ちょいと風邪を拗らせて執筆の時間が取れずにいました。
読者の皆様にご迷惑おかけしないよう、体調管理にも気をつけねば。
それでは、お楽しみを。
キリトたちと別れて一層ダンジョンを入口へと進み、目当てとしていた部屋にたどり着く。
白く輝く何かを持った仮面のNPCが消えた部屋、アルゴから聞いた【変わったNPC】の情報の1つを元に着いた部屋は他とは違い、薄青に輝く水が幾つかの窪みに溜まっていた。
「情報が確かだとしても、やはり杞憂だったか」
多少は期待していただけに何も無いことに嘆息して部屋の奥に進んだとき、背後に懐かしくもある気配が唐突に現れた。
「……久しぶりだな、【
振り向かず、声をかける。
「これを持っていけ。私が10層でお前たちと相見えるまでには元の姿に……」
再び虚空へとアイツが消える気配を感じると共に振り返ると、純白の棒と僅かな闇の残滓が残されていた。
「クラリッサの柄か、ということはどこかにコイツの石突と先端があるはずだが」
あいにくと【仮面】の奴はヒントを残すこともできない状態、というよりもなぜここにいるかも不明。一応アイツが何らかの方法でエーテルに干渉して意識の一部を伝言のような形でよこした可能性もあるが、それならなぜこの場で言わないかという疑問も残る。
「ディアさん!」
背後からの女性の声に振り返ると、息を切らせてエリスとノエルの二人がこちらに向かってきていた。
「お前たちか、わざわざ追いかけてこなくとも用事は済んだからもう次の階層に行くぞ。他の連中は?」
「へ? えと、皆さんは既に次の階層に向かいました。キリトさんとアスナさんには私達が追いかけるので、ひとまず先に行くように伝えておきました」
「で、ディアはなんでわざわざダンジョンを逆走してこんな部屋に来たの?」
顔を近づけながら質問してきて来たノエルを後ろに下がらせてその質問に答える。
「それならば、コイツが目的だな」
右手に持ったクラリッサの柄を二人の前に差し出す。
これを含めて創世器を見慣れている俺にとっては存在感を放つ棒程度にしか見えないが、創世器を知らずコレが何かも知らない二人はそれを見て一瞬身を震わせ、俺に視線を向け直す。
「これ、何? ただの棒のはずなのに、よく分からないけど、凄く変な感じ」
「オブジェクト化されたアイテム、ですよね? ですが、存在感というか、ココにあるだけで息が詰まるようなこの感覚は」
「まぁ、あまり長く見るのも毒か」
クラリッサの柄をストレージに入れると、イベントアイテム専用の部分に収納され《白銀の破片/柄》というアイテム名が表示された。
「二人とも、大丈夫か?」
「はい、先程までの感覚はなくなりました」
「少し嫌な感覚は残ってるけど、大丈夫」
今後のためにも、少しだけ説明しておく方がいいか。
「さっきアイテム、この部屋の中で【仮面】、そういう名前の奴に渡されたものでな。10層クリアまでに元の姿に戻せというクエストらしい。で、さっきの破片の本来の名は《白錫クラリッサ》。PSO2内で創世器と呼ばれるロッド型武器全てのプロトタイプにして、六芒均衡の五、クラリスクレイスの名を継ぐ者が扱うものだ」
なお、当代のクラリスクレイスが使っているのはその劣化コピー《灰錫クラリッサⅡ》、マトイが使っているのはコレを基にしたシャオバージョンである《明錫クラリッサⅢ》。どちらもオリジナルが破格すぎるため性能は劣るものの、創世器に恥じない性能はある。
「えっと、クラリッサ?」
「PSO2はエスカOSに初期インストールされているMMORPGですよね。確かにSAO発売の少し後にVR対応が予定されていますが、なぜそこに出てくる武器がここに? 確かに六芒均衡という強力な味方NPCが使用している専用武器はまとめて創世器と呼称されていますが……」
マズいな、想定外にPSO2としてアークス内に来ていた連中はアークスの常識を知らないらしい。
怪しまれるか?
