とある科学の距離操作(オールレンジ):改訂版   作:スズメバチ(2代目)

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※この節からオリジナルキャラクターが登場します


Labyrinth of Nightmare-2

 

 

 

 

 

「あ、れ、れー?そーんなにあの小さい女の子が大事?小さい少女と禁断の愛!泣けちゃうわぁ!」

 

 

 

 

 

手が伸びてきている黒い渦から声が聞こえたかと思うと、一人の女がぬっとそこから飛び出してきた。

 

イタリアで見たシスター達が纏っていたような生地の服を着ているがそのデザインは全く違う。

 

黒で統一された衣装は全体的に移動しやすいよう仕上げられており、あのアニェーゼという少女が身に着けていたモノのように穴だらけではないが、そちらに近い。

 

スカードは膝よりかなり上の部分までしか丈がなく、中からは真っ黒のレギンスに包まれ、不自然な程細い足が見える。

 

きっとスカードなど単なるおまけで、肌が露出しないための服がこの女のコンセプトだろう。

 

見た目は七惟より少し年上と言ったところか、肩辺りで切りそろえられている黒髪や顔つきからして東洋出身で、日本人の血を引いているように見える。

 

その眼はあの一方通行が『殺す』と決めた時のような残虐性を秘められており、ギラギラと光っている。

 

耳には何重ものピアスをつけ、手に握られている剣はまるで水面のように刃が揺れており見るだけで気味が悪い。

 

コイツは間違いなく魔術師だ、そして今まで見たことがある炎の魔術師、刀を持った魔術師、天草式の連中とは格が違いすぎるということを七惟の直感が告げていた。

 

「ねぇ!?どうなの!?学園都市第八位全距離操作能力者七惟理無!」

 

「糞みてぇな肩書き全部言ってくれて御苦労さん、残念ながらてめぇが思い描いてるような関係じゃねぇから安心しやがれ!」

 

七惟は間髪いれずにポケットから護身用の五和の槍を取りだして無駄の無い動きで女の腹に突きさす。

 

しかし突き刺さった感覚はなく、その切っ先を見てみると槍は女の腹部辺りに現れた黒い渦の中に突き刺さっているだけでであった。

 

本人はケタケタと笑いながら言葉を発する。

 

「ごめんねー!アタシにはそんなおもちゃ通じないんだぁ!」

 

女は槍をむんずと掴むと、女の力とは思えない握力と筋力で槍を引っ張り七惟を引き寄せた、態勢を崩した七惟はすぐさま槍から手を離すがそこに女の剣が薙ぎ払われる。

 

髪の毛が数本綺麗に切り落とされる、まるでウォーターカッタ―のような抜群のキレ味に嫌な汗が滲んだ。

 

「ねーねー!最初の一太刀ですっごく君弱く思っちゃった訳だけど……ヴェントが相手してる上条当麻のほうが余程強いと思うんだけどなー!」

 

七惟は耳を傾けずに女に握られた槍を手の内に転移させ再び構える、持っていたモノが急に消える体験は初めてなのか女は不思議そうに右手を見つめた。

 

「面白いねー、キミの力!その力で女王艦隊のシスター達もボコボコにしちゃったんだって!?もっと見せてよ、科学の力の結晶をさ!」

 

「はン、てめぇの無駄口に付き合うつもりはねぇよ。このわけわかんねぇ状況もてめぇらが生み出したんだろが」

 

「さーすが学園都市の天才君!私達『神の右席』は学園都市に侵攻しちゃいましたー!ちなみに私は『台座』、マメ知識でーす!そうそう、警備組織の人間は大半が仲間の『天罰術式』によって昏睡状態だね!一般人だって今じゃ例外じゃないのよーん!」

 

神の右席……?天罰術式……?

 

「お前らローマ正教の人間か……」

 

此処まで学園都市に恨みがある連中なんて此奴らしかいない、か。

 

「だったらどうするのかなー?」

 

「何のためにこんな馬鹿みてぇなことやってんだ?イタリアの艦隊潰したことで頭に来てんだったら、俺と上条だけを始末すりゃ話は済むだろ」

 

「えぇー?女王艦隊?」

 

「違うのか?」

 

「だってさー、女王艦隊ってとてーつもなく効率悪いじゃん?君、知らないだろうけど、アレ、ものすごーく儀式やら準備やら大変なわけさぁ。そんなモンに頼るような馬鹿は居ないでしょー」

 

「どういうことだ」

 

「そんな粗大ゴミの報復のためにわざわざ汗かいてこんなところまで来ると思う?」

 

「じゃあ……」

 

「論理的な思考の弊害ですかー!?もっと単純でシンプルな理由があるんだぞぉー!?」

 

単純で……シンプル?

 

そんな簡単な話で済む筈がないだろう、科学と魔術の関係をそこまで単純化など出来るものか。

 

最近魔術に関して認知し始めた七惟にだってそんなことは分かるが、相手は先ほど言った通り単純明快な言葉をこちらに教えてくれた。

 

「科学が気に食わないんですぅー、とてつもなーく嫌いなんですぅー、存在してるだけで許されないんですぅー。もっと言って欲しい?」

 

要するに、そういうことか。

 

科学が嫌い。

 

理由なんざ、それだけで十分だと言いたげだ。

 

 

「だからこうやって侵攻しちゃいましたー!今から世界のゴミを掃除出来ると思うと、アタシ、わくわくすっぞぉ!?」

 

ガチャリ、と女が剣を持ち直す。

 

こいつらはもう上条と七惟がターゲットとか、そんなことどうでも良いと言うわけだ。

 

敵対する勢力である科学の頂点、学園都市を地図上から抹消してしまえばあっという間に科学は衰退する、本当に簡単だ。

 

その過程でまずは色々と因縁のある自分と上条を潰しに来た、一方通行に関しては第1位だから真っ先に狙われたと。

 

……一方通行を破ったかもしれない敵が、今目の前に居るのか。

 

「さぁて、それじゃあ、一、二の、三、で君を攻撃しまーす!正々堂々、正面からぐっちゃぐちゃのミートソースにしてあげるよぉ」

 

「わりぃが変死体になるつもりはねぇよ。てめぇこそ、こんな馬鹿みてぇなことしたのを、死ぬ方が楽だと思うくらいに後悔させてやろうか」

 

「え、なにそれ!?もしかして勝利宣言!??凄い、何この超展開!?そんな勇者七惟理無君にはご褒美を上げましょう!」

 

ぐっと、身体全体に力が入る。

 

こんな大口を叩いてはいるものの、七惟の全身の筋肉は緊張し肩は自然と上がっていく。

 

目の前の敵は学園都市最強の男を潰したかもしれない魔術師で、吐き出される様々な感情やエネルギー、威圧感はどれも今までの魔術師とは比べものにならない。

そんな奴と、戦わなければならないのか。

 

先ほど対峙した麦野が虫けらのように思えるような相手と、命の削り合いをやるのか。

 

考えるだけで、吐き気がした。

 

 

 

 

 

「不意打ちという、素晴らしいご褒美を誕生日プレゼントー!」

 

 

 

 

 

誕生日プレゼント?

 

 

と問い返す暇もなく、二人の戦闘は開始された。

 

 

 

 

 


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