ迷惑に巻き込まれたものだ。」

若干の哀れみと共に、フォイエ未満のごく小規模なフォトンの炎が写真を灰に変える。

 

 

割愛

 

 

翌日、すれ違いざまに紙袋が破れたように見せかけ、それを拾うふりをしてソフトを入れ替えたディアリーンは自室に戻っていた。

「では、行ってくる」

「体の面倒はしっかり見るから、頑張りすぎないようにしっかりね」

「フィアも体には気をつけろ。リンク・スタート」

その言葉と同時にSAOとナーヴギアが起動、ディアリーンの意識をVR空間に飛ばす。

 

VR空間にダイブして白い半球状の空間で初期設定、自身の体格とVRゲームでの分身(アバター)の体格差が生じた場合に違和感を緩和するために全身を触って補正用のデータを作り、アバターを作成する。特段こだわりはないので今の身体と同様の外見、やや痩せ気味で長身、髪型は黒のショートウルフ系で顔はやや柔和な感じに整える。このあたりは、エステによく通う友人からのアドバイスを参考にして作り上げた。キャラクターネームは本名の一部を取ってDiar。ここまででおおよそ30分、あと10分もすればゲームサーバーへのログインが可能になる。

 

「ふむ、身体の感覚は違和感なし、やや反応が鈍い気がするがそこは慣れるしかあるまい」

一般人対象なら十分な追従性も持つナーヴギアだが、極限の戦闘を重ねているディアリーンは僅かなリアルとの誤差を感じていた。

「近接武器を中心にテクニックのたぐいのような遠距離攻撃は一切なし、基本的には自由な攻撃だが、高威力だが硬直やキャンセルの厳しいPAのようなソードスキルが存在する。おおよそ把握したが、実際にどうなるかは試してみなければな」

 

そうして体の感覚を慣らしながら事前に得た攻略情報をつらつらと眺めているうちにサービス開始の時刻、ディアはアインクラッド第1層はじまりの街へと降り立ち、小一時間ほどチュートリアルを受けてフィールドに繰り出していった。

もともとアークスであるディアにとって戦闘は本業であり、ソードスキルの練習も兼ねてのレベリングだけで、はじまりの街から縁の近くまでエネミーを直線に殲滅していた。

 

「フンッ!」

やや小ぶりなフォードランに似た獣、地球では怒る猪を意味するフレンジーボアというエネミーの突進を僅かに身体をひねることで避け、それにカンランキキョウ同様の回転斬りの勢いを乗せて思い切り胴体を斬りつける。そこから繋げて曲刀<プレーンシミター>を納刀するように左手を添えた状態で腰を落とし、体勢を崩したフレンジーボアにタックルと居合を打ち込む。

グレンテッセンを模した動きだが、筋力や俊敏といったパラメータが低いためか普段ほどの勢いは出なかった。

「動きの再現はともかく、性能までは流石に無理か」

グサリと、突進を構えたフレンジーボアの脳天に曲刀を突き刺してとどめを刺しながら、今までの戦闘を振り返ってのつぶやきがディアの口から漏れる。

 

先程から幾つかのカタナやソードのPAを模した攻撃をしているがフォトンによる挙動制御が効かないことを除けば概ね実用的な物もあり、こちらでのPAとも言うべきソードスキルも硬直時間をうまく最小化できるようになりつつあった。

「今のでレベル5、クラス育成と同程度の速度か」

俊敏値(AGI)と筋力値(STR)に多めに振り、残りを器用値(DEX)と防御値(DEF)、体力(HP)の優先順で振り分ける。火力をステータスで、防御をスキルで補うつもりでいるためやや攻撃寄りのステ振りである。

曲刀を腰の鞘に収めてディアが向かうはアインクラッド外縁部、浮遊大陸のように浮かんでいるこの城からの眺めを見ておこうという腹づもりらしい。

 

 

 

