14:やべぇよやべぇよ<キリト主観>
あ、アスナ、目が怖いんだけど……。
と、とにかくあの時から二日が経過した。
今どこにいるかって?
それは一層ボス討伐会議の会場さ。
ここは迷宮区に一番近い『圏内』の設定がある村。
この中に、高低差を利用したステージが設置されてある。
さて、周囲の眼が非常に痛い。
まあ、理由は分かる。
分かるから、その目を止めてくれ精神的に来るから。
「ねぇ、ご主人様。早く参りましょう」
「お兄ちゃん、行こうよ!」
「わ、わかったから、その服装と言葉遣いを止めなさい」
「「えー」」
「止めてくれ、ほんと、まじで」
「アスナ、ユウキ、止めてやってくれ」
勿論俺の精神的にもまずいからな。
しかしあいつの年下への耐性のなさは異常だからな。
主に庇護欲が働くメイド等、世話のみに特化して戦闘能力の無い人らに対してのみ積極的に動くんだよな。
アイツ曰くAPP18な妹の直葉とアイツのAPP18妹が、問題を引き寄せてしまった時迅速に対応したのが誠璽なんだよな。
だからこそいいたい。
すまない、ユウキ・アスナ……。
その服装と言葉遣いは、ただの『優先して守ってください』と誇示しているだけなんだ。
好意でなく、厚意なんだ。
まあ因果応報で、過ぎ去りし時はなんとやらだ。
ユウキとアスナは、元の服装に戻る。
アスナはラストに対する精神的な報復に少しだけ成功しているようだ。
ユウキは持ち前の容姿と肉体で、気を引いているようだけど……。
ま、頑張れ。
「はーい、それじゃ始めさせてもらいまーす!」
ステージに青髪の男性が出現する。
今回の討伐戦での司令官を行う人だ。
「俺の名前はディアベル。気持ち的に、ナイトやってます!」
「勇者だろー?」
「アハハハ!」
この野次は、同じギルドの仲間のようだ。
しかしなんというか……上手いな。
雰囲気というか、空気を緩和させて引き込んでいる。
そして、まじめな雰囲気を一気に作り上げて緊張感を一気に持たせる。
話術がすごい。これが大人というやつか。
「今日、俺達先行ギルド複数者が、奴らのボス攻撃パターンを完全攻略した。
以前の強行軍で、既に発見していたがレベルが足りず敗走するのみになった。
そして今回の偵察だと、時間がかかりすぎてポーションが切れてしまう事態となってしまった。
故に諸君の力を借りたい。
そこで、諸君らにはギルドでなくパーティを作ってもらいたい。
これでボスに牙を剥く、嚆矢になれる!」
さて、俺達は4人ギルドだ。
他にギルドは……。
「キリト、パーティ選考は決めてある。こっちだ」
「ああ、わかった」
やはり誠璽は俺と違って、根回しが異常に早い。
俺は誠璽以外の友人とは付き合っていない。
いや学校に友人はいるが、そのときだけの仮初の存在だ。
何せ剣道部なのに、機械いじりが好きって時点で色々相反している。
こんな俺に友人ができるわけがない。
彼奴がモーションキャプチャを使って、AR空間で戦闘を行うゲームを作りたいだなんていって俺に話しかけてきた。
そのあと、ゲームに関してやモーションキャプチャについての説明を、帰宅中に聴く事となった。
そして帰る方向はこっちでいいのかと聞くと、こっちだからと云った。
そう、俺の家の真正面なんだ。
俺は運命づけられていたのかもしれない。
あの後も一緒に遊んで、開発してはゲームをアップロードしていろんな人にダウンロードしてもらったり……。
そして、付き合いだして二か月。
誠璽が俺にデバッグをしてほしいと言ってきた。
いつものARのボーンずれの確認かと思ったら違っていた。
<フルダイブ型VRゲーム『ソードアート・オンライン』のデバッグだ。
一緒にやって、小遣い稼ぎしようぜ>
<茅場の様子がおかしい。俺はVRができるが、お前たちにこの難解な文字は打ち込めないだろう。
だから、私の代わりに行ってほしい>
<お父さんの技術は一級品だから、迷わず行くつもりさ。和人は?
