とある科学の距離操作(オールレンジ):改訂版   作:スズメバチ(2代目)

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後書きにちょっとしたお知らせがあるので、お暇な方は目を通してください。



 


未知との遭遇-1

 

 

 

 

 

学園都市からバスで15分ほど、だいたい都市のゲートから南に10km程進んだ位置には教会がある。

 

神奈川県方面へと繋がる道にあるこの教会は、周りは住宅地に囲まれており見事に風景に溶け込んでいる。

 

教会とは俗に言う『神様』を拝める場所であり、科学とは最も離れた場所に位置するオカルト関連の建物だが、科学サイドの人間が訪れていた。

 

その人間とは七惟理無+一人、絹旗最愛の二人だ。

 

「……見たところ何の変哲もねぇ教会だがな」

 

彼らは七惟のアルバイトでこの教会にやってきた。

 

仕事内容は『空き巣をやっている連中を捕縛もしくは抹殺』。

 

今日は学園都市では大覇星祭の初日が行われており、たくさんの人間が集まってお祭り騒ぎだった。

 

しかしそんなお祭りのすぐ近くで真っ黒に染まった仕事に手を出す人間がいることを、あの街の中に居る人間のどれだけが知っているのだろうか?

 

ちなみに七惟も午前中は競技に参加したが、午後からはこの仕事のためにボイコットし、幼女教師の怒りを買うのはもう目に見えているだろう。

 

「そういうところに意外に超潜んでたりするかもしれないですよ」

 

「人の気配、らしいモンもないがな」

 

時刻は深夜1時、普通の人間ならば家に帰って夢を見ている時間帯だ。

 

もし学園都市サイドが警戒しているであろう危険人物ならばこんな深夜でも動いていて不思議ではないが、目の前の教会からは人の気配が全く感じられない。

 

「情報によりゃあ数人の外部組織の人間が以前使ったアジトで、置き忘れていた道具やらを回収しているらしい」

 

道具を置き忘れたということは自分達の足跡を辿ってくださいと言っているようなものだ、裏で動く人間にとって遺留品はかなり重要な意味合いを持つ。

 

その道具の使い方から何処の国の出身か、何処の組織に属している者か、年齢、道具の状態から使用者の精神状態や性格まで割り出してしまうのだ。

 

仕事の内容はこの教会に潜んでいる者たちの捕縛、もしくは殺害としており、生け捕りの場合は報酬50万、殺してしまった場合は『殺し』がばれないように隠ぺい工作を行うため報酬は10万とガクンと下がる。

 

殺しが出来ない七惟にとっても捕まえる予定だが、いったいどの程度の武器や数がいるのか把握出来ていない状態では全員を生け捕りというのは難しい。

 

「で?お前入ってくんのか」

 

「私が付いてくるのは此処までですよ」

 

絹旗にこの仕事を手伝ってもらおうとは思ってはいなかったが、面と向かって拒否されると流石に幾分か気落ちする。

 

「私に超付いて着て欲しいんですか」

 

「さあな……。付いて来ねぇんならどっかに隠れてろ」

 

「まさか、私が怪我しないように心配してくれてるんですか七惟」

 

「それこそまさかだろ、お前がそう簡単に死なねぇくらい俺だって分かってんだよ、余計なこと言わせんな」

 

「ふーん……」

 

「……なんだよ」

 

「別に超何でもないです、仕事超頑張ってください」

 

「その言い方だと意味ありげに聞こえちまうがな」

 

実際七惟はコトのついでに絹旗に隠れていろと言ったまでだ、もし敵に見つかって騒ぎになってはこちらも動きにくいし、何より万が一のことも考えられる。

 

絹旗を人質に取られる可能性だって0ではないのだ、そうなった場合1年前や、数ヶ月前の自分ならば絹旗もろとも皆殺しにするか、絹旗を無視し攻撃をしていたに違いない。

 

しかし最近そういった暗部の仕事をそつなくこなすためには余計な感情や知識を身につけ始めた七惟にとって、そんな状況になってしまってはミスが生じる可能性がある。

 

そういうことも含めて絹旗には見つからないように、万が一が起こらないようにと思い隠れろと言ったのだ。

 

それに此処まで付いてきたのは彼女は仕事だから仕方ないとは言っているが、七惟がこんな仕事に応募しなければ彼女が此処まで来ることも無かっただろう。

 

