PSO2×SAO VR世界に入り込んだ守護輝士   作:のーん

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前回から大体2週間、これくらいのペースで投稿していきたいと思いつつ、1週間で書いてる他の書き手さんを尊敬する日々。


とりあえず第9話、始まります。


第9話 たまには違うクラスっぽいことも

コンコン

「誰だ?」

時刻を確認すると22:45、寝るには少し遅いくらいだが人を訪ねるにはだいぶ遅い。

「ディア、ノエルだけど入っても良いかな?」

断る理由も無いのでドアを開ける。

「いいぞ。ただ、あまり遅くならない程度にな」

「はーい」

システム上は廊下の音は他の部屋に漏れることはないが、もしかしてがないとは言えないので小声で話す。

 

先程までとは異なり、真面目な話をするわけでも無さそうなのでベッドに腰掛けるとノエルが隣に座ってきた。

「それで、何のようだ?」

わざわざ夜中に一人で来る理由が分からずに尋ねる。

「えっとね、その、何で私の事をあの時助けてくれたのかなって思って。改めて教えて欲しいの」

始まりの街で二人を拾ったときのことか。

「あそこで放っておけなかっただけだ。どの道この世界に囚われている限りは誰かと繋がりを持つのは避けられないし、弱味につけんだと思われるのを承知で言うと、タイミングが良かった」

「タイミング?」

下から覗き込むようにノエルがこちらの顔を見る。

コイツは自分が割りと可愛いのに無自覚だと思いつつ、正直な理由を話す。

「あの時、実はキリトと合流する途中でお前達を見つけたんだ。で、ちょうど同行者が欲しかったし、広場の喧騒から離れてて話もできたしということで声をかけた。キリトとは合流出来なかったが、あの時二人を拾えたは運が良かった」

「あー、確かのあのタイミングで助けるって言われたら手を取っちゃうよね。で、拾ったあとは?」

「鍛えつつ攻略に参加。一人よりも人数多いほうが参加しやすいからな。それに、独りは寂しいからな」

正直、一人でいつまでもと言うのは心が持たない。何処かでチームや固定パーティを組むつもりではいたから、早目にそれができたのはありがたい。

「ディアって、意外に寂しがりやなんだね」

驚いたような顔でノエルが言う。

「知り合いのいない世界だからな。VRMMO自体が始めてで人付き合いもないし、孤独に独りで生きるのは辛い」

「そっか、本当に独りだもんね。うーん、それなら私と友達になる?」

「ん?」

「ほら、今までは助けてもらう側と助ける側でしょ? 今更かもしれないけれど、これからは友達として一緒にいたいな、なんて」

「そうだな、悪くはないかもしれん」

答えを待たず、ノエルが俺の手を取る。

「それじゃ、今後は友達としてよろしくね、ディア」

「分かった。よろしくな、ノエル」

 

「うん、ってゴメン! 勝手に手を握ってびっくりさせたよね!?」

本人も無意識に手を握っていたらしく、一段落ついた時点で勝手に手を握ったことに赤面して謝罪した。

流石に、異性の手を握るのは恥じらいがあるらしい。

「いや、気にしていないから心配するな」

「そう? 勝手に触ってビックリしたかなと思って、ちょっと心配しちゃった」

ホッと胸を撫で下ろすノエルを見て、思わず笑みを浮かべてしまう。

「なぁ、ノエル。俺の手を触って、どんな感じだったか教えてもらえるか?」

「え? 触った感じって言われても、そんな変な感じはしなかったよ。温かくて、ちょっと筋肉質で、大きいなってくらいの普通の手」

「そうか温かいか、なるほどな、この身体だとそうなるのか」

「どうしたの? ちょっと変だよ?」

「普段は温かいなどとは言われないからな、少し嬉しかっただけだ」

予想外らしく、キョトンとした顔でノエルが言う。

「言われないって、他人に触ったり触られたりとかないってこと?」

「違うよ。俺はキャストでほとんどの場合はヒト型じゃなくてキャスト型、つまりパーツ主体で構成した姿をしていたから殆どが金属かシリコンみたいな素材の身体だ。だから、人に触られてもあまり温かいと言われないし、極端な時だと熱い・冷たい時もある」

