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朝勤だと投稿難しいですね・・・
SAOサービス提供初日、およそ1万人のプレイヤーたちは開発者:茅場晶彦の手により舞台であるアインクラッドへと幽閉され、ゲームクリアまで解放されない状況となった。
「しかし、MMORPGというのは中々に楽しめるものだな」
フレンジーボアを撃破し、ドロップアイテムの一つある《ボアの生肉》が落ちたかを確認する。
「でしょう? 仲間と協力して物事を協力して進めるのがMMO、大規模多人数参加の醍醐味ですから」
茶のコートを纏ったエリスが、同じくフレンジーボアを倒し終えてこちらを振り向いた。
現在、ディア、エリス、ノエルの三人は受注したクエストを基に、《ボアの生肉》を20ほど集めていた。アークス時代も同じようにクライアントオーダーを受注して進めており、それと変わらぬクエストというのはディアの日常であり、その間にVRMMOの楽しみというのをエリスに教えられていた。
「ところで、ノエルはどこに行ったのでしょう・・・」
周囲を見回すと、土煙と共にこちらに向かってくるノエルが見えた。
「ちょ、助けてぇ――――!」
その後ろには、ボアが10頭ほどの群れを成して追いかけていた。
「ノエル!? いったい何を?」
「茂みの端にいるの攻撃したら、奥からイッパイ出てきちゃって!」
「とにかく、逃げるぞ!」
さすがに、突進してくるボア相手に範囲攻撃もなしに突貫するほど無謀ではない。
“クチナシとキキョウ、シャプボ零かペネでもあれば一掃できるんだがな”
早くも普段使い慣れた抜剣と強弓のPAを思い出し、今は別世界にいることをディアは強く実感しながら全力疾走で逃げ、岩の窪みに身を隠して、三人はようやくボアの群れをしのぐことに成功した。
「ぜぇ、ぜぇ、ノエル、見えてないところにはエネミーが、いるかもしれないから、危ないと、言ったでしょう」
「だ、だって、茂みに攻撃が当たったら、急に、いっぱいポップして」
「よかったじゃないか、茂みに、アラームめいたトラップがあることを、知れたんだ」
窪みから身を出して、システム的に乱れた息を整える。
今のところ、時たまノエルがとんでもないポップを引くことはあるものの、NPCから受注したクエストを行いながら、様々な素材の収集・コル稼ぎをしながら三人はレベリングを行っていた。
「まぁ、さっきみたいにいきなりアクティブでなければ個別撃破でどうにかなりますし、そろそろ群れを相手する時期が来ているのかもしれませんね」
「群れか・・・」
基本的にSAOのモンスターは複数が同時に現れることは先程のようなアラームトラップや、イベントを除き存在しない。しかし、稀にフィールド上に現れる群れは一定時間内に殲滅させるとアイテムや経験値にボーナスがかかる仕様がある、というのがナビゲーターであるエリスの得た情報だった。その情報源である情報屋、鼠のアルゴは同じ情報屋であるパティエンティアと比べると皮肉屋で金には厳しいが、その分信頼できる情報を適正な値段でやり取りできるというのは僅かな接触でも理解できた。
「そうなると、曲刀よりは大剣・長槍の方がいいか?」
「いえ、曲刀のソードスキルの中には転倒や出血を持つ範囲攻撃があるようですし、マスタリを上げてそちらを習得してから挑みましょう。出血は大型にも有効ですし、覚えて損はありません」
曲刀のマスタリとソードスキルを確認すると、現在24の曲刀スキルが25で転倒持ちの範囲攻撃が習得できるため、手近のボアを片っ端から撃破することとなった。
「フンッ!」
ディアが走ってボアに側面から接近し、ステップで加速して思い切り斬り付ける。強撃で怯んだことを確認すると、そこからさらに連続で斬り、怯みが解除されると同時に右へ向きを変えながらリーパーの切り上げを放つ。
「スイッチ!」
