3週間ぶりの更新となりまして申し訳ないです。
基本的には次話が書きあがり次第上げているのですが、ここのところ工場のシフトの関係もあり書けずにいました。
コレの後もしばらく更新が遅れると思いますので、ご容赦を。
第1層のボス部屋が発見されその攻略会議が開かれる、掲示板や有力プレイヤーが拠点とする町や村に置かれたメモ紙程度の情報に基づき、ディア・エリス・ノエルの三人はダンジョン近くの街を訪れていた。
「とはいっても、私とノエルのレベルではメインアタッカーよりはサポ寄りのサブですかね」
「ディアと同じ時間しかやってないのにねー」
そう言う二人のレベルは12、ディアのレベルはこの階層では頭一つ抜けていると思われる17。
日頃から一対多の戦いを行うアークスであるディアにとってレベリング自体はそれほど苦でもなく、見つけたエネミーを容赦なく殲滅していくスタイルでレベリングを行っていた。
「まぁ、それこそ戦闘経験の差としか言えないな」
アークスであることは伏せて傭兵のようなものと二人には説明しているが、それでも説明がつかないものは純粋に経験値で誤魔化している。
「それにしてはモンスターを相手にしても落ち着いて対処してますし、特殊能力持ちでも対応早いですよね」
「じーっ、実はベーターだったり?」
「俺は製品販売までSAOはプレイしてないぞ」
「恐らくですがそれは確かだと思いますよ、元ベーターが保証します。それにディアさんほど強ければ別の名前でも知られているはずです」
そう言って手元でメモ帳らしきものを操作するエリスはベーター―の一人であり、その知識を惜しみなく周りに教えている。ベーターの大半も同様に自分たちが知る情報を検証の後に他のプレイヤーたちに回しており、誰にも知られることなく蔑まれても一般プレイヤーを支えていた。
「共有知は全体の底上げになるからな、ボス戦はレイドになるだろうから少しでも平均値は上げておくに越したことはない」
深淵のような多対一の戦闘、防衛戦のような多対多の戦いで少しでも優位に立つには個の強さも重要だが、それ以上にサポートも含めた全体の戦力を上げる、というよりも全体が最低値を満たしている必要がある。
「実際にはサポート役などで参加してもらえますからね? ディアさんはソコのところが少しシビアというか厳しいというか……」
「あー、それに関してはスマン、つい癖で他人にステを要求してしまってな。本来なら避けるべきなんだろうが、昔からの癖でパーティメンバの装備確認をしてしまうし……」
アークス時代は他人のクラスとスキルを確認するのは高難易度レイドバトルでは自分がどのスキルを使うかということにも関わってくるので、割と確認することが多い。場合によっては破棄して再受注というのもありうる。
「見れる範囲以外は見ないようにしているみたいですし、大丈夫だと思いますが、文句も言わないでやるあたりはプロというかなんというか」
「文句を言っても他人の装備やスキルが変わるわけでもないからな、それなら文句を言う間に戦った方がましだ」
「うわー、そのあたりもドライだー」
というか実際アークスはそんな感じのが多い、文句を言うなら自分が殴った方が速いとかそんな理由ではあるが。
そうこうしているうちに、呼び掛け人の《ディアベル》が舞台の中央にやってきた。
「どーも、ディアベルです、気分的にはナイトやってます」
青に髪を染めた青年の装いは同色のハーフコートにプレートメイル、スモールシールドに片手直剣という確かに騎士めいたものだった。
「本日ここに集まってもらったのは他でもない、第一層のボス部屋が発見され、その攻略のために集まってもらった」
