とある科学の距離操作(オールレンジ):改訂版   作:スズメバチ(2代目)

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アイテム+αは思春期-ⅴ

 

 

 

 

 

美琴の目の前に現れたのは、褐色の肌を持つ目がクリクリした少年だった。

 

見た感じ自分とほぼ同年代のように見えるが日本人には見えない。

 

今の時間は土日の昼13時過ぎだ、美琴は自分の容姿故に、このように異性から声を掛けられることは少なくない。

 

所謂ナンパである、学園都市では学生が多く若い女子が多いためかこのようなに異性との出会いは至るところにあり、出会いのイベントは手に余るほど多いのだ。

 

今日の美琴は一人だ、何時も一緒に居る白井黒子は昨日深夜に捕まえた不穏分子に関する調査、佐天と初春は友人と一緒に勉学をするらしい。

 

故に彼女は一人で昨日怪しい動きをしていた連中について調べようと考えていたが、昨晩七惟は近々に妹達に危険は及ばないと言っていたため、気晴らしがてらに街をぶらつき街異変があればそこに向かう、というようなスタンスで歩いていた。

 

そんな中で褐色ボーイが声をかけたのは道中気を引くゲコ太のストラップガチャがあったため歩みを止め眺めていた、という時であった。

 

学園都市のナンパはおおよそ夕方……もとい、日が暮れた19時以降、今はもう冬が目前まで迫ってきているのでだいたい17時過ぎ以降に行われる。

 

こんな日が高い時間に声をかけてくるなんて珍しい、おおよそ自分に声をかけてくる不埒な輩は頭が悪い連中ばかりなのだが今回声を掛けてきた少年の纏う雰囲気はちょっと違った。

 

 

 

「ねぇねぇお姉さん。そんなに目を凝らして、僕の顔に何かついてます?」

 

「そういう訳じゃないけれど……何か用?」

 

「そうですね、貴方が凄い顔でそのガチャガチャを見つめていたものですから、気になって声をかけたんですよ?」

 

「そう、それで?」

 

「貴方がそんなに気を引くものは何なのかな、っと興味を持ったのです」

 

「私が貴方にそんなことを言う必要はないでしょ」

 

「あはは、辛辣だなお姉さん」

 

 

 

何だろう、この少年……今迄ナンパをしてきた連中とは違って掴み所が無い。

 

 

 

「人がそんなに何かに必死になるなんて、凄い気になりますよー?さっきの顔つきはまるで獲物を見る狩人のような目つきでした。こんな平和な街中でそんな顔つきをしていたら、嫌でも注目しちゃいます」

 

「悪かったわね、そんな物珍しい顔をしちゃって。でも貴方には関係ないでしょ、私が何に興味を持とうが何を狩ろうが」

 

「それはそうか。でもそれだと僕の疑問は解消されないから、お姉さんには協力して欲しいなぁ」

 

「だから、私が協力する必要は……」

 

「そうは言っても揺らぐお姉さん」

 

「だ、誰が……」

 

 

 

何だろう、コイツ。

 

やっぱり今まで接してきた奴とは全然違う。

 

ナンパ目的で声をかけてくる奴は無愛想な態度を見れば去っていくし、懲りない奴は手を出そうとしてこっちが撃退。

 

だいたいこういった対応で終わるものばかりだと思っていたが、街中で声を掛けてきた連中の中でこのマニュアル通り進んでこなかった奴は本当に珍しい……というかコイツで3人目だ。

 

一人目は上条当麻、二人目は七惟理無……どちらも自分とは深く関わりあっている二人だ。

 

上条は自分を助けようとして、七惟は自動販売機から缶ジュースを奪取してくれたっけ……その後の言葉のせいで口論になったのだが。

 

そしてコイツは……この飄々とした感じ、凄く苦手だ。

 

 

 

「……お目当てのストラップのガチャガチャだから見てた、それだけよ。満足した?」

 

「へぇー、お目当ての?どれがお目当てなんです?」

 

「そ、それは……」

 

 

 

こ、コイツまだ突っかかってくるのか。

 

振り払おうにも振り払えないコイツの声、名前も知らない奴にここまで長々と絡まれるなんて。

 

 

 

「此処まできてだんまりはないですよぉ、お姉さん」

 

「お、お姉さんお姉さんって!アンタ私とほとんど年齢変わらないでしょ?」

 

「どうだろう、お姉さんは幾つなんですか?」

 

「14よ」

 

「あ、そうなんですか。それじゃあ何を狙っていたのか教えて貰えますか?」

 

「アンタは教えないの!?」

 

「やだなー、お姉さん。僕が教えるなんて一言も言ってないじゃないですかー」

 

「な、屁理屈を!」

 

「じゃあお姉さん、僕が年齢を教える代わりにお姉さんが狙ってガチャガチャしようとしてたか教えてくださいね」

 

「それとこれとは話が違うでしょ!」

 

「あはは、でも振りほどかないお姉さんはツンツンしてるけれども面白いですよ」

 

 

 

何だろう、もの凄く腹が立つ。

 

上条の空気読めない行動とか、他の女と仲良くしているのを見るのはもちろん腹が立つ。

 

七惟のこっちを無視した態度はもの凄く腹が立つ、コイツの態度は七惟や上条とは違うが腹の立ち具合は七惟に負けていない。

 

 

 

「そもそもアンタは何でこんなに私に絡んでくる訳?ナンパのつもり?」

 

