とある科学の距離操作(オールレンジ):改訂版   作:スズメバチ(2代目)

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Ⅴ章 二人の距離
大覇星祭-1


 

 

 

 

 

大覇星祭も最終日を迎え、いよいよクライマックスが近づいていた昼下がり、どういうわけか七惟と滝壺は二人して競技場に向かっている。

 

流石に競技中は学生である自分が姿をくらませては不味いと思い、初日のあの天草式との一件以来大人しく競技に参加していた七惟だった。

 

七惟の学校の順位は例年通り下の中くらいで、目を引けるような活躍も無く終わっていくはずだったが……。

 

今年は例年とは少し違う、思いも寄らない事態が起こっているのだ。

 

それはプログラムの中にあった『陣取り』という競技が原因である。

 

この陣取り、普通の遊びでやるものとは違い両チームとも3つの楕円形の円、合計6戸の円が準備されており、それぞれが円の中心地点に自分達の学校の旗を立ててそれを制限時間内守り切るというものだ。

 

陣取りなので当然相手チームの旗を倒すことも可能だが、相手チームの旗を倒すには能力を使った攻撃手段のみと限定されている。

 

3つの円の陣に相手よりも早く3本の旗を突き刺すか、制限時間内に相手よりも多くの旗を突き刺せば勝利となる。

 

だいたいの学校は『旗立て』『護衛』『妨害』の三つに戦力を分けており、旗立ては当然旗を立て、護衛はその旗を守り、妨害は相手が立てた旗を倒したり立てるのを妨害したりする。

 

ちなみに妨害は直接的なぶつかり合いが禁止されており、半分に分けられたグラウンドで自分達の領域を出ることは許されておらず、殴る蹴るが主戦法の低レベル学校には非常に不利で、能力を使った妨害攻撃しか行えない。

 

ちなみにどういった妨害が行われてきたのかと言うと、能力を使って旗そのものを消失させたり、何処かの電撃姫が旗を超電磁砲でへし折るなど様々。

 

また中学・高校・大学問わず入り乱れの競技で、各学校の選抜20名でやる競技であり、毎年0〜2レベルの能力者しか揃えられない七惟の学校はよくて3回戦止まりとなっていたはずだが……。

 

「ったく、今日でこのかったるいお祭りも終わりか」

 

「そういうわりにはなーないは楽しんでたと思う」

 

「はン……そういうお前はどうなんだよ」

 

「わたしは思ってたよりも楽しかった」

 

今回万年最下位クラスの学校にはイレギュラーとなる人物が二人いた。

 

その二人がこの『七惟理無』『滝壺理后』である。

 

「決勝の相手は……常盤台中等部、か」

 

実は彼らはこの競技で区立高校としては異例の決勝進出を果たしていた、ちなみに準決勝では某エリート高校を倒しての決勝進出だ。

 

「優勝出来たら嬉しい?」

 

「……まんざらでもねぇだろ、たぶん」

 

脱力系少女の問いに珍しく答え、二人は『一緒に』競技場へと向かった。

 

「んな!?滝壺ちゃんとななやんが一緒に歩いとる!?いったいどういうわけやこれはー!」

 

その二人を目撃した青髪ピアスらしき人物は目を丸くした。

 

大覇星祭が始まる前ならばこんなことは考えられなかった光景を目の当たりにした彼は絶叫し、「うそやー!」などと言っている。

 

 

いったい、大覇星祭の期間中に何が二人の身に起こったのだろうか?

 

 

 

 

 


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