そして、今のところ集まった情報や実際に偵察を行った連中の感触、集まったプレイヤーの武器傾向を基にして即席パーティが組まれていくが・・・
「エリスとノエルを取られたか」
「いや、取られたというか回されたという感じなんですけどね?」
「ディアさんも二人と組んだんだから仲良くしないとダメ、だよ」
まぁ、うち一人は元知り合いのキリトであり、もう一人もそのキリトの知り合いらしいのでどうにかなるだろう。
「片方は知り合いだ、どうとでもなるさ」
キリトの方を見やると苦笑いしつつも頷いてくれた。
「では、後程」
「話が終わったら声かけるねー」
一度二人と別れ、キリトともう一人、フードを被った細剣使いと合流してパーティを組む。
画面に表示された名前はKiritoとAsuna。
「よろしく頼む、二人とも」
「まぁ、その、久しぶりだけどよろしく」
「・・・よろしく」
声と名前からして、フードの方は女性らしい。
「俺たちの担当は取り巻きの排除だが、場合によってはボスとの戦闘もありうる。無理にとは言わないがよろしく頼む」
「そうならないことを祈りたいが、どうなるかは実際にやってみないと分からない。念のため、多少はパーティ戦の練習だけでもするか?」
「別に、構わないわ」
「なら、どこかのフィールドに・・・」
そう言いかけたとき、オレンジの髪を棘のように整えた男がディアベルを押しのけて声を上げた。
「ちょお待ってくれへんか、ナイトはん」
なにかしら、不満抱えたようなその男は制止するディアベルを無視して続けた。
「ワイはキバオウいうもんやが、まず、この中には謝らアカン奴らがおるはずや」
「五月蠅い」
「なんやと!?」
面倒くさいのでコイツの言いたいことをまとめて言い切る。
「お前が言ってるのはベーターのことだろう? あいつ等は攻略情報や効率のいい狩場やクエストを独占し、自分たちのこと優先で攻略をしていると、そうだろう?」
苦虫を噛み潰したような表情でキバオウが頷く。
「せや、あいつらは」
「これを持ってる奴がいたらこの場で出すか手を挙げてくれ」
そう言って俺が懐から取り出したのは緑色の表紙の、片手サイズの本。
ここに集まったプレイヤーのほとんど、パーティ単位で見れば一人、キバオウを除いて全員が手に持つか挙手したその本は宿屋のテーブルの上に置かれているものだった。
「こいつのこと知ってる奴は?」
「知らない奴がいたようだから説明するが、これはベーターたちがβ時代にあった狩場やクエストをまとめたもので効率のいいモノや難易度の低いやつ、序盤の手引きや注意する敵をまとめたもんだ」
アンタは知らなかったようだがな、と付け加えて返答してくれたのは褐色の肌を持つ大男、背に背負っているのはこの層ではやや上位に位置する斧だが、2m近いそいつが持つ姿は絵になっている。
「そういうことだ。確かにベーターの中にはお前が言うような奴もいるだろうが、狩場の独占も一時的なものだし、クエストも検証が終わったものからこれに追加されてる。リスクを冒してまで情報を全員に回しているんだ、そのリスク期間だけでも大目に見るわけにもいかないか?」
個人的には狩場の独占については思うところがあるものの、時間単位で交渉はできているし、攻略本の内容についても多少の違いはあるものの、核心的な部分について嘘は書かれていないのでベーターについては悪い感想は持っていない。
「ぐぅ、しゃ、しゃあない……。ベーターにもアンタたちが言うみたいに悪くないやつもおるようやし、ここにいる中にそういう奴がおるんやったら謝るわ。スマン!」
さすがにそこまで言われてごねるわけにはいかないらしく、悪くないベーターに対して謝罪するという決着を見た。コイツ、ベータ―に対して恨みでもあるんだろうか?
