16:想い<ユウキ主観>
―――ごめんな、ユウキ。
「っ!」
「どうしたの?」
「う、ううん。なんでもないよ」
「……ラストさんの事?」
「……うん」
あのボス撃破後、私は気絶しちゃったみたいだ。
だって、ラストの聲であの禍々しい雰囲気を出して……。
きっと受け入れられなかったんだ。
ボクはラストが好き。
皆は滅茶苦茶な事を吹聴して、事実を捻じ曲げていてそれを大義名分としてる。
今もビーター討伐軍が結成されていて、ボクはそのたびに悪夢を見てる。
ありえないけど、ありえなくもない。
自分にレスキューが使えるか、全く聞いたことがないけど討伐軍が帰って来たころに
フレンド欄を見て灰色になっていないか確認してる。
……。
吊り橋効果って言って、笑う人もいるよ。
一応何度もボス討伐に苦戦して、全滅判定を喰らいそうになった時ラストが颯爽と現れるんだ。
そしてレスキューで、30人近いプレイヤーを復活させて、ボスを剣舞を踊るかのように倒すんだ。
皆ってわけじゃないけど、意見が分かれてきているんだ。
少なからず女の子のプレイヤーもいて、彼の格好良さに上ずいているんだ。
そんな彼女らに、苛立ちを覚えちゃうんだけど、なんなんだろね。
<死にたくねぇよお!>
<全く無知で、学習能力がない。だが、無意味だ。彼等を殺す事等不可能だからだ>
無意味。
ラストっていえば、こうなるかな。
よく言ってる。それを云って、ボクらの前に現れるのは、凄くかっこいい。
アスナはキリトと結合[ユニゾン]を組んでて凄く強いけど、HPが0になってしまうたびにキリトとボクに心配をかけて、
ラストに回復されてる。
突っ込みすぎだって、後でメールで書かれて返ってくるんだってさ。
だからか知らないけど、ボクとは違う意味でラストの背中を追ってる。
キリトも常にラストの居場所を探してるよ。
「ラスト……逢いたいよ……」
「……ラストさんに会ったら、皆であの人をぶっつぶそう!」
「あ、アスナ怖いよ」
あ、そうだ。
あの時の言葉。あの言葉は常に、メールとして残してる。
ラストが去り際に放ったあの言葉。
ボクは知る由もなかったんだけど、キリトが一字一句全てメールとして残してた。
その内容を、ボクとアスナに送ってあの時の事を忘れないように、設定として残してくれた。
僕はラストに会って、直接その言葉の真意を知りたい。
レスキューの危険性。ボクはその危険性はないと思ってる。
そうじゃないと、毎回あの攻略パーティの生存は不可能だから。
そうそう、面白い二つ名がラストについたんだよ。
その名も『シシガミ様』。
なんでも満月の夜ダイダラボッチになる、とある映画にでてくるキャラ名なんだって。
しかも、そのシシガミ様は付近にある生命を、己の意思で生死の与奪を操れるんだって。
プレイヤーや敵に、絶望と希望・死と生を与えるのはまさにそれの体現だってさ。
はぁ……あ、そうだ。レベルはキリトとアスナより高くなったよ!
でもラストは2層がアクティベートされた瞬間に、3階層をアクティベートしたんだよね。
その確認と情報の偽りがないか、色々していると4階層までがアクティベートされた。
訳が分からないってもんじゃない。
技術や技量が、キリトと同じ……ううん、それ以上だって事がわかった。
キリトも相当驚いていたよ。
キリトがそうだとしたら、ボク達はまだまだだよ。
……あのさ、ラスト・キリト……。
本当に君たちは、βテスターなの?
ディアベルさんや他の攻略組の皆のほとんどは、βテスターなんだよ。
それなのに、なんでこんなに開きがあるんだい?
「あ、着た着た。えーと……?
『ユウキへ ラストワルツは、一戦級を集めた者しかいない。
その為功績ではなく、技術や技量を見せてもらうことにした。
そこで、ユウキに対して私の意見を云わせてもらう。
ユウキは個人戦闘能力・意識間での多人数戦闘が圧倒的に得意であるという事がうかがえる。
しかし、後さき考えないので、頭脳戦闘や増援という戦略を考えられないという兵士気質がある。
故に今後は、支援や指示をキリトやアスナに任せて、戦闘技術のみを磨いていくがいい』
っと」
最初のボス攻略が終わって数日後、こんなメールが来たんだ。
本当に攻略しか考えてなくて、それが楽しんでいるとは思わない。
でも一応、一日一回なんだよね、其々の蘇生。だから、常時緊張感は持っているんだなって思ってる。
疲れないのかな?
会った時、ラストに何かお花をプレゼントしたいな。
あ、御裁縫でもいいかも!
ボクは……私は、ラストに恋焦がれ毎日を空虚な気持ちで過ごしている。
嗚呼、逢いたいよ……。そして、ラストの気持ちを知りたいな。
たとえ吊り橋効果でも、この気持ちは変わらないから。