とある科学の距離操作(オールレンジ):改訂版   作:スズメバチ(2代目)

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※オリジナルキャラクターが登場します。


 
 


少女が見た幻想-ⅴ

 

 

 

 

セブンスミストでの買い物終了後、今回の滝壺考案のイベントは全日程を終えそれぞれが帰宅の途に着いた。

 

浜面は車で七惟とメンバーの女の子を自宅まで送るよう滝壺にお願いされたため、三人で浜面のボロ車で移動。

 

しかし七惟が浜面に言った送り先は彼の自宅ではなく、あのカエルに似た医者が居る病院であった。

 

理由はもちろん、ミサカ19090号に会うためである。

 

浜面とは病院の前で別れたが、名無しの少女は相変わらず引っ付いてきており結局ミサカのいる病室まで一緒に来てしまった。

 

 

 

「ったく……口挟んだりすんじゃねぇぞ」

 

「はい」

 

 

 

名目上は七惟の雑用を引き受けるため……ということで今回も来ているらしいが、どうせ博士から何かしら命令され来ているのだろう。

 

それこそ途中でメンバーを裏切らないよう見張っておけだとか、七惟が不審な行動を取ったら即連絡を寄越すようにするだとか……。

 

あの男の考えることなど大概分かるものである、まぁもし彼女が博士の命令の有無関係なしに来ていたのだとしたら、それこそ七惟にとっては理解不能であり更に怪しむ理由の種となってしまうのだが。

 

ミサカに会うのは久しぶりだ、この間は確か天草式のお偉いさんに殺されそうになる前に会話をさくっとしたぐらいか。

 

確かあの時は次回来た時には良い話が出来ると思う、とか彼女は言っていたような……。

 

病室の前に立ち、名前の書いてあるプレートを見つめると彼女の名前とは別にもう一人別の名前がプレートに入っていた。

 

そういえば病状が改善したからそろそろ個室から共同部屋に移動することになるとか……そろそろ退院できるのかもしれない。

 

 

 

「……失礼します」

 

「失礼します」

 

「オールレンジ、お久しぶりですとミサカは早速の挨拶を交わします」

 

 

 

中に入るとミサカはすぐにこちらに気付いたのか、ベッドから立ち上がりこちらに駆け寄ってくる。

その姿を見てまるで家族にすり寄る可愛い妹のようだ、と七惟は思う反面、最近本当に妹が居たらこんな感じなのではないかと思い始めてしまっている。

 

 

 

「あぁ……体調はどうだ?」

 

「だいぶよくなり、個室部屋からも移動しました。退院の目途もついたので心が弾む思いですとミサカは心中を吐露します」

 

「そいつは良かったな」

 

 

 

見た感じではあるがミサカの表情は以前に増して明るく、身体的にも健康的のように思える。

 

何より以前はよくわからない大型カプセルのような容器に入っており、体の各部は電極に繋がれまともに相対して会話することなど不可能だったのだ。

 

その状態から比べてみれば、驚くべき回復力である。

 

 

 

「最近はオールレンジは学校のほうはどうですか?あのサボテン頭の少年や、お姉様は元気にしているのでしょうか」

 

「あぁ……学校は前と一緒で俺からすりゃつまんねぇ内容のもんばっかだ。あの馬鹿やオリジナルは相変わらず所構わずいちゃついてんぞ」

 

「なるほど、お姉様はあの少年に夢中なのですねとミサカは自分の想像通りのお二人の姿に安心しました」

 

「サボテンがミサカを恋愛対象として見てるとはとても思えねーがなぁ」

 

 

 

上条と御坂は大覇星祭後も引き続き色々な所で仲良くやっているのを見かけている、まぁ前に比べて勝負だの何だのはだいぶ無くなってきており丸くはなった。

 

丸くなった変わりに御坂の恋愛感情にはアクセルがフルで踏み込まれているような気もするのだが……。

 

 

 

「そうなのですか?恋愛というものが知識にあるのですが、あの二人の関係はミサカネットワークを通じて見ていて、知識の中にある恋愛と同じものをしていると思えますとシスターズの意見を代表してミサカは胸を張り強く言い張ってみます」