「コラボの一環ではないか? ゲームではよくあることだ」
「……そうかもしれませんが、デスゲームになってそれをやるとは」
「最初から実装されていたのでは?」
「そういうことに、しておきましょう」
イカンな、確実に怪しまれている。
第2層へと向かうディアさんの背中を見ながら、先程までの話を反芻する。
確かに、知名度的にもプレイヤー数的にもSAOがPSO2とコラボするのはおかしい話ではない。しかし、デスゲームの中でそのクエストが進行できるのは、この世界を【私の世界】と呼んだ萱場明彦のみ。彼がこの世界にそんな異物を許容するかと言われても、その可能性は低いように思える。
「ディアさん」
「……上で話そう。ここは、落ち着いて話ができる場所ではないしな」
「はい」
この人は、少なくとも誠実な人だと思う。私とノエルを放っておけずに一緒にここまで来てくれたし、ディアベルさんを命がけで助けに行くなんてこともした。それでも、どこかしら彼が私たちとは決定的にズレているところがある気がする。
命がけというのに最初から落ち着いていたし、普段の動きが余りにも戦闘慣れしている。それこそ、PSO2のアークスのように命がけの戦闘や宇宙の危機を日常的に過ごしてきたように。
「えいっ」
「ひゃっ!?」
腰のあたりに何かが当たる感覚がして、思わず変な声を上げてしまう。
「フフフ、イタズラ成功」
ニヤリという表現がまさに当てはまるような顔で、ノエルが笑っていた。
「ちょっ、ノエル!?」
「エリス、ずっと怖い顔してるよ。ディアさんが嘘ついたり騙したりしたわけじゃないし、上で説明するって言ってるんだから、それ聞いてから考えようよ?」
確かに、ノエルの言うことにも一理ある。少なくとも、ディアさんが私たちを騙したり何かをするつもりならとっくにそうしているだろう。
「そうですね、上で話を聞いてから考えましょう」
「ディアも、ちゃんと全部話してよねー!」
「分かっているさ」
私たち、どうなるのでしょうか?
先程までフロアボスと激戦を繰り広げた広間を抜け、その先にある巨大な扉と階段を抜けると目の前に広がるのは数々の岩山。今まで訪れた星で似ている場所を挙げるならばリリーパの砂岩地帯だが、そことは異なり豊富な水と緑にあふれている。
「テーブルマウンテンという奴か」
ナベリウスには似た場所もあるだろうが、アークスの活動範囲である【巨躯】が封印されていた大樹を中心にした領域では見覚えはない。
「絶景だねー」
「そうですね。βの時はこの景色が好きでよく訪れていました」
ノエルとエリスもこの光景には素直に感嘆したらしく、三人でこの光景を眺めながらゆっくりと主街区まで歩みを進める。
「よう!」
「三人とも遅いよ?」
主街区に入り転移門の場所をエリスに案内してもらうと、そこにはキリトとアスナの二人がいた。
「わざわざ待っていたのか?」
半分呆れ、半分驚きといった感じで二人に尋ねる。
「そんなところだな、まだパーティも組んだままだし」
言われて視線を左上に上げると、そこには自分の名前とHPバーの下に二人のそれが映っていた。
「そうか、そうだったな。……お前たち、この後時間をもらえるか?」
どうせなら、この二人にも話してしまおう。
俺が何者で、何のためにここにいるのか。
「この後は休むつもりだったし、問題ないさ」
「私も大丈夫。さすがにあそこまで戦った後だと、これ以上はね」
「少し、お前たち二人にも話したいことがある。そこの宿屋で話そう」
「別にいいけど、改まってどうした?」
「もしかして、大切な話?」
「そうだな、今後俺と付き合いを続けるかどうか、決めるためにも聞いてほしい」
ノエルとエリス、キリトとアスナを連れて宿屋に入る。
よほど聞き耳スキルとやらとあげていないと部屋内の話を聞かれることはないらしいので、ここでなら安心して話すことができる。
「ディアさん、先程の約束憶えていますよね」
「上で話そうと言ったからな、話すさ。だが、その前に一つ確認しておきたいことがある」
俺から確認したいことがあると聞いて、全員が表情を硬くする。
「《PSO2》とは、何だと思う?」
俺にとっては生まれ育ち、幾人と出会い、そして戦い続けてきた世界そのものだ。
しかし、単なるMMORPGの一種という前提があるコイツらはあの世界をどう考えているのか、俺自身のことについてどう話すかを決めるためにも聞いておきたかった。
「《ぴーえすおーつー》?」
「そっか、アスナはMMORPG自体が初めてだったな。ディア、俺から説明していいか?」
「構わん。むしろ、これから話す前提にもなるから今のうちに話しておいてくれ」
「お願いします、キリト先生」
「先生はよしてくれよ」
