EP5始まりましたね。
読者の皆様はどんな状態でしょうか?
バスタークエストなどのメインコンテンツはこれから実装のようですが、
すでにHr強くね?状態になっているので今後は1強状態になるのか、というのが心配です。
今回もキリアス+ディアで話が進む都合、進行遅いです。
では、お楽しみを。
そうして彼が、ディアさんが話してくれたのはある女性の話。
みんなを守るために育てられて、みんなを守ることしか知らなくて、みんなを守る以外を知らなかったゆえに、消えてしまった女性。
「そのあと記憶をなくしたところを拾ってな。リアルじゃ軍人みたいなことやってるせいでまともに相手してやれなかったし、それに巻き込むこともあったけど、今は本人的に幸せらしい」
やらなきゃいけないことで生きた結果全部なくして、やりたいことで新たに生きる道を見つけた彼女の話を聞いて、私はもう一度ディアさんの質問を反芻する。
『この世界から自由になるのと現実で両親の期待に応えるの、お前はどっちが大切なんだ?』
両親の期待に応えるのはやらなきゃいけないこと。
私がやりたいことは・・・。
「そうだ、私、自由になりたかったんだ」
なぜだか分からないけれど、思い出したのはキリト君に助けられたこと、この世界に来た時のこと。
この世界に来てから経験した、現実では経験できなかった、知らない人と話すこと、自分で買い食いすること、自分で戦って何かをしてやるという気持ち。
「私のやりたいこと、この世界で自由になることだったのに何で忘れてたんだろう」
兄からナーヴギアとSAOを借りたときに抱いた小さな欲、それにすらも忘れるくらい、SAOの中でSAOに来た理由を忘れるくらい、私は追い込まれていた。
「ありがとうございます、ディアさん、キリト君」
「ん?」
「え?」
いきなりフードを外して頭を下げて礼を言われたことに驚き、思わずキリトとそろって妙な声を出してしまった。
「ディアさんのさっきの質問の答え、この世界から自由になるのと両親の期待に応えるの、どっちがやりたいことか考えてるうちにこの世界に来た理由とかも考えて、色々とスッキリしました。とりあえず、この世界から自由になるのが私のやりたいことで、この世界に来たのは自由になるためだったのでこの世界にいる間は好き勝手に生きていくことにしました」
「そうか、やりたいことがはっきりしたか」
毒気が抜けたような明るい表情のアスナからは先程までの硬い調子が無くなり、朗らかに言い切ってみせた。
「キリト君もありがとうね、あの時私のことを助けてくれて、この世界のことも色々教えてくれて。言ったような気もするけれど、改めてお礼、言わせてもらうわね」
「お、おう、どういたしまして・・・」
アスナとキリトの関係はいまだによく見えないが、微笑みながらそう告げたアスナを見るのが恥ずかしいのか、キリトは目をそらしながら返答した。
「さて、やりたことも見つかったし、自由にするためにも、もっと上の層に行かないとね」
「こ、攻略の意思は変わらないのか?」
「当たり前でしょ? この世界で自由にするのは決めたけど、現実に戻ることだってやりたいことなんだから攻略には参加するわよ」
「くっくく、お前の連れは面白いな、キリト。余裕がないと思ったら自分のことで悩みだして、それが終わったと思ったら今度はコレか。アスナといったか、コイツはコレでもナイーブで人付き合いの苦手なお人好しだ、面倒を見てくれるか?」
正直、キリトを一人にしておくとそのうち人付き合いで何かやらかしそうな気がしていたのだが、ちょうどいい具合にキリトと一緒にいてくれそうな奴が見つかった。
「任せてください、ゲームのことで教わりたいこともありますし、今のところ私が付き合いのあるプレイヤーも彼だけですから」
確かに、このゲームの中で女性、しかも美少女といってもいいアスナが人付き合いを避けているのもなんとなく分かる。そこにイケメンとは言えずともそこそこ整った顔立ちのキリト、しかもゲームに積極的なベーターであるコイツの近くにいれば下世話な考えを持った人間を避ける効果もあるか。
「おい、アスナ、俺は了承してないぞ」
「いいじゃない、私が勝手にするんだから。それとも、私が相棒じゃ不安?」
「いや、そういうわけじゃないけれど」
確かに、今まで出会ったプレイヤーの中でもアスナの剣技に匹敵する人間はシステムアシストを加味しても知りうる中ではおらず、かろうじてエリスが同等程度の可能性を秘めている程度。