 

「悪いがあれは完全にオリジナルの一方通行だろ……たぶん上条は面倒だ、くらい思ってんじゃねぇのか」

 

「そ、そうなのですか……学園ドラマのラブシーンを体現したかのような二人だと思っていたのですが……」

 

「夢をぶっ壊してわりぃが事実だ」

 

「しょんぼり、とミサカは両肩を力なく落としあからさまに残念がってみせます」

 

「わぁったからそんな負のオーラまき散らすな。つぅかお前は学生の恋愛にどんなイメージを思い描いてんだよ……知識と現実は結構違う」

 

「はぁ……」

 

 

 

ミサカを始めとしたシスターズは自分たちの脳をミサカネットワークというトンデモなネットワークでリンクしており、その知識や記憶、経験を共有している。

 

最近ミサカからその統括を行っているのが何時ぞやの小さなミサカだったと聞いて驚いたものだが、意味不明なネットワークで繋がっている時点で既に自分の常識の範囲外であった。

 

七惟の現実味のある、というか夢を打ち砕く話のダメージから復帰したのかミサカはもぞもぞと動きだし、自分のベッドとは別のベッドのほうへ歩み寄る。

 

がさごそとベッドの横にあった棚を漁ると、その両手にはみかんが握られていた。

 

 

 

「とりあえず、オールレンジと連れ添いの女性にこれを。お見舞いに来て貰ったお礼ですとミサカは丁寧に自分の気持ちをお礼といった形であらわしてみます」

 

 

 

そういえばこの部屋にはミサカ以外の名前が書かれたプレートがあったっけか。

ということはこれはミサカのものではなく、他人のものでありそれで自分達に謝意を表すとは……。

 

七惟は、はぁ、と短くため息をつき相変わらずミサカの知識と現実の乖離が大きいのだと再度理解する。

 

 

 

「あのな、ミサカ。他人のモンじゃ礼にならねぇだろ。人に礼なんかしたことぁねぇ俺でもそこらへんは常識として分かるぞ」

 

「……お礼をしたことがないような人に威張られるのは心外です、とオールレンジに対してミサカはジト目で見つめ返します」

 

「…………」

 

 

 

何も言い返せねぇ…………。

というよりもこの数か月でミサカはオールレンジのことを本当によく理解してしまっている……。

 

 

 

「つうか、一緒に居る奴とは仲がいいのか?勝手に漁くって」

 

「おそらく大丈夫だと思います、彼はかなり寛容な人間ですから、とミサカは自分の所感を述べてみせます」

 

「彼……?」

 

 

 

ミサカの言葉を怪訝に思い、寝床主のいないベッドに目を細める。

 

確かに言われてみれば、置いてあるものはどちらかと言うと男物が多いし少年誌の雑誌が戸棚には乱雑に重なっていた。

 

だがしかし、だいたい病院というものは集団病室の場合同性と同じ部屋に移動するものではないだろうか?

 

 

 

「此処で一緒に寝泊まりしてんのは男なのか?」

 

「はい、そうですが」

 

「……あのおっさん、何考えてんだ」

 

 

 

七惟も最近はよくこの病院に来ていたし、昔から仕事上病院のお世話になることは多かった。

 

そんな七惟でさえ一度でも異性と同部屋になったことなどないというのに。

 

これは蛙の顔をしたあの医者を尋問するしかない、確かに病院というのはベッドの数も限られているのでやむを得ない事情があるのは理解出来るが、移動する前によく見舞いに来ていた自分に対して一言あってもいいだろうに。

 

ミサカは何処かの馬鹿が作ったテスタメントと呼ばれる特殊な装置・ソフトで常識・知識が形成されており感情というものを当初は理解していなかったが、今は様々な経験を重ねしっかりとした自分の『意思』を持っているし、仮にも年頃の女の子なのである。

 

赤の他人である男とおなじ部屋など……と思っていたところに、まさかの横槍が入った。

 

病室のドアががらっと開き、そこから現れたのは……。

 