「そっか、人の体で温かいって言われるのはほとんど経験ないんだ」

ヒトの体といっても生身というよりは疑似的な皮膚と熱素子を埋め込んだもの、ほぼ有機体で生成されたハイキャスト態も完全には生身とは言い切れない。皮肉なことに、キャストである俺は仮想世界であるこの現実で初めて生身で他人と触れ合うという経験をしていた。

「そうだな、生身の体になってまだ10日程、ある意味ではお前以上に幼いな」

「うわー、弟分ーというか或る意味っていうのが普段のディアっぽい」

「ククク、ノエル姉さんとでも呼んでやろうか?」

「やめて! 怖いから!  むしろ姉が妹になるから!」

本気で嫌らしく、両手で右手をつかんで懇願される。

やはり、コイツはおもろい奴だ。

「さて、最後にもう一つお前を道連れにした理由を教えてやるから寝ろ」

「そう言えば、理由教えてもらいに来たんだっけ、私」

(忘れてたのかい!)

心の中で盛大に突っ込みながら空いている左手で頭を撫でてやる。

「そういうところだよ。お前といると退屈しないと思ってな、実際その通りになったから俺の読みは当たっていたわけだ」

「なら、よかったのかな。私もディアと一緒にいて色々教えてもらって嬉しいし、強くなってるのが分かるから。だから、いつかはディアの後ろじゃなくて、せめて隣で戦いたいな」

無理して前に出る必要はないし別に後ろにいるという風には思っていないのだが、互いの考え方や気持ちの違いということにしておく。

「ま、適当に期待しておこう」

「うん、期待してて」

気になることが済んだころには23:30、一気に眠気が来たノエルを部屋に送り届けてから俺も寝床に入る。

「本当に、面白い奴だ」

 

 

翌日、キリトを先頭に5人で主街区を出るディア達の姿があった。

「それで、どこに行くつもりなんだ」

キリト曰く、道中で説明するということで何の説明も受けずに朝から移動していたのだ。

「これから先のことを考えたときに取得しておきたいエクストラスキルがこのフロアにあるんだよ。それを攻略を進める前に取得できれば、というわけだ」

「ふーん、キリト君がわざわざ取得したがるってことは便利なスキルっぽいわね」

「アスナさんの言う通り、期待大だね、これは」

盛り上がる二人を見ながら、エリスとディアは周囲を警戒していた。

「一撃死はないだろうが、少しは警戒してほしいものだな」

「その通りですけど、全員《索敵》スキルは憶えていますし、この平原で敵に不意打ちされるリスクは低いので気にしすぎもよくないですよ? 私たちで周囲の警戒をすると言った手前もありますし」

「その通りだな。しかし、うちのナビゲーターはこの階層で取得できるスキルの情報は知らないのか?」

ベーターでもあり、ナビゲーターを自称するエリスにディアが問いかける。

「恐らくですけど、《体術》スキルだと思うんですよね」

「《体術》、ということは移動補助のようなものか?」

ディアのイメージする体術は俗にいうアクロバット、現実ならまず不可能な跳躍や壁面走りなどだった。アークスでもちょっとした程度なら、アクセサリのブースタ系を組み合わせればもう少し動ける者がいる。しかし、自由自在に近い動きはFiやBoのように特化したクラスでもなければできない。

「いえ、どちらかというと《徒手格闘》、素手で戦うためのスキルといったところですね。階層が上がると武器を《盗ん》だり《叩き落す》スキルを使うモンスターも出てくるので、とっさに使える攻撃手段として有用です」

