「お兄さん、もうすぐつくよ。」
「ああ、ありがとう。」
「なに、いいってことよ!ここまで護衛もしてくれたんだしよ!」
あの街から出て3日後。隣町までの道を行商人の荷馬車にのってタバコをふかしながらシュウェは気だるそうに答えた。
護衛の任務ができたのはラッキーだった。荷馬車に乗せてもらうため自分で歩く必要もなく、護衛費も出してもらえる。気前の良い商人だと食事を出してもらったり、中には天幕を貸してくれた者までいる。
「こっちとしても、流浪の冒険者さんを雇えたのはラッキーだったよ。」
「なに、持ちつ持たれつだ。」
「次の街は港町だからね、魚料理が有名だよ。」
「それはいい。」
「後2日といったところだろうね。」
「ああ、何も無いことを祈ろう。」
「そうだねぇ、神のお導きがあらんことを。」
と言って商人は神に短い祈りを捧げた。
商人、特に街から街への旅をする行商人は神を信仰するものが多い。旅には危険が付き物だ。道中にはどんな危険が潜んでいるか分からない。災害、野犬や狼。盗賊やゴロツキの傭兵たちに襲われないとも限らない。さらに運良く無事にたどり着いたとしても行った先の街で商品が大暴落してる可能性もある。そんな事が日常茶飯事の世界では神にも祈りたくなるだろう。
シュウェは神官ではないから熱心な信者ではないが、行商人と同じ旅を続けるから神に祈りを捧げることも少なくない。
「おおぅ。」
「どうしたんだ?」
「雨の匂いがきつくなっている、こりゃあ一雨くるな」
「ふむ。それなら今日は早めに野営の準備をしよう。」
「了解でさぁ!」
そう言って行商人は荷馬車を止め、2人は野営の準備を始めた。
「妖精達よ、力を貸してくれ。」
そう言って、フェアリーウィッシュを唱え、当たりを見渡してみるも、特に何も感じない。
「この辺りは特に何も無いようだ。」
「そいつぁ良かった。これで今日は安心だな!」
「絶対とは限らない。日が暮れる前に焚き火の準備をしてしまおう。」
「そうだな。」
「兄さんはなぜ流浪の旅なんかをしているんだい?」
「そっちこそ、俺と同じ様な生き方じゃないか。」
「ははっ!違いねぇや!」
「明日も早い。今日はもう休んでくれ。」
「兄さんは?」
「夜の見張りだ。馬に寄り添って寝な。動物の方が危険に敏感だ」
深夜・・・シュウェは煙草を吸いながら考え込んでいた。
(何故・・・か・・・。考えたこともなかったな。)
シュウェの父は衛兵だ。幼少期から剣技を教えて貰っていた。
母はそこそこ名のある魔法使いだ。よく魔法で作った色とりどりの炎を見せてもらった。
それが理由からか、シュウェは幼少期から戦いに興味を持ち、父の友人が経営している冒険者の店に入り浸り、その店の冒険者によく、冒険譚をねだった。
16の時に冒険者になることを決心し、両親にその事を相談した時は、2人とも少し悲しそうな顔をしたが笑いながら応援してくれた。
18までの2年間、今まで以上に剣技を父から教わり、冒険者の店の冒険者達に模擬試合を申し込み、腕を磨いていた。
そんな時、シュウェの師匠が現れた。
一目見ただけでも強いと誰もが分かる雰囲気。シュウェは一目見ると
「俺と試合してくれ!」
と叫んだ。
「・・・は?」
と困惑する師匠に店の常連達が事情を説明すると
「・・・ふん、分かった。かかってこい小僧。」
結果は完敗といっても足りないくらいだった。
一太刀浴びせるどころか、相手に剣を抜かせることすら出来なかった。
「小僧、その年でここまで出来るのはなかなかやるな。後10年すれば国に名を馳せる戦士になるぞ。」
「・・・・・・はい・・・」
「そう落ち込むな。俺は暫くこの街にいる。暇が有りゃあ稽古してやるよ。」
「本当ですか!?」
「ああ、ちょっとばかし興味が湧いた。」
その日からシュウェは師匠と行動を共にし、街を出て近隣の蛮族を倒し、暇な時は師匠と稽古をすると言った生活を3ヶ月した。
「・・・え?師匠、今なんて?」
「後数日もすれば俺はこの街を出る。俺の流儀でな、同じ街には3ヶ月以上留まらないと決めているんだ。それ以上は情が残る。」
「そんな!俺、まだ師匠に教わりたいことがあります!」
「何お別れみたいな事言ってんだよ?お前も来るんだよ。」
「・・・え?」
「お前のご両親からな、うちの息子は外に行きたがっているが、自分達ではそれは出来ない。どうか家の息子を連れていってください。って言われたんだよ。」
「父さん・・・母さん・・・!」
「だから後はお前の気持ち次第ってとこだな。で?どうする?一緒に来るか?」
「勿論です!」
その日、シュウェは故郷を出、師匠と共に流浪の旅に出た。
長くなったのでここで一旦切ります。