 

 

「あ、ミサカさん!起きたんだ!ってそっちの方は……」

 

「おはようございます喜伊さん、とミサカは爽やかな朝の挨拶をします」

 

「いや、今は夕方なんだけど……って、そちらの方はお見舞い?」

 

 

 

同部屋の男が現れたのである。

 

黒髪黒目、ごく一般的な顔立ちだが顔のホリが深く肌の色も七惟より黒い、何処となくアジアと日本人の血が混ざったハーフのような少年だった。

 

見た感じ年齢はミサカよりは上、自分と同じくらいか年下のような幼さも残っているものの目つきはしっかりとしておりその瞳からは何処となく力を感じる。

 

 

 

「はい、私の保護者であるオールレンジです」

 

「お、オールレンジ?」

 

 

 

保護者?保護者ってなんだよ、と言うかその前にこの男何者だ、何処の馬の骨だ。

 

 

 

「オールレンジって通り名だ、気にすんじゃねぇ。ミサカと同部屋の人間か?」

 

「あ、はいそうです。喜伊源太です、よろしくお願いします。ミサカさんの……お兄さんです?」

 

「……まぁな」

 

「そうなんですか!何時もミサカさんには仲良くさせて貰ってます、ミサカさんの御蔭で平凡な入院生活も楽しいです」

 

「ありがとうございます喜伊さん、とミサカは感謝の言葉を述べお礼のみかんを差し出します」

 

「あ、ミサカさんそれ僕のだから!」

 

 

 

何なんだコイツは……どうしてこうもフレンドリーなんだ、何処となく上条のような人当りの良さとオルソラのような善良さが感じられて対応に困る。

 

七惟としては男と同室なんてミサカの負担になるから即刻辞めさせるべきだと思っていたのだが二人の会話や態度を見るとそんな感じは微塵も感じられない。

 

むしろ逆に仲が良い、と言って過言ではないのではないか。

 

 

 

「喜伊君……全く、診断結果が良好だったとしてもすぐに急変することだってあるのだから気を付けないといけないよ?そんなにはしゃいだら……」

 

 

 

そしてさらに此処で七惟を混沌に陥れた張本人の蛙顔の医者の登場である。

 

 

 

「オールレンジ、君も来ていたのかい?丁度話したいこともあったしいいタイミングだね?……なるほど、目付け役も一緒か。少し外して貰っていいかな?」

 

 

 

取り敢えず七惟は完全に空気化していた名無しの少女を待合室に待機させ、蛙顔の医者と個室へ向かうこととなった。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

「ミサカ君の容態はだいぶ良くなってね?そろそろ退院させてもいいかなと思っている」

 

「はい、ミサカは元気ですと身体を使って全力でその健康ぶりをアピールします」

 

 

 

七惟とミサカが案内されたのは病院関係者専用の休憩室だ、今は貸切状態だが目の前の廊下では看護師たちがひっきりなしに行ったり来たりと忙しそうに日々の業務をこなしている。

 

 

 

「へぇ、それはいいことじゃねぇか」

 

 

 

七惟は休憩室に設置されている自動販売機で缶コーヒーとオレンジジュースを購入し、甘い方をミサカに手渡す。

 

 

 

「それで、退院したらどうすんだよ?また俺の家に来んのか?」

 

 

 

そう、もう3か月近く前になるがミサカは一時期七惟と一緒に生活を共にしていた時期がある、僅かな日数ではあるが。

 

あの時はミサカ達シスターズの抱える特殊な身体構造の影響ですぐにこの病院に入院してしまったが、この医者が言う限り今回は定期的に通院して貰えば今のところ問題はないとのことだった。

 

定期的、とは言うがほぼ毎週通わなければならないとのことだったが。

 

 

 

「それがね、今回話したいことというのは今後のことなんだね」

 

「あぁ」

 

 

 

「ミサカさんの要望で中学校に生徒として入学して貰おうと思っているんだ」

 

「……学校だと?」

 

「はい、学校です」

 

 

 

