6:強行軍<主観的俯瞰>
客観的俯瞰ならば、彼らはデバッガー……周囲の者や言動を省みない愚か者として記すだろう。
だがこれは主観的である。
彼等中心に考えるし、ましてや面倒な人間の心情を挟んでまで状況の整理をすべきか。
そんなバカげた時間の無駄は行わない。
さて、デバッガーによる強行軍は50人から自主退場ということで、更に人数が減り30名となる。
ここにはドラゴンナイツという多人数ギルドやソロ・ある種のカリスマのあるディアベルがいる。
他にもβテスターがいた。
「レイドの御蔭で、此処に居る全員が経験値を貰える。
故に見つけた獲物は報連相を行うんだ。そして一気に狩る。
一応レベルは、25を超えている」
現実の事を云うのもマナー違反といわれているが、この個人情報も危惧すべきマナー違反だ。
個人情報の暴露は勿論のことだが、信用はあまりしてはいけないからだ。
「それと、ボス部屋までいけばあとは周辺をマッピングして終わりにする。
このレイドも今日一日で終了だ。
それまでに狩って終わらせる。
よって、死ぬ気でついてこい」
なんだこいつと云って、嘗めている人物が大勢いると思う。
しかし、そこはデバッガー。
後に見せる『システム外スキル』の集大成により、異常な加速と速度と剣撃でフィールドボスを瞬殺した。
通常より膨大な経験値とアイテムが、皆に行き渡る。
このゲームの状態は、一度初期化されているから、ボスが出てきているのだ。
そのままのゲームならば、出現しなかっただろう。
「惚けている暇があるなら、己のその眼[まなこ]で『システム外スキル』を得物とせよ!」
「来い!ラストオーダーに続け!」
キリトも大声を張り上げて、突撃する。
最速と言われるダガー使いをも置いてけぼりにする彼らは、周辺にポップしてくる敵を瞬殺した。
更に光量子PCが可能とする先読みや同期ずれを起こし、敵の攻撃を回避と共にカウンターを発動。
おいてけぼりな仲間の攻撃はお互いに当たらず、敵を撃破する。
フィールドボスを撃破して、迷宮区最奥部の一層ボスのHPを減少させて偵察を終わらせ、
そのまま返す刀で全てのマッピングを終わらせた。
「参加してくれてありがとう。ギルドリーダーには、レアドロップ品と資金を渡そう。
更なる発展と攻略に心血を注いでくれ」
「あ、ああ」
ぼけっとしていると、敵が粒子となって散ったと思ったらいきなり大量にレベルアップして、
スキルを覚えようとしていたらいろんなアイテムがストレージに入っていて、
整理していたらマッピングがいつのまにか終わっていた。
数分の出来事で、全てが終わっていた。
更に資金である万単位のコルを惜しまず、押し付ける形で譲渡した。
しかもいつの間にか、『はじまりの街』で最高に資金がかかる宿に予約済みで転移させられていた。
混乱しているプレイヤーもいただろう。
それでも、恩返しと思う輩や彼らに任せればいいんじゃね?とおもうやつら、利用してやろうというやつら…。
三者三様もびっくりな人の様相を発見しては、ラストもキリトも反省を行う。
ただしレベリング作業を行ってな!