その背面でボアの顔面にノエルの長槍が左へと薙ぎ払われ、リーパーと再びの強撃によりボアは再度怯み、そこからスムーズに繋げられた右薙ぎとフェイタル・スラストの二発で撃破できるかと思われたが。
「ス、スイッチ!」
残念ながら、ボアのHPはほんの僅かに残り、ソードスキル後の硬直に入ったノエルに突進を繰り出そうとする。
「ヤアッ!」
念のために待機していたエリスがスイッチし、軽く剣をあてるとボアはポリゴン片へとその姿を還元した。
「今のは惜しかったですよ、ノエル。ほんの少しだけ一撃目の踏み込みが浅かっただけです」
腰に《アルバシミター》を収めつつ、ノエルの動きを脳内で再生する。
エリスの言う通り、確かに踏み込みが浅いが、肩越しに見たノエルの位置なら普通に踏み込めば十分に届いた間合いのはずだ。それでも彼女が踏み込み切れなかったのは・・・。
「まだ、戦うのが怖いか?」
まっすぐ、ノエルの瞳を見据えて言う。
「・・・うん、怖いよ。一撃で死なない相手だとわかっていても、自分の命が目に見えて減るんだもん。戦うのは、怖い」
「そうか」
頭を撫でようとしたが、ハラスメント扱いにされては困るため戻し、話を続ける。
「踏み込みが浅かったのは、怖さが怯えになったからだ」
「むぅ・・・」
残念そうな顔から、やや悲観的な顔にノエルが忙しく表情を変える。
「だって、」
「話は最後まで聞け。だけどその怖さは忘れるな、恐怖のない勇気は蛮勇でしかないただの過信だ」
レベル70を越えてすぐ、防衛戦で、迎撃戦で、遊撃戦で、しゃにむに突っ込んでいった結果、長期の戦線離脱やリハビリを送ることになったアークスを思い出して語る。
「だが、怯えるな。怯えは体を止める、それは身を守ろうとする恐怖よりもひどい状況を招く。さっきのがエリスの一撃で仕留められなかったら? 仮に相手が次の一撃で全員を殺せたら? 俺のHPがレッドで、絶対にノエルが倒さなければいけない状況だったら? その時に怯えるな、恐怖して抗い、覆せ」
今度はハラスメントも構わずに頭をなでる。
「お前は十分戦えるぞ、ノエル。だから、怯えるな」
「うん!」
そうして、蒼髪の槍使いはいつもの悪戯っぽい笑顔を浮かべる。
「よーし、村に戻ってのイタズラ考えながら、クエストとレベリングを頑張るよー!」
「まったく、イタズラもほどほどにしてくださいよ」
「個人的には楽しいのだがな」
この前の粉まみれになったエリスを思い出して笑う。
ノエルは俗にいう悪戯っ子であり、何かとアイテムを使って悪戯を仕掛ける。もちろんプレイヤーに直接危害を加えたりアイテムに影響を及ぼすものではないが、たまに派手なことをするようで、この前はエリスがクリームと粉にまみれた愉快な顔になっていたのだ。
「もー、ディアさんまで!」
「娯楽に飢えているんだ、仕方ないだろう?」
「そうそう、どんな時でも楽しまないと!」
ニヒヒと笑いながらノエルが新たなボアへと突っ込んでいく。
まだ動きは固いが、さっきよりも思い切りが良くなり、少しだが長槍の一撃が深く入る。そうしてクリティカルで怯んだ所にさらに連撃、一度離れて短距離突進を交わしたところに横から《フェイタル・スラスト》を打ち込んで止めを刺す。
「・・・あっという間に終わりましたね」
「レベル的にも装備的にもおかしくはないだろう。さっきのボアは初撃とリーパー以外まともに当てず、スイッチの練習をしたかっただけだ」
「位置取り、結構重要ですね」
「ノエルの場合は槍だから余計だな、うまく先端を当てれば威力は上がる、そうすればコンボ一通りで倒せる相手も増える」
そうして今度は一人ずつバラバラで倒し、目的の素材が必要数集まるころには三人とも、ディアは元からつかんでいるが、位置取りや自分の踏み込み幅などをつかみ始めていた。
「さて、コルも素材集まってきたことだし、お楽しみの強化と行きましょう」
「おー!」
「・・・おー」
強化、と聞いてあまりいい顔をするアークスは少ない、2年以上のキャリアを持つディアリーンならばなおさら。