「ということはFiのナックルやBoのジェットブーツに近いものか。あれらも拳や脚を使って物理攻撃を繰り出す」

厳密にはジェットブーツは派生するテクニックや多彩な属性こそが真骨頂だが、ココでは省略する。

「そうですね、手足を使って敵を攻撃するという意味ではその二つに近い部分があるかもしれません。それにしても、っ!」

エリスが気付くと同時にすでに腰の《ヴィタシミター》をいつでも抜ける構えで周囲を目視警戒する。

「この感じ《索敵》の感あり、それと街の方から誰か来ているな」

「そこまで分かりませんけど、何かが《索敵》スキルに引っかかったのは確かです」

人の気配、おそらくは2以上が距離を取ってこちらに接近する気配、それに加えて別のナニかがこの周辺にいる。

明確にどこかに存在していればその気配や存在感を感じ取って場所や大まかな人数を読み取れるが、突如としてポップするエネミーはその限りではない。《索敵》スキルと気配察知の技能は組み合わせなければこの世界では生きていけないことは早くに理解している。

「どうした?」

戦闘態勢を取った俺とエリスに気づいたキリトが声をかけてくる

「近くにモンスターがいるのと、街から誰かが来てるな」

「それって、あとをつけられてたってこと?」

「いや、それならここで急に近づいてくる理由がない」

アスナの質問を否定して遠くを見やる。

「それにしても、よく街から誰か来てるの気付いたね」

周囲をキリトとアスナに任せて街の方角を凝視しているとノエルが声をかけてきた。

「気配のような感じだな、人が動けば必ず何かしらの現象が生じる。それを察知できれば大まかに人がいるか、どういう状態か分かる」

もっとも、この世界では現実ほど空間を構成する要素が濃くはないから、ハッキリ伝わるわけではないというのを付け加える。

「……ディアのそーいうところ、チートだよね」

「チートというか現実引継ぎだな。来たぞ」

遠くに土煙を上げながら走ってくる姿が見えるが、アイツは……

「アルゴさん!?」

「だな」

激走してくるフードと金髪、それに髭状のメイクをした姿は間違いなくアルゴに違いない。

「その後ろに二人か、追いかけられているようだな」

「それって、大変なんじゃ!?」

アスナが血相を変えて声を上げる。

もっとも、危害を加えられていない限りはこちらも犯罪者である《オレンジ》になるため迂闊に手を出すこともできない。

「というか皆さん、もうすぐかち合いますよ!」

「とりあえず、事情」

を訊くか、と言い切る前にアルゴは俺たちの元に辿り着き、素早くキリトの背中に隠れる。

そして、それに数秒遅れて追いかけて来たらしい、青の布系中心装備で頭巾をかぶった二人組がいきなり大声で叫ぶ。

「貴様ら!そいつを庇い立てするとは何者でござる!」

「もしや、他藩の透波か!?」

えーと、アレだ、確かハルコタンが見つかったころにこんな感じで話す連中を見たような。

「ナンデ ニンジャ?」

「アイエー とでも言った方がよかったかも?」

隣のノエルが訳の分からないことを言ってるが、地球ではニンジャ好きに対するテンプレ応答でもあるのだろうか?

「えっと、えーっと、確かフーガじゃなくて、フードじゃなくて、えーっと」

「この忍者っぽい服装としゃべり方でフー、ええっと、確かそんなギルドが在ったような」

隣のベーターテスター二名、実戦担当とナビゲーション担当は何かを思い出そうとしている。どうも、この二人の所属に心当たりがあるらしい。

「フウマでござる!」

ござる?

「ギルド《風魔忍軍》のコタローとイスケとは拙者たちのことでござる!!」

「それだ!」

「それです!」

思い出せた快感で思わず、といった具合にキリトは指鳴らしを、エリスは手を叩く。

「どうでもいいが、さすがに知り合いが追いかけられるのを見過ごすわけにはいかないな」

「どうでもいいとは貴様、我らを愚弄するつもりか!」

ウルサイ二人組だなー、と思いつつチラリと連中の後ろを見たときに索敵スキルが警報を鳴らす。

「っと、今度は別のお客さんか」

「お前たち、後ろ!」

のそり、とでもいわんばかりに岩陰から巨大な牛が現れる。

さすがに索敵スキルに何かが引っかかって時間がたてばエネミーも出てくるが、俺とキリトの声を聞いても目前のニンジャ二人は気付いていない。

「そんな手は……」

「食わないでござる・・・・・・・」

と言いつつもこちらにいる全員が武器を抜いて自分たちとは別の存在を見ていることに気づいて、後ろを見る。

現れた巨大牛のエネミー名は《トレンブリング・オックス》、慄く猛牛といったところか。

「ブモォーーーー!」

突進の予兆なのか、大きく吠えてその場の地面を脚で掻き始める。

「「ごっ、ござるーーーーーーー!?」」

「そんな風に叫んだら」

いちおう、心配してのアドバイスを言おうとしたところでニンジャ二人は真っ直ぐそのまま主街区へとダッシュで逃げだした。案の定、牛は一番目立った行動をしたニンジャたちを追いかける。

