PSO2×SAO VR世界に入り込んだ守護輝士   作:のーん

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1か月ぶりの投稿となります、お待ちの方が居ればうれしいのですが……


第23話 解放

ひとまずクラリッサの破片一式をリベットに預け(押し付け)て修復できそうな鍛冶師を探してもらいつつ、ディアたち《星辿旅団》は迷宮区の攻略を進めていた。

このフロアは元々ダーカー系のモンスターが多いが迷宮区内はそれこそ巣窟と言っていいほどダーカーだらけ。多くのプレイヤーにとっては不慣れな敵だがディアにとってはそれこそ数えきれない程倒して来たエネミー、《星辿旅団》の面々は直に対策を教えてもらったおかげでさして労せず倒せている。

それが、ちょっとした軋轢を生んでいるのだが……。

 

「ディカーダを相手にする時はそんな感じだな」

カマキリとカミキリムシを足したようだとエリスに形容されたダーカー、《ディカーダ》数体を相手にし終えたディアたちはHPを回復しながら休息していた。

ルチアとエリスのHPはオレンジ間近まで、アネットとノエルはオレンジまで減ったそれを回復させているがディアは約8割ほどHPを残しており余裕がある。

「事前に聞いていてもワープは怖いですね。急に視界から消えるとどうしても戸惑ってしまいますし、今のように乱戦中の不意打ちもあります」

ディカーダの特徴はワープ、どこまでも追ってくるというわけではないが索敵範囲に引っかかればすぐに眼前まで跳んでくる上、攻撃も素早く一撃が重い。とはいえ最初に跳んでくるのは決まって前、その後は基本背後を狙ってくるが足を止めなければワープからの攻撃を食らうこともない。

だが、それはあくまでも1対1の話、エリスの言うように乱戦ともなれば足を止める機会は増えるし、実際に全員のダメージは混戦で背後から不意打ちを受けたことによるものだ。

「俺も一発貰っているし、混戦はできるだけ避けたい相手だ」

ポーションを飲んで回復している間、ディアはアルゴにメッセージを送る。

内容はディカーダ・プレディカーダの情報を掲示板・攻略本に記載してもいいというもの。5層でダーカー系のモンスターが出現してから、ディアは蟲・水棲・有翼型ダーカーの情報を出現が確認されたら公開するという条件でアルゴやエリスに教えていた。この世界にもともと存在せずベータでもその存在を一切知られてないダーカー系統のモンスターはSAOのプレイヤーにとって大きな脅威であり、ゲーム内に存在するものについて可能な限り早く公表するための策というわけだ。

「さて、HPも回復したしそろそろ先に行こうよ」

「そうですよ、どんどん攻略を進めないと先にボス部屋見つけられちゃいますから」

一番ダメージを受けていたノエルとルチアもHPを回復し、すでに歩き始めていた。

「あぁ、クラリッサの件が終わっていない以上ボス部屋が開くかは分からんが、他のところに見つけられるのは避けたいな」

ディアが現状警戒しているのは他ギルドの動きと攻略の進捗具合。このフロアのボス攻略の鍵の一つがクラリッサであるのは間違いない。問題はそれを握っているのがほかのプレイヤーが関知しないままクエストを進め、ダーカー相手の対処も知り尽くしているディアであるという事だ。

「最近ディアさん向けられる目線、何となく刺々しいですからね」

「特にDKBの人は5層のことがあるからボス部屋の前でクラリッサのこと知ったら危ない、っていうかキバオウさんの性格からして確実に何か言ってくるよね」

悪い人じゃないんだけどねー、と付け足したノエルだが、直情型のアイツのことだから近くに抑えが居なければ……何を言われるか分かったものではないな。表面化していないだけでベーターテスターやその疑惑があるプレイヤーを《ビーター》と蔑称して半ば逆恨みのような感情を持つ者は一定数いる上に、キバオウは1層でのボス戦からその傾向が強い。

「正義感というか義憤というか、大義があればどう振舞ってもいいと考えているタイプよね」

まぁ、その分理屈が通じれば嫌でも納得するタイプなのでそこが救いとも言える。

「それじゃ、ボス部屋探しの続きですね」

ルチアとノエルを先頭に道中湧く何体かのモンスターを仕留めながら探索を進めているとばったりディアベル・キバオウたちのギルド《ドラゴンナイツ・ブリゲート》、通称《DKB》のパーティと顔を合わせた。