「あまり乗り気ではないみたいですね、ディアさん」
「いや、昔を思い出してな、武器強化で金が消し飛んだ記憶が」
今思い出しても腹が立つ、ガイルズオ―ビット最終強化が10回ほど失敗したあの記憶は。
「ま、まぁ、確率ですから」
鍛冶屋の主人がアフロだったらどうしようかと思ったが、幸いにも白髪を短く刈り上げた老人だった。
「すまないが、これの強化を頼む。DEXを重点、確率は90以上で頼む」
SAOの強化はアークスのものと違い、武器それぞれが持つ強化回数限度が0になるまで試行できる。
そして、その回数内でどれだけ成功できるかで、最終的な強化値は変わる。
今ディアが依頼したのは1回目の強化、成功率は80%ほどだがそこにコルと素材を余分に払うことで90%まで補強している。
「あいよ、ちょっと待ってな」
コルと素材、アルバシミターを預けて鍛冶の様子を見守る。アルバシミターはこのひとつ前の村で手に入れたイベント武器だが、性能自体は同じ難易度のクエストの中では割と低い。その代り回数限度が多く、順調に強化できれば最終的には他の武器を上回るという。
炉の中に素材と武器が入れられ、赤熱したそれを主人が叩く。そうして、ひときわ強い光を放つと鍛冶が終了したらしく、こちらに戻ってきた。
「成功だ、また頼むよ」
武器ステータスを確認すると《アルバシミター+1》になっており、確かに強化が成功していた。
「どうも」
ノエルとエリスも同様に強化し、無事に+1となった。
「強化具合の確認に少しクエストでもやろうか」
「そうですね、日が暮れる前に終わりそうな軽めの討伐でも」
「じゃあ、この前見つけたハチ退治は? 一人2,3で終わるからちょうどいいんじゃない?」
「ハチミツが報酬の奴か、夕飯の足しにもなるしちょうどいいな」
そういうわけで村の外れにある農場でクエストを受注し、ハチを討伐していく。
「なるほど、伊達に数値が増えたわけではないな」
DEX、アークスでは技量に相当するそれは動作や武器の動きのばらつきを補正するパラメータである。
短槍や細剣のようにピンポイントで攻撃するものや、曲刀のように一撃が速いものはこれで正確に弱点を狙うことでダメージの上昇が期待できる。意外なところでは大剣使いがDEXとSPDを上げて、一撃離脱に特化したスタイルに構築することもあるらしい。
「さっきよりも大分違うねー、っと!」
「文字通り、0と1の差がありますから」
ノエルが最後の一匹を仕留め、クエストクリアがメッセージログに表示される。
「さて、報酬を受け取ったら宿に帰るとするか」
なお、現在拠点にしているのは《はじまりの街》から北西に5kmほど離れた中規模な村で、他にも何人かのプレイヤーたちが逗留している。彼らとは大型モンスターや数の多い収集クエストで協力することもあり、そこそこといった仲を築いている。
「それにしても、ディアさんの部屋代高いですよね」
「まぁ、一人部屋が割高になるのは仕方あるまい」
「さすがに男の人と一緒の部屋で寝るのはね」
宿屋のロビーで今日のアイテムの整理や必要な交換、パーティストレージに入ったものの分配などを進めていく。クエストの報酬品を除き、基本的にパーティで手に入れたアイテムは一度パーティストレージで共有され、必要に応じてメンバー間で分配するのがSAOの仕様になっている。
どうも、アイテムを個々にドロップさせると生じる不公平感を解消すると同時に、オブジェクトの存在を全プレイヤーで共通認識するという基本設計上こうなるらしい。
「じゃあ、また明日な」
「はい、お疲れ様でした」
「おやすみ~」
ゲーム開始から3日、この世界の3日目はこうして過ぎていく。
というわけで第3話、MMORPGで生きている3人です。
しばらくはこの二人+キリト&アスナに戦闘職の先達であるディアがいろいろ話したりする幹事になりそうな予感・・・
キャラ同士の接点作るのが難しい。