prrrrrrr……
「……もしもし」
『おっ、知らない番号からの電話は出ないかもって聞いたんやけど、出るんやね』
「…………えっと、どちら様で?」
『あ、ごめんごめん。μ'sの母こと、東條 希です。比企谷くんのことは、にこっちからよく聞いてるよ』
「東條希? って、あの東條希!?」
『そう。君の大好きなμ'sのメンバーの1人やね』
「……そういえば、何か矢澤先輩の携帯にそんなことが書かれたメールが届いてましたね。匿名希望さん?」
『あー、あのメールな。まぁ差出人のとこ見れば一発やもんなぁ』
「っていうか、あの情報もなんですけど、それよりもどうやって俺の電話番号を知ったんですかね?」
『ふふふっ、カードがうちに教えてくれたんよ。スピリチュアルやろ?』
「…………戸塚をカード呼ばわりするのやめてもらえます?」
『うおっ! 何でわかったん!?』
「俺がμ'sのファンだってことは、妹の小町ですら知らない。唯一知ってるのは、俺にμ'sのことを教えてくれた戸塚だけですから。アキバで初めて会ったときに既に連絡先を交換してたんですか?」
『えぇー、すごいな君。名推理だよ探偵君』
「初めから選択肢が1つしかないものを推理とは言わないでしょ」
『まぁ考えればすぐにわかることやもんね』
「……それで? 戸塚に俺の番号を聞いてまで何の用ですか? 正直μ'sのメンバーと電話で話してるってだけで、心臓バクバクなんですが……」
『君がいつも話してるにこっちも一応μ'sのメンバーやよ?』
「……当然、知ってますよ」
『そ、ならよかったわ。それで、本題なんやけどね』
「はあ……」
『まぁ、今日ちょっと色々あってな。にこっちがちょっと落ち込んでるんよ。それで、慰めてあげてとは言わないから、話だけでも聞いてあげてくれんかな?』
「は? そういうのは同じ3年生で、同性の、それこそ東條先輩や絢瀬先輩の方がいいんじゃないですかね」
『ううん。うちらはμ'sのメンバーやから意味がないの。こういうのは、部外者の方が割りとよかったりするんよ』
「いや、だからって何で俺が……。μ'sじゃなくても他にも同級生はいくらでもいるでしょ」
『でもにこっち友達おれへんし』
「何気に酷いですね」
『まぁ、それは冗談としても、出来れば音ノ木の生徒もやめといた方がええんよ。となると、もう比企谷くんしかいないんよ』
「いや、ていうか、何があったんですか」
『それを、にこっちから聞いてあげて。お願いします』
「………………話を聞くだけですからね」
『……うん。ありがと。それじゃよろしくね』
「…………はいはい」
プツ。プー、プー、プー……………………
一晩考えた。きっとこの考えは間違っていないと思う。
……一応比企谷には感謝しておこう。心の中で。
昨日のことで色々と考えた。もう既に放課後。これからやることも決めた。そして、穂乃果も見つけた。なら、実行。
「……穂乃果っ!」
「うおっ、……にこちゃん?」
何やら書類のような物を運んでいた穂乃果を呼び止める。
「穂乃果、私と勝負しなさい」
「………………へ?」
私がやることはただ1つ。穂乃果と勝負して、そして……。
ジャージに着替えたにこと穂乃果は、神田明神の階段の前にいる。
後ろに気配が感じるけど(具体的には7人くらいの気配が)、今は気にしてられない。
私は穂乃果と向き合う。
「この階段を上まで先に登った方の勝ち。あんたが勝ったら、ラブライブに出るのは諦める」
「…………」
「私が勝ったら……、私が勝ったら、いくつかの質問に答えてもらう」
「………………え?」
「そんでもって、その答えを踏まえた上で、私はあんたを説得する」
穂乃果の目が一瞬見開く。だが、すぐに真剣な目となり、1つ頷いた
「わかった。それでいいよ」
にこと穂乃果は真ん中にある手すりを挟んで、それぞれスタートの準備をする。
「それじゃあ行くわよ。位置について、よぉーーーーーいドンッ!!」
「あっ!」
にこは卑怯な掛け声で先にスタートする。
「にこちゃん、ズルいよ!」
「ふんっ、悔しかったら追い抜いてみなさい!」
残念だけど、普通にやったらにこは穂乃果には勝てない。にこは正々堂々と戦うのが好きだし、ズルは嫌い。でも、今回だけはズルでも何でも、勝つためには手段は選ばない。
