「流星?不吉ね……」
「どうされました?」
とある場所で……一人の少女の言葉に隣にいた少女が視線を向けた。
「今流星が見えたのよ」
「この昼間にですか……」
キラキラと太陽に反射する金髪をドリルヘアーと今であるなら呼ばれる髪型にした小柄な少女……自信に満ち溢れ己に不可能はないというその瞳は他者を惹き付けると同時に他者を威圧する何かがある……人はそれをカリスマと呼ぶ。
そしてもう一人の青み掛かった短い髪をした物静かな……しかしその瞳の奥には確固とした誇りと信念があり先程の少女への忠誠心が見える。そんな二人が話していた。そこに、
「準備完了しました!」
快活な声が響く。腰まで伸ばした美しい黒髪を揺らしながら何処か精神的に幼げなイメージを受けるが先程の少女のためなら命をも惜しまぬと言う誓いが感じられる少女が走ってきた。
「まあ良いでしょう。さぁ!行くわよ!」
『はっ!』
彼女は今はまだ名も殆ど知られていない。どう控えめに言っても知るものより知らぬものが多い状態……今この場で討たれたとしても気にも止められぬだろう。
だが人々は知ることとなる。この大陸にその名を轟かせることになる【覇王】のことを、その武と知をもってこれから起きる血で血を洗う乱世を治めんとするこの奸雄のことを、この狂気に包まれる大陸を何者にも届かぬ力を用いて破壊することを、そしてその隣に佇む巨大な猛虎のことを……
「あれ?流星?」
「どうかされたか?」
また別の場所では同じく流星をみたものがいた……
褐色の肌とスタイルのよい四肢、10人中10人が美人と答えても何らおかしくない少女……いや、女性と呼ぶべきか?
そんな女性はニヤリ……と悪戯っ子そうな笑みを浮かべた。
「面白そうね……」
「何をいっておりまするか……また怒られますぞ」
そう言って諫めるのは同じく褐色の肌とスタイルの良さが際立つ先述の女性よりも幾分大人びた雰囲気の女性だ。こちらも10人中10人が認めそうな美女である。
「何かね……私の勘が言ってるわ!今すぐ行けとね!さ、行くわよ!」
そう言って初歩からの全力疾走……これだけみても身体能力が人間離れしてるのがわかるが……
「あ!お待ちくだされ!」
と、文句を言いつつも追いかけるもう一人の女性も人間離れしていた。
そんな彼女たちはそこそこ有名だ。しかしそれは鎖に繋がれた獣として……
自由を奪われ、家族と離され、一見自由に見えるがその実幾重にも巻かれた鎖は彼女たち動きを奪う……
だが彼女を縛る者は知らない……幾ら縛り幾ら服従させたように見えても、彼女たちを屈服させることは決して叶わない。彼女たちは犬ではない、彼女たちは猫ではない……狼であり、獅子なのである。
故に何者も彼女たちを押さえられない……彼女たちを従えられるのは彼女達のみ……
彼女は……人を震わせ、人を戦士へと変える。
人々は気づくだろう……彼女は我慢していた……しかしそれはいずれ限界を迎え、これから起きる狂気の世界に研ぎ澄まされた牙をもって引き裂く【英雄】を……そんな彼女達の元に降り立ったのは雀か……それとも別のなにかなのか……それはまだわからない。
「みてみて!流星だよ!」
「お待ちください!走ったら危ないではありませんか!」
「そうなのだ。お姉ちゃんは運動苦手なんだから転んだら危ないのだ」
また場面を変えて、そこにいたのは三人の少女……三人とも全く別の容姿をしているので血が繋がった姉妹と言うわけではなさそうである。
そんな三人の先頭を行く少女。
彼女を知るものはまだ居ない。本当に居ない。名も知られてないどころか名を売ってすら居ない。そして兵も居ない、土地もない、金もない、ないない尽くしの少女だが……何故か彼女の力になりたいと思わせる。
彼女が与えるのは強さではない。彼女が与えるのは知でもない。勿論才能でもない。彼女が人に与えるのはホンのちょっぴりの勇気。狂気の中を進み……払い除ける気概。彼女が与えるのは高々そんなもの……しかしだからこそ彼女に一旦惚れ込むと抜け出せなくなる。だからこそ彼女のために戦いたいと思う……人はそれを【勇者】と呼んだ。
そんな彼女のもとに舞い降りたのは、一匹の龍。その一匹の龍の起こす伝説を彼女は間近に見るのだが、それを知るのはまだ先の話し……