「そうなると警告したかったんだが、逃げ切れそうだな」

「あいつらのギルド、AGI特化壁っていう回避主体の壁なんだけどな、危なくなるとヘイト押し付けて逃げるっていうのでβ時代有名だったんだよ」

ふむ、とエリスに初日注意されたマナーについて思い出す。

「それはマナー違反ではないか?」

「そっ、だからあいつ等は嫌われてたんだよ。で、アルゴ……」

言葉に詰まったキリトをいぶかしむと、アルゴが離れて出てきた。

「さんきゅーな、キー坊、ディーさん」

少し鼻がかった声と間延びした喋り方が特徴のアルゴだが、さすがに普段の暢気さまで取り戻す余裕はなかったらしく安堵の表情を浮かべていた。

「はぁー、お前にはいつも世話になってるからな」

「この前のクエストの礼がまだだったし、タイミングは良かった」

ついで、ということでアルゴに確認してみる。

「で、それと話は変わるのだが《体術》スキルに心当たりはないか?」

ピクリと、僅かにだがアルゴの顔が動く。

ナーヴギアを通したそれは意識的でないもの動作まで再現して、ある程度感情に沿った過剰表現をしてくれる。つまり、この情報屋は《体術》に何かしらの反応をしたことになる。

「知ってるみたいだな」

「知ってるも何も、さっき追いかけられていたのはそのせいサ」

嘆息したアルゴをねぎらってやりたいが、何もないのでそのまま聞き流す。

「エリスに訊いたところ徒手格闘スキルのようなんだが、詳しい情報を買えるか?」

「んー、その情報なんだけどナ、俺っちとしてはあんまり売りたくないんだヨ」

この情報屋にしては珍しく売りたくないと来た、基本的にはあらゆる情報に価値を付けて売買することをモットーにしているのに。

「訳アリの情報か」

「訳アリっていうか、最悪俺っちが恨まれるんだヨ」

情報を売った人間が嘘を言ったわけではないのに恨まれるとは、酷い話だ。

「別に恨んだりしないからさ、《体術》スキルの受注できる場所教えてくれよ」

ちょっと待て、何故キリトがその情報を欲しがる。俺たちはそのスキルを習得するため、お前についてきたんだが。

「イヤー、βの時に第2層の西で《体術》スキルが取得できるって聞いて、そっちの方に行けばなんか手掛かりがあるかなと思ってたところでさ。頼むよ」

さすがにキリトも気まずかったらしく、苦笑いしながらアルゴに情報を求める。

「あー、だから2層に上がって早々に行こうとしたわけですね」

「探すのに時間がかかる前提だったのね」

苦笑するエリスとあきれたアスナを横目にアルゴに視線を戻すと、さすがに苦笑いしていた。

「しゃーないか、キー坊だから特別だヨ? 案内してやるカラ、ついてきナ。お代の方はさっき助けてくれた分と相殺で貸し借りなしだからナ」

「助かる!」

 

そういうわけで、アルゴを先頭に第2層を西に進む。

途中で出てきた《トレンブリング・オックス》に対してはAGIの高いアルゴとノエルが突進を別方向に誘導、振り向きや突進後の隙に残る全員がソードスキルを撃ち込むことで一気に倒して進んでいく間に全員が1~2レベル程あげ、アルゴの言う目的地である山の麓に到着した。