穂乃果の気持ちを聞いてあげて、そして説得する。そのためなら、嫌いなズルもしてみせる。だって、今回のラブライブがにこ達3年生にとっての……
結果としては、僅差でにこが勝った。
かなり追い上げられたが、最初のスタートのおかげだ。
「はぁ、はぁ。…………にこちゃん、ズルすぎ」
「…………私が言ったルールは[この階段を上まで先に登った方の勝ち]ただそれだけよ。スタートの仕方も、掛け声をどっちが言うのかも決めてない。ただ、先に上に登ればそれで勝ち」
「なら、もう1回っ!」
「穂乃果」
振り返って階段を下りようとした穂乃果の動きが止まる。
「また自分のせいで皆に迷惑をかけちゃう。そんなこと思ってるんでしょ?」
「……え」
「ラブライブに夢中になりすぎて、回りが見えなくなって、生徒会長として学校の皆に迷惑をかけてしまうなんてことはあっちゃいけない。そんなところかしら」
「にこちゃん……」
「穂乃果、先に言っておくけど、私たちはあんたに迷惑かけられるのなんて慣れっこなのよ。それなのに、私たちはあんたに付いていってる。それは、あんたがそうさせる何かを持ってるからなのよ」
「…………」
「だから、全校生徒だって、多少迷惑かけられても大丈夫よ」
「……でも、多少で済むとは思えないし」
「はぁ、あんたは本当に馬鹿ね。なんのために海未とことりがいると思ってんのよ」
「海未ちゃんとことりちゃん……?」
「あんたが行き過ぎたときにあの2人ならちゃんと止めてくれる。やり過ぎたらきちんと叱ってくれる。私がわかるくらいなんだから、何年も一緒にいるあんたなら当然わかるでしょ?」
「……うん」
「だからあんたは、いつも通り前だけ見て突っ走ってればいいのよ」
「…………そっか」
穂乃果が上を見上げる。先程からポツポツと雨音が聞こえ始めていた。
にこと穂乃果は屋根のある場所まで移動する。
「……穂乃果」
「……ん?」
にこは雨音に負けそうな、小さな声で穂乃果に話しかける。
「次のラブライブ。開催はいつか知ってる?」
「…………うん」
「…………きっと、それが私たち9人での、最後のライブになる」
「…………うん」
「穂乃果……」
「……………」
「……出ましょう」
「…………うん」
穂乃果が静かに頷いた。
するとそこへ7人が雨から逃げるように、にこ達のところへ集まってきた。
「にこ、話は済んだの?」
絵里が聞いてくる。
「ええ。ラブライブ、出るわよ」
私の言葉に私と穂乃果以外の全員が目を見開いた。
「ほ、穂乃果? 本当ですか?」
「……えへへ、にこちゃんには全部お見通しだったみたい」
穂乃果が照れたように海未に笑顔を見せる。
「あ、そうそう。穂乃果、あんたに1ついいことを教えてあげるわ」
にこは突然、昨日の電話を思い出していた。
「人間っていうのは、そう簡単には変わることができない生き物らしいわよ」
「へぇ~。それが?」
「あんたの本心、ここで聞かせなさいよ。本当は滅茶苦茶ラブライブに出たいんじゃないの?」
「ぐっ……」
皆の視線が穂乃果に集まる。
穂乃果は一瞬詰まりはしたが、もう開き直ることにしたようだ。
「そりゃあ出たいよ!! 正直、最初の知らせが来たときから、すごく出たかったよ!!」
ふっ。比企谷、あんたの言う通りだったみたいね。
「生徒会長やりながらだから、また皆に迷惑かけちゃうかもだけど、それでも、1度夢見た舞台だもん! やっぱり出たいよ!」
「それなら、答えは1つよね」
「うん! やろう!!」
そう言うと、穂乃果は叫びながら雨の中へ飛び出していった。
そして、スゥっと息を吸い込む。
「雨やめぇぇーーーーーー!!!!!!!!」
すると……
「嘘……」
「本当に止んだ!」
穂乃果が私たちの方へ振り返る。
「人間、その気になれば何だってできるよ! ラブライブに出るだけじゃもったいない! この9人で残せる最高の結果!」
そして、穂乃果は腕を高く空へと伸ばし、
「優勝を目指そう!!」
高らかと優勝宣言をした。
八幡から電話がかかってきたのには、理由があったんですね。
というわけで、原作とはだいぶ変わり、絵里や海未の台詞も全部にこちゃんが持っていっちゃいました。
いいよね? だってにこにーが主役なんだもん。
では、次回もお楽しみに
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