相棒として逃すのには惜しい存在だろう。
「分かったよ。当面の間頼むぜ、相棒」
「分かればよろしい。ディアさんも、明日のボス戦までの間よろしくお願いします」
「明日までとは言わずに、困ったことがあればメッセージを飛ばして構わん。手伝える範囲でなら手伝おう」
その後何度かコボルト相手の戦闘をしていくうち、アスナは余裕が生まれたせいか剣技の鋭さは多少落ちたものの、それを補う柔軟性と状況判断で先程よりも余裕をもって戦っていた。
「このゲーム、戦う時にあんなに力まなくてよかったんだ・・・」
「常に全力だと長時間戦闘の時もたないからな」
「セイッ!」
キリトとアスナの会話を聞き流しつつ、グレンテッセンからサクラエンド零式のコンボとでもいうべきPA擬きをコボルトに打ち込み、その4発でポリゴンの破片へと還元する。
一度俺の動きを見ておきたいという二人の希望により、コボルト相手に動きを見せているが、その動きを見ながら二人は会話を続けている。
《ヴィタシミター》は普段使っているカタナよりもリーチが短い《曲刀》のため踏み込みを強くするか短い距離から放つしかないのが難だが、第一層最高クラスのレベルとステ、リアルで身体に染み込むほど使い込んだ動きはコボルトの反応よりも遥かに早い。
斬り払いで虚を突かれ、身体の捻りと腕の振り抜きで加速された居合でノックバックを起こし、さらに十文字に斬られたコボルトはほとんどその連撃で撃破。そうでなくとも多重のノックバックを喰らった相手は無抵抗でソードスキルを受けるほかなく、そこからリーパーを撃ち込めば確実に仕留められていた。
「これで終わりにするか」
沈み始めた夕陽を見て視界の右端に表示される時刻を確認すると17:36、単独とパーティで合わせて8体ほどのコボルトとの戦闘をこなし、なんとなく動きの癖やスイッチのタイミングを理解できたため、明日のフロアボス戦に向けて早めに切り上げることにする。
「そうだな、明日も早いし、前日に根を詰めすぎてもしょうがない」
「それじゃあ、街に戻りましょうか」
再びフードを目深にかぶったアスナの横にキリト、そのすぐ後ろにディアといった配置で一行は街へと歩き始める。
その途中、エリスから送られてきたメッセージを見ると向こうは既に街の中で宿屋を確保して夕食を始めているとのこと。ディアはこれから街に帰る旨と、ほかの二人と同じ宿に泊まるため明日合流することを返信した。
そうしてディアたち3人が街についたのは18:47、すっかりと日も暮れて街は夜闇に包まれていた。
とりあえずは夕食を食べるという提案をディアが出したものの、何を食べるか決めていなかったのか俺に店や食品の情報を求めてきた。
「いや、俺もこのフロアのことはあんまり知らなくてさ。けど、うまい食べ物なら一つ知ってるぜ」
「ほう」
「なになに? キリト君?」
そう言ってアイテムストレージから取り出したのは《黒パン》、比較的安価で味もそこそこだが硬いそれを見て二人ともやや落胆したような表情を見せる。
「それで、これにコイツを載せると」
もう一つアイテムストレージから出したのは小さな赤茶のツボ、回復ポーションのそれとは異なる素焼きのそれからはかすかに甘い香りが漂う。そのふたを開け、軽くタップしてから黒パンを同じようにタップするとあら不思議、,《クリーム載せ黒パン》の出来上がり。
「クリームはいくつかあるから、二人にも一個ずつやるよ。それと、これのクエストはこの前の村で受けられるから、暇なときに何度か受けておくといい」
二人にアイテムを渡して、俺は自分のクリーム載せ黒パンにかじりつく。元が乾燥しているせいかよくクリームの染み込んだ黒パンはやや重めのケーキのような食感で、そこにほのかな酸味と甘さが加わることで素朴な焼き菓子のように変わる。
「どれどれ」
「いただきまーす」
二人も同じようにして噛り付くが、ディアは片手で無造作に、アスナは両手でしっかりと食べるところを見るとなんとなく性格が見えてくる。
「中々、うまいものだな」
「これ、美味しい!」
その後は著しく早く食べるディアとがっつくアスナという真逆のものを見ることができて、ある意味で珍しい光景だった。
練習して、わだかまりも解けて、腹ごしらえもしたとなるとあとは寝床か。
「ディアはどこに泊まるか決めてるのか?」
「ん、お前たち二人がどこにするのかを聞いてから決めようと思っていたから、まだ決めていない。可能なら、まとまって行動したいしな」