「ぐわぁっ!?」

「クライン、もう少ししっかりしろよ」

ゆったりとした足取りで外縁部に向かうディアの耳に、誰かの叫び声とそれをからかう声、わずかに遅れてフレンジーボアの嘶きが聞こえる。

「ふむ、他のプレイヤーと交流を深めるのも悪くはないか」

ログイン直後の僅かな会話を除いて会話自体しておらず、ゲームシステムに不慣れなまま一人でいるのも良くないと考えてそちらの方へと足を向ける。

「こう、いまいちスキルの出し方がわからねんだよ」

「んー、こうやって初動を意識したらシステムがサポートしてくれるから、あとはソレに任せてズドン!」

そう言いながら、フレンジーボアに片手剣のソードスキル、バーチカルを打ち込んだのは黒髪の青年。その隣には赤髪の青年が土まみれになりながらそれを眺めていた。

「こんな感じかな」

「こんな感じって言われても」

「やはり、慣れるのが肝心ではないか?」

「「うわっ!?」」

いきなり声をかけられたことに驚いたのか、二人がそろって飛び上がる。

「すまない、驚かせるつもりはなかった」

「いや、こっちこそゴメン」

「というか、どっから出てきた」

「はじまりの街から直線に、と自己紹介がまだだったか。俺はディアだ、VRはこれが初めてで、知り合いもいないものだから声をかけたんだが」

実際にはエクストリームやチャレンジでVR空間の経験は何度もあるが、意識だけを飛ばすのは初めてになる。

「なるほどな、俺はキリト。βテストにも参加していたからほかの連中よりこのゲームやVRについては知ってるつもりだ」

黒髪の剣士、キリトが俺のソレにこたえる形で自己紹介する。

「俺はクライン、一応武士のつもりだ。アンタと同じでVRは初めてだからよろしく頼むぜ」

赤髪の方、クラインの装備は確かに所々が地球の武士と呼ばれた昔の戦士に似たもので構成されている。

「こちらこそ、よろしく頼む」

とりあえずフレンド登録を済ませ、ソードスキルが苦手だというクラインの練習、というよりもソードスキルに失敗したクラインのフォローを俺とキリトが交互に努め、合間の休息にはキリトから簡単なレクチャーを受けるということを繰り返しているうちに、周りの景色は夕暮の朱に包まれていた。

 

 

一通りソードスキルを扱えるようになったことで満足したのか、草原に両手両足を広げて寝そべるクラインと、その横でアイテム整理をするキリトと俺、特段のイベントもなく普通のゲームのようにしか思えない。

「シャオの言っていた事件、初日に起きたものではないのか?」

「ん?事件?」

「いや、独り言だ、気にするな」

「てっきり、何かリアルで事件が起きたのかと思ったよ」

ピピー、ピピー、ピピー・・・

音の源を見ると、クラインの奴が眠たげな表情で身体を起こしていた。

どうやら、セットしたアラームが鳴いているらしい。

「ふぁーあ、よく寝たぜ」

「そりゃ、あれだけ動いたり吹っ飛ばされたりすれば疲れるだろうよ」

キリトの苦笑交じりの言葉に合わせて頷く。少なくとも、両手の指では足りぬほどに吹き飛ばされたクラインの姿が脳裏に浮かぶ。

「冗談きついぜ、と俺は落ちるけどどうする?」

落ちる、つまりは一度ログアウトしてリアルに戻るということだ。

「俺はもう少しここにいるよ、アイテムの補充もしたいしな」

「そうだな、キリトに付き合うとしよう。まだまだ知らないことの方が多いから、教えてもらいたい」

「そうか、んで、戻ってきたら俺、他のゲームで知り合いだった奴と《はじまりの街》で落ち合う約束してるんだよな。良ければ紹介すっからよ、フレンド登録でもしねぇか? いつでもメッセージ飛ばせて便利だしよ」

「え・・・うーん」

「ふむ」

キリトは渋面、ディアは考え込むようなそぶりを見せる。

 

そもそもがこの世界、というよりはこの時間より未来から来ている自分がどこまで他人と親しくしてよいものかという、割とまじめな問題である。

 

