またもや間隔があきましたが初めての方はようこそ、お久しぶりの方はお待たせしました。
第25層メインダンジョン最深部、無数の扉の先にひときわ巨大な扉の前でボス攻略に挑もうとする攻略組が集結した。
「みんな、覚悟しているとは思うがこのフロアのボスはこれまでとは次元が違う戦いになるはずだ。集めた情報によると相手は《ダークファルス・エルダー》、山のような巨体とそれに見合ったバカみたいな攻撃範囲・威力で俺たちを攻撃してくるはずだ。だけど、俺たちは勝って次のフロアに行くぞ!」
『おぉーーっ!』
ディアベルの簡単な演説があってフロアに突入する、攻略組にとって儀式のようなそれに異議を唱えるプレイヤーはいない。ギルド間で対立している《解放軍》もこればかりは最初のボス攻略を先導したディアベルへの敬意として賛意は見せないが邪魔することもない。
「さて、どうなるか」
「ディア君は今回のボス戦をどうなると読んでいるのかね?」
ディアの隣にいる《血盟騎士団》団長ヒースクリフが声をかけてくる。
今回はギルド同士の連合という形で同じ遊撃隊に分けられたため期せずして2つの新興ギルドが肩を並べることになった。今まで戦闘装備の彼を近くで見ることはなかったが、紅色の剣十字が描かれた盾と片手長剣、それに真紅のプレートメイルで武装した姿は壮年の彼に元から専用に用意されたのではという程似合っていた。
「本体もそうだがその前哨戦のファルス・アームでどれだけ消耗を抑えられるかだな。偵察隊がアタッカーの少ない構成とはいえ、それなりに手こずったと聞く」
ボスの偵察隊が交戦した際はどうにかファルスアームを倒してエルダーに突入したあたりで離脱したため本体の情報が不足しているが、そこはディアが補足している。
とはいえ人数が増えたことでHPが増えていればそれだけ面倒は増えるだろうし、エルダー本体の攻撃パターンが分からないままで多数のPSO2未経験プレイヤーがどこまで戦えるか不安がある、率直な意見を述べるとヒースクリフは少し驚いた表情を見せる。
「ほう、まるで実際に戦ったことのある自分は大丈夫というふうじゃないか。α版ではソコまで体験できたのかい?」
「いや、単に通常版で嫌という程戦っただけだ。一時期は2時間おきでエルダーの緊急が組まれていた時期もあるしパターンもほぼすべて経験済、それだけ戦えば慣れる」
適当にはぐらかして扉の開放に備えると、それ以上の追及はなかった。
そうしているうちにディアベルがボス部屋の扉を開き、全員がボス部屋に突入するがそこは全くの暗闇。これまでなら明かりが点いたはずの部屋は暗闇のまま全員を迎え入れると遥か上方に無数の赤い輝きが煌めく。それに気づいたディアがそれを見上げるとつられて周囲のプレイヤーも上を見る。
「エリス、そういえばこのダンジョンは1階しかなかったな」
「そうですけど、・・・・・・もしかして!?」
「その通りみたいだよ」
ノエルのその言葉通り、ディアの予感は当たってしまった。25層の地表から26層の底までつながるメインダンジョン、今ディアたちがいるのはその基部の入り口から真っ直ぐ進んだほぼ中心部で上に何があるかと言われればメインダンジョンの巨大な空間そのもの。第25層のボス、《ダークファルス・エルダー》はその空間に身を潜め、自身を楽しませる剣士たちを待ち構えていたのだ。
「フハハハハ、ここまで来たか。ならばまずは戯れよ、来たれ眷属!」
「経験値の塊だ、さっさと潰すぞ」
エルダーの召喚した2体のファルス・アーム、10mほどある岩石のような巨大な手を見てそう呟くは無理もない。ディアにとっては4体まとめて数分で片づけていた相手だ。事前情報ではここから増えても一部の技と電車ごっこで4体まで、さすがに気を抜いて相手はできないがHPバーも2段で緊張するほどの相手ではない
「戦闘開始!」
一方、ほぼ初対面のSAOプレイヤーたちはそのサイズと数に緊張の面持ちでディアベルの号令で事前に打ち合わせた通り二手に分かれ、AGI型プレイヤーが後方のコアを攻撃してダメージを稼ぎつつ他は指を破壊して動きを止めるよう攻撃を始める。
効率を考えるならコアだけ狙うのが一番楽だが動き回る複数の相手を常に意識しながら後方に回り込んで戦うのは難しい、ということで折衷案的なこの作戦が選ばれた。
「ん、後ろから来るか」
短く甲高い音と振動を感じて呟くように言ったディアの声を聴いた旅団メンバーはすぐに散開する。ほかのプレイヤーたちもその音源を見て何度も手のひらを地面に叩きつけるように進んでくるファルス・アームを躱すと、背後のコアがガラ空きになったところへ攻撃を集中する。