「それなら私、お風呂のあるところがいいなー。しばらくはシャワーだけだったし」
「また俺かよ!?」
こうして、二人を宿屋に案内してようやく寝床を確保したのだが、アスナと俺が風呂付の部屋で一緒になるというまさかの自体が生じていた。
理由は三人で部屋を取ろうとしたら空きが風呂なし/あり各一室で、ゲームに不慣れなディアが先に風呂なしの部屋を一人で借りたことにある。
「あー、すまない。こういうのには疎くてな」
「いや、問題はアスナの方だろ、最悪は俺がディアの部屋にで寝ればいいし」
「私は別に、覗かれたり見られたりしなきゃ、二人でもいいけど」
結論として、アスナが風呂から出て呼びに来るまではディアの部屋にキリトがいることとなった。
部屋にあるのは簡素な椅子が二つととベッドにテーブル、俺がソファに腰かけてストレージからマグに入ったコーヒーを二つテーブルの上に置く。
「とりあえずは座ったらどうだ? こんな物でもいいなら、飲み物もある」
入り口近くで立ったままのキリトに座るように促す。
「そうだな、立ったままってのもおかしいし」
武器を装備解除したキリトに習って俺も解除し、キリトと向かい合わせになるように座る。
「それにしても、無事で生きていたのは良かった。さすがに初日に会った奴に死なれていては目覚めが悪い」
苦みと酸味以外、特に香りについては壊滅的なコーヒーを啜りながらキリトに話しかける。
攻略会議の場でコイツを見たとき、よく生きていてくれたというのが正直な思いだった。
この世界に閉じ込められて、というよりも強制的に移されてから一ヶ月、その間に死んだ連中は約300人。誰が死んだかははじまりの街にある生命の碑で確認できるらしいが俺は一度も確認しておらず、フレンドリストにあるキリトの名がブランクになっていないことを確認して生存を確認していた。
「済まなかった!」
「うん?」
キリトは突然席を立って頭を下げ、謝ってきた。
一体何のことかと考えていると、それに続けてキリトは喋りだす。
「あのとき、お前が連れと一緒に来るまで待たなくて、その後何も手伝えなくて、済まなかった!」
「別に、気にしてないが」
「へ?」
「まぁ、不味いコーヒーでも飲んで落ち着け」
もう一つのコーヒーをキリトに渡して座らせ、口を付けて顔をしかめたのを見て苦笑する。
「クククッ、不味いだろコレ。だが嗜好品の類が今のところコレしか無くてな、上のフロアには何かあるか?」
「そんなことより、気にしてないって・・・」
「幸いにも連れの片方は前線組でないとはいえベーターだったし、攻略本のおかげでそこまで苦労することも無かった。今日みたいにシステム面で苦労することはあっても、それ以外ではさほど苦労していないさ」
戦闘時や初対面の時より幾何か砕けた口調で話を続ける。
無意識とはいえ、戦闘時と普段では大分頭の中で切り替えがハッキリしているものだ。
「あまり抱え込み過ぎるな、キリト。あの時お前が俺やクラインのことを置いて行ったのは非難されるかもしれんが、無責任に他人の命を背負い込んで途中で逃げだすよりはマシだ」
自分の手に負えないことを無理に引き受けて、それを途中で放り投げる方がよほど非道い、と付け加えて残りのコーヒーを飲み干す。
対するキリトは俯いて手元のコーヒーに視線を落としたまま、何を話すべきか悩んでいるようだった。
SAOに閉じ込められて一ヶ月の間、俺はほとんどの時間をソロで過ごしていた。
β時代の経験を基にクエストや効率のいい狩場を巡って、ひたすらに自分のレベルを高め、強くなることを繰り返していた。生き残るためといえば聞こえがいいが、実際は他の連中のリソースを奪い、不慣れな非ベーターを置き去りにしてひたすら自分のことだけ考えていた。
それでも、目の前のこの人は気にしないと言ってくれた。
「それでも、俺はアンタたちを置いて逃げたんだ」
「逃げたかもしれないが、無責任よりはましだ。お前は自分で負えない責任を負わなかっただけで、そこを責めるつもりはない。それにお前が書いた記事も役に立ったからな」
「へ? なんで、それを・・・」
顔を上げてディアを見ると、やっぱりとでも言いたげな笑みを浮かべていた。
あぁ、もう、こんな簡単な手に引っかかるなんて。
「ブラフかよ」
「まだまだ甘いな。攻略本の大手である鼠のアルゴと親しく、お人好しなくせに人と関わるのが苦手、その上この世界のことをあれだけ知っているベーターとなれば候補はお前ぐらいしかいないからな」