そういうわけでざっくりとキリトがMMORPGとしての《PSO2》を説明する。
俺の認識するそれをゲームの中と語られるのは少し不満だが、宇宙を旅する巨大船団《オラクル》の調査部隊《アークス》の一員として様々な惑星で戦ったり、様々なファッションを楽しんだりとSAO(このゲーム)のSF版というのざっくりとアスナに説明する。
「ま、ざっとこんなものだな。ゲームシステムは背景に無関係だから話してないけど、問題ないか?」
「十分だ。最低限、世界観が分かってくれればいい。そこで改めて、アスナ以外の3人に確認しよう」
まずはエリス。
「そうですね、キャラクタークリエイトの自由度やNPCとの自然なボイスチャットによる会話など、キャラクター面でのつくり込みの高さが異常なまでに素晴らしいゲームだと思います。その一方で、装備の特殊能力付与や潜在能力開放などシステムの説明が乏しいですし、レベルキャップ開放の手間などは少し面倒ですね」
特殊能力とか潜在開放はルーキーがつまずきやすい点として上層部も問題視していたな。
今は暇つぶしに50%の5S付くか遊ぶが、昔は堅実なのしかやらなかったし。
「了解した。次はノエルか?」
「うーん、キャラクターを細かく作り込めるし服とかアクセサリーもたくさん種類があるから、そこは好きかな。けど、装備が強いの作ろうとするとスゴク大変だから、そこはちょっと……」
懐かしい、サイキ36連とかやったな。
レッグだけやたらと出て、リアが全くでなかったのも今となってはいい思い出だが。
「装備関係はそうだな、俺もそう思う。慣れるまでは時間がかかったし、掘りに行くのが当たり前だからな。とりあえず、女性陣はキャラクターの自由度は評価するが、上位装備作りが難易度高いゲームという認識か。唯一の男性陣でゲーマーと噂のあるキリトはどうだ?」
今までの話を聞いていたキリトに振る。
「俺も似たような感じだな。けど、グラフィックと物理演算の凄さは正直言って異様だと思う。いくらクラウド型OSと回線速度が速いエーテルインフラとは言っても、ほとんどPCのスペックと無関係に描画機能を維持できるのは異常だ。まるで、何処か別の場所で巨大なスパコンでも使って再現した世界をこっちは眺めているみたいな」
「惜しい、VRのモデルを使って画面にそれを映しているという発想はいいが、どうせならもう一歩踏み込んで欲しかったな」
「は?」
まるで意味が全く分からないとでも言いたげな全員を見ながら告げる。
まるでこいつ等からすれば妄言にも等しい事実を、ココで知るだけでも現実に戻ってから後を引くであろうことを。
「あそこが、別宇宙の現実世界と考えたことはないか?」
「ちょ、ディアさん? 何を言っているのか」
「最後まで話してから、質問を訊こう。とりあえず、これから話すことは仮定、全部が前提になると思って話を聞いてほしい」
ざっくりとこの当時のアークス、のちに再誕の日と呼ばれたルーサー撃退以降について説明する。
ルーサーを撃退し【双子(ダブル)】と名乗るダークファルスが現れたこと、それに伴う組織改革が行われている最中など当時の情勢が中心だが、そこに加えて六芒均衡やマザーシップや出撃制限、ルーサーがいなくなりシオンからシャオに管理者が移行したことでその引継ぎが完了するまでの期間、船団防衛や採掘基地防衛を除くほとんどの出撃ができないことを伝える。
「こんなところか。おかげでアークスは組織としてガタガタ、部隊の再編成やルーサーの反乱に伴う人的・物的損失の補償や研究部門だった虚空機関代わりの新部署創設、戦闘班所属の俺に異動予定はないが文民方面は大分ごちゃごちゃしているらしい」
一番付き合いの深い管理官であるコフィーとチップ技術の技官も兼ねているセラフィ、当時というかこの頃は二人が一日おきに呑みに誘ってくるので辛かった。二人の仕事山積み・担当変更・アークスの窓口ということからストレスフルな職場だというのは分かるが、ルーサー仕留めたり、複製【敗者】を一日10近く仕留めねばならん俺の気持ちになって欲しかった。
「正直、信じてもらえるとは思ってないがこれが事実だ。さて、これを踏まえた上で質問があれば受け付けよう」
「それでは、遠慮なく。今の話、証拠はありますか?」
エリスからはまっとうな質問が飛んできた。
「その質問が一番の難問だな。俺は実際にオラクルのある宇宙とこっちの宇宙を行き来して双方が実在することを知っているが、お前たちがそれをSAO内で確認する術がない。だから、俺が話すことは前提、すべてが事実であるとしたうえで質問をして欲しかったんだが……」
やはり、それは難しいか。
