ドーン!
漫画とかならそんな擬音がでかでかと書かれてそうだ。
テーブルに乗っているのは、エビグラタン、エビフライ、ポトフ、ツナサラダ。なんとも豪勢なご飯である。
でっかいエビフライは試行錯誤してたがどーにもうまくいかなかったので仕方なく1尾ずつあげた。次回作に期待である。
料理が完成すると香乃は一度家に戻りポトフを持ってくるついでに着替えてきたらしい。
制服とは変わりショートパンツとデカデカと三毛猫がプリントされた明らかにオーバーサイズのTシャツである。玄関から戻ってきたのを見て一瞬履いてないの?と思ってしまうぐらいオーバーサイズである。
かろうじてショートパンツチラッと見えたのでそのセリフは口の中にしまいこんだが。
目のやり場というか服装に戸惑いつつも香乃が最後に飲み物を持ってきて座ると2人で手を合わせる。
「じゃ、食べようか」
「いただきます」
「まずはエビフライからでしょ」
ど真ん中に鎮座するエビフライ。でっかいのは作れなかったがそれでも一般的な大きさだ。食べ応えは十分だろう。香乃も一緒にエビフライを食べる。
うん衣サクサクなかはプリプリ。
ありきたりな言葉しかでてこないけど美味しい。エビの尻尾も香ばしく焼けていてパリパリで良い感じだ。
「なるくん。尻尾食べる?」
香乃はエビの尻尾を食べない派閥の人である。弁当を一緒に食べた時の間接なんちゃらはあらかじめ尻尾を取ってるのでノープロブレムだ。
「ありがたくもらうね」
香乃のお皿から尻尾取って食べる。やっぱ美味しい。夢中になってエビを食べていると
「でっかいエビフライは次のお楽しみだね」
香乃はもぐもぐエビフライを食べてる口を止めるとそういった。まあ、今回で素人かやるには難しいことが分かったしなー。
「次やるときはちっこいやつ束ねんじゃなくて素直にでっかいエビ買おう」
「それがいいね。問題は高いことだけど」
それもそうだ。伊勢海老のエビフライとか憧れるけどな。
「もはや食べにいったほうが安上がりかもね」
「それを言ったらダメだよ…」
エビフライをひとまず満足するまで食べたら次はポトフだ。グラタンを食べる前に一息入れてエビフライをいったんリセットしよう。でっかいジャガイモに割るために箸を入れると簡単に割れてしまう。これはと思い口に運ぶと
「ポトフ美味しいな」
ジャガイモは中ホクホク、スープの味がよく染みている。なんかスープとかカレーのジャガイモはなぜか異様に美味しく感じるのは俺だけなんだろうか。
「昨日作って具材に味が染みてるからね!」
通りで味が染みてるし簡単に割れるわけだ。ポトフで一息ついたら次はグラタンだ。上に乗っているチーズはこんがりとした焼き色がついている。スプーンですくえばチーズみょーんと伸びる。やっぱりチーズの醍醐味はこれだよな。口に運べばチーズの濃厚な旨味と塩味がエビの味を引き立てている。
「グラタン久しぶりに食べるな」
「私も!久しぶりに作ったねー」
時たま食べたくなるが作るのが面倒である。一通り食べて最後は…
「サラダは…まあ」
特筆することは無い。
「このドレッシング美味しいね」
「最近出たあのスーパーの自社ブランドのやつ。試しに買ってみたけど美味しいでしょ」
「うんうん、試しに買ってみよっかなー」
「ドレッシングなんてそうそう減らないし使うとき家から持っていけばいいよ。面倒でなければ」
「そこまでしては…ね。なるくんところで食べるときでいいかな」
「それもそうか」
料理の感想を言い合いながら食べるとあっという間になくなってしまった。久しぶり運動をするとご飯がうまい。
2人で後片付けをし、デザートのチョコを食べながらテレビを見る。
今やっているのは子供の将来のなりたい職業ランキングってやつだ。
「はー。やっぱり配信者って人気職業なんだな」