「スキルスロット、何にしようかと思ってるんだけど」
「鍛冶でいいんじゃね?僕は料理~」
「物好きだな」
「当然さ。既に体術は取っているんだし」
「ああ」
この廃人デバッガー共は、日付が変わる前に宿で寝る事にした。
二人が想うのは、パーティを組みラストを長とした中で違う敵を撃破した方が経験値効率が最大だという事だけだった。
ただ、この方法は既に確立されているので、なんとも思わないのが悲しいところだ。
最後にスキルの『体術』と『料理』について伝えよう。
『体術』というのは、膝蹴りやジャブ等の肉体言語というものである。
柔道や少林寺拳法、合気道等が存在しない中、形式として存在しているのだ。
これを会得すれば、剣の威力や回避運動の効果範囲や可動範囲が飛躍的に増加するのだ。
運動というものに不可欠な体重移動がこれに該当する。
ただの蹴りより、体躯や体幹を利用したものが効果的である。
主な方法として、回し蹴りの様に遠心力を利用したり、腰や腕等の力の伝播を利用した動きだったり。
とにかく、根本を使えいろんな物事を簡略・単純化してくれるのだ。
『料理』。料理セットで持って、アウトドアなサバイバル用品でシチューやカレーを作ったり家で食事を作れる。
主にモンスタードロップ品や雑貨屋に売っている野菜等素材や調味料を駆使して、レベルに応じた料理やおいしさを提供する。
レベルと熟練度により、料理にバフが付くこともある。
中世をモデルとしているのか、極端に娯楽が少ないのでこの食事のおいしさは一時の安らぎを与える。
6:出会い<主観的俯瞰・思想発現>
「やはり行動が早いな」
「ああ。だが、こっちも急がなくてはならない」
デバッガーが行っているのは、仲間探しだ。
基本的にこの二人は指図される方が良かったりする性分だ。
しかし、今現在はラストが上になっている。
一応キリトはそれでいいと言っているが、事態は結構深刻だったりする。
理由として、仲間がいない事で周囲への溶け込みが少ない事だ。
今までマッピングを無視して、効率の良いところで引きこもっているのだ。
そりゃ、世間の情報に疎くなるのはとうぜんだろう。
その対価は、多大なコルとアイテム・大きなレベルのアドバンテージだ。
更にそれと共に、今後使用するであろうスキルの練習による熟練度の加算だ。
ここまでくれば、一層は余裕だ。
しかし、ここで彼らは出づらくなっている。
理由は攻略組の縮小だ。予定よりも数百人少ない。
それでも徐々に増えつつある安全レベル帯。
このままカリスマのある人物が、召集をかけてくれたら…。
なんて思っている。
もしも、このまま均衡であり状況が動かないのであれば、50層まで一気に突き進める自身がある。
既に茅場の存在を把握している。
茅場は、ヒースクリフとして存在している。
まだしがない存在であるが、それでも強い事には変わりない。
今はまだ手が出せない。
デスゲームという意味でなく、このまま突撃するとヒースクリフでなく茅場と対決してしまうからだ。
つまりシステムの割り込みで、存在を除去される可能性が高いのだ。
それを踏まえると、中々手の出しづらい相手だ。
「中々きついな…ん?」
「どうしたんだよ、ラス…あぁ、そういうことか」
デバッガーが気づいたのは、遥か遠くで戦闘しているソロのプレイヤーだ。
普通に戦っていれば勝てる。
そんな相手だが、なんだか様子がおかしい。
今まで優位を保っていたプレイヤーが、いきなり突撃する。
だがそれは最悪手。直ぐにその攻撃を回避され、カウンターを貰う。
体力は黄色でなく、赤色の状態になる。
すかさず、対峙している敵のレッドウルフは突進し、死への恐怖におびえたプレイヤーの命を刈り取る。
文字通り、体力は0へと向かった。
「だが無意味だ」
「そうだな」
「対価は命だ、消えろ」
ラストとキリトによる、剣撃技能で一秒足り共残さず抹殺し、ラストのユニークスキル『レスキュー』を使用。