「ディア君じゃないか、相変わらずそうで何より」

「ディアベルも、変わりないようで安心した」

和やかな雰囲気を見せているディアベルとは対照的に、キバオウたち他のメンバーは剣呑な雰囲気と表情を見せていた。懸念していた事態が当たってしまったようだ。

「ディアはん、ちょっとエエか?」

「いや、キバオウ君。仮にも彼はギルドの長だ、ここは立場的にも俺から話した方が良いだろう。少し他の団員には聞かせにくいこともあるだろし、この後8時頃、10層にある《月華亭》という店で話さないか? 無論、俺と君のサシだ」

「分かった、8時に《月華亭》だな。今日はここで引き上げるとしよう、帰るぞ」

流石にコチラのメンバーは事情を察していることや先程までその話をしていたこともあってノエルとルチアが残念そうな顔を見せるにとどまるが、キバオウたち《DKB》のメンバーは今一つ納得できていないようだ。しかし、すでに団長同士という立場で話が決まっているうえにここから立ち去るプレイヤーに突っかかる訳にもいかず不満げな顔をしていた。

「助かった」

「けど、本当のことは話してもらうよ」

「話せる範囲でな」

通り過ぎざま、ディアベルと小声で言葉を交わす。

ディアベルたちを置いて《迷宮区》の出入り口を抜けたディアたちは真っ直ぐ主街区に帰る、訳も無くフィールドレベリングにいそしむ。

先程のキバオウの態度に全員多少は思うところがあったのか、特にディアは自身が上手く立ち回らねばという重圧と苛立ちを解消するかのように普段以上にモンスターを斬り伏せていた。

「ディア、スイッチ!」

「セイッ」

大型の猿のようなモンスター、《プレーリー・エイプ》の懐に潜り込んでライトエフェクトと共に太刀を胸元に深々と突き刺す。急な踏み込みに振り下ろす場所を見誤った猿の拳はディアの背を軽くこする程度にとどまり、ノエルがハルバートで突き、斬り上げ、振り下ろしの3連コンボ、そこに硬直から回復したディアの無数の斬撃が刻まれ、瞬く間にHPが0になりポリゴン片とコル・経験値へと還元される。

「私流ピックアップスロー、どう?」

「上々だ。投げられないだけで動きは完璧だし、突きも無理に2連でする必要もないからアレンジもいい具合だ」

同時現れてもう一体にもエリスとアネットが3連撃ソードスキル《バーチカル・デルタ》を連続で放ったところにルチアの槍が連続で突き立てられ、止めとして放たれた単発重攻撃《ブラスト》が締めの一撃となりカタがついた。

「向こうは《ティアーズグリッド》か、一番ベーシックな片手剣を教えられないのが歯痒いな」

「アークスにない武器だから仕方ないよ」

《星辿旅団》のメンバーにはエリスが主に連携やシステム活用による集団やゲームとしての戦い方、ディアがアークスとしての経験を生かして個人での戦闘技術や武器の扱い方を教えている。

当然ベースとなるのがアークスの戦技なので、ついでにソードスキルやSAOのシステムで再現したPAも教えているため再現可能な範囲に限ってだが使っている。

「さて、狩りますか」

「狩りましょうか」

再び現れた《プレーリー・エイプ》、哀れな彼らは《迷宮区》での揉めごとで大なり小なりイライラのたまった面子にリポップが枯れるまで殲滅されてしまった。

 

フィールドレベリングをしつつ主街区へと帰り、暫定ギルドホームにしている宿屋に戻ると見慣れた鍛冶師が待っていた。

「ヤッホー」

手をプラプラと振りながら、どこか自慢げな顔をして待ち構えていたのはリズベット。

その様子だと、預けたクラリッサの件で何か進展があったらしい。

先にアネットとルチアに自室に戻るように伝えて、ディア、ノエル、エリスの3人が残る。

「まったく面倒なことを押し付けてくれたわよね、おかげでこのフロアを走り回る羽目になったじゃない」

「そうか、迷惑をかけたな」

意外ときっちり働いてくれたらしく、そこまでするとは思っていなかったディアは礼の意味も込めて幾何かのコルを革袋に入れて渡そうとするがリズベットに制されてしまった。

「いいのいいの。私に何も収穫無しってわけじゃなかったし、結果的にだけど私の利益にもなったし。この分は、今後もお付き合いをして貰う中で分割支払いしてもらうわよ」

「随分と回数の多い支払いになりそうだな」

「それでリズさん、クラリッサは今どこに?」

話が脱線し始めていたのを察したエリスが話を元に戻す。

ちょうどノエルが菓子を取り出したのでディアも人数分のコーヒーを宿屋の設備で淹れ、テーブルに着いて落ち着いて話すことにした。

「ディア、コーヒーなんて淹れられるんだ……」

「意外か? リアルでは趣味でよく淹れていたからな、料理スキルのMODに《喫茶》があると聞いて取得したんだ。まだスキルが低いから、あまり味は期待するなよ」

手慣れた手つきで入れたコーヒーをテーブルに置くと、リズベットが現状について話し始めた。

「アンタに渡されたときはどうしようかと思ったんだけどね。断るわけにもいかないし、一目で凄い武器になるって分かったから主街区中の鍛冶屋や武具屋のNPCに凄い武器を作った職人はいないか、って訊きまくったのよ」