「ふぅー、さすがにここまで歩き通しだとキツイな」

「ここから先は山道と洞窟だかラ、もっときついゾ」

「私、ちょっと休みたいかも」

「そうだな、道が険しくなるなら少し休んでもいいだろう」

というわけでノエルの提案で小休止、30分程度休んだところで再び山を目指したのだが、道を塞ぐようなフィールドボスらしき大型エネミーとの戦闘を余儀なくされた。

エネミー名は《Demolisher the ferocious bull》、打ち崩す猛牛の通りにトレンブリング・オックスを二回りほど大型化させ体色も赤っぽく変化した姿をしている。ボスらしくHPバーも2段でそこそこの強敵らしい。

「さーてと、やりますか!」

「ノエル、アルゴ、突進誘えるか?」

キリトが気合を入れ、俺がノエルとアルゴにトレンブル・オックスと同様の手でも問題ないか確認を取る。

「私は大丈夫、レベル差的にも3発までなら武器防御でオレンジまで耐えられるそう」

「俺っちは無理そうだナ、一発でオレンジになりそうダ」

さすがに前線で殴ることまで情報屋に求めるのは酷か、そうなると囮を出来そうなのは俺かアスナか。追撃が得意なのは突進系ソードスキルの豊富な《細剣》の方だからアスナはアタッカーに回したい。

「アスナ、俺とノエルが突進を誘うから追いかけてソードスキルを頼む。キリトとエリスはそれの硬直を突いて攻撃を、アルゴは周囲の警戒頼む」

異議もないのでその役割で戦闘開始。

「ブモォッー!」

「セイッ」

「イヨッ!」

とりあえずは様子見も兼ねて俺とノエルが左右に分かれて突進を誘う。

予想通りに突進の予備動作中に攻撃を加えた俺とノエルのうち、俺の方に突進が向かってくる。

ステップ回避しながらすれ違いざまの一撃を加えようとすると、予想よりも近くによって来た。

「っと、曲がるか」

土煙を上げながら突進してきたフェロシウス・ブルは緩やかなカーブを描いて回避した方向に曲がり、俺に近づくような軌道を取る。

すれ違いざまの一撃を入れるには少し気付くのが遅かったので回避に専念、ステップからの前転で軌道から逃げ切る。

「ディア、大丈夫!?」

「問題ない、無理にカウンターを狙わなければ回避は楽だから俺達は追撃に専念するぞ」

「オッケー!」

追いかけたアスナがリニアーを撃ち込み、その隙をカバーするようにエリスとキリトが強攻撃、さらに俺はリーパー、ノエルがフェイタル・スラストを撃ち込むとこちらを振り向いて再び突進の予備動作に入る。

ここまでで大よそHPバーの1段目1/3ほどが削られる

「ディア、ノエル、ヘイト頼むぞ」

「任せて!」

「了解」

その声に合わせてキリト達3人が武器を収めて後退し、俺とノエルが弱攻撃を連打する。

あくまでもヘイトを稼ぐためなので、すぐに離脱できるように斬りながらもフェロシウス・ブルの方を見ておく。

「ノエル、離れるぞ」

「はいはーい」

そろそろ頃合いと見てバックステップで離れると、今度はノエルの方を向いてひと際強く地面をける予備動作を見せた。

「私だ!」

少し慌てたようなノエルだが、しっかりと相手の軌道を見切って回避するとともに俺の曲刀よりも長い片手槍のリーチを生かしてすれ違いざまの一撃を撃ち込む。

「セェイッ!」

突進してきたフェロシウス・ブルと思い切り振りぬいた槍の穂先の勢いが合わさったことで横一文字の赤いライトエフェクトを深々と刻み、HPバーを一気に削る。カウンターで強力な一撃を喰らったフェロシウス・ブルはその痛みに耐えかねたかのように突進を終えることなく転倒し、その場で悶える。

「グッジョブ!」

キリトがノエルのカウンターを褒めながら縦斬り二連撃ソードスキル《バーチカル・アーク》を繰り出し、反撃がないことで攻撃に加わったアルゴが突き単発の重撃《アーマー・ピアス》を放つ。