「いえ、私が知りたかったのはそれに対してあなたがどんな答えをするかです。ここで適当な答えで証明しようとすれば嘘だという確率は上がりますが、証明できないというのは逆に真実です。もしあなたが本物のアークスでここにいるなら、それを証明できるのは自身の存在だけですから」
そこで一度言葉を区切り、エリスが続ける。
「むしろ、あなたの話し方や内容はそれが全部実際に体験してきたこととしか思えない話しぶりですし、今までのディアさんの態度や振る舞いを考えるとアークスとしての戦歴が強さや判断の源だと考えた方が自然です。少なくとも、ディアさんの話を信じる証拠の方が否定する証拠よりも個人的には勝っています」
自分の心情と論理で板挟みといったところか。
「じゃ私からの質問、ディアはクラスとレベルはいくつなの?」
ノエルからは暢気ともとれる質問が飛んできた。
この時期は……。
「ブレイバーで70レベル、武器はカタナがフィルフスイレンで弓がヒュリオロア。ちなみにユニットはビブラス一式だ」
防衛戦に何度も行けば自然と落ちるユニットと、当時最高レアリティの☆11の武器群。
OP付けで苦戦したが、ファーレン・ユニットが出るまではしばらく世話になっていた。
「ゴメン、全然分かんない」
「ノエル、一応補足するとユニットは準最高、武器は最高レアリティの武器。正直、普通のプレイヤーのプレイペースだと入手に時間がどれだけ掛かるか分からない」
キリトの説明通りアークスでも当時はコレが最高峰だった時期、その半年後に☆12や☆13が実装されて一気に装備改革やユニット変更が迫られるとは思っていいなかった。
「ということは、それを使ってる時点でPSO2を長時間遊べる、ディア的にはアークスとして活動してるってこと?」
「そうなるな。しかし、ノエルは俺が本物のアークスだと信じるのか?」
正直、ここまでスムーズに信じているような話をされるのも困る。理想的なのはPSO2がゲームではなく現実かもしれないと疑問に思いつつも、俺がアークス若しくはPSO2運営側と思われる事だったのだが。
「うん! ディアが今まで嘘ついたことないし、あんなに強いの普通の軍人じゃ考えられないけれど、アークスならありそう」
まっすぐな瞳が俺に向けられる。
そこにあるのは確信と俺のことを信じるという決意。
「まったく、大した子だよノエルは」
「へ?」
何故か無性にそうしたくなり、わしゃわしゃと頭を撫でる。
「ちょ、ディア、くすぐったいよ~」
「ウルサイ、ここまであっさり信じられる身にもなってみろ。こっちは嘘つき呼ばわりや付き合い無くす覚悟で話してるんだ、ちょっとは疑え」
「でも、全部本当なんでしょ?」
「話したことはだ、まだ話してないことや話せないこともあるから隠し事はしている」
時間遡行・マザークラスタ・アースガイド、俺の中の深遠なる闇etc、話すべきでないこともある。
「うん、それはそれでOK。アークスみたいな組織だと外に話せないこともいっぱいあるんでしょ、無理に話さなくていいよ」
撫でたせいで乱れた髪を整えてやりつつ、ノエルと会話を続ける。
「まったく、お前の純真さが怖い、そこまで信じられると逆に嘘を吐きたくない」
「うーん、だけど私もノエルちゃん同意見かな。ディアさんの話が全部アークスだっけ? としての体験なら私にいろいろ戦闘の心得教えることができたのとか、今まで妙だと思ってたことが、そういうのが本業だっていうことで納得できる部分もあるし」
アスナまで同意見か……、先入観がないというのはこういうことを言うのだろうか。
「ちなみに俺も同意見だぞディア。お前の言ってることは嘘じゃないと仮定した方がお前の今までの戦闘、VRゲームが初めてなのにモンスター相手で苦戦らしい苦戦してないことや動きの良さも納得できる。というか、お前の動きをよく思い出してみると全部フォトンアーツが基盤になってるし」
普段慣れた体の動かし方だから多用していたのだが、よく覚えているものだな。
「たしかに、フォトンアーツは実際に体を動かせない今の《PSO2》では再現できないが、モーションくらいなら見た目でどうにかなるだろう?」
「だとしても、見て覚えただけじゃあそこまでスムーズに繋げることや途中で別の動きに変化させることはできない。お前の戦闘スタイルが、俺にとっては一番の根拠だよ」
どうも、短い期間とはいえ嘘は言わずに誤魔化しもなく生きてきたことがプラスになったらしい。
すでに全員が俺のことをどうするかと待ち構えるかのような表情で眺めている。
「だったら、俺がここに来た目的もついでに話しておくか。端的にはスカウト、《PSO2》に地球からアクセスしている連中で信頼出そうな奴を見つけてアークスに引き込むのが目的だ」
ここまで来たら洗いざらい、俺が未来から来たことを除いて話すしかない。