「まぁ、キバオウ君の言わんとすることも分かる。今日のところは、ここらで水に流そうじゃないか」
ディアベルの一言でとりあえずこの場は収まり、明日の集合日時を正午丁度とすることで第一回の攻略会議は終了の運びとなった。
「さて、改めてどこかに行くとしようか」
「そうだな、フィールドで実際に動いてみれば見えてくることもあるだろうし、君もいいだろう?」
「構わないわ、この人の実力も見ておきたいし」
そういうことでダンジョンの入り口近くで適当にモンスター相手の戦闘をする運びとなった。
ダンジョンをコボルトの本拠と見立てているのか周辺には小型のコボルトが現れ、明日の取り巻き退治の練習にもなり一石二鳥だ。
「まずは俺から行こう」
「頼む」
「いいえ、私が行くわ」
そう言うなりアスナはコボルトめがけて細剣を繰り出し、怒涛の突きで瞬く間にHPを削っていく。
「勝手なところはあるが、腕は確かだな」
「だろ? それと、根は真面目で正直な奴だから多少大目に見てやってくれ」
反撃一つ許さずにコボルトをポリゴン片に還元したアスナはどこか気品のある歩き方でこちらに戻ってきた。
「どう? 私の実力を分かってもらえたならいいんだけど?」
少しだけ得意げに語る彼女の腕は確かなようだった。
「攻略会議に参加するだけのことはある。剣筋にも迷いがないし狙いも正確、だけどもう少しよそ見をする余裕があってもいいんじゃないか?」
「え?」
腰だめに構えた《ヴィタシミター+5》を放ちながら先程までアスナが戦っていたすぐ左後方の茂みに向かい、次いでキリトが何かに気づいたような表情と共に片手剣を抜いて同じ茂みに駆けていく。
「遅い!」
茂みから飛び出して来た二体目のコボルトが手斧を振り下ろす前に、抜き打ちの右切り上げから袈裟切りでバツの字に切り裂く。その交点を狙うようにキリトの突きが炸裂し、さらに追撃するようにリーパーを撃ち込んで消滅させる。
「サンキュ、キリト」
「お前の索敵スキル、どういう鍛え方してるんだよ」
ポカンと、ようやく女の子らしい表情を見せて驚いたアスナを放置して話を進める。
「スキルじゃなくて感覚的なものだな、一体目を倒したときに茂みの方に首を動かしたのとそこから感じた敵意、あとは空振りでも構わなかったから攻撃してみた、という程度だ」
ついてもいない血糊を振り払うかのように素振りをしてから腰の鞘に戻しながら、二人のあきれたような視線に気づく。
「そりゃあ、システム的に視線とかを感じるっていうのもあるかもしれないだろうけどさ・・・」
「さっきのそれ、普通にできるものなの?」
思い切り首を横に振るキリト君を見ると、こと戦闘に関してはどこかしら突き抜けている人間がいることを改めて実感する。
「慣れと経験としか言えないな。さっきの君の戦闘もなかなかのものだったし、あの調子で経験を積んでいけばいつかは届くかもしれない」
「キリトの言うとおりだが、まずは戦っている相手以外にも気を配れるようになった方がいいな。実力は十分なんだ、程々で戦った方が長く戦えるぞ」
それでもこの世界から早く出るために強さを求めている自分にとって、キリト君の強さとは違うそれをもつ彼からは何かを学べるような気がした。
「どうして、そんなに強いの?」
彼の強さの訳を知りたくて、ふとそんなこと聞いてみる。
「・・・軍人のようなものだから、といっても納得はしてくれなそうだな。あまり詳しくは話せないが理由の一つはリアルで戦闘を生業にしているから、もう一つは死ねない理由が多すぎるからだ」
「死ねない、理由?」
苦笑しながら彼が告げたのは、実にシンプルな訳だった。
「ちょっ、アスナ」
「構わないさ、納得するかはともかく話だけはしておきたい」
キリト君の制止を抑えた彼が話を続ける。
リアルのことは禁句がこの世界のルールだけど、あえて話してくれるらしい。
「迷ってばかりの奴が結論出すまで付き合ってやらねばならんし、気にくわない自己犠牲してる奴もどうにかする必要がある。放っておいたらどんな無茶をするか分からない奴もいるし、とにかく現実で半端に残してることが多すぎる」
面白そうに語る彼のそれは確かに彼個人が死ねない、生きて帰るには十分な理由のようだった。