少し割愛するが昔城に出入りしていた武器工房の一人からエリスのいうところの《ワラシベ》の要領で一繋ぎになっている一連のNPCを辿っていき、最終的にグリファンという職人NPCの元に辿り着いたという。

「最初そこに行ったときは胡散臭いなーって思ってたのよ。だけどあの武器、《クラリッサ》の破片を見せたら目の色変えて飛びついてきて、『無駄しかないようなフォルムで、その実全てが噛み合っておる』とか『この武器の真なる姿はどんなものか、血が騒ぐ!』とか興奮しだしてお代は要らない、むしろ同じ鍛冶師のよしみとして鍛冶の技術を教えてやる、ってなっちゃたのよ」

何処かで聞いたようなセリフを言う鍛冶師もいたものだな、と思いつつディアが聞いているとリズベットがコーヒーを一口含んで話を続ける。

「で、グリファンさんから鍛冶の手ほどきを受けたら鍛冶スキルは上がるし、古いもので済まないがって鍛冶の道具一式をくれたのよ。どれも少し手入れしてあげる必要はあったけど、私から見れば高級品よ。だから、今回の謝礼は要らないわ」

「そうか」

頑固なところがあることは分かっているので、これ以上礼を押し付けても断られるのが目に見えているのでディアもあきらめる。

「修復が終わるまで毎日通うことになりそうだから、終わったらアンタたちのところに持ってきてあげるわね。……あんまり、大勢に見せたくないものなんでしょう?」

「今日もそのことで少し揉めたしね。リズベットさんもココ出るときは気を付けた方が良いかも」

元は【仮面】が原因とはいえ、【仮面】はディア自身であると共にここに来なければそもそも【仮面】が居るはずも無かった。ノエルの言葉に、気まずい顔をしながらディアがコーヒーを啜る。

「お前たちには苦労を掛けるな」

「気にしないで大丈夫だよ、ディアのおかげで私はここまで来れたし」

「そうですよ。訳アリとはいえ、ディアさんは面倒なクエストに巻き込まれただけですから」

ノエルとエリスは事情を知ったうえでココまで来ているのでそうでもない。

「エリスの言う通りよ。ディアだって第1層からここまで訳も分からないでクエスト進めてるんだから、苦労してるでしょ。じゃ、私はそろそろ帰るわね。コーヒーご馳走様」

「あぁ、出来上がったら連絡をしてくれ」

リズベットを見送った時点で時刻は午後6時、ディアベルとの待ち合わせ時間までは多少余裕がある。装備の手入れや消耗品の補充をし、待ち合わせ先を探しながら歩くにはちょうどいいだろう。

 

 

午後8時を少し過ぎた頃、ディアはディアベルに指定された店に赴きその姿を探していたが見当たらない。

ウェイターNPCに尋ねると2階の個室に居るとのことで、彼女に案内してもらうと小さなテーブルが置かれた個室でディアベルは何か飲みながら待っていた。

「すこし遅かったか?」

「いや、あまり早く来られても待たせることになってしまうからな。丁度いい位だよ」

席に付くとウェイターがメニューを持ってきたのでコーヒーとフライドポテトを頼む。ディアベルも空になったグラスの替えを頼んでNPCが退室すると室内は二人だけとなった。

「ここなら外から話を聞かれることもない、腹を割って話をしようじゃないか」

ある程度予想の範囲内とはいえ、わざわざ二人きりで外部に漏れない場所で話をする以上は此方も話せることは話すべきか。

「今日の迷宮区探索で俺達のギルドがフロアボスの部屋を見つけた。けど、そこの扉には何かの封印が掛かっているらしく入ることができなかった。ディア君、その扉には何があったと思う?」

