意識が高すぎて魔法科高校に入学したが劣等生だった。   作:嵐電

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サブタイトル変更しました。

「時光」を何の解説もせずに出しましたが、機会があれば作中で紹介させていただきます。


九校戦編3

「師匠!ここ、ここ」

少佐が、手を振っている。彼女は観客が比較的少ない場所を見つけたのだ。僕等はスピード・シューティングの観戦に来ている。

 当初、スタンドの前列に潜り込んで追っかけや熱心なファンの取材か、司波くん達の一団に混ぜてもらって北山さんや司波くんの詳し過ぎる解説を取材するか迷っていたところだったが、少佐が僕を見つけたのだ。

 

正直、どちらもあまり気乗りがしなかった。むしろ、少佐とマニアックな会話を楽しみながら七草会長の出場するスピード・シューティングを観戦するほうが良い。まさに渡りに船だった。

 

「少佐、身体は大丈夫ですか?」

 

「昨日は、一日中寝ていたから今日はもう大丈夫」

 

どうやら、彼女はいきなり光を取り入れたので疲れを覚えたようだ。吉田くんは、大丈夫だろうか?

 

「ところで、少佐は、七草会長と友達なのですか?」

 

「単なる知り合いではないけど、友達なのかは微妙なところね。でも、どうしてそんな事訊いたの?」

 

「七草会長が出場するから、スピード・シューティングを観戦しに来られたのでは?」

 

「そうね」

少佐が、会長との関係をあまり喋りたくなさそうなので、話題を変えた。

 

「光を取り入れやすい身体になって、その次の段階は光をつまり、先天の気を体内で循環出来る身体に変える事です」

 

少佐は、僕の話に身を乗り出して来た。彼女には、じつは切実な問題が絡んでいる話だ。

 

「話を七草会長に戻しますが、勝負は最初から見えてます」

 

「未来を見たの?そういうことではなさそうね」

 

「先天の気を取り入れられてもそれを循環させられなければ効果は半減してしまいます。七草会長はその循環が出来ているのです。そして、少佐もです」

 

「全く、自覚がないのだけれど」

少佐が困った顔になった。

 

「会長も無自覚にされていると思います。二人に共通しているのは、女性的な肉体に成長するペースが遅い事です。しかし、これが先天の気の循環に役に立っているのです」

 

僕は、脾臓について語り始めた。脾臓のあまり知られてない機能についてだ。ここに簡潔にまとめておく。

 

『』

 

もう一つ。

 

『』

 

「脾臓が、先天の気の循環に重要な役割を果たしています。ただ、先天の気は今だに測定されてないから造血や血液の貯蔵機能として知られています。なので、広い視野を確保したままでしかも素早く正確に長時間撃ち続けても七草会長が途中で体力が切れないのは、発達した脾臓のおかげです」

 

「使えるサイオンの量と先天の気の循環の流量が関係しているのはわかるけど、真由美は脾臓がそんなに発達しているのかな?」

少佐は、納得し切れないようだ。

 

「会長の九校戦での別名はエルフィン・スナイパー、つまり、小妖精。悪く言えば未発達未成熟。幼児体形の特徴であるお腹、特に臍付近が膨らんでいます。おそらく、会長本人も気にしています」

少佐は、自分の脾腹を撫でながら苦笑いする。

 

「魔法師は、サイオンを多量に使う為に多量の血液循環が必要なのだな。その為に骨髄だけでなく脾臓で造血や血流安定をしているから脾臓が発達する」

 

「そうです。胎児の時には誰でも脾臓で造血できますが、成長するとできません。しかし、魔法を使うと脾臓の機能が必要になります。骨髄だけでは造血が間に合いませんから。会長も少佐も幼い頃に自分の生きる道を決めてしまったようですね」

 

「心当たりがあるから、反論のしようがない」

少佐は、溜息をつく。

 

「脾臓の血液貯蔵機能は比較的簡単に鍛えられます。運動したり呼吸法でも可能です。渡辺委員長が身体を鍛えるのが好きなのはその事を無意識に感じているからだと思います」

 

「そう言えば、渡辺は武道も水泳も好きだ。でもあいつは、幼児体形ではないぞ」

 

「なので、才能で会長や少佐に劣ります。脾臓の造血機能を使えなければA級魔法師にはなれないでしょう。本人も自覚していると思います」

 

少佐は、少し考えを整理しているようだ。

「そう言えば、あいつは防大に進学希望している。魔法師というより軍人志望だ。それに百家からの見合い話を全て断って千葉の跡取りとさっさと婚約している」

 

「会長や会頭と付き合っていたら自分との才能の差は否が応でも自覚させられます」

 

「あいつは、負けず嫌いだから勝てない戦いはしない」

少佐は、小さく呟いた。

 

『勝てない戦いはしない』渡辺風紀委員長は、本当に軍人に向いているらしい。国軍の将来は明るいな。

 

「暗くなってすまない。話を元に戻せば七草が優勝するのは脾臓の機能が他の選手よりも発達しているから、で良いのだな」

 

「たとえ、アクシデントがあっても会長は乗り切れるでしょう」

 

「待って!アクシデントがまだ起きるかも知れないの?」

少佐が慌てた。少女な口調になっている。

 

「時光を超えて観てきたわけではないのですが、この九校戦はただでは済みそうにないです」

 

「チョッカイを出す連中がまだいるのね!」

 

僕は、頷いた。そして、視線をフィールドに向けて言った。

「さぁ、会長の出番ですよ」

 

 あっという間の5分。

 

パーフェクトだった。会長のスコアは。小妖精狙撃手は今年も健在だ。去年は動画でチェックしただけだが、さらにスピードが上がっている気がする。

 

「確かに、腹が出ている」

少佐が感心している。水晶眼なら遠くからでもよく見えるはずだ。

 

比較の為に、次の選手の射撃も観戦した。

 

2分で、苦しくなっているのがわかる。3分を過ぎるとガス欠だ。それでも、残り2分を何とか誤魔化した。そこは素直に日頃の鍛錬の賜物として褒めてあげたい。

 

 しかし、それではパーフェクトは無理だ。

 

「確かに腹が出てない。息が上がって少し貧血気味になっている」

少佐の目にも選手のスタミナ切れが映ったようだ。

 

「魔法発動のためのサイオン供給が間に合ってないのでしょう。だから、血も足りないし、そのぶん呼吸で補おうとして肺に負担をかけたみたいです」

 

「予選で、最後までサイオン流が充実した選手が決勝でも圧倒的に有利なのだな」

少佐が腕組みをして感心している。少しロリ傾向がある黒いワンピースを纏った少女に全く似つかわしくないポーズだ。それにしても、空調が効いているのに真夏に黒いワンピースとは…

 

この黒いワンピースどこかで見たことがあるな。

 

「たとえ選手が後半軽く流してサイオンの流れが細ってしまっても、脾臓や肺や心臓を観ていれば本当の魔法力のスタミナはわかってしまいます。特に水晶眼の持ち主には一目瞭然ですね」

 

少佐は納得したようだ。僕は、もう一人の水晶眼の持ち主である柴田さんは競技中の会長がどんな風に見えていたのか気になった。

 

あっ!今、思い出した。

 

「ところで、少佐。そのワンピースはGHOST IN THE SHELLのラストを意識されたのですか?」

 

『さて、どこへ行こうかしらね』

少佐が、口角を上げた。

 

「渡辺委員長のバトル・ボードの会場へ」

僕は、ボケた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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