【続編発売につき未完】もし傀儡兵に生き残りがいたら?   作:傀儡兵C

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始まり

 新西暦1035年に発生した古都プラーガの動乱から数年――世界は未だに争いの火種を抱えたままだった。当然のごとく、それは国境を接する地域ほど苛烈な傾向にある。とはいえそれは精々が小競り合いという程度のもので収まっていた。

 理由は様々だろう。噂によれば星辰界奏者なる人物が各地で粘り強い交渉を続けた結果、アドラー、アンタルヤ、カンタベリーの3国が徐々に融和路線を取りつつあるとも言われている。

 人間兵器、星辰奏者〈エスペラント〉の技術流出により軍事帝国アドラーの圧倒的なアドバンテージが失われた。それにより、帝国一強の時代は過ぎ去ったが、裏を返せばどの国家も確実に勝利できるという保証は無いのだ。戦争に保証など元々無いが、勝算が高いと太鼓判を押せなくなったのだ。

 なによりも星辰奏者は金食い虫だ。製造費、維持費…得られるメリットも大きいが、それ故に気軽に使い潰せるような存在ではない。優秀な星辰奏者につまらない戦場で死なれても困るのだ。

 それが故に三国は旧西暦においてヨーロッパと呼ばれた地において暗闘と小競り合いに耽っていた…。

 

 

 ここ、アドラー帝国南部戦線もその例に漏れない。国境を接するのはアンタルヤ商業連合。三国の中で唯一、金銭次第で星辰奏者となることができる実利重視の国家。成り上がりを望む血気盛んな兵たちが帝国にちょっかいをかけてくることなど日常茶飯事のことだ。

 そんな南部戦線においてアドラー帝国に所属する一人の男が今も駆けずり回っていた。貴種〈アマツ〉とは程遠い雑種。褐色の肌の男は世界から見ればどうということもない、小さな小さな戦場で必死にその日を生き長らえていた。

 

 コリン・ハバード准尉は疾風となって突撃する。それを迎え撃つは炎を纏った銃弾(・・・・・・・)。付与属性に秀でた星辰奏者が存在する部隊はただの兵士ですら時に星辰奏者すら打ち倒す。特化型を重用するアンタルヤ商業連合傘下らしい部隊だと言える。

 とはいえ敵の側もいざとなれば切り捨てられる存在だろう。表向きは三国は融和に向けて少しづつ関係改善に努めているとされているのだ。なにかあれば彼らのスポンサーはあっさりと知らぬ顔をしてしまうはずだ。コリンですら単身で未だに戦えているのがその証左。大した相手では無いと言える。…真っ当な帝国製星辰奏者ならば、だが。

 そう、対するコリンはマトモな星辰奏者ではない。動きこそ鋭いものの、あるものが欠けているためだ。そして精神面においても戦闘適性は凡庸に過ぎる。本来ならば星光を纏い、帝国の威信を背負うような存在ではないのだ。

 顔を覆面で覆ったアンタルヤの兵をとうとう視界に収める。彼らに炎を与えている星辰奏者が来る前に数を減らさなければならない。炎弾が頭の横を通り過ぎ、毛が焦げる不快な臭いを感じたコリンは焦りを込めて星辰光(アステリズム)を発現させた。

 

超新星―惑星間塵・残骸之型(Metalnova Mk-dust Planetes)!」

 

 コリンに許された紛い物の異能。アダマンタイト製の刀の先に星光を充填する。銃弾を飛び越えて兵士達を刃圏に捉え、太刀が振るわれると爆発が生じた。

 至近距離で起きた炸裂に3人の兵が手足をもがれ、苦悶の呻きを上げた。肉が焦げる臭いが当たりに漂いだした瞬間にコリンは周囲に殺気が満ちるのを感じて飛び退いた。先程まで立っていた場所に炎が何もない宙空から放射された。

 間違いない――星辰奏者のお出ましだ。

 確信した時には既に脱兎の如くコリンは逃げ出していた。

 動きだけならば多少劣っている程度だ。まさかここまで来て逃亡を図られるとは思ってもいなかった敵は行動が遅れ…結果を言えばコリンは無事に逃げおおせた。

 

 そう――所詮、俺は紛い物。本物の星辰奏者と戦えるかもは知れないが、勝利は期待できない。

 かつて古都プラーガの動乱において狂気の女科学者と光の亡者によって造られた廃品利用の兵器。それがコリンの正体。かつて傀儡兵と呼ばれていた木偶の更なる成れの果て。

 

 これは彼の何を成すでもない生存譚。




初の二次創作!なので駄文失礼しました
続くかな…
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