「全然寝れなかった…ねっむ…」
あれから一睡も出来ずに朝を迎えた。こんな日に限って天気は快晴でなんだか嫌になる。
携帯を見ると、綾からの連絡が入っていた。
『私が言った事、気にしないでね!明日からもいつも通りにね!』
…気にしないでって。出来るわけないじゃん。
いつも通り?いやいや無理でしょ…
そんな事を思っていた私はどこへ行ったのか。綾といつも通り登校して談笑している。
え?え?なにこれ?何も昨日までと変わらないよ?昨日のは夢?んなわけ。
あんな事があっても変わらない日常。世界は意外と平穏を望むのか…。
こうなったら私から切り出す。
「綾。昨日のは、その~、本気なの?」
さっきまで笑いながらずっと話をしていた綾は笑顔のまま固まる。ちょっと面白い。
…と思ったのも一瞬。睨み付けてきた。
「それ今話さなきゃいけない事なの?」
綾は本当に声色が変わる。普段穏やかな分、重みが違う。私は少し動揺した。
余計な詮索は綾が一番嫌う事。分かってて私はそれをした。
こんな風に綾を試す私も好きと言えるのか____。
綾にとって居心地の良い…都合の良い人間だから、好きと錯覚したんじゃないのか。
きっと私はそうであって欲しいんだと思う。
綾が私を、同性を好きになるなんてあまり受け入れたくないから。
_____________
今日はずっと綾の機嫌が悪い。明らかに朝の私の一言からずっと。
昨日告白した相手に対してこんなにも冷たく接するのはあり得る事なんだろうか…。
そんな事はどうでも良いや。私は綾に目を覚ましてもらいたいんだ。
もし仮に私の事が本当に好きだとしたらそれはきっと間違っているから…。
「綾。聞いて。」
「な、なに、急に…」
詮索されるのが嫌ならこちらの気持ちをぶつけてしまえばいいんだ。
「私は友達として綾の事が好きだよ。一緒に居て落ち着くし楽しいし。
だからこそちゃんとした恋愛をして幸せになって欲しいの。
今周りに良い人が居ないから私を好きって錯覚しただけで、きっと、ちが、う、はず。」
ぐすぐす、と泣いてる音。綾は泣いている。私は今、綾を振ったのだから。
「だからね、綾は、もっと違、う人と…。
私なんか、じゃ、なくて…。」
違う。違う違う。泣いているのは綾じゃない。
私だ。
「なんで絵美が泣いてるの…」
それは私が知りたいよ…。困った顔した綾が涙で上手く見えない。
頬が熱い。昨日綾を想って熱くなった肌と同じ熱さ。熱い、熱いよ。
涙が止まらない。なんで。
私は綾の事を好きなわけではないのに。
綾の事を好きなわけじゃない。本当に?
また頭の中でぐるぐると回る。綾との思い出までぐるぐる巡る。
綾が、私を好きとか言うからおかしくなっちゃったじゃない…。
違う。違う違う。
綾が私の事を好きという事実を認められないのではなく、
私が綾の事を好きという事実を認められなかったんだ。
いつの間にかこんなに好きになっていたんだ。
この熱が教えている…。目の前に居るのに、切ない。言葉にならない。涙が溢れていく。
「ごめんね、絵美。絵美の気持ちは分かったよ…。」
頭を撫でてくれるその手に安心した。
この感情を認めても良いのだと教えてくれるようで、あたたかい。
「優しく振ってくれてありがとう。気持ち伝えられただけでも良かった。
これで区切りが付けられるよ。優しくて大好きだよ、大好きだったよ、絵美。
ありがとう。もう、絵美には甘えないよ。さよなら___。」
何が起きたか分からなかった。
言葉も出てこなかった。顔も見れなかった。
追いかけようとしても、足が動かない。
手を伸ばしても届かない。届かない…。
涙だけが溢れていく。
頭の中で理解しても、言葉にしていなかった。伝わってない。伝わるわけない。
その場にうずくまるしか出来なかった。