ガイスター基地
『・・・・・・突然だが久しぶりにパワーストーン以外の宝を盗む。』
『『『『はあっ?』』』』
ダイノガイストの一言に四将は思わず同じことを口から発した。ダイノガイストは椅子に腰を掛けたまま話を続ける。
『ここ最近パワーストーン集めで宝を奪うのを疎かにしていたせいで宇宙船を買うための資金が集まらんからな。とにかくトレイダーに高値で取引できるような宝の情報を集めろ。』
テレビを見ているサンダーガイスト以外の三人は取り囲むようにして話し始める。
『久しぶりの宝なのはいいけど何を盗めばいいんだ?』
『そんなこと聞かれたっていきなり考え付くわけねえだろ。プテラ、お前いつもみたいに何か考えろ!』
『ふざけたこといきなり言うんじゃねえ!俺だっていきなりそんなもん考えつくわけねえだろうが!・・・・・・とは言っても、何かしら盗まねえとな・・・・・・って、サンダー。お前も話に混ざれ!』
『お宝、あった。』
『『『何!?』』』
三人は、テレビを見る。そこには世界各国の首脳で行われている対ガイスター対策会議の生中継だった。話しているのはイギリスの代表者だ。
テレビ中継
「え~つまり、貴国で計画している『ブレイブ・ポリス・プロジェクト』は今後のガイスターへの被害を最小限に抑えられる可能性があると?」
他国の代表陣が注目しながら聞く。
「はい、今まで申した通り『ブレイブ・ポリス・プロジェクト』は元々、ISの登場前に人間では対処できない事件現場での救助活動及び犯罪現場への急行、そして、最終的に国際社会における犯罪の撲滅を目的として我が国が計画されていたものです。プロジェクトは、十年前の研究所爆破の事故及びISの普及で一時凍結となりましたがガイスターの登場による被害とIS使用制限された現在、再注目され、計画が再始動が決まりました。」
会議室のパネルにいくつかの図面が現れる。
「これが現在『ブレイブ・ポリス・プロジェクト』により、間もなくロールアウト予定のロボット警察官第一号『BP-119デューク』の図面です。」
「「「おぉ・・・・・・」」」
各国の代表は、驚きの表情で図面を見る。
「しかし、コックピットが無いようですが操縦はどのように?」
「最新型AIを搭載したデュークは、人間の言語を完全に理解し、独自に行動します。よって、ISのように搭乗者が装着する必要はありません。」
「では、デュークは自分自身の意志で犯罪・・・・・つまり、ガイスターへの対処をすると?それでは逆に利用されてしまうのでは?」
「いえ、その危険性はありません。デュークは飽くまでロボットですから。ISの登場から十年が経っておりますので現在最新の技術も導入し、対ガイスター用の追加パーツも間もなく完成します。この計画は元々日本含めた数国で進めていた共同のプロジェクトのため、デュークの運用次第によっては他国での計画も再開予定です。」
「・・・・つまり、現段階でロールアウト予定の機体は他にあると?」
その質問に日本の代表が答える。
「我が国日本でもデュークとは別系統のロボット警察官の開発が再開されています。」
「して、デュークの初披露は?」
「デュークの最終調整は間もなく終了します。近いうちに運用テストを開始します。」
ガイスター基地
『『『・・・・・・・・』』』
三人は黙ったままテレビを見る。
『あっ、お〇ゃ丸始まる。』
サンダーガイストは、慌ててチャンネルを変えてアニメを見る。三人は、また囲むようにして会話を始める。
『ロボット警察官か・・・・・・・売れんのか?』
『少なくともトレイダー相手なら売れるんじゃねえのか?ほら、消防車の時も最新型だったら買うって言ってたしよぉ。』
『だが、もう一つなんか添える物があればいいんだがな・・・・・・取りあえずボスに進言してみるか。』
