とある科学の距離操作(オールレンジ):改訂版   作:スズメバチ(2代目)

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新たなる旅路-2

 

 

 

 

イタリアにやってきた上条とインデックス、そして+αの七惟理無。

 

道中様々なことがあったのだが、それを語ると日が暮れてしまいそうなので割愛させて頂こう、現在上条と七惟は迷子になったインデックスを目下捜索中である。

 

彼女が迷子になった理由、当然それは何処からか美味しい臭いがするのでそっちのほうに歩いて行ってしまったからだ。

 

七惟はインデックスのことはよく知らない、まあ大食いであるということは知っていたのだがまさかコレほどとは。

 

七惟と上条の二人は当然イタリア語など喋れるはずもない、英語ならば中学でそれなりに学んだ七惟が出来るのだが、先ほどから彼らの視界に入ってくる標識はどれも解読不能なモノばかり。

 

英語が出来れば海外旅行など楽勝だろう、と浅はかな考えを持っていた自分に七惟は苛立ち舌打ちをする。

 

対する上条は英語すらままならないので、今ではすっかり混乱しげっそりとしてしまっている。

 

唯一イタリア語を扱えるインデックスが迷子になってしまっては、二人はどうすることも出来ない。

 

 

 

「……あのシスター何処行きやがった」

 

「七惟、お前の能力でインデックスの位置掴めないのか?」

 

「俺の能力はレーダーじゃねぇんだよ、諦めろ」

 

「うぅ……旅行先で迷子を捜しているうちに自分達が迷子になるなんて、不幸だ」

 

「同感だよったく」

 

 

 

彼らの顔色が絶望に染まり、いよいよどうしようもなくなった時に奇跡は起きた。

 

 

 

 

「あら?もしかして、貴方は」

 

 

 

 

上条ではない女性の声が聞こえた、そしてその声はイタリア語ではなく日本語を喋っていた。

 

最初は自分を呼びとめたと思って振り返ってみたのだが、そこに居たのは黒い修道服に身を包んだシスターだった。

 

 

 

 

 

自分にはシスターの知り合いなどインデックス以外はいない、となるともしや…………この隣にいる男の…………

 

 

 

 

 

「オルソラ!?どうしてこんなところに!?」

 

 

 

 

 

やはり、と言ったところか。

 

凄いというか流石というか……こんな異国の地、しかも日本と数万キロ離れているこんな場所でもフラグを立てていた上条当麻。

 

お前は出張先で女を作りまくるサラリーマンか。

 

そしてその一級フラグ建築士のスキルは何処の学校に行けば学ぶことが出来るんだ?

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

アイテムのアジトに戻ってきた絹旗はひとまずこの1カ月止まっていたアパートを引き払うための書類を纏めていた。

 

足跡が他の組織に悟られないように色々と隠ぺい工作をしなければならないのだが、それは下の組織の仕事だ。

 

自分はそれを指示するための書類さえ纏めればよい。

 

机に向かって後処理を始めた絹旗。

 

その数分後他の構成員が大きな袋を持ってアジトにやってきた。

 

 

 

「まったく、フレンダ!ちょっとアンタ缶詰ばっか買いすぎよ、邪魔になんの」

 

 

「結局麦野には缶詰の素晴らしさが分からない訳よ」

 

 

「分かりたくもないわねー、そんなちんけな素晴らしさ」

 

 

 

アジトに戻ってきた麦野とフレンダは高級そうなソファーにどっかと座ると、麦野はテレビを、フレンダは缶詰をそれぞれ弄り始める。

 

 

 

「あれ?絹旗戻ってきたの、お疲れさま」

 

「どうだった訳?七惟は」

 

 

 

視線はテレビと缶づめに向けられたままだが、まだ労わりの言葉がある分他の組織よりかはマシなのかもしれない。

 

とりあえず上に報告を行わなければならないため、上とやり取りをしているリーダーの麦野に報告を行う。

 

 

 

「まあ、超面倒だったけどこちら側に引き込めそうな余地はありましたね」

 

「ふぅん?それでアイツがどの組織の構成員かはわかったの?」

 

「パソコンも弄ってみたんですが、それらしいものは何も。あれはたぶん私達と同じで携帯で全てやり取りしているパターンでした」

 

「へぇー……じゃあ、こちら側に引き込めそうな余地って何よ」

 

「……それは」

 

 

 

此処で絹旗は言葉に詰まる。

 

彼女が七惟をアイテムに引き入れるために掴んだ情報、それはある意味仲間を売るようなことをすることになるからだ。

 

 

 

「どうした訳?」

 

 

 

フレンダが缶詰から視線を逸らし、こちらを見る。

 

麦野はまだテレビを見たままだが、機嫌を損ねるようなことがあればどうなるか分かったものではない。

 

闇を生きて行くためには仲間を売ることだって当然必要なのだ、そうしなければ自分の命が危ないのだから。

 

絹旗は自分の良心を押し殺してその情報を舌にのせた。

 

 

 

「七惟は滝壺さんとこの数週間で超接近しました、滝壺さんを使えば……もしかすれば、七惟をこちら側に引き込めるかもしれないですね」

 

「へぇ、あの子がねぇ……」

 

「凄く意外な訳よ」

 

 

 

滝壺と言えば、アイテムの中ですら考えていることが良く分からないような少女なのだ。

 

そんな少女と意思疎通出来たという七惟に驚くと同時に、七惟が滝壺を気に入っているかもしれない、という事実に麦野は黒い笑みを浮かべ策略を巡らす。

 

 

 

「第3位のクローンはあの病院にいるから利用するのは難しいかもしれませんが、滝壺さんは私達の仲間ですし可能性は低くないはずです」

 

「つまり滝壺を利用すればいいって訳ね」

 

「面白いわね、ソレ」

 

 

 

七惟と滝壺が接近した、それは七惟は当然のことだが滝壺も七惟のことを悪くは思ってはいないはずだ。

 

少なくとも、自分達と同じくらいの距離に七惟は位置しているはず。

 

もし強引な策で七惟を精神的に追い込み、無理やりこちら側に引き込めば滝壺は悲しむだろう。

 

まだこの中で一番の良心を持っているあの女の子に、そんな作戦を取らせるのは酷過ぎる。

 

麦野のことだから、そんな絹旗や滝壺の心の葛藤などお構い無しに作戦を遂行するにきまっているが。

 

麦野沈利という人物は、プライドの塊のような人間だ。

 

そして自分の気に食わない奴は容赦なく殺処分する、それがいくら身内だろうが仲間だろうが、上の人間だろうが関係ない。

 

だから絹旗の話を聴いても、『面白い』としか言わなかった。

 

『犠牲は駄目』などという思考回路は元から彼女にはないのだろう、目的を果たすためならば仲間すら利用し出し抜く……それが彼女のやり方だ。

 

 

 

「フレンダ、早速滝壺と連絡を取って頂戴」

 

「了解な訳よ」

 

 

 

絹旗の心中など露知らずといったところか、早速二人は工作の準備に入った。

 

 

 

「絹旗、アンタにも手伝ってもらうからね?」

 

「……そんなこと超分かってますよ」

 

 

 

念を押すような麦野の言葉、反逆は許されなかった。

 

 

 

 

 


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