確かにミサカの年齢なら……いやしかしミサカの実年齢は0歳数か月な訳だからまだ保育園すら無理、身体的な年齢で考えるならばオリジナルの御坂命琴と同じなので14歳、つまり中学2年生ということになる。

 

表の世界の常識で考えるならば普通は学校に通って勉学に励んでいる年齢だ。

 

 

 

「ミサカネットワークを介して学校の知識は取得しましたが、シスターズは誰も学校に通っていないためその実体験が抜けているのです、とミサカは事細かに状況を説明します」

 

 

 

なるほど、要するに知らないものを知りたい、という人間なら誰でも持っている欲求らしい。

 

 

 

「ミサカはオールレンジのような『家族』はいるのですが、『友達』がいません。学校というものを体験し、友達を作り、勉学をしてみたいのです」

 

 

 

この間病院では『友達だ』と言ったような気がしていたが、いつの間にか家族に昇格していたらしい。

 

……まぁ、言われてみて嫌な感じはしない、呼ばれなれていない分抵抗があるが。

 

 

 

「別に俺はどうこう言う立場じゃねぇよ。ミサカが好きにやりゃあいい、俺に此奴を縛る権限なんざねぇしな」

 

「なるほどね、以前の君に比べたら確かにだいぶ丸くなったようだ」

 

「コイツの特殊な性格で友達が出来たりスムーズな学校生活がそのまま送れるかは知らねぇけどな」

 

「なるほどね、一言余計なのは相変わらずのようだね?」

 

「うっせぇ」

 

 

 

確かにこのままずっと病院生活というのもつまらないだろうし、他のシスターズは占い屋をやったり戦地に赴いたり海外に飛んで行ったりと割かし自由に各々やりたいことをやっている。

 

それをミサカ一人だけ此処に縛り付けるというのは野暮だろう。

 

道理でさっき学校のことをしつこく聞いてきたわけだ。

 

 

 

「それで、もうアンタのことだから手配とかは諸々済ませてんだろ」

 

「あぁ、区立の学校に入学する予定にしているよ?学年は中学1年からにする予定だ、その方が彼女もなじみ易いだろう」

 

「名前はどうするんだ?まさかミサカ19090号をそのまま引っさげる訳ねぇよな、それに容姿が思いっきり御坂命琴と同じだが致命傷だろ?」

 

「その点は特に問題ない、超電磁砲のそっくりさんということで逆に人気を博すだろう。そういう意味もあって超電磁砲とはほとんど交友関係のないであろう普通の公立中学校にお願いしている」

 

「学校の認可は?」

 

「戸籍等は公立の中学校の場合同学区に住んでいるのが条件で、両親、居ない場合は保護者に当たる人間の許可が必要なだけでね」

 

「その両親や保護者はどうすんだよ……ミサカはさっき俺のことを保護者だとか言ってたがな、俺は未成年だぞ」

 

「大丈夫だ、保護者は僕ということになって彼女は遠い親戚ということにしている」

 

「へぇ……そこらへんの手の回し方は流石だな、伊達に暗部の患者を引き受けてねぇ」

 

「こう見えても君以上に修羅場を経験しきているからね?」

 

 

 

はは、とその言葉の真意を隠すかのように笑う蛙顔の医者……もとい、冥土返し。

 

その笑みから暗部の人間である七惟は彼が今までどのような現場で医者として働いてきたのかイメージ出来る、もちろん全てではないが。

 

 

 

「以上のようにミサカは全ての問題をクリアしていますので、後は姓名です」

 

「姓名……か、おっさんの苗字を?」

 

「いや、それは逆に遠い親戚という名目がおかしくなってしまうからね?此処は君の苗字を使いたいと彼女からの提案があった。『ナナミ』でよかったかな?」

 

 

 

そう言って冥土返しは手帳を取り出し、ページの隅に『七見』と記した筆跡を七惟に見せる。

 

 

 

「俺は七見じゃなくて『七惟』だぞ」

 

「……あぁ、これは悪かったね?じゃあこっちか」

 

