SAOのデバッガー   作:名無しの権左衛門

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9:無茶ぶりが過ぎる!<キリト主観>

9:無茶ぶりが過ぎる!<キリト主観>

 

 話は唐突だった。

いやまあ、知ってたけどさ。

 

『終焉の狂想円舞[ラストワルツ]』という名前のギルドを、ラストが作り上げた。

なんとなく意味がわからなくもないけど、近寄りがたいだろうなぁ。

 

中二っぽい名付け方だけど、名前負けしない俺達だからこそ可能としたものかもしれない。

 

 更にこのワルツに入るのは、今の所俺と誠璽とアスナだという事。

このワルツは基本形骸化させて、俺達が中心に攻略と対人戦に特化した強靭な理性ある狂人を作り上げる事が目的らしい。

その第一に含まれるのは、アスナ。

今の所一番のセンスを持っているのが、彼女であるからだということだ。

 

 ってか、女の子だなんてしらなかったよ。

 

 それはいいとして、次に目を付けてるのはディアベル。

彼は独特のカリスマを持っている。

それを伸ばしながら、実力ある指揮官に仕立て上げたかったというものだ。

 

 他にもいるようだ。

 ユウキという女性、マーベリックという男性だ。

ユウキはアスナ以上の個人戦闘能力を持つだけで、配下として非常に役立つとのこと。片手剣使い。

 マーベリックは視野が広いのか、タンクとアタッカーを行う事ができる人間だという。

彼は前後によく移動するのに、その視野のおかげで仲間の動きを随時確認し、

それに合わせて行動を設定できる指揮官向きとのこと。大剣使い。

 

 

「というわけで、育成は行うからアスナはキリトが面倒を見てやってくれ」

「はあっ!?」

「まあまあ、初日はこっちがやるから。それとも…例の二人をやるか?

 勿論ユウキだけをキリト色に染めてもいいんだぞ?」

「いやいや、そういう意味じゃなくてな!」

「やっぱり、男は色気には勝てんか…」

「こらそこ!勝手に期待しておいて、勝手に落ち込むんじゃねえ!」

 

 俺は陽気に笑う誠璽に突っかかる。

まあ効率を鑑みればアスナは誠璽がやったほうがいいだろう。

でもさ…男ならば、下心を抱くもんじゃないか?

 

 って、違う違う。

そんな事の為に、デバッグをしてきたわけじゃない。

俺達の目的は、約一万人の人質を現実世界に一人でも多く帰還させることだ。

こんな狂った世界に居続ける謂われはない。

 

そういう矜持の為に、俺は頑張ってきた。

ヒーロー気分もあったけど、それでも攻略と育成を優先したんだ。

色恋沙汰なんて、まだいくらでもできる。

 

「まあキリトがやるということは決定しているよ。

 僕はユウキとマーベリックを勧誘したり、第一層クリアの布石を敷いてくる。

 じゃ、頼んだ」

「わかった。ってか、初日はやるんじゃなかったのか?」

「キリトは好かれ、僕は憎まれ役を演じるよ。

 人はどうであれ、何事も好かれ嫌われはあったほうがいいのさ」

 

 いつも思うが、あの達観は結構うざい。

しかし道理だから、流すこともできない。ここは素直に受け取り、アスナの指導に移ろう……

 

 

 俺達が話し込んでいたのは、早朝の時だ。

アスナはまだ一室で休んでいるようで、真に健康的思考だ。

だけどこの世界では、更に早起きして貰わなければならない。

 

理由として、俺達の技術は見られてまずいものばかり。

更に情報屋や他の敏捷値が上がっている奴に目を付けられると、

返っていろんな情報を抜かれてしまうからだ。

 

 俺は部屋の扉をノックする。

これで扉越しで、聲を把握することが可能になる。

一種のインターホンだ。例外として聞き耳や目星等の探索スキルだ。

これ等スキルによって、普通ではできない事をすることが可能である。

 

 そうだな……『システム外スキル』というより『フリースキル』を使えば、

容易に扉越しの状況やフィールドでの敵味方の居場所を把握することができる。

『スロットスキル』である聞き耳や目星は、取るだけ無駄であることをここに記す。

 

ただ物凄い集中力を要するので、戦闘中じゃあまり向かない。

物陰に潜んで行う銃撃戦だと、思案の余地があるのでその手のゲームでは非常に役立つだろう。

 

