SAOのデバッガー   作:名無しの権左衛門

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19:強さの秘訣<俯瞰>

19:強さの秘訣<俯瞰>

 

「ラスト、ボクと戦ってよ」

「いいだろう」

 

 

 今現在45層。

超凶悪なボスモンスター第44層『ペイン・ザ・マデューサ』を撃破した直ぐ後だ。

 

巻付き攻撃や投石攻撃・締め付けや引っ掻き・切り裂き攻撃が、攻略組にお見舞いされた。

4段の内一段が減ると、無数の蛇が出てきて『麻痺』を。三段目二分の一で『毒』を含んだかみつき攻撃をしてくる。

次に体力が二分の一になると、『ブレイヴスマッシャー』という片手斧を持って振り回した。

更に、その段数が二分の一になると、頭髪が蛇に変化し毒や火炎放射を吐いた。

一段目になると、本体と蛇から石化状態にする光線を放たれるようになる。

石化は最大体力を減らしながら、行動を制限する。

更に二分の一になると、足場を変化させながら周辺の物体を爆破させてきた。

 

 これらの攻撃は、既に予想の範疇を超えていた。

最初の4段目で、タンクが壊滅した。

次の3段目で、ラストワルツ・血盟騎士団副団長とその傘下数名・アリアフィナーレ以外が退場。

2段目で、ラストワルツ・アリアフィナーレのマーベリックが残った。

一段目で、キリト・ユウキが残る。

そして、二分の一の時、二人が足場の変動により行動不能になる。

 

 これにより二人はやられることになる。

しかしそうは問屋は卸さない。

この瞬間にラストが介入。

 

 ラストは今まで誰もが見たことのない装備をして出現する。

それは両手に盾を持っているのだ。

その盾は光って、メデューサの火炎放射や光線・蛇のかみつき突進攻撃を反射する。

そして盾をスキル光を瞬かせほぼ真上へ投擲し、一瞬で装備した剣にスキルを載せて投擲を行う。

 

 フェイト自体はタンク属性を持つ盾が持っているので、ほぼ真上に投げられた盾に光線や火炎放射がいく。

おかげで0.1秒未満の隙で投擲された武器軍が、相手の眼と頭髪の蛇を貫き破壊する。

そして片手に再装備された剣で急所を貫く。

 

 しかしLAはユウキに譲るほど、有り余る余裕があった。

キリトはレスキューをして遅かったラストを労う。

反対にユウキは、ラストの異常な行動速度を訝しむ。

 

この後ラストは上層へ行く。

キリトもラストと通常会話をする。

現状血盟騎士団は、役立たずとなってしまっている。

スイッチは当たり前。

しかしボス戦ではそれ以上が求められている。

 

 今現状で使われているのは、コンボという途切れないスイッチによるフェイトの連続移動と

AI思考再構築による再行動への時間稼ぎだ。

 

 基本的にキリトらラストワルツとアリアフィナーレ・血盟騎士団をのこせばいいという風潮がある。

だからこそ、ボスへの参加は消極的になってきている。

それでも上層にあこがれを抱く中層プレイヤーに、アリアフィナーレや軍が援助を行っているので

完全にボス攻略者がいなくなることはない。

 

 とにかく、今の異常なゲームとして体をなしていないSAOでは、結構な不満が溜まっている。

フィールドボスやモンスターは、大したことはない。

なのに、フロアボスだけ異常に強い。

 

とあるプロパガンダ新聞では、このSAOの強さをレスキューという復活技があるせいだという意見がある。

これのおかげで、グリーンプレイヤーでさえもラストの居場所を探り殺そうとしたのだ。

更にこれらの情報が広まり、攻略組の一部にも浸透してしまう。

勿論ラストを殺そうと試す者が、フロアボス攻略中に殺害を試みようとした。

しかし、事を知っているキリト・殺気を感じたユウキ・アリアフィナーレ・アスナとアスナに説得されたKoBにより、

レスキュー殺害を阻害された。

まあそれ以前に、ボスが強すぎて隙を伺えないというのが大きい。

 

 さて、この噂が広まったのは、25層。

今まで多くの失敗者を出した結果、このプロパガンダ新聞は信用されなくなってしまった。

そうラストを殺害しようとする人間がほとんどいなくなったのだ。

理由は最前線を走るギルド『軍』と死地を救ってくれた中層プレイヤーによる、

ラストの良いうわさの流布だ。

このSAOで最も影響力の高い『軍』が筆頭に、このプロパガンダ新聞の発行者を捕え尋問を行い真実を吐かせたのだ。

その真実は、お金がほしいだけというあっけない理由を、内政と戦闘を行う数多のプレイヤーが

その人脈を活かして周囲に浸透させていったのだ。

 