それに続いてエリスの横斬り二連撃《ホライゾンタル・アーク》、アスナの上下二連撃《パラレル・スティング》、俺の回転斬り三連撃《トレブル・サイズ》、最後にノエルの回転斬り三連と突き一発の四連撃《ヘリカル・トワイス》と現時点で各々が習得している最大威力のソードスキルを連撃で打ち込む。この連撃で一気にHPバーを2段目の2/3程まで減らすと、フェロシウス・ブルの全身から熱気が立ち込める。

「ちょ、熱いんだけど!?」

ヤバい気配がするので離れるように言おうとしたが、ノエルの言葉通りに異様な熱さで俺も含めた全員が距離を取っていた。

「ブモ゛ォーフッ!!」

ひと際野太く大きな鳴き声と共に全身から熱気を振りまきながらフェロシウス・ブルがその場で角を振りかざしながら暴れだす。

「キャアッ!」

「ノエル!」

ヘイトがカウンターと最後の攻撃を決めたノエルに集中し、そちらを向いて何度も角を振り回す。

逃げようにも狭い山道ではよほどタイミングが良くないと左右を抜けることは難しい。

キリト達と共にヘイトをこちら側に向かせようと何度も攻撃するが、その場で角を振りかざすように暴れるせいで思うようにノエルとの距離を話すことができない。

「クソッ」

パーティメンバーのHPバー表示を見るとノエルのそれは少しずつ減少していく。

ノエルの装備的にすぐにどうにかなることはないだろうが、武器耐久値が0になれば一気にHPを削られる可能性もある以上、可能な限り短時間でこの状況をどうにかしたい。

「どうにか、なれよ」

「ディアさん!?」

一度攻撃の手を止めて周囲を見回す。

何をしているのか驚いているエリスを尻目に使えそうなものを探すと、いくつかの岩と木が配置されており、どうにかなりそうだ。

「少し、賭けてみるか」

ダッシュパネルを踏んだ時のように思い切り走りだす。

そして、岩から岩、木の幹を蹴って最後にフェロシウス・ブルの背中目掛けて飛び掛かると同時に、シンフォニックドライブを空中発動する要領で《ヴィタシミター》を逆手で抜きながら蹴りから回転斬り、さらに蹴りで一気に飛び越えてノエルとの間に割って入る。

「Fiはあまりやらんのだが、存外上手くいったものだな」

「ディア、助けに来てくれたんだ」

正面で暴れるフェロシウス・ブルの角を受け流しながら、想定以上に上手く割り込めたことの感想が漏れる。

「さてと、ノエル」

「うん」

少し暗い顔をしているが、生憎とそこをサポートする余裕がない。

カウンターエッジが使えればそれでこの攻撃を凌ぎながら反撃をすることもできるが、相変わらずの無いものねだりに過ぎない。

「攻撃は俺が凌ぐからカウンターで頭を突いてやれ。右か左のどちらかでも構わん、いけると思ったら全力でいけ」

武器防御スキルとBrで培ったジャストガードの経験で大分ダメージは軽減され、HPバーと武器耐久値の減少速度から見るとこのままで5分程度は保つ。

「って、それディアの負担が」

「大きいが、生憎と俺の武器はお前の武器ほどリーチが長くない。それに心配するなら早く済ませてくれ」

キリト達3人も攻撃をしているが暴れていてまともに直撃させることができる数が少ない。

やはり、頭の方がダメージは大きいらしい。

「頼むぞ!」

「オッケー、やるよ!」

一度頬でも叩いて気合を入れたのか、軽い破裂音がしてノエルが俺の左後ろに立って槍を構える。

キンッ、と今までよりも強くカウンターを角に当てると一瞬だが頭の動きが止まる。

「テイッ!」

そこにノエルの槍が突き立てられるが、少しタイミングがずれて暴れだした頭を掠めるような一撃になる。

「気にするな、手を止めずに突き続ければダメージ自体は稼げる」

「よし、ディアに楽させるためにも早く終わらせないと」

再び頭の動きを止めると今度は直撃する、次は当たったもののタイミングが遅く突き切る前に頭が動く。そうして回数を重ねると残りが2段目の1/3程のところでは直撃以外が5発中1発程度までなり、ようやくノエルがタイミングを掴めてきたところで熱気が収まり大人しくなった。

