インフィニット・ストラトス ~Inside out~   作:kageto

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第03話

 

 端によけられた教壇。一人前で椅子に座る箒。電子黒板の前で書記をする気まんまんののほほんさん(本名を布仏本音。立寝の猛者)。教室の後ろで椅子に座り様子見の教師二人。

 

「さあ!なんでも話すがいいよ!」

 

 のほほんさんはのりのりだ。

 

 

 

 5分ほど前。無罪を勝ち取った俺が微妙な空気になった教室をどうするか考えた時にのほほんさんが箒の背中にのしかかって宣言した。

 

「これは会議案件だよ。おりむー!」

 

 どうやら俺はボールに入れられる系モンスターっぽいあだ名になったらしい。

 

 のほほんさんは勢いそのまま、教師陣に「クラスメイトの悩みも解決できないでこれから一年一緒に生活できない」と説得して、授業一つを勝ち取ってきた。さすがに監督役として教師二人が教室の後ろで待機してる。

 

「私の姉は篠ノ之束。ISの開発者だ。知っての通り失踪している」

 

 箒は膝に目を落とし、ポツリポツリと語りだした。

 

「姉の持つ知識と技術を狙って世界中のありとあらゆる国が行方を追っている。当然私たち家族も目を付けられた。重要人保護プログラムというものがある。文字通り重要人物の身を守る為の物だ。名前を変えて住む場所を変えて、時には年齢さえも変えて身を隠す。私たち家族の場合はどんなに長くても同じ場所に半年しか居られなかった」

 

 お、おぅ。ヘヴィだ。

 

「私はこの6年で2度中学を卒業した。授業も付いていけないと怪しまれるから睡眠時間を削って通信授業を受けさせられた。3年前からは両親とも会えていない。今はどこで何という名前で生活しているのかすら知るすべがない」

 

「引っ越すたびに代わる名前。友達もできなかった。作る時間すらなかった。それでも姉に対する人質にならない為だと思えば耐えることができた」

 

 箒の言葉がそこで詰まる。クラスでも涙もろいらしい子は既に半泣きだ。

 

「一年前。政府の担当官から剣道の試合に出るように言われた。出て、優勝しろと。確かに篠ノ之の家は剣術道場をしていたし、私自身も剣は振り続けていたから問題はなかった。優勝したよ。篠ノ之箒の名前で」

 

「表彰式直後から誘拐未遂のオンパレード。本来いるはずの政府からの護衛も来ない。私を助けてくれたのは、姉さんだった」

 

 あー。展開が読めたかもしれん。これはダメなやつだ。

 

「泣きじゃくる私をなだめる姉さんを捕らえようと出てきたのは、見知った担当官が率いる日本政府だった」

 

「日本政府は私たち家族を世界中の誘拐犯から守るんじゃなくて、姉さんから隠し続けてたんだ。電子データも紙面データも残さずに。私は知らずに姉さんから逃げ続けてたんだ。誘拐犯に人質が協力してたら見つかるはずもない」

 

「政府は姉さんを捕まえる算段が立ったから私に本名で優勝してくるように言ったんだ。滑稽すぎて笑えもしない。だが姉さんの方が上手だった。私を守りながら政府を振り切って、私を隠した。姉さんが泣きながら最後だからって言って、この半年名前をまた変えて生活してた。そしてやっと私は篠ノ之箒に戻った。戻れたんだ」

 

 箒は笑いながら泣いてる。

 

「一夏に声をかけた時に私の名前を呼んでくれただろう?久しぶりと言ってくれただろう?嬉しかったんだ。私は篠ノ之箒だ。篠ノ之箒なんだ。私を知ってくれる人がいて、久しぶりだと言ってくれる人がいる。嬉しさのあまりに、まだ涙が止まらない」

 

 なんていい話。箒、良い子!だからのほほんさん。その電子黒板に書いた『日本政府=クズ』は消しなさい。一度赤丸書いてからでいいから。

 

「これはあれだね。おりむー。しののんはしののんじゃなくて箒ちゃんと呼ぶべきだね」

 

 のほほんさんが箒を抱きしめながら宣言した。席が近かった子が同じように箒を抱きしめてる。クール系イケメン女子が可愛がられてると言うのもアリだ。

 

 

 

 ところで、後ろで深くうなずいてる教師二人は、この光景に対してうなずいてるんですよね?『日本政府=クズ』に対してじゃないですよね?




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