「まぁ、気にしても仕方あるまい。コチラの都合がつけば向かうとしよう、場所がはっきりしたらメッセージを送ってくれ」

「おう、キリトはどうすんだ?」

「そうだなぁ・・・」

歯切れが悪い返事、大方、クラインの知り合いとうまくやれるかという心配であろう。

半日付き合って分かったのだが、こいつは結構人間関係を構築するのが下手だ。

人との距離感をつかむのが苦手、というよりも他人同士の距離感をはかるのが苦手という感じで、俺とクラインが話している際もそこに加わるのにタイミングを見ているのがよく分かった。

「もちろん、無理にとは言わないから安心しろよ。そのうち、紹介することもあるだろうしよ」

「悪い、ありがとうな」

「俺が紹介するかもしれんぞ? クラインよりも息が合うやつがいるかもしれん」

「おいおい冗談きついぜ、まったくよぉ」

ひとしきり冗談や与太話で締めをしたところで、クラインがゲームからログアウトする時間になった。夕食の宅配ピザが1730に届く予定らしい。

「そいじゃ、またな」

「おう」

「何かイベントがあれば、一応メッセージを飛ばしておこう」

そうして、クラインが右手の人差し指と中指をそろえて真下に振り、メインメニューを表示する。奇しくも、アークスがメニューを開くのと同じ動作であったため強く印象に残り、平然とメニュー操作をしつつ戦闘を行ったときは二人に驚かれた。

 

「あれっ」

メニューを操作し、ログアウトしようとしていたクラインが急におかしな声を上げた。

「どうした、何か問題でも起きたか?」

「いや、ログアウトボタンがねぇんだよ」

怪訝な顔をしたクラインと同じように、ディアも右手を振って自身のメインメニューを開き確認する。

隣の岩に腰かけていたキリトも同様にメニューを表示する。

「無いな」

「そんな訳が…あったな」

ボタンが無いというディアと、ボタンが無いという事実があったキリトの声が重なる。

「まっ、運営初日だしこんなバグもあるか・・・、ピザは食えねぇかもしんねえけど」

落胆するクラインはGM、ゲーム管理者へのコールをすべくGMコールを押す。

そしてディアは、ある考えを巡らせていた。

“確かシャオの奴は『ある事件によってVR適性が増した』と言っていた。仮にそれがこのことを示しているならば、これは短期的なものではなく長期的なもの、少なくとも一日では済まないか”

「存外、ログアウト機能そのものが致命的な欠陥をきたしている可能性もあるぞ」

「それはあり得ないぜ、ディア。いくらSAOがナーヴギア初のMMORPGとはいっても、βテストや他のMMOでログアウトできなくなったことはない」

 

ふむ、それならば、とディアが考えられるほかの可能性に考えをめぐらし始めたとき。

 

「まじかよ、GMコールも反応しねえ」

「ログアウト不可、GMはほかの応対に対応してる可能性があるにしても応対なしか」

「この状況、不味いんじゃねぇのか? 俺、一人暮らしだからよう、このままだと誰かにギア外してもらうこともできねぇんだ。お前らはどうだ?」

そこまで隠すこともないが、一応リアルのことなのでぼかして伝える。

「妹がいるが、ギアを外すとは思えんな。この時間は夕食を作っているはずだ」

キリトの方は多少考え込んでから

「・・・母親と妹、三人だ。たぶん、晩飯の時間になっても降りてこなければ、強制的にダイヴ解除されると思うけど・・・」

「まじか――」

 

リンゴーン、リンゴーン・・・

 

クラインの言葉を途中で遮るように、鐘の音が鳴り響いた。そして、それを合図とするかのように俺たち三人はそれぞれが光の輪に包まれた。

「なっ!?」

「強制転移!?」

「なんだ!?」

ばらばらの場所に飛ばされるのを防ぐため、とっさにキリトとクラインの腕をつかみ、近くに引き寄せる。おそらく、ハラスメント警告が出ているだろうが二人ともそれにかまっているはずはない。

「何が起きている」

 

 

17:30、アインクラッド内のプレイヤーすべてがログアウトできなくなり、強制転移させられたこの時、本当の意味でこの世界が始まったことを知るのはただ一人であった。

 




というわけで2話目にしてようやくSAO内。
しばらくはSAOPの中から場面とかセリフを引用するかも…

小説書くの、難しいですね。
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