システム外スキルで、いつの間にか駆け寄っていたプレイヤーにより粒子となった敵に目もくれず発動する。
レスキューにより、HP0となった人物がHP1となって蘇る。
「おい、死ぬな。死ぬのならば、魔王に勝ってからにしてもらおう」
冷酷な漢としてロールプレイしているラストは、キリトからすると爆笑ものだ。
しかし状況を読んで、今は笑うべきではないとしている。
「ごめん」
びっくりするほど冷たい聲。しかし、当の本人は無視している。
体力を完全治癒するまで、看病を行ってからパーティに誘う。
「我らと共に来ないか」
「……」
「君には悪いけど、拒否権はないから」
「そう…」
フードを深くかぶる存在は、手を柄にかける。
その瞬間、ラスは剣を持って制する。
喉元に持っていかれる刃。
「殺したくはないが、抵抗する様であれば斬る」
「まてまて、二人とも。争うために来ているんじゃないんだから」
「そうだな」
出会いは最悪だが、親睦の印としてラストはキリトとローブのアスナに手料理を馳走した。
「本気でおいしいと…(あれ?)」
後に続く聲が聞こえない。嘲笑の怨嗟が、その喉から出ることはなかった。
「おいしい…(嘘だ。味覚がシステムに騙されているだけなんだ)」
「だろ?こいつ、見た目に依らず自炊しているんだぜ?」
「こらこら、リアルの事言っちゃダメだろ~?」
「世界でたった一人の仲間に文句垂れるのならば、これくらいいいだろ?」
「へーへー」
彼らは共に釜の飯を食う。
これによりパーティを組む事になる。
ローブに身を包み、フードを深く被る人物―アスナ―は渋々というような様相だ。
そんな嫌な顔をしている本人は、次の日から衝撃を持って分岐点を迎える。
そう、先ほどのレスキューは気まぐれではないのだ。
遺伝子コードと才能を見出し、救い教授するのに時間を惜しみなく使用できると思ったからだ。
それくらい本人の能力は抜きんでていた。
流石にキリトもその事に気づいたのだろう。
宿に帰参する時に出会った雑魚に、アスナを嗾けた。
その時の剣速はどうでもいいとして、動きに無駄が少なくシステム外スキルがなくとも最小限に
戦闘敷地を取ったのだ。
縦横無尽でなく、左右の動きによって行う『翻弄』。
AIが基本的に敵を攻撃するのは、相手と自分の距離を測り一番近い者を割り出すからだ。
そして、射影を用いて距離計測を行い、あたり判定を使用して敵とフラグ管理されている者を攻撃する。
これは二次元な思考法だ。もしこれが三次元ならば、Z軸をも考えて動かなければならない。
二次元であれば、基本的に一直線となるが三次元はそうもいかない。
己と敵の間には、障害物があるかもしれない。
そうであれば、その障害物を考えてその分距離をのばすか、AI思考を増幅しなければいけない。
更に今は量子でどうにかなっているが、二進数C言語時代であれば遅延や思考停止となるほど過負荷がかかる。
迂回・跳躍・潜航・浮遊・羽ばたき等、特殊行動を起こして障害物を回避する。
一番いいのは、地面にルートを埋込それに合わせて移動させることだ。
ルートにポインターを置き、一番敵に近いルートを探り行動する。
戦略シミュレーションHoi・VictoriaやCiv等にみられるシステムだ。
三次元であれば、無双ゲームにみられるだろう。
赤壁でみられる全ての将兵が、ウサギの様に跳ねるのはポインターによる最短距離がずれているだけだろう。
つまり障害物を認知できずにいると…。
話が脱線した。
つまり、どんなことであろうと状況がいきなり変化するほどの速度を用いれば、
相手に自分がそこにいる状況を作り出せる。
敵がA点にいるのなら、A点に攻撃すればいい。
しかしAIにも思考フレームが敷設されているはずだ。
そうでなければ、量子という人間以上の速度で反応し絶対に勝利できない敵となるだろう。
故に猶予がある。
この隙間を掻い潜って、動けばどうなる?