「はい、何か用ですか?」

 

 扉の向こうから聲が聞こえる。

 

「俺だ。キリトだ。これから、朝食を取る。

 食堂に来てくれ、朝食を提供する」

「うん、わかった」

 

 昨日とは打って変わって、聲が明るくなっている。

きっと心を開いてくれている筈だ。

あーでも、これから無茶ぶりを強いるから、心象が悪くなるだろうなぁ。

 

 俺はアスナに教授する内容を、簡単な物から優先して脳内整理する。

 

 最初は誰にでもできる奴にしよう…。

 

『スイッチ(相互攻撃)』『武器破壊』『翻弄』『部位破壊』『無音行動』『オレンジ回避』

『二次間接攻撃』『スイッチコンボ(連撃)』『スイッチユニゾン(結合)』『POTローテ』

 

『急所攻撃』『聞き耳』『先読み』『防具破壊』『誘導』

『受け流し』『防具攻撃』『四肢武器化』『回避運動』『空中闊歩』『ドロップ増加法』

 

『遮断』『対人戦術』『決戦』『超回復』『効率レベリング』『二重攻撃』『投擲』

『ボーンずらし』『3D』『デバッグコンソール』『二重転移』『内部破壊』

 

『超感覚』『並行展開』『発動遅延』『偽装スキル』『スキルリンク』

 

 今はこれくらいでいいだろう。

他にもあるが、やりすぎると死ぬからな……。

 

 この後、アスナと共に朝食を取る。

誠璽が作った料理を、インベントリにいれてある。

これを二つ座標展開させることで、お互いの目の前に食事が描写される。

黙々とというわけではないが、静かに食事を頂く。

 

「今日の予定を話しておく。この後、迷宮区に潜って練習をする。

 最初に初心者でもできる技を、随時教えて行く。

 できないなら云ってくれ。その時は、違う技を教える」

「分かった」

 

 食事を終えたら、その容器のみ回収する。

汚れることはないので、連続して使うことができる。

現実世界なら、営業停止レベルの雑菌が湧くだろう。

 

 

 

 

 さて、一層の迷宮区にやってきた。

聞き耳を駆使して、周囲に何がいるか探る。

 

周囲100メートルに、雑魚であるホブゴブリンがいるだけだ。

 

 プレイヤーは今の所、効率の良いところでレベルアップをしている頃だろう。

 

 俺は武器のみ、少々弱い物に変更する。

そうしなければ、圧倒的レベル差で一瞬で倒してしまうかもしれなかったからだ。

今回はアスナのレべ上げ兼スキル上達だ。

無駄は省きたい。

 

「そんじゃ、最初は『スイッチ』からだ」

「うん」

 

 基本的に叫んで交代の時期を聞き取って、再行動を起こす様にしている。

しかし、それでは基本的なナニかがわからない。

このフリースキルは、他者によるスキルの割り込みでヘイトを溜め敵の眼を欺きつつ、

自身のスロットスキル発動後の隙を無くし再行動できるようにする技術だ。

 敵にどちらが本来の敵なのか、ということを思案させる行動封じの役目もある。

おかげでこれにより多くのプレイヤーが助かっている。

 

 パーティを組んでいる為、俺とアスナのスイッチは非常に安定しゴブリンを余裕をもって撃破できた。

 

「次は『武器破壊』だ」

「うん」

 

 このフリースキルは、敵の武器のどこかに剣撃を加える事で耐久値を大幅に削り落とす事ができる。

手首を落として武器を手に入れるより、真に献身的だ。

武器を失わせることは、敵のプレイヤーにたいする優位を失う事にもなりうるわけで……。

 

非常に戦闘中に役立つ。

 

 ただし油断したり時期を見間違えれば、自身の武器を壊し最悪命を落とすので細心の注意が必要だ。

慣れていない時、俺は死にまくった。

誠璽には大量の剣を決闘の時に折られまくったなぁ……。

 

「敵の柄や鍔に、此方の武器の切っ先や刃で傷を付けられれば、それだけで武器破壊につながる」

「細剣にはちょっときついんだけど」

「やらなければ、こっちが死ぬだけだ」

 

 俺は『並行展開』と『疑似スキル』により、隙を補いながら敵の『部位破壊』と『ドロップ品増加』を行う。

急所を突いて武器破壊も行ったので、大量のエフェクトが宙を舞う。

一瞬の出来事に、アスナは口を開き呆ける。

 

「とまあ、やりこめばこれくらいはできる」

 

 短刀を腰の鞘にしまう。

周囲にモブの出現がない事を再確認し、アスナと目を合わせる。

 

「…あの人。ラストさんといつもこんなことやってるの?」

 

 ローブを脱いで視界良好となり、俺への態度が柔らかくなった彼女は何故か震えている。

どうしたのだろうと思い、笑いながら了承の言葉を言う。

 

するとレイピアの切っ先を向けられた。

 

……あれ?