無理にとはいかないよ?なんせ、最悪死ぬし>
俺はよく迷わなかったよな。
まあ、あいつにはお世話になりっぱなしだったし。
売り上げ過半数は、俺にくれた。
理由が基本独り暮らしなら、金がいるだろ―という事だ。
その好意と厚意のおかげで、此処にいると言っても過言じゃない。
だが誠璽は個人主義的だから、―こうなった結果はお前が望んで努力した結果だ。
どんな困難な事に成ろうともあきらめないで前に進もうとした。それが今の和人だ―とかいいそうだ。
右から足音が聞こえる。
そちらに顔を向けると、屈強な漢や盾を持った片手大剣を持つ男・槍を持つ女性・
ブラックボアとレッドウルフをテイムしている少年がこちらに来ていた。
先頭として引率しているのは誠璽。
本当に、あいつには敵わない。
「さてと……こいつらを紹介する」
誠璽は屈強な漢から紹介する。
「彼はエギルだ。おもに商人をやっているが、タンクとして両手斧を扱っている」
「宜しくな!」
彼は片手を挙げて挨拶する。
案外フレンドリーな感じか。
次は大きな盾と大剣を持っている男性だ。
一度見たことがある。彼がきっと、マーベリックだ。
「こっちの彼は、マーベリックだ。私が少し指導したため、生きる術を身に着けたベテランだ」
「よろしくお願いします」
好青年だ。その知識や力に関して貪欲なところは、誠璽に教えを請うている時に拝見している。
きっと鍛錬し誠璽の裏技のおかげで、大分楽に生きてきているだろう。
「さて、こっちの彼女は、カーディアンだ。ソロで実力あるが故、誘った」
「ラスト団長に紹介された通り、私はカーディアン。槍が得意だ。宜しくお願いする」
硬派な感じがする。己を律するといっていいのかな?
「最後の少年は、クルール。裏技を使って、二匹テイムしている。本人は投擲武器が得意なスペシャリストだ」
「自分はクルールです。おもに、チャクラムという輪投げに使用するアレを使います。ピックも偶にします」
配下にしているのは、ブラックボアとレッドウルフだ。
どっちも高難易度クエストモンスターだ。現時点で、最高のモンスターだ。
戦術として考えると、ピックやチャクラム・モンスターでおびき寄せてエギルとマーベリックで足止めをする。
そしてカーディアンと防御側の反撃で、攻撃を有効打にするような感じか。
「ちなみに、クルールはSAOにいない幼馴染とできていて許嫁だ。
更にエギルとカーディアンは既婚者である。
いろんな相談は、彼等アリアフィナーレと通じてやってくれ。
さて、今度はラストワルツの紹介だ」
なるほど、誠璽はそれぞれを勧誘でなく、別のギルドとして纏めていたのか。
だから隙がないようにみえたのか。いや、実際にないのかもしれない。
というか、名前が独唱の終わりなんだけど?
いや、実際そうなのか、中々深いじゃないか。
「さて、そこで熟考している青年は、キリトという。私と同じ、βテスターだ」
デバッガーはさすがにまずい。妥当というもんだな。
「紹介に挙がったキリトだ。おもにアタックディーラー担当の片手直剣だ、よろしく頼む」
やはり、全員の眼が鋭い。あれはβテスターへの恨みというよりも、ラストを見ていた眼と同じだ。
これは期待が持てそうだ…!
「次の明るい頭髪をしている彼女はアスナだ。カーディアンと同じく、レスキューで助けた者だ」
「アスナです。役割は基本的にフルアタックです。よろしくお願いします」
…女性陣は基本的にレスキューなのか?