猶予を0―30―60とAI思考に猶予を与えればどうなるだろうか。
これは0.5秒に一回思考を行うと仮定する。
人間の瞬きは、更にこれより速いので余裕で0.5秒の間に行動できるだろう。
今は電脳世界。
故に0.01秒だって叩きだせるはずだ。
0.5秒にA点にいるから攻撃しようとするが、それはタイムラグとして行動が行われる。
判定して攻撃するのには、別のシステムデータを引っ張ってくるのでいっしょくたんに扱われない。
C言語基準であればAIをif文で作り上げた中に、別の配列やtxt文章等から引っ張ってきた情報データを差し込む。
これにより射撃や攻撃が行われる。
相手と自分の距離がこれより短ければ、この確立でこれが行われる。
一番簡単に射撃で行うのであれば、最初に相手と自分の距離を導き出す。
相手との縦型シューティングであればX軸、横シューティングならY軸。
射撃が一直線という仮定で言えば、それぞれ一番近い数字である0を入手する。
その0を引き出す様に、+であれば-を選び、-であれば+を選ぶ。これで距離をその軸のみ0にする。
0になったのならば、射撃の配列を敵機データから引き出して、fps間に行われる射撃に攻撃猶予を与える数字を
有る限りの間射撃と云う名の表示する。
射撃は弾丸の方に情報を持たせておけばいい。
出現フラグを0にしておけば、1になった瞬間表示と射撃座標と共に内部情報を保持したまま行動を起こす。
そして猶予を-して0になれば、表示停止。
上記のように、60fpsで動かす様に指示してあれば30fpsの時に猶予を再び戻してやればいい。
猶予は弾丸に配列されている最大猶予を、他の数字に代入させて引けばいいので
減ってしまった引数にそのfpsに達すれば最大猶予を代入すればいい。
最大猶予=引数にすると、最大猶予が変化するので逆にしてやる。
引数=最大猶予。これにより、引数が最大猶予になるので次に30fpsになれば射撃表示を行う。
実際は軸0になると射撃で死ぬので距離計測はせず、射撃表示者が出現すれば延々と表示するようになっているはずである。
あれ、なんの話だっけ。
とにかく、この猶予の間に動けば、A点に居るのにいないのでAIを騙すという行動を起こせるのだ。
0.1秒にA点から移動すれば、敵は0秒に認識し自身の攻撃データにあるフレーム後の攻撃を行う。
しかし0.5秒に敵がA点にいないので、攻撃をやめさせ敵となる者を射影し距離を計測する。
敵はB点にいる。すかさず…と云ったところだ。
結論として、AIの猶予内に動けば『翻弄』と共に『ミスリード』できるわけだ。
実は攻撃をするより、プレイヤーに自由と猶予を与える方が難しいのだ。
話を戻そう。その猶予内に動くアスナは、敵を翻弄し続け勝利した。
文面であれば余裕だろ?と思うだろうが、一触即発・鎧袖一触で事実上の死な世界だ。
恐怖・不安により、高鳴る心を抑えつけ行動に出る。
なんとも凛々しい事か。
これが熊を狩る猟師の心か、と感心する。
しかし、無意味だ。
デバッガーは、死と同じような状況で戦ったことがあるので慣れたものである。
「アスナ、明日から我々と共にレベリングだ。無理とは言わせない」
「…命を救ってくれなんて言ってない。でも、付き合ってあげる」
「女[アマ]が調子に乗るな。この時こそ、男の闘争本能に頼れ」
「まあまあ、お互い疲れているんだし、休もうよ。な?」
見た目キリト以上にもやしなラストが粋がっている。
それを見るアスナは、若干強気に出ているがそれがラストの偽善心に引っかかったのだろう。
わざとらしく怒ってない様に、立腹する。
しかし、そこは友人キリトだ。
デバッガーの中で、ソロでありながらチームプレイを行おうとする姿勢により
人の情緒や精神の起伏を過敏に読取り、柔軟に対応している。
こうして凸凹三人は、『はじまりの街』で一番高い宿に泊まる。
ラストオーダーは、アスナを徹底的に指導する鬼教官として明日の目録を立てる。
キリトはアスナとラストをどのようにして諌めるか、頭を充分に悩ませる。
アスナは今日の不覚を思い至りながら、APP17とAPP15のキリトとラストにどのように接するか悩む。