「ナンパ……?なんのことか分からないけど、お姉さんには興味を持ったもので」

 

「ナンパじゃなかったら何よ、興味を持ったって話と矛盾してる」

 

「うーん、そうだなぁ、じゃあ僕がどうしてお姉さんが気になっちゃうのか教えるから、代わりにお目当てのストラップを教えて欲しいですね。これなら対価として十分な気がします」

 

「……まぁ、ならいいわ」

 

 

 

いろいろ思うところはあるがコイツのうっとおしい追撃から解放されるのであればもう何でもいい、それにコイツが絡んでくる理由も分かればどう追っ払えばいいか分かる。

 

ゲコ太のことを教えるのは……ちょっと恥ずかしいけど。

 

 

 

「これよ、これが欲しかったの」

 

「これですか……?この蛙の奴ですかぁ?」

 

「そうよ……何か文句でもあんの?」

 

「まさか、そういう人が好きなものを否定するなんて失礼です」

 

「でもアンタの口は何か言いたそう」

 

「そんなことありませんって」

 

「……まぁいいわ。それで、アンタが私に話しかけてきた理由って何なの?そこまでもったいぶるならそりゃ御大層な理由なんでしょうね」

 

「あはは、大げさだなぁお姉さんは」

 

「……」

 

 

 

いい加減にしろこの野郎、という言葉が喉まで出かかって何とか飲み込む。

 

此処で爆発してしまっては春先に出会った七惟と全く同じ展開になり、こんなところをもしアイツの知り合いにでも見られたらいいことなんて一つもない。

 

プルプル震える拳は彼女のボルテージの限界を表していたが、それでも七惟のこちらを無表情で馬鹿にしている顔を思い出して堪える。

 

 

 

「大したことありませんよー、唯……お姉さんが僕の好きな人にすごーく似ているから、気になっただけです」

 

「え……」

 

 

 

それは先ほどまで湧き上がっていた怒りの感情がまるで蝋燭の火のようにさっと掻き消える瞬間だった。

 

今目の前で此奴は何と言った?

 

 

 

「似ている……人?」

 

「はい、もうびっくりするくらいお姉さんとそっくりなんです。双子かと思いました」

 

 

 

似ている、双子……それに、好きな人?

 

どういうことだ、それとも唯のそっくりさんが実際居てその人のことを言っているのか?本当に妹達の誰かを見て言っているのか?

 

一番可能性があるのはどっちだ、後者だろう。

 

まさか……学園都市の研究者の一人なのかコイツは?妹達と自分のことを観察してまたよからぬことを考えているのではないか?

 

様々な可能性が浮かんでは消えていく美琴の表情はどんどん憔悴していくが、そんな美琴の顔に目もくれず褐色少年はゲコ太のガチャガチャを見つめながらこう漏らす。

 

 

 

「でも彼女は兄しかいないと言っているので、そっくりさんなんでしょうか?驚きました、こんな狭い都市に彼女とうり二つの人がいるなんて」

 

 

 

兄。

 

そのワードを聴いて一気に美琴の脳が覚醒する。

 

美琴が知っている妹達の中で唯一この学園都市の学校に通っていて、尚且つ兄が居るという子はあの子しかいない。

 

 

 

「まさか……その兄って七惟理無って奴?」

 

「あ、知ってるんですかお姉さん」

 

「まぁ知り合いだけど。だからその子のことも知ってる。それにその子は私の姉妹なんかじゃないわよ、似てるだけ」

 

「あんな無愛想なお兄さんだけど意外に人脈広いなぁ。お姉さんは何処であの二人と知り合ったんですか?やっぱりこうやって街中で」

 

「嫌な思い出だから思い出したくない」

 

「冷たいなぁ、互いの知人が居ることだし僕たちもっと仲良くなれると思いますよー」

 

「私は別にアンタと仲良くする必要なんてないんだから、そこらへんいい加減分かりなさいよ!」

 

 

 

此処までの言葉で全て理解した。

 

コイツはあの七惟理無の一派だ、間違いない。

 

要領を得た表情の美琴に対して、褐色ボーイはその表情に対して?を浮かべるもののにこやかだ。

 

何だか七惟が居ないこの場所でもアイツにからかわれているようでもの凄く腹が立つが、それと同時に此奴が言ったもう一言を思い出して思わず口から飛び出す。

 

 

 

「……あの子のこと好きってホント?」

 

「あの子?」

 

「私とそっくりな子よ」

 

「はい、大好きですよ!」

 

 

 

そこまで思いっきり言うか。

 

そんなはっきり言われてしまうともうこっちが聞き出すことが無くなってしまう。

まだ学校生活を始めて1か月くらいしか経っていないだろうに、あの子の交友関係は一気に広まって……そういう色恋沙汰まで発展する程になっているのか。

 

何だか不思議だ、あの子のことは手のかかる妹……自分の半身……肉親……色々関係を考えてきたものの、何だか彼女は手の届かないところに行ってしまったようだ。

 

目の前のコイツとあの子がどういう関係になるかなんて想像もつかない、何せバックにはあの性悪全距離操作だっているのだから。

 

しかし悪くなることはないだろう、コイツとあの子が話しているところを想像したら嫌に上手くウマが合いそうな感じがする。

 

 

 

「どうしたんですかお姉さん?」

 

「何でもないわよ……まぁ、その。頑張って。色々と」

 

「あはは、最後は応援してくれるなんてお姉さんは面白いなぁ」

 

「うるっさいわ!」

 

 

 

 

 

 


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