「うるさい」
誤魔化すように不味いコーヒーを飲み干すと空になったマグは消失せずに手元に残る。
それをディアに返して、ふとこんなことを訊いてみたくなった。
「ディアはあの二人のこと、なんで面倒見ようと思ったんだ?」
俺と違う、誰かと一緒にこの一ヶ月を過ごしていたディアのキッカケについて訊いてみたくなって尋ねてみた。
「たまたまだな。お前と合流するための道沿いで見つけて、放っておけずに拾った。偶然通らなければ会わなかったし、目に留まらなければ一緒にいなかった。人の縁なんて、偶然結ばれるものだよ」
「たまたまか、なんかディアらしいな」
「そうかもしれんな」
多分、コイツは相当なお人好しで困っている人がいたらそのままにしておけないのだろう。
自分の手の中から零れそうなくらいに責任をしょい込んで、他の誰かの手も借りて、それでも責任を果たす。事も無げにたまたまと言い切った時の笑みからは、俺なんかとは全然違う強さのようなものを感じた。
「強いなディアは」
「強くないさ、お前よりも後悔や手を伸ばせなかった時の辛さを知っているだけだ」
「・・・」
やっぱり、目の前で死んだ仲間とか助けられなかった人もいるのか、どこか遠くを見るようにディアは答えた。後悔や辛さは俺には分からないけれども、多分俺が感じている以上に辛い目にも遭ったんだろうな。
「済んだことや過ぎたことはどうにもならないからな、それは今に生かすだけだ。重たい話はここまでにして、今度は俺からキリトに訊きたいことがあるんだがいいか?」
「構わないけど、何だ?」
「この世界についていろいろと教えてほしくてな、エリスもベーターだが攻略よりも他人とパーティ組んで楽しむが中心であまり最前線にはいなかったらしい。上の階層の情報を知りたい」
「そうだな、10層までで気を付けるべきなのは・・・」
アスナが呼びに来るまで、上の階層で気を付ける敵や状態異常、おすすめのアイテムなどについてディアと話し、アスナが来てからは風呂に行ったディアと代わって、アスナと同じような話をした。
浴槽の湯は抜かれていたので入れなおして、そこに浸かる。
「やはり、風呂はいいな」
全身を浸す湯の温度が共に身体に染み込むとともに、それと入れ替わるように疲労感が抜けていくような錯覚すらしてくる。
流体モデルのシミュレーションもなかなかのもので、違和感を感じるほどのものでもない。
「明日、誰も死ななければいいのだがな・・・」
すくなくともエリスとノエル、付き合いのあるキリトとアスナ、今回のリーダーであるディアベルの5人だけは死なせるわけにはいかない。
ディアベルの人柄は今後の攻略を進めるうえでも、第一層のボス攻略を呼び掛け成し遂げたプレイヤーとしてシンボルになってもらう必要がある。そこに死者ゼロがつけば慎重派や今回参加しなかった有力なプレイヤーが参加するきっかけとしては十分だし、眠っている人材を呼び起こす呼び水になる。
彼を立てつつ如何に指揮をサポートするか、普段はその時々で各員の有効なスタンドプレーが合わさることで全体が高火力を叩き出すアークスのレイドとは違い、ゲームに慣れているとはいえ実際の戦闘では素人の集まりをどうするかというのが目下の悩みだ。
「結局は、いつも通りに状況判断か」
どうせ初見の相手である以上セオリーも何もあったものではないので、やれるだけやるしかないという或る意味でいつも通りの結論を出して風呂に浸かる。
ボス戦前夜は、こうして過ぎていった。
というわけでキリトとアスナのコンビ結成話になりました。
ここでアスナが丸くなってるので、攻略の鬼時代の話はやるにしても大分原作イメージからは離れた感じになるかな、といったところです。
それにしても、我ながら遅筆ですみません。
アークスとかハンターとか提督とか会社員とか色々兼業しているせいか、次話がいまいち纏まらない……
今後も、こんなグダグダとした進み方の話でよければお待ちいただければと思います。
ついでに
SAO知ってるけどPSO2知らない、若しくはその逆の方向けに解説付けようかと思う時があるのですが、どうでしょか?
独自解釈含みですが、この世界だとどうなってるの? 的な疑問もあるかと思いますし。
アリだと思う方は感想の方へ、全部かはわかりませんが質問あればネタバレにならない程度で解説・回答するかもしれません。