「HPが共通なのは変わらないようだし、殴れるところを殴った方がやはり早いな」
「それが出来るのは何度も戦ってるディアだけだろ」
いつの間にか隣で剣を振るっていたキリトから鋭い突っ込みがある。
そうかもしれん、とだけ返しながら攻撃を続けるとファルスアームはその場で旋回して此方を向き、同時に他のプレイヤーがもう一体のほうが迫ってくると声を上げ、ほとんどのプレイヤーがファルスアームに前後を挟まれた格好になる。
「全員その場から離れろ、挟まれるのは避けるんだ!」
ディアベルの言に従って殆どが散開する中何人かは後方へと回って攻撃を仕掛けようとするが、ファルスアームはそれを無視してフィールド中心付近で互いに掴み合うと上方へと消える。
「どう来るか……」
ちょうどHPも残り1段、パターン変化は数の増加だが初手がどう来るかは読めない。
偵察隊は上空から降ってくるパターンを見ているが、その他にも4体の合体技は直列状態でフィールドを走り回るのがある。今回はどう来るか……。
「前回と同じか!」
上空から降ってくる4つの影の下から逃れるよう全員がフィールドを動き回るが、落下速度が速い上に緩い追尾が掛かっているため何人かの重装備プレイヤーはギリギリまで逃げたところでガードの姿勢を取る。
「ぬおっ!」
直撃は避けられたものの、何人かが大型盾で防御した上からノックバックを受けているのが分かる。致命傷になるほどではないが、しばらくタンク隊は動けないと見た方がいいか。
「ダメージを受けた皆はすぐに回復を、ここから先はAからD隊で各自隊長の指示に従ってくれ!」
『了解!』
ディアベルの指揮で攻略組は即座にA隊《聖竜連合》、B隊《解放軍》、C隊《星辿旅団・風林火山連合》、D隊《血盟騎士団・小規模ギルド・ソロ連合》の4つの隊に分かれる。
A・B隊は抱える人材の数と相互の関係から自然と決まり、C・D隊は指揮能力の高い副団長を抱える2ギルドを中核にいくつかのギルドとソロプレイヤーたちで組まれている。
「タンク隊は回復を優先、アタッカーはディアさんに続いてください!」
エリスは自身で凡その指示を出しながら最前線を慣れたディアに任せる。
「ノエル、ルチア、エージは俺と一緒に背面のコアを叩け。クライン、シャサールとアネットを預けるから向かって一番右の指を狙ってくれ、ゴトーは援護を頼む」
「よっしゃ! 行くぜ、クラインさん!」
「野郎ども、ココで活躍しねぇと男が廃るぞ!」
『応っ!』
動き回るコアに付いて行くAGIを考えればシャサールもこちらに回したいが、他3体に目を配る見張り役もかねてアネット・エリスと併せて指を任せる。エージとゴトーは今回の攻略戦で初めて顔を合わせた俺と同年代か少し上のプレイヤーでエージは爪付き手甲と片手剣、ゴトーは片手剣主体に様々な補助武器とあまり見ない組み合わせだが、現実で戦闘経験があるのかかなり板についた戦い方を見せる。
「ふんっ!」
「いよっと!」
動きに付いて行くため弧月やスラストなど単発の隙が少ないソードスキルで攻撃を仕掛け、周囲から来る他のファルスアームを見張り役が知らせて回避。重装備プレイヤーの多い《解放軍》のB隊は追いかけっこで忙しいようだが他3隊が相次いで指を破壊してダウンを取るとそのまま一気の残りHPを削り、B隊が部位破壊を達成する前にファルスアームは撃破された。
「思ったよりも苦戦はしませんでしたね」
「それでもここから二戦目に突入です。回復をしっかりして、可能なかぎり態勢を整えましょう」
ルチアとエリスがそんな会話をしてポーションを飲み干すと、エルダーは身体をプレイヤーたちがいるステージに近づけその巨体を見せつける。
「ゴトーさん、デカいですね」
「エージ、そんな暢気なこと言ってる場合か」
このサイズの相手に慣れているディアは何の感慨もないが、多くのプレイヤーたちは目測で15m近いその姿に差はあれど圧倒されていた。
「我が眷属を打ち破るとは面白いぞ剣士たち。ならば始めようぞ!」
その言葉と共に背後から向こうよりも2本少ない左右3本ずつ、計6本の腕を現出させるとうち2本を腹に当たる部分の巨大なコアの前で組むと初めてエネミー名とHPバーが表示される。
《The Dark Falz Elder》、直球そのままのネーミングだがHPバーは3段、目安としては腕四本分で1段に少し足りない程度といったところか。
アーム戦終了、後半のエルダー戦が始まります。
タイミングよくエルダーUHが増えた時期だったので書きやすいなーと。
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