「あぁ、今はあの二人もそうだな、あの二人を現実に戻すまでここから消える訳にはいかないんだったな」
「ディアは、凄いな。戦闘だって上手いし、リアルに戻る理由も生きる理由もしっかりしてる」
「うん」
彼の言うことを聞いていると、私の中で生きる理由や現実に変える理由が軽く感じる気がする。
「私も現実でやらなきゃいけないことがあるから、生きて帰らないと」
それでも、私は両親のためにも現実に戻り、遅れた勉強を取り戻して大学に行って、期待にこたえなければいけない。
「まぁ、当面はここで生きていかねばならんし、現実のことは先送りだな」
「「ええぇっ!?」」
あれだけ語っておいて、どうでもいいって、この人は何を言っているのか、その疑問すら可笑しいと思うような顔で話は続く。
「ここで何をしても現実が変わるでもない、だったらこの世界で生き抜いて、出ていくしかないだろう。それから現実のことを考えても、間に合わないということはないだろうしな」
「だって、このままこの世界にいたら、学校とか仕事とか遅れて、両親も私にいろいろ期待してるのに・・・」
勉強や習い事、受験だってあるのに、いつまでもこの世界にいたらどんどん引き離されていって私は両親の期待に応えられないイラナイ子になってしまう。
そう続けようとした私を制すように、彼が話す。
「どうでもいいだろう、この世界では」
「どうでもって、あなた・・・」
「じゃあ一つ聞くが、この世界から自由になるのと現実で両親の期待に応えるの、お前はどっちが大切なんだ?」
「・・・え?」
唐突なその質問に答えようとして、その答えが見つからなかった。
この世界から解放されるのと現実で両親の期待に応えるのがイコールで結ばれていた私にとって、それを全く別のものとして訊かれるのはまるで想定外だったからだ。
「どちらでも構わないが、少し気になってな。お前はさっきから、やらなきゃいけないことが帰らなければいけないと言っているが、お前のやりたいことを一度も言っていない。それなのに、この世界からは自由になりたがってるのが不思議でな。親の期待に応えるのがやりたいことならいいが、やらなきゃいけないことなら」
「どうでも、いいってこと?」
怒りがこみあげてくるともに最後まで話を聞かなければいけない気がして、それを抑え込む。
「そうだな、どうでもいいということはないが、やらなきゃいけないことが無くなった時、どうするつもりなのかと思って訊いてみただけだ」
そこから、この人はさらに話を続ける。
「昔、お前と似たような奴がいてな」
少し長くなるぞ、と付け加えて彼は話を始めた。
うっすら分かる方もいるかもしれませんが、ディアが話すのはEP2-6章時点のマトイです。
使命のために生み出され、使命に流されるまま生きて、使命以外を知らないために消えた少女、全治存在のシオンが他者に知られたくないほどの汚点です。
ついでに人物紹介
・ディアリーン(アバターネーム:ディア) 男性 24歳
アークスシップ7番艦ギョーフ所属のアークスにしてアークスの英雄、あらゆる命令や指揮系統に属しない独立戦力の称号である守護輝士(ガーディアン)を持つ二人のうち一人、PSO2のプレイヤー的には安藤といえば通じる。
アークスの母体である外宇宙航行船団オラクルの管理者シャオの思い付きにより、SAOプレイヤーと人脈を構築するために何も知らされずにSAOに参戦することになった。
単純な戦闘能力で言えば同じく最高戦力として数えられる六芒均衡のトップ二人に次ぐ3位だが殆ど全ての時間や空間に干渉するタイプの攻撃を物理的に壊せるうえ、アークスの力の源であるフォトンを集める能力が並大抵の方法で阻害できないほど強く、あらゆる状況において常に全力で戦えるというのが彼の強さ。お人好しでありトラブルにはとりあえず首を突っ込むタイプ。
リアルの戦闘力はアークスの中でも指折りだがSAO内では並みのプレイヤー程度。しかし、アークスとしての膨大な戦闘経験は健在で、初見の相手でも戦いながら様子見をして隙を拾いに行ける。
ちなみに種族はキャストでロニア・ヘッド/フリーヴァ・ボディ/アルベルカ・アーム/フリーヴァ・レッグ、Br/Huの刀弓両立ツリー。