四将を代表してプテラガイストがダイノガイストの元へと行く。
廃船 アドベンジャーの中
「・・・・・それって、本当にパワーストーンなの?簪。」
鈴は、アドベンジャーの中で学園で出された課題をやりながら聞く。千秋もその隣で課題をこなしていた。
「確か“スターモンド”だったよな?」
「うん。その昔、アベリアン森林地帯で発見された鉱石でその美しさからダイヤモンド以上の噂があると言われているんだって。」
簪が言うとモニターにその宝石が映し出される。形状的には確かにパワーストーンに見える。
「う~ん・・・・・でも、それだけだとパワーストーンとは言い切れねえな・・・・・・・あっ、千秋。ここ教えてくれ。」
弾も問題を解きながら疑問を投げかける。
「これを見てみて。」
簪が映像を切り替えさせるとそこには森の中にポツンとある円状のクレーターがあった。
「スターモンドが発見されたのはこの大昔の隕石が落ちた後なの。」
「へえ~。」
「シルシルが出したヒントにそっくりだね~。」
本音は弾からゴルドスコープを見て確認する。
「これは間違いないわね!」
「調べる価値は十分にあるな。」
『して、主たちよ。そのスターモンドは今どこに?』
「普通はアベリアの美術館で展示されているんだけど、昨日ぐらいのニュースや報道で英国の美術館に限定展示されているの。」
「イギリスと言えば・・・・・・そう言えばセシリアが実家に帰ってんだっけ?」
千秋は思い出したのかのようにクラスメートの名前を言う。
「せっかくなんだし挨拶でもしに行きましょうよ(どこに住んでるかわからないけど)。そういう訳でアドベンジャー、イギリスに向かってしゅっ・・・・・」
「その前に今日はここまでやってからですよ。」
鈴が言いかけたときに虚が言う。
「え~!早くしないと・・・・」
「パワーストーン集めも大事ですけど課題が溜まると大変なんですよ?幸い学園の方は教育カリキュラムの大幅な修正で夏休みが延びる可能性はありますけど。」
「だったら・・・・・」
「虚さんの言う通りだぜ!小学校の時も初めの頃の全部終わらせて後の期間は遊ぶってやってたじゃねえか?俺の学校は延びないんだから大事に時間を使おうぜ!」
弾は賛同するように言う。その姿を鈴と蘭は呆れた目で言う。
「完全に取り込まれたわね、アイツ。」
「まあ、アレにとってやっと来た春ですから(今夏だけど)。」
「でも、お姉ちゃんもこういう風になるの殆どなかったんだよ~?」
「さあ、早く課題を終わらせていきましょう。」
「「「「「はあ~い。」」」」」
五人はそう言いながら課題を進める。
結局、一同がイギリスに向かったのは翌日だった。
ガイスター基地
『・・・・・・「ブレイブ・ポリス・プロジェクト」か。』
ダイノガイストは自室でプテラガイストの話を聞いていた。
『は、はい。あの国にとっては十分な「宝」だと思います。それに希少ですから・・・・』
『ふん、我々にそんなちんけな玩具など・・・・・・まあ、確かに金にはなるかもしれんな。』
ダイノガイストは、そう言うと一枚の写真を見せる。写真には例のスターモンドが載せられていた。
『これは?』
『パワーストーンの可能性もある。コイツとそのロボットを頂くとしよう。万が一パワーストーンでなくても金にはなる。』
そう笑うとダイノガイストはコウモリを呼び出す。
『インターネットにこの予告状を流すよう束に伝えろ。』
『キ、キィイ―――――――――!!』
コウモリは、部屋から出て行く。
『フッフフフ・・・・・・勇者共をパワーストーンに戻す前の準備運動と行くか。』
イギリス 『ブレイブ・ポリス・プロジェクト』研究所 格納庫
「・・・・・・・・・」
一人の少女が黙ってあるものを見上げていた。近日ロールアウト予定のデュークだ。
「・・・・・・デューク。」