少なくとも間接的に彼女の身に何かが起こる可能性を作り出しているのは自分自身なのだから、後味が悪くなるのは避けたに越したことはない。

 

だから、だと思う。

 

七惟は静まり返った教会に入ると、内部の電気は完全に落ちており窓から差し込む星や月の光だけが頼りになる状態だ。

 

こんな暗闇でライターでも付ければ一瞬で敵に見つかってしまうだろう、まあ敵がいるのかどうかがまず怪しものだが。

 

奥へと進み、礼拝堂ような場所に出たが、そこには大きな十字架が壁に掲げられている意外は特に怪しいモノも何もない。

 

その後も裏方にある倉庫や地下へと続く階段、周辺の施設も30分程粗方探してみたものの一切求めているようなモノはなく、手掛かりになりそうなもの見つからない。

 

それどころか数週間前に此処で戦闘が行われたとは聴いていたが、その名残のようなモノすらかけらも残っていなかった。

 

戦闘の規模がどれ程のモノなのかはわからないが、椅子も机も、窓ガラスも壁にも何一つ傷が入っていないことから眉唾ものかもしれない。

 

そもそもまだ教会としての機能を持っている建物をアジトにするなど、人目につきやすいし自分ならまず選ぶことは無い。

 

「外れ、か」

 

偶にあのサイトでは上層部が寄越した仕事をその下位組織がネットに流して代わりに七惟のような表と裏が曖昧な人間にやらせる場合がある。

 

上層部は下位組織を捨て駒のようにしか思っておらず、入手した情報の信憑性が限りなく0に近くてもやらせる場合がある。

 

確認もないまま作戦の内容が下位組織に伝えられ、それがネットに乗るためその過程において情報のやり取りは無くこのような無駄打ちが後を絶たない。

 

当然こういった収穫が0の場合報酬も0だし、ただの骨折り損となる。

 

「……ま、仕方ない」

 

最後に礼拝堂を回った七惟は、教壇を一瞥すると踵を返して出口へと向かっていく。

 

だが。

 

背後から一瞬何かが動く気配を感じると同時に、その背中目掛けて短剣が投げつけられた。

 

「外れたッ!?」

 

狙いは的確で間違いなく七惟の急所を射止める筈だった、しかしそれは七惟がその攻撃を知覚していなかったらの話だ。

 

僅かな気配を感じ取ったらそこから能力発動まで擁する時間は1秒足らず、放たれた短剣が七惟の背中に突き刺さることはなかった。

 

「ようやくお出ましか!」

 

それまで全く感じられなかった人の気配、いったい今まで何処に潜んでいたのやら分からないが出てきたとなればこっちのものだ。

 

散々無駄足を踏まされた七惟としては此処でそう安々と逃すつもりは毛頭ない、教会に並べられた長椅子を能力で引きちぎり短剣が放たれた方向の暗闇へと発射する。

 

ぐしゃりと潰れるような大きな音と共に教会全体が揺れ煙が舞う、その煙の中から逃げる者が居ないか目を凝らす。

 

煙の中から出てきたのは男二人に女一人、手には斧に短剣、そして長い槍をそれぞれ所持している。

 

学園都市の外を塒にしていることから外部の組織だとは思っていたが、まさかこんな原始的な武器だったとは。

 

「どんな野郎がいるかと思ったらえらくチンケなモンだな。何処の組織だてめぇら」

 

「お前こそ、何処の所属だ。こんな所まで追って来るなんて……ローマ正教か」

 

短剣の男の問いに七惟は眉を顰める。

 

「ローマ正教……?」

 

聞いたことの無い単語だが、敵の言葉だ。

 

耳を貸す必要もあるまい。

 

「いったいどんな術式を使ったか知らないが、次はないぞ。牛深!五和!」

 

七惟と正体不明の組織が正面からぶつかり合う。

 

闘いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 







新年あけましておめでどうとざいます、今年もよろしくお願い申し上げます。

これから更新ペースを上げる……と言っても、お正月の間に更新しまくる予定です。

何故ならばにじふぁんのデータ削除通知が2013/1/22です!

あっちのデータ消されたらもう更新出来ないんですよ!死活問題です!笑

そういう訳で、頑張っていきますのでよろしくお願いします。


 

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