戦闘シーンはありませんし、特に事件らしいことも起きません。
第8話以降の内容と矛盾する可能性は大いにあります。
バラアマゾン討伐後、シグマタイプアマゾン・イユの駆除に乗り出した旧駆除班だったが、かつての仲間・福田の妨害に遭う。志藤が経営するクラブに戻った旧駆除班メンバーの心中や如何に……
「まさか、フクさんと対立することになるなんてねぇ」
三崎一也はソファーに座り込むなり、声を漏らした。
軽い口調とは裏腹に、彼の表情には暗い影が差している。
三崎の他にこのクラブにいるのは、志藤真、高井望、水澤悠の3人だけだ。
「どうして……フクさんだって、ウチらと同じ気持ちのはずなのに……!」
望はどこか苦しそうに言うと、カウンター席に座り込み、顔を下に向けた。
誰も互いの顔を見ようとしない。別に気を遣っている訳ではなかった。自分以外の人間がどんな顔をしているのか、目で見なくても痛いほどにわかるというだけだ。
志藤は一人掛けのソファーに深く腰掛け、口を開いた。
「俺達とは状況が違うんだ。アイツにはまだ、守らなきゃならないものがある。そのために必要なのは、マモルや俺達との繋がりなんかじゃない。
「でも、今のマモちゃんを止めるには、フクさんもいないと……!」
三崎がそう言うと、今まで黙って立っていた悠が声を上げる。
「人間がアマゾン狩りを止めない限り、マモル君は止まらないかもしれません」
「無理だな。少なくとも俺にとって、マモル以外のアマゾンはムシでしかない」
志藤が悠の顔を見ないまま口を挟むと、悠も押し黙る。今度は、望が悠に顔を向けた。
「悠も言ってたろ。全部に同じ気持ちなんて持てないって」
「……うん。そうかもね」
再び重苦しい沈黙が店全体を包む。
その雰囲気に耐え兼ねたのか、三崎が悠に話しかけた。
「ていうか、坊っちゃまは何でマモちゃん達と別れたの?」
「僕一人で行動してた時期があったんです。新しい抑制剤を手に入れるために」
「そっか。あの腕輪の薬、二年間分しか入ってないんだっけ」
「覚醒したアマゾンは僕も助けてあげられない。でも、4Cに見つかったら殺される……独自のルートで抑制剤を手に入れる必要があったんです。でも……!」
悠が言葉を詰まらせると、志藤は彼に目を向ける。
「でも……?」
「その間に、4Cがマモル君達を襲撃して、仲間のアマゾンの半分が犠牲になりました。それから僕らの関係がおかしくなって……」
悠はそう言うと、どこか虚ろな目で虚空を見つめる。無意識に、当時のマモルとの会話が頭に響いた。
『水澤君は誰を守ろうとしてるの!?僕たちはチームの筈でしょ!何でいつもアマゾンじゃなくて、人間と一緒にいるんだよ!』
『でも、薬がないと皆は……』
『今すぐ覚醒するわけじゃない。岡村君も山本君も、水澤君が一緒にいれば……死ななかったかもしれないのに……!』
『ごめん……!』
「最後には、皆僕の前から姿を消しました。多分、マモル君は僕のことを仲間だとは思っていないんです。だから、今のマモル君を止めることができる人がいるとしたら……志藤さん達だけです」
悠は少し笑いながら志藤たちに語り掛ける。声は微かに震えていた。
「やるしかないないか。マモルからオリジナルを没収する……先のことはそれからだ」
志藤がそう言うと、望は椅子から降りて三崎が腰掛けるソファーまで歩いていく。
「じゃ、三崎さん、飯作ってよ」
「俺の片腕義手だよ?ホラッ」
三崎は大袈裟に義手を望に差し出して抗議する。
しかし、望は無言で三崎の義手を払いのけた。この二人の力関係は7年前に出会った頃から変わっていない。
「しょうがねぇだろ。それとも一也、俺や望の手調理食べたいか?」
志藤はどこか皮肉っぽい声で、三崎に声を掛けた。
「遠慮しときまーす」
「フンッ!」
三崎が即答すると同時に、望が彼の右肩にアームロックを決める。
「ちょっと!のんちゃん!ギブギブギブ!!」
悠は、じゃれ合う二人を見ながら少し微笑む。5年前に彼らと道を分かつ前に戻ったような気分だった。
「マモル君……」
悠は、ここにはいない仲間に思いを馳せながら、コートのポケットの入った『何か』を握りしめる。
志藤はそんな悠の様子を目の当たりにして、無意識に目を見開いた。
『それが何……?それ、僕達を助けてくれる!?』
志藤の目には、ここにはいない仲間の姿がはっきり見えた気がした。
「悠……」
志藤がそう言うと、悠も彼に目を向ける。
「守りたいものは守る、だったな……?」
「はい。今でもそれが、僕の戦う線引きです」
志藤はその言葉だけを聞くと、そっと悠から目を逸らした。
勢いで書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
感想など頂けると嬉しいです。