少女が懐かしそうにしていると同時に悲しそうな目でデュークを見ていた。
「ここにおられたのですか?お嬢様。」
この場には相応しくないメイド服を着た女性が少女に声をかける。
「チェルシー・・・・・・」
「今日はもう遅い上に明日は式典セレモニーに関係者として出席ですよ。」
「・・・・・・・」
「・・・・・・昔のことを気にしているのですか?」
チェルシーと呼ばれた女性は、デュークを見ながら言う。少女の顔から一筋の涙がこぼれ落ちる。
「・・・・・どうして、人というものは過去に消そうとしたものをまた掘り出そうとしますの?あれだけ危険と言いながら彼の記憶まで消したというのに。」
「・・・・・当時のことは私にはわかりませんが、あれはお嬢様の責任ではありません。それは、亡きご両親方も理解しているはずです。」
「・・・・・・・いっその事デュークにはずっとここで眠っててほしかったです。そうすれば危険なところにで向かうことなかったのに・・・・・・」
少女はそう言うとその場から離れていく。
「・・・・・・・さようなら、デューク。」
十一年前 『ブレイブ・ポリス・プロジェクト』研究所
「これはこれはオルコットさん!よく来てくださいました!」
十一年前の研究所において二人の夫婦に対して所長が挨拶をする。
「しかし、ご夫婦揃って来ていただくとは・・・・・いやはや何のおもてなしもできずに申し訳ございません!」
「いえ、私たちはそのようなことは気にしていませんので。所長、そう頭を下げずに・・・・・」
オルコット氏は、そう言うと所長はそうですかと言いながら頭を戻し、ある説明をし始める。
「現在、開発中の『デューク』ですが、AIを搭載してからいろいろコンタクトを取ろうとしているのですが・・・・」
「このプロジェクトは元々すぐに実現するものではありません。そう焦らずとも・・・・・」
「いえ!このプロジェクトは、我が国以外の競争でもあるのですから!こちらも負けるわけには・・・・・」
「あなた、セシリアは?」
夫人の方は気にするようにオルコット氏に聞く。
「ん?確かトイレに行くと一人で行ったが・・・・・・・・」
「・・・・・・ひっく、えっぐ、お父様・・・・・お母様・・・・・・どこ?」
一人の金髪の少女が涙目で研究所内を歩き回っていた。少女は涙を拭きながら、長い廊下を歩く。
今日は休みであるため、所員の数も少ないため、少女以外歩いている者の姿はなかった。少女は誰かいないかとあちこちの部屋を開けて見てみる。
「ここは?」
一つの部屋に入って中に入ると薄暗く誰もいない様子だった。しかし、何やら巨大な影があった。
「何?」
少女は奥に入ってよおく見てみる。それは組み立て中の五メートルはありそうなロボットだった。しかし、まだ骨組みとフェイスパーツしか付いていないためその姿はお化けに見えた。
「お、お化け!!!」
少女は一目散に逃げようとして転ぶ。転ぶと同時に履いていた靴が勢いよく飛んでしまい、操作パネルへと命中する。操作パネルは誤作動し、ロボットの目が光った。
「うわあぁ~あ~ああ!!怖いよ~!!お父様~!お母様~!」
少女は、また勢いよく泣き始めた。すると、ロボットの口が動いた。
『ワタシハ・・・・・・・・「デューク」・・・・』
「う、うぅ・・・・・・・・・えっ?」
少女はロボットの方を見る。
『ワタシハ・・・・・・・「デューク」・・・・』
「・・・・・・デュー・・・・・ク?それがあなたの名前?」
『ワタシハ・・・・・「デューク」・・・・・』
「私はセシリア!セシリア・オルコット!」
『セ・シ・リ・ア・オ・ル・コ・ッ・ト・・・・・・』
これがあの少女とデュークの出会いだった。
セシリアほんのちょっと登場。
次回は過去話がメイン。
・・・・・・ゴメンよ、デッカード。
お前のポジ、デュークにやっちまった。