 しかも今回の件は、主にキバオウが中心となって行われた。

『ビーター』個人が、SAO全体を揺るがす難易度にするわけがないという証明とレスキューのおかげで、

失われる筈だった命が救われたというゆるぎない事実を噂のみを信じる非戦闘員に突きつけた。

これにより、『軍』内部の『レスキュー』保持者に対する見方が変化し、町中のプレイヤーの憎悪が

『レスキュー』保持者のラストから茅場昌彦に戻った。

 

 そういえば、『軍』内部の見方が何故変化したのかを云おう。

『レスキュー』。これ自体がユニークスキルという、唯一無二の存在がβテスターがゲーム内言語として広めたスキルの中の

一つじゃないかという推測が生まれた。

もしもこれが本当ならば、ある意味いくらでも死ねるし生き返れる事が無くなり、その本人の気まぐれで命の与奪ができる。

 

 こんな世界にいると、人々は神のようなものを作り上げ崇めてしまう。

よって、レスキュー保持者であるラスト……ではなく、『レスキュー』自体を神格化して崇める宗教ができる。

更に今回のプロパガンダ新聞で、『軍』内部にレスキュー保持者を殺そうとする風潮が出来上がってしまう。

結果、レスキューという神が宿っているラストを、殺そうとする輩を許さないという過激派ができてしまった。

 

つまり、『軍』が殺害多数派の非戦闘員と生存少数派の攻略者で、二分化と弱体化を行ってしまうところだったのだ。

 

 今回の『軍』の意識が変化したことで、戦闘と非戦闘…外部と内部の意識差が少なくなり距離が短くなった。

おかげで内部分裂の空気は現状なくなり、キバオウとシンカーはお互いの領分を考え『アインクラッド解放』を考える様になる。

 

 話を戻そう。

ユウキがいきなり、好意をよせるラストに戦闘を挑もうとしたのか。

それはやはり、彼女がフロアボス戦でキリトに助けられ、ラストに生き返されてしまうからだろう。

 

 彼女には、ゆるぎない自信があった。

しかし、それは自身と同じ境遇と状況にいた姉が、いきなりこの世から去ってしまったことであっけなく崩れてしまった。

それでも今はメンタルケアをされて、自信と自尊心が復活と共に回復した。

ユウキはこの時、自身のログイン状況を再確認することで、己を確立させる。

 

(そうだ。ボクは他のプレイヤーより、長くこの事業に携わっているんだ!)

 

 結局これのおかげで、ユウキは助けられる度ラストとキリトに、疑問の眼が行くようになる。

この目に気づいていたキリトは、ラストに報告し現実で緊急会議。

また、誠璽の父親と話し、全SAOプレイヤーの居場所をインターネット回線から逆探知して調べる。

 

 その中の二つは、埼玉。これがキリトとラストだ。

アスナは東京の中心部近く。ヒースクリフは長野の山の頂上付近。

殆どのプレイヤーが、病院の座標と合致。

 

 

 その中でおかしいと思える点が二つある。

病院は病院でも、それぞれ一人が大学の研究機関でもある大学病院にいるのだ。

基本的にほとんどのプレイヤーは、『ジュエルベッド』という老廃物を吸収分解するジュエル素材を、

全裸になっているその肌に吸着密着させて使用する、寝たきり専用の物品が拡充されている病院に搬送されている。

なのに、それらが確保されていない筈の場所に、二つ点がある。

 

一つは東京の茅場が輩出された学校。

もう一つは、神奈川の横浜にある、特殊研究機関だ。

病院でもあるが、試験体だったりテスターとなる実験場でもある。

 

 と云う訳で、ユウキ本人は知らずの間に三人に調べられることとなる。

結果実質プレイヤー二人のキリトとラストは、ユウキの我儘に付き合うことはしない方が賢明だというものになる。

 

 

 そして、ここはまだ『アクティベート』されていない45層の主街区。

 

「あのさ、ラスト」

「何だい?」

 

 ユウキとラストは、主街区の中央で向かい合う。

ユウキの張りつめた顔は、何かラストに対して言及しようとしていた。

対するラストは、優しい表情でユウキの疑問に答えようとする。

 

「ボクはラストの事が好き」

 

 今までにあった好意を示す言動の源。

当たり前となった文句に、ラストは動揺せずただ受け入れる。

 

「それは今まで変わらなかったよ。でもね、ボクは妄信する馬鹿じゃないんだ」

 

 ユウキの表情は暗くなっていく。

俯いてユウキはラストの目を見ない様にする。

更に目を閉じた。何も聞いたり見たりしたくない様に見える。

この追求で、ラストの機嫌やユウキ本人への心象を悪くしてしまう事を恐れているともとれる。

 

「ラストは強い。間違いなく。でも、ありえないんだ。絶対。

 ボクより反応速度・運動性能が高いのは、おかしいんだよ!」

 

 泣き言に近いながらも、大声を張り上げて一気に出し切る。

一つの可能性を妄想してしまい、そのことで涙が出てしまう。

 

―――ラストもボクと同じなのか?

