とある科学の距離操作(オールレンジ):改訂版   作:スズメバチ(2代目)

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こういう方向の話なんですが、書いていて凄く楽しいです。



 


アイテム+αは思春期-ⅱ

 

 

 

 

 

「こんにちはー、滝壺さん起きてますかー?」

 

 

 

その一声で病室の扉が開き、絹旗と……七惟理無が滝壺の病室に入ってきた。

 

身体が反応して硬直した、思わず浜面を一瞥する。

 

 

 

「あ、起きてましたか滝壺さん。げ……なんで超浜面が此処にいるんですか?」

 

「朝掃除手伝ってやったのにその言い方はねぇだろ?お寝ぼけさん?」

 

「うぐっ……浜面の癖に超痛い所ついてきますね」

 

「滝壺、調子はどうだ?」

 

「二人ともお見舞いありがとう、調子は……先週よりもよくなってるってお医者さんも言ってた」

 

 

 

滝壺の病室に入ってきた絹旗と滝壺、二人は手土産に買ってきたフルーツゼリーをテーブルに置くと滝壺のベットの隣からパイプ椅子を取り出す。

 

テーブルの上に置いてあった中津から揚げが入っていたタッパーに気付いた絹旗が声を上げる。

 

 

 

「あ、これ中津からあげのタッパーじゃないですか!浜面ですか?」

 

「あぁ、昨日食ったの結構うまかったからな。滝壺にもと思って」

 

「浜面にしては超気が利きますね、なんせこのから揚げは私のお墨付きです!間違いない味なんです!」

 

「なんかお前がその低い声でテンションあがると普段とのギャップ激しい」

 

「浜面の癖に超生意気」

 

「急にトーンダウンするのやめろ!」

 

 

 

七惟達がやってきた、やってきたのだが。

 

なんだか先ほどの浜面とのやり取りもあり滝壺は七惟の顔を真正面から見られない。

 

 

 

「あん?どうかしたか滝壺」

 

「な、なんでもないよ」

 

 

 

視線が泳いでいる滝壺を気にかけ七惟が声を掛けてくれるが、返答にも詰まってしまう。

 

なんだろう、自分はさっきのことが頭の中にこびりついて離れないというのに浜面は全く気にせず会話しているように見える。

 

鈍感なのか、羞恥心が無いのか、物忘れが激しいのか……。

 

そのどれでもいい、今だけは浜面が持つその能力が是が非でも欲しいと思った。

 

 

 

うらめしや。

 

 

 

しかしどちらにせよ気持ちを切り替えなければ、滝壺だってもんもんとしているのが好きな訳ではない、元来こうやって皆で和気あいあいとしているほうが彼女だって好きなのだ。

 

絹旗と七惟、浜面のこういう馬鹿騒ぎに集中することで浮かび上がった七惟と超電磁砲の顔そっくりな美咲香の煩悩を振り払う。

 

 

 

「それでどうでした滝壺さん、中津からあげ」

 

「ん……」

 

「超おいしかったですか?」

 

「うん、美味しかったよ。ありがとうきぬはた、あんまりこういう揚げ物は病院食じゃ出ないから」

 

「え、それって大丈夫なんですか浜面。勝手に滝壺さんに脂っこいもの食べさせて」

 

「一応あの医者から許可は貰ってるから安心しろ」

 

「ならいいんですけどね。滝壺さんが気に入ってくれてよかったです」

 

「う、うん。何時も差し入れありがとう」

 

 

 

正直なところ病院食ばかりじゃ飽きていた、だからこういう差し入れは彼女にとって非常に有り難い。

 

……今回は味がよく分からなかったが。

 

 

 

「むぅ~ん?なんか滝壺さん、調子悪かったりしますか?」

 

「う」

 

 

 

察しが良すぎるのも問題である。

 

そんなことは断じてない。

 

断じてないのだが……。

 

 

 

「そんなことないよ。きぬはたも心配性だね、ありがとう」

 

 

 

こちらの返答に対して「そうですか……?」と疑問符を頭の横に描きながらも引き下がってくれた。

 

 

 

ごめんきぬはた、それよりも気になることがあって。

 

 

 

目の前で純粋にこちらを心配してきてくれている絹旗。

 

そんな可愛い年下の子に対して一つの疑念が浮かび上がってしまったのだ。

 

絹旗が七惟に好意を寄せているのは間違いない、それは同じ感情を抱く自分から見ても確信に近いものがある。

 

正直なところ、絹旗は自分と違ってかなり露骨に好意を寄せているというのにそれに気づかない七惟もどうかと思う、入院している自分と違ってアクションも起こしやすいだろうし接点だって作りやすい、現に浜面からはよく絹旗が『七惟の家に超行きましょう!遊びに!』と言っているのを聴いている。

 

これだけやって朴念仁なのはあの暗部組織の子が亡くなっているから喪に服していて、そういった気持ちに対して感情の起伏が失われてしまっていて無反応になっているのかもしれない。

 

そんなアタック絹旗が、いくら戸籍上は兄妹と言え法律上は確か結婚だって出来る二人が毎日同じ部屋で寝泊まりしているこの状況に関してよしとしているのだろうか?

