1:始まり<主観的俯瞰>
これは偶然なのだろうか。
いや、必然であり運命なのだ。
世界にVRが生まれて数年。その内に、フルダイブという言葉を生み出した画期的なゲームハードとソフトが作られた。
ナーヴギア。
我々はこのように呼んでいる。
詳しい情報は一般人には到底理解しがたい。
TV情報をうのみ前提で話すと、どうやら脳幹に導き出される脳の答えである電気信号を
延髄や神経に流さず全て捕え反映することでこの奇跡にも近い所業がなされている。
とにかく、これを作り出した茅場がすげぇということだけ伝えておこう。
なんとも語彙力が少ない。
凄くアレだけれども、僕らは思い思いに受け取り最新のゲームを体感している。
そう、数分後にはありえもしない命を懸けたデスゲームになろうとは、この僕と和人も含め
あんまり思ってなかった。
「和人~SAOデバッグしようぜ~。お前、アタッカーな~」
「今度はどんな内容だよ…」
「ふっふっふ、此度はなんと…スキルモーションだ!」
「あぁ、バグ取りね」
数か月前の僕と和人は、SAO…ナーヴギアを使う最新鋭ゲーム<Sword Art Online>のデバッグを行っていた。
2:ゲーム開始<和人(キリト)主観>
出逢いは運命的。
いや、俺の人生の分岐点だった。
そう思いながら、このありえない世界を体感する。
ソードアートオンライン。
ナーヴギアによってもたらせる、神と思しき世界の片鱗をみせつけてくれる。
「磯野~野球しようぜ~。お前ボールな~」
「つまりあれか、あたり判定のバグ取りってなわけだ」
「そそ」
脳裏に浮かび上がる、俺の友人。
この美しく現実的で虚空である世界を作り上げた一端である人物の息子。
俺よりも細く、食っても太らない引きこもりな彼が、剣道部である俺と友人になったのが不思議なくらいだ。
「『ディープ・インパクト』!」
「甘い、甘いよお兄ちゃん!宇治金時ストロベリー抹茶ハニーパフェよりも、甘い!」
「面あり!」
日常の風景を思い出しにやけながら、目の前の非現実的な魔物を破壊する。
魔物はHPバーを灰色の背景にして、粒子となり3D空間に散る。
「Train Train 走って行け Train Train 何処までも~♪」
友人がスケルトンや煩わしい豚を引き連れて走ってくる。
友人は途中で振り返り、ありえない位の剣速で全ての敵を葬り去る。
「よ、和人。楽しんでる~?」
気楽な友人である。俺はそんな彼に軽く笑い返す。
「誠璽こそ、鼻歌歌いながらじゃないか」
「つまり、お互いさまって事だろ~?」
「そうそう」
俺はその返事の後、深い溜息をつく。
この後の事に関して、腹を括ったのにすさまじい恐怖と緊張が全身を包み込む。
そんな俺の気負いの中、誠璽は飄々と剣舞を踊る。
「和人。心配は分かるよ。
なんせ一万人の人間を使って、茅場プランナーは何かをしでかそうとしているんだ。
ある程度は、お父さんの予測だけど…そろそろかな?」
「俺達の目的は、統計ででた7000人を切らない数字を保持したままゲームをクリアする事だよな?」
俺達は私服の姿で、ものすごい殺伐とした対話を成立させている。
数分か数十分で開始か忘れたけれど、俺の不安は誠璽も同じとするところだろうとおもう。
だけど、何時までも生まれたての子羊みたく、震えてばかりではいられない。
俺達は云えない秘密が沢山ある。
βテスト?αテスト?
俺はそれによる優位を鼻で笑う。友人も、俺と駄弁りながら最もレベリング効率のある場所で戦闘をした。
これが少しでも、クリアに近くなるのなら…そう思わずにはいられない。
フィールドボス。いきなりの出現。だが、そんなもの、既に知っている。
場所・フレーム出現・体力や能力・保持スキル・最適レベル・AIによる反応や動きそのもの等。
俺と友人は、『スイッチ』と言われる『システム外スキル』を使う。
スイッチは、ON/OFFに使われる交替だったり入れ替えという意味がある。
更にシステム外スキルは、誰でも使えるスキルだ。
スキル自体は、手動によるスキルスロットへの登録が…。
まあ、そんなのはどうでもいい。
つまり、俺と友人はその切り替えによるメリットで、敵を圧倒して撃破したということだ。
友人も俺も、作業という感じで軽口をたたきながら撃破した。
「ん~、やっぱり最後のあがきが変更されてるね~」
「デバッグ画面をみながら云うのはよせよ。やられるだろ?」
「大丈夫さ。まだ、死ぬわけじゃない」
そう、まだ死なない。
まだ普通のプレイヤーは、このゲームに入れないんだから。
「そんじゃ、『並行展開≪パラレルアクティブ≫』をするかー」
「はいはい、つきあうぜっと」
レベルは13。これくらいあれば十分だろ。
後一時間は、確認とシステム外スキルの確認だ。
実質年単位で覚えさせられたんだ。忘れているわけがない。
誠璽。俺達で希望の星になろうぜ。