「夢はあるけどね。それでお金を稼いで生活できるのは少ないんじゃない?」
夢を見るのは子供の特権だ。
俺達も子供ではあるけれど夢と現実の折り合いをつけて進路とか決めないといけない時も迫ってる。
ランキングにはお花屋さん、スポーツ選手と子供らしい職業が並ぶ。
「香乃もちっちゃい時はスポーツ選手が夢だったよな?」
小さい頃から同年代で突き抜けて速かった。かけっこも好きだったそれが高じて幼稚園か小学生の七夕の願い事にそう書いていた記憶がある。
「そうだよ。今はちょっと迷ってるけど」
香乃は我が家に持ち込まれたでっかい猫のぬいぐみを抱きながら答える。小さい頃の夢を実現できるように頑張ってるのは凄いなと思う。それでしかも結果を出してるわけだしその道で行くのかと思っていた。
「ずっと選手でいられるわけじゃないでしょ?むしろそうじゃない時間の方が多いしさ」
香乃は寝っ転がって抱きしめていたぬいぐるみを上に掲げて答える。その目は遠い未来を見据えているようで、同時に迫りくる未来を不安で揺らいでもいた。
…香乃は進路とか色々考えているんだな。結果を出しているわけだしどっかの学校から推薦とか話が来てるのかもしれない。その分進路に対して考えることがあるのんだろう。
「なるくんはどうなの?演劇の脚本で賞とか貰ってるし小説とか書いてるでしょ?そう言うお仕事に興味ないの?」
脚本家、小説家書く仕事も色々あるけれど…
「うーん。賞って言ってもかろうじて入ったものだしな。上に人がいるわけだし。」
「演劇の脚本それまで書いたことなかったんでしょ?凄いことじゃないの?」
そうではある。が…
「まあ、文芸部の部長には良くやったとか言われたけど。書く仕事は…特に小説とかは才能、経験、発想力だからね。同年代どころか年下で書籍化してる人もいるしな…。それを考えるとどうにもね。興味はあるけど」
まあ、自分の好きなことを仕事にする。
というのに不安があるのかもしれない。
自分の才能やら努力がその仕事をする上で足りているのか。生涯書くことに対する意欲と発想がなくならないか。
その点に置いて俺と香乃は似たような悩みを持っている。
「そっか。なるくんも色々考えるわけだ」
「香乃ほど考えてなかったよ。大ざっぱに大学に行って今の小説とかの活動を続けてくらいしか考えてなかったよ。書く仕事をするとか現実味が無かったからさ」
今まで書く仕事にできればという淡い感情は持っていた。それは子供が将来の夢を語るくらいのもので自分にはそれが難しいことはわかっている。
ただ土台として脚本で賞を取り、学生ではあるが肩書上はしがないネット小説家を数年やっている。
慣れないことも無いかもしれない。
否、昨今のネット小説を見れば書籍化やらしてるのであながち夢者語りでは無いのかもしれない。
ただ趣味で書いていた小説が仕事になる。
それに対して現実味がなかったのだ。
「だよね。進路とか将来やりたい仕事とかさ…。まだ分からないど考えないといけなくってきたんだなーって」
ぬいぐるみをパッと離すと重力に逆らうことなく香乃の顔に当たる。
柔らかいので痛くは無いだろう。
当たったぬいぐるみを再度抱きしめると
「ずっとこのままが良いのにね」
香乃はそう呟いた。
俺と香乃だけでなく多くの人は自分の将来に向けて歩んでいく。当然その道は千差万別で時には重なる時もあるかもしれない
でも香乃とは…
同じ道は枝分かれしてまた1つになった。
そして近くない将来それはまた別れてしまう。
幼馴染という心地良い関係が壊れてしまうかもしれない。
香乃のこぼした言葉にそうだねとしか返すことができなかった。
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