まどろっこしい話をするのも面倒なので、ディアは考えたままに答える。

「大方、何かの封印だろう。で、それを解くのに俺の持っていた破片が必要というところか」

「……いつから気付いてた?」

ディアベルがわずかに語気を強める。

「1層からこの10層でアレが必要になることは分かっていた。とはいえ、それがどう使われるかは全く知らなかった。ついでに言うと破片のまま持っていっても無駄だろうな、先ずは修復しなければ鍵にもならん」

もっとも、すでに修復の目処は立っているからその間は自分のレベリングと《太刀》のスキル上げにつぎ込むことができる。。

何分、二ヶ月以上はカタナの扱いから離れていたせいで身体の感覚と動きにズレがある。通常戦闘なら問題ないが、このフロアでは最悪ボスとの単独戦闘も想定しなければいけない以上、ベストの状態に持っていきたい。

「ディア君、それを俺たちに渡してくれないか? 悪いようにはしないし、何ならそれ相応のコルも」

「却下だ」

そんなことだろうと予想していたディアは提案をバッサリと切り捨てる。

「ボス戦には参加するし此方もそっちが求めるなら鍵を開けることには応じる。だが、それは飲めないな」

「これは君のためでもあるんだ。キバオウ君や俺、それに何人かのメンバーは5層で君が持っていた欠片を見ている。だから封印を見たときにそれが封印の鍵だと分かったし、それと同時に君がそれを集めていたことを不審に思っている。その、君がビーターなんじゃないかと……」

遠慮がちにいうディアベル本人はそうは思っていないのだろう。その声にはディアを心配する気が多分に含まれており、それと引き換えに可能な限りの擁護をするつもりのようだ。

「これは俺個人の抱えているクエストだ。仮にその成果が偶然10層ボスフロアの鍵だったとしても、それを譲るつもりはない。この件に対してDKB内の不満を抑えること、それが確約されるならボスフロア解放時の無償貸与と《星辿旅団》のLAボーナスの破棄を約束する」

ボス攻略に関わるユニークアイテムの取引としては破格に近い。

金銭的にも物的にもディアベルには要求せず、この件に関して団長として内輪をまとめれば良い。その上、有力ギルドがLAボーナス争いに参加しなければ自分たちが手に入れる確率は上がる。

「分かった、君も意志は固いようだしこれ以上の交渉は時間の無駄だろう」

「俺の要求に対するイエスと受け取って構わないか?」

頷くディアベルとディアは細かい条件、具体的な攻略日時や受け渡すタイミングを詰めていく。

 

 

そうして、リズから修復が完了したクラリッサを受け取った3日後。アインクラッド初の2桁層のフロアボス戦の日がやってきた。

ボス部屋の前に並ぶのは《聖竜連合》・《アインクラッド解放軍》の2大ギルドの精鋭を中核として、さらにディアの《星辿旅団》やクラインの《風林火山》をはじめとする有力中小ギルド、キリトのようなトップソロ、文字通りアインクラッドの中でも現時点最高峰の剣士たちが集うその先頭にはクラリッサを持ったディアベルが立っていた。

「みんな! 言いたいことはいろいろあると思うが今この場ではこれだけ言わせてくれ。死ぬな、勝ってみんなで11層に行こうぜ!」

そう言ってクラリッサを扉のレリーフに押し当てる。

音もたてずにはまり込むとソコを中心に蔦上の光が伸び、扉一面を覆うと扉表面の色彩がそれに吸われるかのようにして白一色へと変わり僅かに扉が開く。

その途端、扉から赤黒い粒子が噴き出してフロア全体を包み込む。

「なんだ!?」

「落ち着け、どこからボスが襲ってくるかわからないぞ」

「タンクは周りを囲え!」

そんな状況には慣れきっているディアは落ち着いた様子でクラリッサをストレージに戻し、腰の獲物に手をかけるといつでも抜けるように構える。

「さて、何が出るかな?」

周囲の粒子が再び1か所に集まると周囲の様子は一変していた。

ディアとノエルがヴィジョン・ヒューナルと戦った場所と同様、まるで壊世区域のように赤っぽい光が差す広間のような空間に変化し、その中心に集まった粒子はまさに形をとる。

右手に片刃の大剣、左手に大砲のようなものを装備した赤い異形の人型。何人かが戦ったヴィジョン・ヒューナルによく似ているがその姿はより禍々しい。

《Premonition of The Abysmal darkness》(プレモニシオン・オブ・ザ・アビスマル・ダークネス)

深淵なる闇の予兆、異形の人型に一瞬気圧されたようなディアベルだが、剣を抜くと自分を奮い立たせるように号令をかける。

「総員、戦闘開始!」

 




今回はここまで、次話の投稿は可及的速やかに……
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