いや、レスキューという言葉でカーディアンとクルールが反応を返した。
彼等は救助されたのか。
「最後の彼女は、ユウキ。同じくレスキュー救助者だ」
「ユウキだよ、仲良くやってこーね!」
相変わらずの天真爛漫だ。
俺達4人の時に見せる、女の子らしさを見せない。
これが公私をわける変態ぶりか…凄まじいな!
「では、ラストワルツというフルアタッカーギルドとアリアフィナーレという後方支援ギルドの
仮の形で合併という事にします。
この事は事前に伝えて置いたように、仮初の存在として機能します。
我々はこのまま、攻略組としてゲームクリアまで最前線に身を置く事を絶対とせよ。
そのために、ギルドに入り率先して攻略に励むように。
勿論ギルドを作っても構わない。時間をかけてでもいい、周囲と足並みをそろえて敵を殲滅せよ」
「「応!」」
「「うん!」」
この時、ディアベルの終了宣言が出る。
「これで全員できたかなー?それじゃ、次に「ちょー待ってんか!」ん?」
突然の割り込み。
この得意な髪型をしているおっさんは、大事な時間を無駄にする行為をする。
結局懸念となっていたいざこざは、エギル・ラスト・ユウキが如何を説いて宥めることになる。
エギルは無料配布のSAOの生き方を、ラストはポーションと資金の譲渡を、ユウキはプレイヤーの心理的状況における
βテスターの傲慢と散漫・油断と怠慢による自滅の指摘を発現する。
この中で後押しとなったのは、強行軍によるマップデータとテスターによる資金・ポーション譲渡、クエストの如何の広がりだ。
これにより、初心者のほとんどは死ななかったようだ。
更に風林火山やドラゴンナイツ・アリアフィナーレによる、初心者への支援が効いたとのこと。
おかげで己の食い扶持は稼げるようになった、とディアベルも賛辞を贈るほどだ。
この反響によって、キバオウというプレイヤーは席に座ってだんまりを決め込む。
「さて、今回の一層のボスの事を説明する」
コボルト=ロードというボスと、コボルト=センチネルという取り巻き。
武器は盾と片手直剣。体力が4本目になって、3/5になると野太刀に切り替える。
更に行動の速度も上昇するということになっている。
非常に厄介な敵だろう。
「というわけだ。それでは、此れにて解散!現地で会おう!」
この場で解散する流れになる。
途中ラストからメールが来る。
内容によると、アリアフィナーレの方に話を通して目立ったことで脇役になった事を通達するとのことだ。
ラストワルツは、俺の方で伝えなきゃダメらしい。
面倒だけれども、これも必要な事だ。
腹を括るしかない。
「アスナ、ユウキ。ラストはアリアの方に行った。俺達は俺達で、ボス部屋まで行こう」
「ええ、わかったわ」
「ラスト…うん、わかった」
あいつ、まじで早く帰って来いよ?
ユウキが明らかに元気を無くしている。
ラストが取られることが無くなっているから、比較的安心だがレスキューを行っている為
綱渡り効果でラストに特異な感情を抱く人間は多いだろう。
「ユウキ、お前まで元気を無くせば、ラストを元気づける奴がいなくなる。
だから常にってわけじゃない、それでもあいつの前だけでも笑顔になってくれ」
俺はユウキの肩に手を置いて、目をちゃんと見て云う。
そうじゃないと伝わらせないといけないことが、ちゃんと伝わることがないからだ。
「うん、わかった……」
ちっ、こんな状態にさせるラストには、それ相応の報いが必要だ。
だけど、あの作戦をするまで、何もしない方が良いだろう。
そうでなければ、作戦の遂行に邪魔が入るからだ。
心情的にな。
「アスナ、あともうちょっとだ」
「?」
彼女にこの言葉きついだろうか。
だがこれも後腐れないように、ちゃんと決別のためのものだ。
さあ……行こうか。