 

 ユウキは顔を上げて、ラストの表情と目を見る。

まっすぐに、少しでも表情が動けば、確証が取れる。

 

そう信じて、一つの矢を放つ。

 

「だって、ボクは三年間『メディk――」

 

 しかし、ユウキは自身の反応速度を裕に超える速度で、ラストに後方に回り込まれ口を手でふさがれた。

ユウキは目の前からいきなりラストが消えたかと思うと、

背中にあたる胸と身体を包み込むような幻想とされる人の温かみを感じ、

口元全体を覆い被せる大きな手に大きく驚く。

 

「んーっ、んーっ!」

 

 ユウキは放してほしいと懇願するが、ラストはにこやかに「やだ」という。

 

「横浜大付属病院、地下二F研究病練、末期研究科」

「っ!」

 

 彼は彼女の耳元で囁く様に言った。

この一言で、彼女の目尻に涙が浮かび上がる。

 

「知っていたさ。僕も同じようなものだからね」

 

 この一言でラストは、口を覆っている手をどかせユウキを開放する。

解き放たれたユウキは、直ぐに振り返りラストに抱き付いた。

声を押し殺し、涙をこぼす。

ラストはユウキを抱きしめる。

 

「……ありがとう、ユウキ」

「……」

「一年でいい、僕にチャンスを頂戴?やりとげてみせるから」

 

 この意味不明な言葉に、ユウキは頷く。

ユウキはふと顔を上げる。

そこにはラストの顔。意外と近く、顔が紅潮し羞恥に鼓動が跳ね上がる。

ラストの行動に、ユウキは察したようで瞳を閉じる。

 

だが……

 

「45層!きっついたたかいだったぜ!」

「だよなあ!」

 

 風林火山のギルドリーダークラインを筆頭に、その団員が入ってきたのだ。

これには両者とも吃驚した。

その為、ラストは無意識にユウキをお姫様だっこをして、彼らの前に出てしまう。

この事態に彼は頭を高速回転させる。

ユウキはというと、事態についていけず顔を紅潮させたまま彼等と鉢合わせてしまう。

 

そしてクラインらの後ろには、キリトと復活したアスナが控えている。

 

第一声

 

「お、ラストとユウキじゃねえか!おまえらどうしたんだ!?」

「あ、ああ。フィールドボスにちょっかいかけたら、死にそうになった。

 今こうして、状態異常回復薬を買いに行こうと」

「まぢか!?ラストでも苦戦するとなったらやべえな。

 さっそくマージン上げだ!」

「「っしゃああ!!」」

 

 なんとかクライン達を騙せたラスト。

しかしその後方に控える奴らには、この手は通じなかった。

クライン達はその場を早急に去ったので、この場はラストワルツのみになる。

 

「ラスト……ついにユウキの想いに応えたんだな!

 朴念仁だと思ってたが、ちゃんとやるときはやるんだな!」

 

 右こぶしを『d』とする。

アスナもアスナで……。

 

「ユウキも、ついに大人の階段を一つ上ったわね!」

 

 良くも悪くも、二人はラストとユウキを祝福する。

ラストは苦笑いをするしかなかった。

この後ラストはユウキを降ろして、彼等とこれからを話す。

ちなみにアスナは、副団長として生き残る彼等と戦術面で対話する様に言われている。

 

今はまだ昼。一日は長い。

 

 

 

「ふぅ……」

 

 彼は目を覚ます。

隣の隙間を挟んだ先には、眠る和人がいる。

ナーヴギアを頭にはめ込んで、SAOプレイヤーは生死をかけて常時戦闘を行っている。

そんな最中、彼等だけは現実に戻ることが可能だ。

 

 現実で行うのは、体力維持・栄養補給等肉体の調整を行う事だ。

基本的に夜の暇しているときだけのみ、覚醒する。

しかし今日は真昼間だ。

 

 こんな日に彼が行うのは、とあるハードの調整だ。

これができて、初めてアレを行うことができる。

 

「誠璽、また重村教授からの依頼品だ。試してくれ」

「わかった」

 

 彼は父親が箱から出した物質を、頭に装着する。

彼の視界はただの現実世界。

しかしそこは外界から流れ出てくる光情報を、電気信号で変換する世界である。

 

この機械はその電気信号を変化させ己の視界と感じる部位に、情報を組み込ませることができる。

 

「プロトタイプ3番、『オーグマー』か。

 よし、オーディナルスケール起動」

 

 世界が拡張され、視覚情報とするUIが視界全てに広がる。

彼はこの機械の調整を行う。

そしてこれの問題点やバグ等のあら捜しを行って、大学に情報を受け渡す。

此れを一連の繋がりとして、今まで行ってきた。

 

さあ、完成はもう少しだ。

 

 

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