「正直、地球からアクセスする目的も不明、調査なのか偶然なのかも不明な以上は少しでも地球側の協力者が欲しい。だからVRMMOであるココにログインして、予想された事件の中でプレイヤーと交流深めることによって協力者の候補を探せというのが上からの命令だ。上がこの事件のことを知っていたかはともかく、俺は知らずにここに放り込まれている。正直、俺個人にもアークスとしての活動に支障が出ている」
時間遡行していなければ、2年近くも今の状況で戦力を遊ばせておく理由もない。
この時期だとハルコタンの発見やナベリウス壊世区域の発現、【双子】の引き起こしたハルコタン動乱だってここから半年程度しか余裕がない。
『ご愁傷さまです……』
「ゴシュウショウサマデスの意味は分からんが、慰めというか憐れみというかそんな感じがする言葉だ。今度俺も使ってみるとしよう」
とりあえず、話しておきたいことは全部話したので、もう一つの本題について話を進める。
ストレージからアイテムを一つ、《白銀の破片/柄》をオブジェクト化してテーブルの上に置くと、澄んだ高い音と共に置かれたそれを見て、俺以外の全員が身体を強張らせる。
「これは、先程の破片ですよね」
「やっぱり、ちょっと怖い感じがする」
エリスとノエルの二人は二度目ということで多少は落ち着いているが、キリトとアスナ、特にアスナの方は少し顔が蒼くなるほどに何かを感じ取ったらしい。
「ディア、これは何だ?」
あまり長く出しても毒にしかならないと判断して、再びストレージに戻す。
一息ついたアスナの背中をキリトがさすり、アスナの顔色が良くなってきた頃合いを見てその質問に答える。
「俺がアークスだというのはさっき説明したな。これは、本物に酷似したデータで作られた《白錫クラリッサ》の破片、俺の知っているオリジナルをこの世界の中で可能な限り再現したものだ。【仮面】というNPCから受けたクエストに関わるもので、第10層までにこれを修復しろということらしい」
理由は分からないが【仮面】は確かにここにいて、俺にクラリッサの破片を託し、修復するように求めてきた。アイツは俺と異なる選択肢を選ぶことはあるが、基本的に無駄なことは可能な限り排除する性格。少なくとも、何らかの理由があってのことは確かだ。
「もしかして、あの【仮面】か!?」
「おそらく、ダークファルス【仮面】だろう。なぜアイツがこれを持ち出したのかは知らないが、一部がこちらに囚われ、その脱出のために何かしらの協力をしている可能性はある」
「敵のダークファルスが?」
「あくまでも可能性だ。もしかしたら、俺がこのゲームにログインしたことでフォトンが干渉して敵や一部のNPCのデータが記憶に上書きされた可能性もある。正直言って、なぜここにいるかは不明だ」
あの話しぶりだと確実に俺のいる時代から来た【仮面】の一部だろうが、今のアイツとは断言していないので嘘はついていない。それに、ココに干渉しているということは深遠の依り代となった本体ではなく俺と繋がりのある一部だ。
「訳が分からないな」
「安心しろ、俺も訳が分かっていない」
「ディアさんが分からない以上どうにもなりませんね」
「とりあえず、進めるしかない状態?」
「そうなるな」
とりあえずの懸案事項の共有はできたので、ここで解散として各々別に部屋を取って宿泊する。
キリトたちはもともとこの階層にある《体術》スキル取得のクエストを受ける予定だったらしいが、どうせならということで俺たちも一緒に行くことになり明日に延期。
申し訳ない思いをしつつ、この日は寝床に入った。
というわけで第8話は説明化になってしまいました。
以下この作品におけるPSO2の設定
・NPCとの会話はボイスチャット
VR技術の応用でヘッドセットに実際の発声を伴わないボイスチャット機能が可能なのでそれをセットで使うことが前提だが、携帯機でも遊ぶことができる。
・本体の性能に非依存
作中で説明した通り、リアルタイムで中継される動画のようなものなのでクライアント側で処理するデータ量が非常に少なく、本体の性能に関係なく一定の画質で遊べる。
・シップ配置がランダム
偽装アークスのデータ数=アカウント数なので、どのシップになるかは分からない。
マザークラスタは基本的にShip7ギョーフだが、アークスとしてシップ間移動をすれば後でいくらでも別のシップに行ける。
ついでにちょいとSAO側の時間が後ろにズレています。
計算し直したら、PSO2側の時間に合わせるとSAOの時系列そのままだとSAO事件から1年近く間が空いてしまうので、ストーリー進行に支障が出そうなための措置です。
……最近感想が無くて寂しい作者なので、感想ください。