 

「こ、こんな危なっかしい事、他の人に教えないでよね!?」

「教えないよ。あくまで、ギルドに参入した人だけだ」

 

 流石にデバッガーびいきのスタイルだから、さすがにね?

 

 それに、こんな技を所かまわず振りまけば、殺人者がさらに強くなってひどい目に会う事は確実だ。

よってギルド員だけの秘匿とする。

これは俺と誠璽のデバッガー時代からの約束だ。

 

まあ、基本的に不可能なのが多いんだけどな!

 

 

 この後も正午を過ぎて、夕闇に染まる時刻までフリースキルや戦闘に関しての研鑽を行った。

更に対人戦への抵抗を無くすため決戦を利用し、本気の攻撃をしかける。

俺が今現在確立されている戦闘スタイルを用いて、アスナを滅多打ちにする。

 

体力がなくなれば回復して、フリースキルで殴っての繰り返しだ。

 

 アスナに目的を話すと、ちゃんと賛同してくれたが今必要だと思わないと言っている。

そんな甘ったれを云ったので今後言わない様に、事前に誠璽から言われたことを実践する。

 

「き、キリト君!もうポーションがないの!」

「俺のがある。つづけるぞ」

「……」

 

 アスナの顔が青ざめているが、此処は心を鬼にして仕掛ける。

集中力がひつようだが、それも訓練である。

回避しなくても、問答無用でやる。

 

外道と言われようとも、泣き言を叫ばれても全てを無視して撃滅する。

 

「キリト君……もう、お腹すいちゃったよ……」

「そうか。では、これを受けてから、食事休憩にしようか」

 

 俺はここまで耐えたアスナを称え、夕飯前最後の攻撃を仕掛ける。

文句や泣き言を大量に聴き、今持ち得る技術を使うスキルや通常攻撃を回避した。

根気の強さを確認したから、これを一区切りにしたいと思う。

 

「あの……キリト君……それ何……?」

 

 俺はコンソールを使って割り込みをかける。

これがこの世界の本来の俺だ。

 

全身を漆黒の装備にし、二振りの刀を背中に装備する。

更に俺の周囲に数多の漆黒の剣が舞う。

 

「『劫火剣嵐の舞』とでもいうのかな。これが俺の……デバッガーの力さ」

 

 黄昏に世界が焼かれながら、金色の太陽を背にしアスナにラストアタックを敢行する。

 

文字通り瞬殺した。

 

『Xenoverse Crunch』と誠璽が中二病全開でつけた。

本当に最大の単位の破壊といわれる力を示すことができる。

 

 この俺のデバッガー特典は、二振りの効果や色彩が両極である刀剣・無制限の最高武器の出現だ。

この無限の剣嵐は、放っては穿ち爆破させたりそのまま投擲したり、刀剣をつかみ取って攻撃手段にすることが可能。

防御やアシスト・緊急の装備として、非常に重宝する。

しかも耐久値がなくなれば、敵に再突入させて爆破してやればいい。

 

 これらが空中に浮き、自由に空間を闊歩できるのだから非常に強い。

勿論努力なしに手に入れることはできない。

50~74のボスラッシュを行う事で、やっと手に入れる事が可能となったんだ。

 

「えっ、ちょ、武器に乗るなんてっ」

「SAOでは可能なんだよ、アスナ」

 

 刹那だからこそ、決闘の後ポップした敵を倒す事で己の力を誇示する。

この力は、この層では強すぎるからまだ封印だな。

さあ、終わりにしよう。

 

 

 

 

 俺達はこの後、夕食を食べて昨日の宿へ戻った。

 

 まだまだ、アスナは成長期だ。無理させるのはよくない。

今日は休ませる方が良いだろうな。

 

俺はそのままアスナを部屋へ送ってから、自室でねた。

 

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