「よし、離脱するぞ」

「うん、回復しないと危ないね」

一度距離を取って回復ポーションを一気にあおる。

少し苦みのある甘酸っぱい液体を飲み干すとHPバーが少しずつ回復し、フェロシウス・ブルのHPが残りわずかなところで再び攻撃に参加する。

「これで、決まれよ!」

そうして最後に思い切り上段からの斬り下ろしを加えると、残りHPが一気に削られてポリゴン片へと還元される。

「ふう、どうにかなったか」

「ディア、助けに来てくれてありがとね」

心配した顔でノエルが礼を言ってくる。

「気にするな、ああなるのは誰も予想出来てなかったし、お前は良く凌いでいたよ」

「今度はああなってもどうにか出来るようにならないと」

深刻そうな顔をしたノエルの頭に手を置きながら少しだけ注意しておく。

「それも大事だが、誰かに頼ることも忘れるなよ? 今回だってそこまで無理なことをしたわけでもない、俺やお前一人で出来ることなど高が知れている」

そうしていると、後ろからエリスが声をかけてきた。

「お二人ともお疲れ様でした。ディアさんの行動にはちょっと驚きましたが、ノエルのことを心配しての行動でしたし、あのままでも持ち堪えられたとは思いましたが、結果としては短時間で済んだのでオーライとしましょう」

「あんまり時間をかけすぎると武器破損のリスクもあったからな、ディアの判断も間違ってるわけじゃないし」

エリスとキリトからもあのままでもノエルが持ち堪えられたことと、その場合のリスクが示される。

「ノエルちゃん、ディアさん、二人とも大丈夫みたいだけど、今度からは私たちもすぐにサポート入るから無理しないでね」

「はーい」

「了解した」

アスナに心配と軽めの説教をされたところで、ドロップアイテム等を確認するためにログウィンドウを見ると《You got the Last Attack!!》の表示とともに《ダルム・アーマー》という装備品が表示されていた。

「LAボーナスか」

「おー、ディア一杯頑張ってたからご褒美だね!」

目を輝かせるノエルにこたえるために、装備欄を操作して《ダルム・アーマー》を装備する。

蒼の布地に黄の縁取りがされた布主体の胴防具で前掛けと腰布が一体になり、肩と腰には初期セットされたプレートが追加されている。

プレートの方は後で上位のものに交換したい性能だが、アーマーそのものの性能は初期防具を最大強化した従来品をはるかに上回るもので、キリトの《コート・オブ・ミッドナイト》と比べれば劣るものの、現時点では確実に上位の装備だった。

「軽いがいい防具だな」

「ディアさん、蒼の防具似合いますね」

「そうだな、俺のと違って一色じゃないし」

そう言えば、今のキリトは黒のパンツにシャツ、さらに真っ黒なコートと黒一色であり、俺と違って挿し色がない。

「そこは、後々どうにかしていくしかないだろう」

「強化の時に灰とかでいいから色入れるか」

「黒一色だと地味すぎるもんね」

「うぐっ」

アスナの一言が突き刺さったらしく、キリトが妙な声を上げる。

そうしているとアルゴが俺に声をかけてきた。

「ディーさん、その装備の情報700コルくらいで売ってくれないカ? さっきのがリスポーンするなら、情報欲しがる連中もいるだろうシ」

「あぁ、構わない」

大雑把に装備ステータスを教えて対価のコルを受け取ると、本来の目的地に向かって歩き出す。

「毎度アリー。βじゃいなかったボスだったから一度に来た人数に関係してるかもしれないけド、いい装備の情報は高く売れるからナ。いい情報が手に入ったヨ」

愉快そうなアルゴを先頭にして山道を進んでいく。

どうにも、体術スキルのクエスト受注場所までは遠そうだ。

 




戦闘描写もちょこちょこ入れつつの第9話、誤字脱字等ありましたらご報告願えると幸いです。

SAOEW終わっちゃった、今後の話のタネをイッパイもらえたソシャゲだったから寂しいな。
UW編のアニメやるときにまた新しいの始まるんだろうと予想したいこの頃です。
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