 

浜面には悪いが中津唐揚げの味なんてどうでも良くなってきた。

 

 

 

ごめんはまづら、それよりも気になることがあって。

 

 

 

「滝壺、あの蛙医者から退院の目途は教えて貰ったのか?」

 

「ううん、まだだよ」

 

「アイツ、俺は速攻で退院させといた癖に……」

 

「大丈夫だよなーない、不治の病って訳じゃないから」

 

「こんな所に1か月以上いたら気が滅入るだろ」

 

「そこは心配しないで、皆がお見舞いに来てくれるおかげで……そういうことはあんまりないよ」

 

 

 

正直なところこの閉鎖空間にいると考える時間が多すぎて気が滅入ることが多い、というかそういうことばかり考えてしまって一日が物凄く長く感じることがある。

 

一人でいると特にそうだ、今日も浜面が来てくれるまでは少しネガティブになっていたと思う。

 

入院生活を始めてかれこれ1か月と少し……いい加減七惟の言う通り退院の目途がついてもよさそうなのだが一向にその気配はない。

 

自分の身体の中に蓄積されている『毒』を抜く作業を行っているとあの医者は言っていたが、それはまだまだ時間かかるとも言っていた。

 

具体的にその期間が数週間なのか、数か月なのか、数年なのか……そこらへんもぼかして言われていて、頭の中では理解していても心の天秤は不安に傾く時もある。

しかし今日のように皆が来てくれて、明るい話題、バカらしい話題、いろんなことを話していくうちにそのような未来への不安は薄れ、皆となら乗り越えていけると、明るいポジティブなほうへ動いていくのだ。

 

 

 

「超意外です、七惟がそういう気が滅入るとか言い出すなんて」

 

「あのな、俺だって人間だぞ。そういうことを気にすんのは当たり前だろ」

 

「七惟もそういうことに気が付くようになってきたんですね」

 

「……その言い方だとお前はずっと前からそういう気遣いた出来たような言いぐさだな」

 

「それはもちろん!七惟と違って私は超社交的な人間ですから」

 

「超社交的……?よし分かった、お前何人友達が居るか言ってみろ」

 

「な……ま、まさか七惟がそんな自爆発言をするなんて……」

 

「……」

 

「い、いいんですかぁ?そんなことを超言ってしまって」

 

「言え」

 

「ま、まぁそういうことですからこのことは超無かったことに!ほら此処にフルーツゼリーが超あります!超食べましょう!」

 

「焦ってんなぁ絹旗」

 

「超煩い浜面ぁ!」

 

 

 

おそらく絹旗の友人は片手で数えきれるくらいしか存在しない、というか此処にいるので全員じゃないのかと一同が総突っ込みを入れたい気持ちに駆られるがそれを絹旗は力技で乗り切ろうとする。

 

 

 

「これに懲りて今後俺に友達0発言は慎め、超社交的な絹旗最愛さん」

 

「なんでそこで敬称つけるんですか」

 

「ん?それは赤の他人の絹旗最愛さんに呼び捨てなんて失礼なことはできないからな」

 

「何ですか、今日は私を超弄る日なんですか!?」

 

 

 

が失敗したようだった。

 

 

 

「はいはい。ほら滝壺、絹旗が言った通り食べようぜ、浜面も食えよ。絹旗、お前もな」

 

「おう、サンキューな七惟」

 

「超納得出来ませんし……しかもそれ私が買ってきたんですけど!」

 

「支払ったのは俺だ馬鹿!」

 

「ありがと、はまづら」

 

 

 

七惟から手渡されたフルーツゼリー、オレンジ味らしい。

 

無意識の内にゼリーの器を握る手が強くなった、先ほどの会話は滝壺の頭の中にはほとんど入ってこなかった、それはもちろん気になって仕方がないことがあるからである。

 

話はまた盛り上がって別の話題に行きそうだが、この流れならこの勢いに乗って変なことも聴けるかもしれないと邪な考えが過る。

 

だがしかし。

 

自分からこんな話題を振りまけない。

 

思春期真っ盛りの羞恥心が聴きたい欲求を踏みとどまらせているのだ。

 

どうしようか、このメンツ全員がそろってお見舞いに来てくれる頻度はそう多くない。

 

タイミングを逃せば一か月は待つことになる。

 

一か月も、もんもんとした気持ちを抱えていくには自分の導火線は持ちそうにない。

 

間違ったタイミングで爆発でもしようものなら絹旗からは奇異な目で見られるだろうし七惟はきっと引くだろう。

 

それでも……それでも、聴きたいのだ。

 

 

 

だって!気になるんだもん!

 

 

 

自然と、自然と話をスタートさせることは出来ないか?

 

急に浜面との話の延長線上の流れで話を始めてしまってはきっと敏感な年ごろの絹旗は不埒だ!というだろうし七惟は変態だと思うにきまっている、浜面は何だか喜びそう。

 

あくまで違和感なく、さりげないところからいけないか。

 

それともこの汚れ役を浜面にやってもらうか?きっと浜面だって内心は気になっており先ほどの内容を忘れてはいないはず、彼も男の子なのだからそういう事情は知りたいだろう。

 

いやしかし、浜面はこういうことも直球で聴きそうだ。

 

そうなると暴力(物理・言葉)が飛んでくる気がする、それはあまりに可哀そうだ、この手は諦めよう。

 

……ここは王道で、身の回りの話から外堀を埋めつつ浜面にも途中から話に乗っかっていってもらうことにしよう。

 

彼の性格ならば絶対に乗ってくる、そうなると場の雰囲気も際どいことも聴き易い方向へ変わっていくだろう。

 

なんだかとってもしょうもないことをやっているような気がしてきたが冷静では恋愛はやっていけない!

 

暴走機関車気味の恋愛感情を載せて滝壺は口を開いた。

 

 

 

 

 

 

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