「ありがとうございます、オールレンジ。これで名実共に私とオールレンジは家族ですとミサカは嬉しさの余り手を握ってしまいます」

 

 

 

いや、苗字が同じ奴なんてそこらへんに居るし苗字が同じなだけで家族とは言い難いのだが……まぁ、ミサカに両手を握られぶんぶんされている内にそういうことはどうでもよくなっていった。

 

その間に冥土返しは七見と書かれた隣に『七惟』と書き込み、マル印を付ける。

 

 

 

「名前はどうすんだよ、七惟ミサカってか?」

 

「七惟美咲香です、とミサカは自身の姓名を堂堂と発表してみせます」

 

「いや俺が言ったまんまじゃねぇかよ」

 

「はは……彼女が言っているのは漢字だよ、ほらこれだね?」

 

「あぁ、七惟美咲香」

 

 

 

そう言って別のページにミサカの……いや、美咲香の名前が記された箇所を指さす冥土返し。

 

 

 

「これからは七惟美咲香君だ。学校は既にこの名前で申請している」

 

「俺が『七惟』を使うことを断ったらどうするつもりだったんだ」

 

「それだけはありません、と美咲香君から言われていたからね?」

 

「…………」

 

「入学する中学校は柵川中学校という、だいたい無能力者から強能力者……美咲香君と同じレベル3くらいまでの子供たちが通う学校だ。丁度彼女と同部屋だった男の子も来週からこの学校に通う予定でね」

 

 

 

同部屋だった男の子……ようするにさっき美咲香と自分に挨拶を交わしていたあの喜伊源太って奴か。

 

七惟はいいタイミングだ、とばかりに先ほどから気になっていたあの少年のことを問いただす。

 

 

 

「そういやさっきから気になってたんだが、どうして男女が病室で同じ部屋なんだ?普通別々だろ」

 

「……あぁ、それは彼が特殊な患者であるということが一つと、同じ中学校に通うのだから少しは同じ時間を共有したほうがスムーズな学校生活に繋がるだろうと思ってね。期間にしてだいたい3、4日くらいかな?」

 

「特殊な患者……?」

 

「……そうだね、君は美咲香君の関係者だし話しておこう。彼は見ての通り東南アジアと日本人のハーフでね、原石の素質がある少年なんだ。唯東南アジアの紛争地帯でたった一人生きる為に戦っていてね。原石を探し回っていた学園都市の調査団が現場で彼を保護し日本へ連れ帰って、この病院で治療し経過観察のため区立の中学校に入学させることになっているんだ」

 

「学園都市の調査団……学校は中学1年からか?」

 

「そうなるね、彼の実年齢は15歳な訳だけれど教養の具合は良く見積もって小学校高学年レベルがあるかないか。でもあの見た目で小学校に入学させる訳にはいかないから、中学校1年生と言う訳だね」

 

「確かに紛争地帯で生活してりゃ勉強なんざしてる訳ねぇか」

 

 

 

東南アジアの紛争地帯……か。

 

そう聞くだけでこの間学園都市で戦った神の右席の女の顔が嫌でも脳裏を過るものである。

 

 

 

「二人で一緒にこれからの学校生活を頑張って貰えればと僕も思っていてね?オールレンジ、君には悪いが蔭ながら彼女を支えてあげてくれないかな?」

 

「……言われなくてもやるから安心しろ」

 

 

 

あのミサカが学校、か……。

 

今自分の置かれている立場から考えてつきっきりで対応してやるのは無理がある、何時学園都市第2位とドンパチが始まってもおかしくない状況なのだから。

 

だが、今の自分が居るのは他でもないミサカ……美咲香の御蔭だし、此処は踏ん張り所か。

 

取り敢えず病院から学校のある区に引っ越す訳だからその手伝いもしなければ……。

 

暗部の仕事をやっているとは思えない自分の表の世界的な考えに可笑しくなりながらも美咲香の笑顔を見つめる反面、自分は学園都市の汚れ仕事をやっており学校など最近はまともに顔を出していない自身の滑稽さに自嘲の笑みを浮かべる七惟だった。

 

 

 

 

 


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