その関係が終わるとき   作:峰白麻耶

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書き手と道具係の関係

キンコーンカーンコーン

 

その音が聞こえた瞬間反射的に目が覚めた。

急に動いたせいで筋肉痛が出て反射的に顔を顰める。

 

 あの夕食後、しんみりでした雰囲気が気まずくそのままお開きになった。その後なんか色々考えてしまった結果寝不足になってた。しっかり休めなかったせいと元々の運動不足のせいで寝不足と筋肉痛のダブルパンチを食らってしまった。

 

 その反動で6時間目の英語の時間にうとうとしている内に寝落ちしてしまったらしい。

 

 黒板の板書はすでに綺麗に消されていて、手元のノートには寝ぼけて書いた中途半端な板書が写されている。何が書かれているかさっぱりわからないが重要なところだけは赤で書く気力はあったらしい。

 

全然読めないが…

 

まあ、後で見せてもらおう。普段は見せる側なんだ。たまにはいいでしょ。

 

 

そう思って引き出しにノートを入れようとすると見慣れないノートが入っている。取ってみれば鶴見のノートだった。

 

ありがたやと開くと綺麗に纏っているノートだが、端々に落書きがあって面白い。謎の細長いカエルのような生物がポンポンを持ってサンバを踊っているのは何がどうしてそうなった。

 

今日のところには付箋が貼ってあり、明日返してねと書いてある。

 

ノートも写すだけならそんなに時間は掛からない。内容を理解してないのでよろしくはないけど…。鶴見のノートを机にしまい、今日はもう大人しくして帰ろう。寝っ転がって積んである本を読んでしまおう。

 

そうしようと決意を固め机を支えに、筋肉痛で痛む体を持ち上げようとした時スマホがなった。

 

なんだ?と見てみれば和幸からの連絡だった。見てみれば『ご相談があります。今日は大丈夫ですか?』

 

あー。どうしよっか?筋肉痛がひどいが…。でも筋肉痛で後輩の頼み事を断るのも違うよなー。

 

最終的に文芸部の部室に来てと返信した。さてどんな相談かな。

 

 

●●●●●●

 

部室に着くと和幸はすでにいた。壁に寄りかかってスマホをいじっているだけでも、その姿が絵になるのはずるい話だと思う。

 

「悪い、待たせたね」

 

そう声をかけると和幸はスマホから目を離し、長い髪を耳にかける。いちいちしぐさが様になってるから役者側としても求められのことに納得していまう。

 

「いや、突然ですいません。」

 

和幸がそういうと俺は気にするなと手を振りながら答える。部室の鍵を開けると和幸を座らせる。どうせ台本に関することだろう、長くなるだろうし、お茶とお菓子でも出そう。今日はクッキーでも食べよう。ちょうど小分けになってるものだし。

 

お茶とお菓子を机の上にのせると相談は台本に関すること?と聞く。

 

「そうなんです。完成したので見てもらおうと思ったんですけど・・」

 

そう言うとスマホにその台本データが送られる。その目は見てもらいたい半分、初めて作った台本を見られる恥ずかしさが半分位といった感じか。長い髪を指でくるくる回しながら俺の反応を見ている

 

読む前に先にお茶を入れよう。

 

紙コップにお茶を注ごうとしたが筋肉痛のせいですごいブレブレになる。

 

そんな俺の姿を見て和幸はお茶を前から取ると

 

「ふふ。球技大会のせいですか?」

 

そう言って代わりにお茶を入れてくれる。

 

「悪いね、普段運動しないから筋肉痛がね」

 

腕を回して右手を揉むと

 

「運動は大事ですよ、私は毎日走ってますからね」

 

ふんすと言うような擬音が聞こえてきそうな態度である。

 

「元気だねぇー。動くのは通学のチャリ漕ぐぐらいだよ。じゃ見させてもらうね」

 

お茶を一口飲んで一息ついてから台本データに目を通す。

 

劇の内容としては異世界を舞台にした桃◯郎みたいな感じだ。

 

ただ登場人物の性格は悪いの一言である。

最終的には屑であるが。

うだつの上がらない主人公が富と名声を求め最近話題になっている魔物を倒しに行く。

仲間を集めたはいいものの、先に先客の有名パーティーが魔物を追い詰めていたのでこっそり魔物を援護しパーティーを敗走させる。

 

その後、わざと町まで魔物を陽動し襲わせ、それを先客のせいにし、自分たちが美味しい所をいただいて討伐する。

 

有名パーティーの信頼は失墜し、屑パーティーが名誉と富を得たというずる賢い奴が勝つみたいなお話だ。

 

なんというか和幸が書きそうなイメージと全く違うものが出てきて驚いた。

 

もっとこうハッピーエンドな話を想定したらとんでもなく胸くそ悪い話である。

 

だが劇として考えると普通はない勧善懲悪な終わりではないので面白くはある。

 

ただ

 

「小説の内容と考えると問題ないんだけどね」

 

劇となると少々難しい所もある。

 

俺がそう言うと和幸が難しい顔をして

 

「人物像とかも書きましたし、場面とかも詳しく書いたんですけど」

「そう、そこはいいんだよ。ただあまり細かく人物像を設定すると役者が動きにくくなる」

 

これは台本を読んで役者が思い描くイメージと書いてる側のイメージが違う可能性がある。話し合えば妥協点があるだろうけど難しいだろう。

 

「こればっかりは和幸が求めるものがあるとは思うけどそこは妥協点を探るしかないね。

あとは道具類かな、とりあえず必要になる背景が多いね。仲間を集めるところはそれぞれの個性を出したいのはわかるけど4番切り替えはさすがにやり過ぎかな」

「やり過ぎですか」

「これが長い劇ならともかくそうじゃないからね」

 

和幸はやりたいことば難しいことを言われてどうしようかと頭に手を当てている。

申し訳ないがまだあるんだよな。

 

「あとはメンバーにいる弓使いだけどこれはどうやって攻撃させる?」

 

俺が聞くと和幸がイタヅラを見つかったような顔をして

 

「役者に練習してもらって撃ってもらおうと思ってましたけど難しいですか」

「安全面を考えると難しいね」

「やっぱりそうですか」

 

考えたことがことごとく却下されてぐったりしている。のろのろとクッキーをかじっている。

 

ま、手っ取り早い解決策がないこともない。

 

「だから、小道具係のところに行って見学させてもらえばいいよ」

 

俺も同じ道を通った。そのときに同じことを言われて道具係の作業場に通い始めた。

 

「そこでなにが出来て出来ないかその見極めをできるようになれば書ける表現の幅も広がると思うよ」

 

和幸は食べ終わったクッキーの包装をゴミ箱に捨てると

 

「・・わかりました。明日から・・いえいまから見学してきます。ありがとうございました」

 

そう言うと風のように彼女は去っていった。

 

・・意外に思い立ったらすぐ行動するタイプなんだと思った放課後だった。

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